狂ったもの 都時彰編 16
その後の楓さんとの話で、俺の病室に行くなら絶交だと言い切った平間さんの言で。俺を擁護する派の楓さん、外村先輩、星宮先輩、本上先輩、土居先輩。擁護しない派の新屋敷先輩、平間さん、皆河さん、ペルートさん、桜戸手先輩、浅間先輩、岡庭先輩。中立派になってしまった姉岳さんと氷見先生という構図らしい。
「そこで土居先輩がこっちサイドってのは意外ですね」
「それは思った。何なんだろうね?陸上部全体で怨み節溜めてそうなものなのに」
ここに居ない人のことを言ってても始まらないのだが、ただ両者同じ認識である事が分かったのは良いことだ。
「あ、土居先輩も入れてかわいい先輩3トップだった」
楓さんが瞬時にジト目を向けてきた。
ここは両者同じ認識ではなかったようだ。
「で。新屋敷先輩が椎堂側って話だけど、そもそも新屋敷先輩ってもう外出れるくらい回復してるの?」
「今回の椎堂さんの件を聞いたら駆けつけなきゃって頑張ったみたいよ。ま······こんな言い方したら不謹慎だけど椎堂さんがああなったおかげで新屋敷さんが良い方向へ変わったわね」
なんとも言い難い話ではあるが、酷い事をされた者同士、通じ合えるのだろう。
「じゃあわたしはこれで帰るから」
楓さんがベット横に置いてあった椅子に座ってた状態から立ち上がった。
「あ、はい。ありがとうございます」
「次からは自分でご飯食べれるでしょ?」
またジト目を向けられたがかわいいだけで効果はないようだ。
「退院できるまでは難しいかと」
「調子にのるな」
ビシッと俺に指さして忠告する。
「蹴られて傷ついた内臓部が心配なら冷蔵庫にゼリー入れとくから良かったら食べてね」
俺はテンションが上がった。
「おー!楓さんの手作り!」
「あ、ごめんね。それ市販品だから」
「········」
俺は生きる希望を失くした為、布団へ潜り込んだ。
「だって下手に手作り持ってきて体調崩したら嫌でしょ!!分かったわ!!退院できたら家で好きなもの食べさせて作ってあげるから!!」
俺はむくむくと起き上がった。
「じゃあ楓さん食べさせて子供作って欲しいです!!」
「好きなものとは言ったけど却下!!無理!!そんな目をしても駄目なものは駄目!!」
男としてはあそこもむくむく起き上がったのですけど、そこで突き放すとは楓さんもガードが固いなり。
俺は機嫌を損ねた。だが、ここで諦める俺ではない。
「大丈夫です楓さん。ちゃんとゴムはつけるので」
「つけなかったら正気を疑うわよ!!わたしたち中学生よ!!駄目だからね!!フリじゃないからね!!」
「········お尻にしても駄目ですか?」
「ちょっと彰くん!?今から性癖歪めないでくれる!?わたしついていけなくなるから!!初めてはノーマ······いいから寝てなさい!!!」
なんか最後は自分がとんでもないことを言ってる事に気づいたらしく俺の頭から腰にかけて布団をおっかぶせる。
まあ楓さんの恥ずかし顔レベル記録更新が出ただけでも良しとするか。
瞬間湯沸し器もあれくらい速く温度が上がればカップラーメンを作るのにもっと楽になるだろうにとか考えてしまう。
5秒とかからずに顔が自分が着けている混じりっ気ない赤色のマフラーと同じくらい赤くなるってそうとう恥ずかしかったんだね楓さん。
「楓さん。今すごく熱くなってません?」
亀のごとくにょきっと出てくる俺。
あ、あっちの亀はとっくに出てるけど。
「誰のせいよ誰の」
マフラーを取りカーディガンの中の服の胸元あたりをぱたぱたさせる楓さん。
俺の頭の位置からじゃ楓さんの胸元は見えないが見えても悲しい光景が浮かぶだけになりそうだからこのまま見てるだけに留めとく俺。
冷静になってみてここが病院である事に気づいた楓さんは声を潜めて話をする。
「さあ、大部屋は満室のためここは個室です。涼しくなるまで脱いで布団に入りましょう」
「脱がないし入らないしさせないわよ」
今の楓さんの目は平間さんがマックス開いたのと同じレベルで細められている。
「え?俺のが楓さんに入らないって?」
楓さんは俺の口を両手で塞いできた。
「んぐぐーー!」
鼻は塞がれてないとはいえ、この仕打ちは酷いと思う。
この真っ白な天井や壁に、19型のテレビが1つポツンと置かれ、その下にラック。横に3段収納の冷蔵庫。人間の腰くらいの高さの物があるだけ。
