狂ったもの 都時彰編 13
俺が塩ラーメンネギ増し。椎堂が豚骨ラーメン大盛り。平間さんが味噌ラーメンと半チャンセット唐揚げ2個付きをもくもくと食べていた。
「佐江、それカロリー大丈夫?陸上部筆頭でしょ」
「さっきばりばり動いたから平気でしょ。そういう椎堂こそ豚骨はカロリー高いよ」
いや、2人とも男子中学生より多いってなんなのさ。
ここの大盛りは普通のラーメンよりきっちり2倍の量が提供される。器もその分大きくなっている。
普通のでも俺が食べて腹8分目なのに大丈夫なのか。太るぞ椎堂、平間さん。
でも、とても怖くてそんなこと言えない。
陸上部怖い。女子中学生怖い。
まあ、俺はそう食べる方じゃないから一般男性なら普通のじゃ物足りない感あるかもだけど。でも、女子中学生でその量を食べてもいいのは宇宙人と闘う女の子と主人公の幼なじみだけで十分だと思う。
今の空、陸上部の冬だけど。この表現自体遅れてる?
「君らはそこで何をしとるかね?なあ?ご両人」
そこへ黒髪短髪の女子中学生が椎堂と平間さんに声をかけた。
かわいいスポーティーな印象がくる人。褐色肌なのは日焼けしてるからだろう。
肩より下で少し毛先を散らしたかわいい人だというのが第一印象。
それとこの冬にも関わらず白のシャツを袖を肩まで捲って。太ももほぼ見えの短いデニムパンツを履いているのは健康的な感じで男子中学生としてはその太ももに触りたい衝動に駆られるが止めておいた方が良いだろう。
その人が2人を半眼で見据えているからだ。
「部長。引退されましたよね?休みの日くらい」
「椎堂、甘いよ。そうやって自分を甘やかすと後が怖いわよ。平間に勝ちたくはないの?」
元部長さんか。それも三年生ときた。
「じゃあ、ワタシはこの辺で」
「待ちなさい。来年の今頃は部長になるやつが食生活もお腹も弛んでたらみっともないでしょ。はい、今からジムへ行くわよ」
平間さんが部長さんにドナドナされようとしていた。
ドナドナドーナードーナー♪
脂肪をのーせーてー♪
「ちょっと待って!今そんなことしたら口からラーメン出るから!また後にして下さい!」
「あら?余計なカロリーを抑えることが出来るから好都合じゃない?」
この人、ガチで言ってるのか?
ヤバい人が来たと思った。
平間さんが椎堂と俺にヘルプという視線を送っている。
「岡庭(おかにわ)先輩。今の陸上部部長は土居(どい)先輩なので」
椎堂が平間さんを助ける為か、ここで連れてくのは間違っている旨を伝える。
「土居·····土居か~。あいつなぁ」
岡庭先輩の顔が曇る。
いや、そこで髪をガリガリかくのはなんか見た目とキャラが違う感じするのでできれば止めてもらいたいが。
「ご自身で決めた部長ですよね」
椎堂が確認をとると手を横に振り違うのジェスチャーをする岡庭先輩。
「あれはセンコーの意向。実力は確かにあるんだが·····やり方が汚ないんだよなぁ」
その言葉に意外な顔をするのは椎堂だけ。
平間さんは何か知ってるようで唇を少し噛んでうつむいていた。
「土居先輩が何かしたんですか?」
「前に、左雨(さっさ)がアキレス腱を切って大会に出られなくなったのは知っているだろう」
「はい。うちの優勝候補だったのに暴力団に拉致されたんですよね。かわいそうに」
「あれが土居が仕組んだって言ったら?」
「え?でも証拠は····」
「ない。2人は知らないだろうが。左雨の事を聞いた後にあいつ一瞬笑ったんだよ」
「·····まさか」
「あいつはうまいことやるんだよ。平間。お前1度土居と階段でぶつかったことあったよな」
「······あの先輩、嫌いなんですよ。絶対わざとですって」
「うまいことやるって言っただろ?あいつはセンコーにはウケがいいんだよ。勉強も運動もできるし、態度も申し分ないって事になってるから」
正直、私も土居は嫌いだと部長、いや。元部長さんは言い切った。
「えーと。岡庭先輩?」
「ん?お前は椎堂のお守りか」
「ちょっと待って下さい岡庭先輩。私のことをどう見てるんですか!?お守りってなんですか!?お守りって!!」
椎堂の怒りは椅子を蹴倒す勢いで立ち上がるくらいのものらしい。
「だって椎堂も短距離はそこそこ良いんだが頭·····いや。なんでもない」
「頭って言いましたよね!?そこまで言ったなら最後まで言わなくても一緒ですよ!!」
こら。机をバンバン叩かないの頭の弱い子。周りのお客様が見てるでしょ。
君の真後ろにいる小学生男子が真似しだしたじゃないか。これでこの子供が椎堂レベルの知能になったら責任とれるのか。
「で、なんだ。えー」
「都時彰です。岡庭先輩が練習熱心なのはいいですけど、それを他人に強要はいけないかと。」
「強要ねえ。私は西ノ鳥中学の陸上部のことを思ってだな」
「でも、それで相手の体調を気にしないのはだめです。健康あっての鍛練だと思うので」
「都時。我々陸上部ってのは将来、世界陸上での活躍を期待されてる奴もいるんだ。平間もその1人だ。それが自分の食生活の管理もろくにできないんじゃ駄目なんだよ。さぁ。だから吐きに行こう平間」