その中でこのドタバタというのも少しおかしなものではあるが、そんなに俺はおかしな事を言ってるのか疑問を呈したいが楓さんだから仕方ないのかもしれない。
そういう話の免疫低そうだし、逆に高い楓さんは楓さんじゃないしなぁ。
でも、彼氏相手には許してくれてもいいんじゃないか。
とかなんとか思ってる間も顔を赤くして怒ってらっしゃる。
多分、黙れと言いたいんだろうな。
「い~い?性欲があるのは仕方ないとしても、それを無闇に女の子に向けてはいけません」
「楓さん。俺も無闇矢鱈には言いませんよ?付き合ってる楓さんにだからこそこうして催促してるんです」
「そういうのは二十歳から!!ぜっっっっったい譲らないわよ!!」
うん、以前から聞いてた。これはマジのやつだ。
「そこをなんとか楓さん。ここ病院なんで」
「病院だから余計駄目でしょ!?」
「いやその·······病院だからあまり1人で性欲処理できないので」
最後まで話を聞かず、ものすごい勢いで帰ってしまった。
あの足なら楓さんも陸上部に入れそうな気がする。
相手が居ないというのはなんとも退屈なものでテレビを適当に見た後で、いつもより1、2時間早いが寝ることにした。
その翌日から折れていた肋骨が大丈夫かの検査と蹴られて抜けた歯の治療などを受け、後は安静にしてるだけの1週間となるはずだった。
事が起きたのはそれから3日目の23時頃。
普通ならこの時間は眠りにつくかつかないかシーツの中の瞬間なのだが、この日はテレビでとある大阪出身のシンガーソングライターさんの音楽特集番組をやってたのを見た後だったので目が冴えている。
と、そこへ音を立てずに誰かが入ってきた。
明かりは既に消えていて、看護師さんが見回りに来たのかなと思ったが足元は膝まである純粋な黒のレザーブーツの時点で違うと分かる。
そこから上を覗くと、太ももがしっかり見えており、お尻を何とか覆えてるくらいのショートパンツ。ベージュのコートに中はグレーのニットつきのセーターという男からしたらこの寒い中、下半身露出の割にコートを着るとはなんぞやと思うファッションなのだがそこはこの人曰く『お洒落は我慢』なのだとか。
「土居先輩?なぜここに?」
「あら?先輩が後輩にお見舞いに来たらおかしい?」
「そこはおかしくないですけど時間帯はおかしいですね」
こんなおかしな時間に来てる土居先輩はいつも通りに笑っている。
皆河さんや本上先輩がいるからまともじゃない女性は耐性があるとはいえ、土居先輩のそれはまた違うベクトルで正気を疑うものだった。
と、スマホを取り出したと思いきや、テレビの置かれたラックの上に置いた。
そして土居先輩はクスクスと笑うと俺に近づいてきた。
と、いうより口づけしてきた。
「!?」
突然の行動に俺は頭が混乱した。
その隙に土居先輩は俺の浴衣のようになっている水色の病衣の左右の紐をほどき、下着をずらして触ってきた。
その····俺の大事な所を······。土居先輩の滑らかな指が絡んでいく。
その間にも口づけはクチュクチュと舌を入れるようになり、少し強めに吸い上げるとわざと唇に唾液をつけたまま離れた。
俺は頭がボーッとしてきた。がそんな俺に構わず土居先輩は俺の乳首を舐め回す。
「~~~~~~~!!」
時に乳首の周りを舐めたかと思うと吸ったりチュパッと音を立てる度、脳に電気が走ったみたいな刺激を覚える。
「気持ちいい?」
土居先輩か俺の耳元でそう囁いてから俺の股間に何か液体がかかってきた感触がした。
そこには涎を俺のにかけている土居先輩が目に飛び込んできた。
十分な涎を含ませたら手で俺の息子をしごいていく。その際に俺の耳元で囁きながら時おり乳首も舐めていく。
「アキラくんのここ大きくなってきたよ。ほら、固くてピクピクしてるの分かる?」
駄目です土居先輩。そんなことされたって俺には楓さんが。
そう言う以前に頭が興奮状態になっていて何も考えられなくなっている。
そんな俺を見て土居先輩は笑うばかり、この人は一体何がしたいのか。俺の味方というのは楓さんから聞いているがその真意は何なのか。
「入れたい?」
俺の返事も聞かず、俺のを口に含みながら俺に土居先輩の綺麗なアソコを舐めさせられている内に土居先輩は既に全裸になっている事に気がつく。
そのプロポーションは楓さんのに比べるまでもなく、椎堂よりは小さいがしかし形の良いまん丸な胸とそれを支える各パーツが生み出す総合的な輪郭は男を魅了するには十分過ぎるほどだった。
用意していたのだろう避妊具を俺の大きくした物につけていくのにも慣れた様子で、こういう事をする人なんだと客観的に見てる自分に気がつく。
そうして俺のに入れる前に土居先輩の中を自分の涎を指に滴らせて更に濡らしてる間の喘ぎ声にも俺のアソコは反応していく。
「おっぱい舐めてもいいよ?」
そう言われると目の前には形の良い乳房、そのビンク色の突起が目の前にあったら本能で舐めて揉みしだいていた。
「んっ!アキラくん。上手!あたしもう我慢できないっ!」
もうどこかで止めれば良かったんだ。でもついさっき楓さんから20歳までさせてもらえないって聞いたから仕方ない。いや、それを免罪符に何も考えずになすがままになっていた。
そしてついに土居先輩と一線を越えてしまった。
当然童貞卒業のタイミングだった俺はその気持ち良さに溺れていた。
騎乗位だったが、土居先輩はこういうことにも慣れているようで俺が気持ち良くなるように動いてくれた。
その中の締まり具合が堪らなくて俺は物の5分で果ててしまった。
俺はあまりの体力の消費に息を整えるのに必死だった。
だから今更ここまでの状況を土居先輩のスマホで録画されていた事に気づいたのは土居先輩から見せてもらってからだった。
「い~い?今日からアキラくんはあたしの言う通りに動いてもらうよ?じゃないと~?この動画を芹沢さんに流すから」
脅しだった。嵌められたと気づいた時には遅かった。
頭の中で思うのは自分の馬鹿さ加減だった。
「どうするかは後でラ〇ンするから。くれぐれも誰かに言ったりしないでね?そんなことしたら·········」
「君だけの被害じゃなくなるよ?」
その言葉を最後に服を着た土居先輩は俺の手に何かを握りしめさせた後部屋を退出した。
何かと思い、手を開くとスマホに繋げるイヤホンだった。
しかしどうする?現段階では何を要求されるか分かったものじゃない。
もちろん内容次第では断りたい所ではある。
そう心に決め、寝ようとするもHをしてから口で処理してもらうまでしっかり覚えている股間が後を引き、服の乱れを直した後もなかなか眠れない。
そんな事が1時間も過ぎた頃。俺の元に連絡が入った。
どうやら件の土居先輩からだ。
俺は内容を確認すると、それは動画になっており最初の画面には病院で拘束された椎堂と隣に佇む土居先輩が写し出されていた。
俺は土居先輩からもらったイヤホンを差し再生した。
『助けてください土居先輩!!ここから出して!!』
拘束された痛々しい姿の椎堂がガチャガチャと音を鳴らしながら助けを求めている。月明かりだけの暗い病室は今日みたいに夜も遅い頃に来たのだろう。
『じゃあ、あたしの言うこと聞いてくれる?』
それは悪魔の取り引き。今の俺はそう感じてしまう。
だが渦中の本人は今の状況が嫌の一点張りなので肯定してしまう。
『じゃあこれ』
そう言い、土居先輩が椎堂にも分かるように白い粉の入った手の平サイズの袋を目の前まで持ってくる。
『これを今度の大会当日に平間さんの鞄に入れてくれれば良いよ』
『········何ですかそれ?』
そう聞く椎堂にはある予想があったのだろう。さらに精神的な恐怖が顔に表れる。
『何も知らない方がいいよ。椎堂さんの為にも····ね?』
どうやらそれは·····。
『嫌です!!それ薬ぶふぐっ!!』
やはり、今度の大会で平間さんには負けてもらう為に一番平間さんに近い椎堂さんが違法薬物が平間さんの鞄から見つかったように仕向けてほしいという訳だ。
その椎堂に土居先輩は、口の動きを拘束する拘束具。ギャグボールを取り出し椎堂の口に嵌めて喋れなくする。
『ふーっ!!ふーっ!!』
『フフフ、似合ってるわよ。前の彼氏がそういうプレイ好きで使ってたのを持っててよかったわ』
なお、俺がそういうのを知ってる理由はお察しください。
『じゃん!』
そしてテンションを上げた土居先輩はケースから手に取り出した安全ピンを持っていた。
それは人間ダーツにされた椎堂からすればトラウマを思い出すきっかけになる代物で、それを見た椎堂はおかしくなったみたいに悲鳴をあげていた。
『ンーーーーー!!!ンーーーーー!!!』
『ほらほら。静かにしないと誰か····来ないもんね?これだけ拘束されてるって事はよほどナースコール押しまくって看護師さん困らせたみたいだし、さっきこっそり聞いたけどここには来たくないってさ。中学生だし身体的な症状も良さそうだからって。まあ?精神的にはなかなかのものみたいだね?こうして見ると面白いし』
誰かこの先輩を引きずりおろして欲しい。
その思いとは裏腹にこれは動画の為、もう済んだ出来事で、今からどうこうしても助からない訳であって。
そして椎堂の気持ちも無視して土居先輩は抵抗する椎堂の患者衣を無理矢理全開にはだけさせて胸に安全ピンの針を突き刺した。
『ンーーーーーーーーーー!!!!』
悲痛な椎堂の叫び声、ここまで上げても誰も来ないことに異常を感じてしまう。
『精神科病棟ってセキュリティ厳しくて大変だよね?自由にエレベーターで行き来できないし。だからしばらくトイレで隠れてたんだけどこの反応見れたらその甲斐もあるよねえ』
笑いながら次々に刺していく土居先輩に止める兆しはなかった。刺していく度に椎堂から悲鳴があがるのも構わずに。
安全ピンは胸の膨らみの登頂付近から始まり登頂部にも横向きに刺したかと思うと貫通させ留めてしまう。それを左右両方行うと両耳たぶにもピンを貫通させ留める。
『耳と乳首のピアス、気に入ってくれるといいな。あ、舌にもやろっか?でもこれ以上うるさくなるとまずいか。ならクリストスを勃起····してる。変態さんなのね。ならこのまま刺してピアスに』
うるさいくらいにガチャガチャと鳴る拘束具は椎堂が地獄から逃げ出したい表れで。それはベットにも反映されている。
『止めてほしい?なら協力してくれる?』
ある程度椎堂に恐怖を与えたら一旦手を止めて椎堂に平間さん下ろしの協力を確認する。
だが椎堂さんは涙でぐしゃぐしゃになったこの世まで嫌悪してるような顔になってでも顔を横に振る。
それは、平間さんとは友達でいたいからなのか?
それとも陸上を平間さんから取り上げたくないからか?
その反応に土居先輩は、余計楽しげに笑う。
椎堂の悲痛な表情とは真逆の快活な笑顔だった。
『でもさ?ここで断ったり任務失敗するようなら、直接平間さんに薬物注入するからさ。ちゃんと指示通り行えばそこまではしないよ?』
その内容に頭を持ち上げようと、より抵抗を激しくするがそれでも動かない。
そしてそんな椎堂を面白いと思ってかフフッと笑いながら足の太ももに安全ピンを深く突き刺した。
『▷●◣◁▤▣◀◇◉!!!!!!』
もはや日本語にすらならない叫び声が上がった事で看護師が来る前に土居先輩は「考えといてね」と言い残し、安全ピンとギャグボールを外してスマホを回収した。
動画はここまでだったがその後にメッセージがあった。
『平間さんに薬物投入の際には手伝ってね』
『もし、バラしたら芹沢さんに例の動画流すし椎堂さんにもさらにお仕置きするから。平間さん1人の被害で済むのがベストだと思うな』
あの悪魔はここまでするのか。
椎堂がかわいそ過ぎる。こんな酷い動画を見たら椎堂にこれ以上辛いめに遭わせたくないと思ってしまう。
だが、これで平間さんが薬物所持で大会を敗退なんてあって良いのかとも悩んでしまうのもまた事実である。
ここまで一生懸命練習してきただろう平間さん。今度の大会とは言ってたが、確か次の大会は4月になるから12月入ったばかりの今からならまだ先である。
ここはまず椎堂の身を優先させる方向でいくしかないと自分に言い聞かせながら眠ろうと努力した。
そうして1週間後、俺だけ退院でき。翌日から登校するのだが······。
「彰くん!出てきなさい!ほら!クラスには姉岳さんがいるでしょ!平間さんと泥棒猫の事気にしたってどうしようもないでしょ!いいから布団から出てきなさーーーい!!」
どうも俺が来るのが遅いと気付き家まで上がり込んできた楓さんに丸まっていた布団を引き剥がされようとしていた。
ただでさえこちとら顔の火傷で周りから腫れ物扱いされてて仲の良い生徒の割合が少ないのに今回の件で1人だぞ。やってられるか。
俺も必死で牙城を崩されまいとするが楓さんも相当な執念なのか。いや、これは1人じゃないな。
「起きろ都時!!オレも一緒に行ってやるからさ!!」
ちくしょー。やっぱり姉岳さんも来てたかー。
これでは勝てる訳もなく、ごんごろりんと布団から転がる俺を何の容赦もなく脱がしにかかる楓さんと姉岳さん。
「ぎゃーーーー!!楓さん何やってんのーーー!!!」
「その言葉。そっくりそのまま昔の彰くんに返すわ!!人をひん剥いてからに!!」
確かに背中の黒子が見えるくらいにセーラー服脱がしましたねー。
「なあ都時。オレは兄貴のを見てるから別に少しくらい小さくても気にしないぞ」
「何の心配!?ねえ!姉岳さんは俺の何を見ようとしてるの!?」
「見ようとはしてねえ!!万が一見えても見慣れてるってだけだ!!」
楓さんは元々小柄で細身なのでここまでの労力で顔を赤くして息切れを起こしており、姉岳さんは俺とのやり取りで男のアレでも思い出してるのか顔を赤くして息切れを起こしている。
「あ、そういえば昔姉岳さんに俺のをもう見られてたっけ?」
「おいバ!!!」
俺の記憶のサルベージに姉岳さんの制止も虚しく、楓さんが姉岳さんの左頸動脈へ手刀を寸止めしていた。
「ねえ?あなたどういうつもりかしら?胸?その胸で誘惑したの?やっぱりでかいとそうなるの?」
「待て!!待って!!!おい都時!!忘れてたことを引っ掻き回すな!!助けてくれ!!」
「で?どこまでしたのかな?」
ダメだ。目が据わっている。こうなった楓さんは人の言うことをなかなか聞いてくれない。
「ちげえって!!!ただ氷見ちゃんの家で裸の都時を見ただけだって!!!」
「ほう?まさか氷見先生の家でね~?で、その続きは?」
「ねえよ!!!それ以上なんもねえって!!信じてくれよ芹沢先輩!!オレは無実だ!!」
「じゃあ素直に答えてくれる?」
と、楓さんの姉岳さんを捕らえる手が緩んだのを見てそこで終わるのかと思ったら
「彰くんのアレってどのくらいあった?」
「オレの握りこぶし2つ分くらいはっ!」
俺ですらドン引きしていた。
そんなガッツリ見られてたとは、いや。あれですよ?あの時も今日みたく寒い日だったのでその温かくするために色々血液を回した結果なのであって決して部屋の中で全裸になるのに興奮したとかではないですよ?
「有罪」
「ほんとに待てって!!なんで都時のゴニョゴニョを知ってるだけで駄目なんだよ!?」
なお、女子中学生に不適切な発言がみられた為ゴニョゴニョで対応しております。
姉岳さん、オレっ娘だからって流石にゴニョゴニョは駄目ですよ。
「大丈夫、わたしも寛大だから人前で全裸で手をうとうじゃない」
「お前充兄や警察のこと言えねえ事やってるって分かってる!?」
楓さんの暴走を止める為にも俺は楓さんをお姫様抱っこして連れていく事にした。
案の定。平間さんと皆河さんからガン無視される事態に見舞われた。
「おう都時。大丈夫か?」
「ああ」
心が痛むなか、姉岳さんは俺の肩を叩きながら声をかけてくれるのが心の癒しだろうか。
少し前まではこの人の方が心の癒しが必要だったんだけどな。
この人のメンタルの強さには驚かされる。
それからも昨日見たY〇uTu〇eの話や外村先輩の状況などもしてる内に担任がやってきてHRとなった。
そのまま今日も今日とて授業をこなすのだが、やけに皆河さんが真面目に授業を受けているのが印象的だった。
帰りはまた楓さん、姉岳さんの2人での下校である。
「で?なんもなかった······訳はないでしょうけど。やっていけそう?」
「それは楓さんの胸を大きくするくらい難しい事です。」
「彰くん?それは難しくはないわよ?ちょーーーっと成長期が遅れてるだけだから。その時がきたらちゃんと大きくなるわよ?だ▪か▪ら♪これからも登校できるわよね?え?」
楓さんは激怒した。だが全裸で走ってもサービスになり得ない、アウト。
「ま。あれだ?平間の圧がやべえもんな。オレですら話しかけるなオーラ出しまくってたしあいつ」
平間さんの正義感からの怒りの度合いは俺たちどころか担任の小林ですら萎縮してしまうレベルだった。
そこへ楓さんもため息を1つついてから
「こちらも新屋敷さんと鷹峰くんとの連絡がとれないでいるわ」
「それはあれですよね?都時を味方するな的なやつって」
「まあね。ま、鷹峰くんは新屋敷さんの意見に同意みたいな感じだけど。新屋敷さんが回復したから良しとみるか、新屋敷さんと仲が悪くなったから悪いとみるのか微妙ではあるわ」
そうして3人無言になる。
現段階で楓さんと俺が話しづらい空気になってる上、姉岳さんと楓さんがあまり絡まないのも一理ある。
が、ここはヘタレじゃない方から仕掛けてくる。
「でも、あれですね?芹沢先輩ってオレと背ぇ変わんないですよね」
「それはアレかな姉岳さん?わたしは先輩らしく見えないってことかな?」
あかん!それも楓さんの地雷源や!
「お!おい都時!なんなんだよこの先輩!目が光ってんだけど!?」
「姉岳さん。この世には言ってはならない事と言ってはならないけど面白いから良しな事と言っても良いことがあるんだよ」
「なあ!?真ん中おかしくねえか!?何だよ言ってはいけねえけど面白いからいいって!?」
楓さんの顔は笑っていたが目は笑っていなかった。
俺の腕にしがみついた事でくっついているそのやや大きめの双丘も地雷源なので速やかな排除をお願いしたいところである。
「まあいいわ。わたしは『先輩』だからそのくらいの失言は寛大な心で流して上げるわ。ええ!『先輩』だものね!」
の、割には殺す目をしてませんでしたか。指摘しませんけれども。
いちいち『先輩』をあからさまに強調してる時点で先輩オーラが消えることも知らない楓さんは
「彰くんって教室ではどんな感じなの?」
「えと····すね。まあ、何と言いますか。クラスの中でも話しやすい男子って言うのか、気安い仲と言いますか、むしろ付き合うなら都時が良いと言いますか」
姉岳さん。自分から地雷を踏みに行きたいんですか?
「彰くん、ごめん。明日から仲の良いクラスメイトがゼロになるけどいいわよね?」
「ちょっと待って下さいよ!!ごめんなさい!!オレが悪かったですからなあ!!なんで路地裏へ連れてこうとするんですか!?ねえ!!」
まあ、姉岳さんなら殴られるくらいは慣れてるからワンチャン乗り切れるかもしれないが。
そんな日を過ごしているうちにそれでも楓さんと姉岳さんの仲は俺の話で盛り上がったり色んな意味で揉めあったりしてる内に良好になっていた。
あれ?よく仲良くなったよねこの2人。
そして日時は12月24日。この日に至るまで····まあ。何もなかった訳ではないがほぼ同じ日々の応酬で期末テストも乗り越え、この日水曜日ではあったし、椎堂もまだよくならないとの事だったが楓さんとデートの約束の為あのショッピングモール『karajan-カラジャン』へとやってきていた。
「さ、行きましょうか」
「待ちなさい。なんで彰くんが薬局エリアから出てきたのか説明が欲しいんだけど」
「············。」
「や、やだなぁ。そろそろ風邪薬が切れてきたから買い足しただけですよ」
楓さんは俺がズボンのポケットに手を突っ込んできた。
ソノテニハ、スゴクウスイ、トイウメイモンクガパッケージニソエラレタヒニングガアッタトサ。
ハッハッハ。ワタシニホンゴワカリマセーン。
「身に覚えがないと言いたげね?」
「本当ですよ。何がどうしてそんなものが俺のポケットに····そうか!誰かが俺のポケットに入れてきたんだ」
「へえ·····じゃあこれは捨ててもいいわね?」
「え!?」
俺は2000円という中学生には衝撃価格で買ったこともあり反応してしまう。
「はい確定ー。没収ー。」
楓さんはこういう事に容赦なかった。
こうなったら俺がどんなに泣きついて懇願しても意志を変えない。
その代わりではないが楓さんが買うことを許したのはプリクラだった。
500円までなら許すという理屈ならもう少し安いコン〇ームにすればよかったかなとか考えるがそういう問題じゃないのは言わずもがなである。
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