「いやーーーー!!そんなのやだ!!!ワタシまだ中学生だよ!!色々好きなもの食べたいし遊びたい!!」
平間の手を無理矢理引っ張ってトイレまで連れていこうとする岡庭先輩を椎堂と俺の2人がかりで止める。
平間さんは泣いていた。頬を流れる涙は1つ2つと流れて止まらなかった。
周りの客もざわざわと騒いでこの店を遠ざけたり退席したりしている。これではこの飲食店に迷惑がかかる。
「岡庭先輩。周りを見てください」
そこで岡庭先輩に促すと、状況は分かったのか、平間さんの手を離した。
平間さんは椎堂にしっかり抱きついていた。
椎堂も慰めるように背中をポンポン叩く。
「邪魔したな。だが結果が出なかったとしてもそれは自分自身の日頃の行いが返ってきただけだからな。よく覚えておけ」
そういうと岡庭先輩は別のコーナーに行って服屋の中へ入ってからは見えなくなった。
「平間さん。もう帰ろうか」
「うん。ありがと都時くん」
1度グスッと鼻を鳴らし。やっと落ち着いた平間さん。
「都時。このまま帰ろうか」
確かに、今の平間さんを1人にするのは少し心配だ。
「大丈夫だって。ほら、もう平気だからさ。2人は遊びなよ」
歯を見せて笑った顔をする平間さんに
「こういう時、平間さんに彼氏がいれば寄り添えるんだけどなって痛いたいた痛いって平間さん!!ごめんって!!」
顔で笑って心で怒っている平間さんが俺にヘッドロックをかましていた。
「悪かったねえ。誰かさんと違って相手がいなくて」
「でも大丈夫だよ佐江はかわいいからできるって」
椎堂のフォローに平間さんは口の端を少しつり上げてこう告げた。
「知ってる?この間の授業の合間に新野と甲斐の2人が話してたんだけど」
その内容とその後の展開を知っている俺は黙って聞く。
「えーと。都時のとこのクラスの子だよね?」
「俺のクラス通る時にグレーの髪した男と金髪の男がいるの分かる?」
うちのクラスで灰色と金はあの2人だけだ。
「あーーーー。なんとなく顔は覚えてる。あの2人ね」
「ちなみにグレーの方が新野で金の方が甲斐な」
「うん。よし、何か話す機会があるかわからないけどなんとか頭に入れた」
おい。男子生徒2人覚えるだけだぞ。お前の脳内キャパはどうなってるんだ。
「だって···自分のクラス覚えるだけでも大変だし。男子生徒とは距離置くし」
なんで距離をとるのかと思ったが、ああ。胸か
「都時に聞くけどさ。なんで男子ってすぐ胸を見るの?あれ気持ち悪いから嫌なんだけど」
とは言われましてもねえ。
「それは男子だから仕方ないとしか言いようがないのですが」
「それを学校があればその日何十人と見られるのはいい気分じゃないの」
椎堂の目が本気で嫌がっている。そのメッセージはセクハラだよと。
「ちょっとその話題ストップ。ワタシの話の続き」
平間さんが会話に割り込んでやっと脱線してることに気づく。
平間さんの方も目が本気で嫌がっている。そのメッセージは嫌味かよと。
「まあ。話の内容はレンとかぶるけど、クラスの女子で誰が胸が大きいかって話をしてたんだよ」
「佐江のとこもか。こっちもその話題してるよ。まあ?すぐ私の名前出すからげんなりしてるんだけどさ。男ってそんな話しかできないわけ?」
それは違うぞ椎堂。そんな話しかしないんじゃない。そんな話もするんだよ
「あ、こっちでもレンの名前出てるよ」
「なんでさ!?」
「そんなことよりもそいつらがさぁ」
「ねえ!?何そんなことって!?なんで佐江のクラスで私の名前が出るの!?」
正確には椎堂の胸が大きい事を話題にしてるわけだが。
「知らねえよ!都時くんがいるからその流れじゃないの?それよりそこでワタシの胸がない発言するから椅子で殴ろうとしたら恵が止めるんだよ!ふざけんなよ!なんでワタシと芹沢さんがツートップなんだよ!」
心の中で男子(審判-しんぱん-)は正しい判断をしておりますと告げておく。俺も椅子で殴られかねないし。
いやいや。自分の身が怖いんじゃないの。そう、ここのショッピングモールに迷惑をかけないようにするためだよ。
人間は周りへの配慮が大切である。
椎堂が他クラスでも胸でかい発言を軽く見られた事に対し平間さんの肩を揺さぶり、平間さんはディスられたことへの怒りをぶちまけるというカオスが出来上がっていた。
「あのー······さ?2人とも公共の場で恥ずかしくない?」
そう声をかけてきたのはキツネのようなつり目の女性。この寒いなか、黒ブーツ。黒のミニスカートに白いハイネックを着ていた。
「かわいい」
「そう?ありがとう」
つい口をついた言葉にその女性はこんな俺に笑顔で応える。
線のような目で笑うと本当にキツネみたいだ。
「都時くん。言っとくけどその人、土居 美津江(どい みつえ)先輩よ」
平間さんの言葉に記憶を少し遡る。
土居?ちょっと待て土居って·····。
「何しに来たんですか土居先輩?」
「今日は彼氏とデートなだけだよ。佐江さんもそんな怒ってると彼氏できないよ」
平間さんの顔は眉間が寄り、睨んだ目で土居先輩。現部長さんを見やる。
「人を階段から突き飛ばしてしといてよく言うよ」
「だからあの時はごめんって言ったじゃん。それにもうあの時の捻挫は治ったでしょ?」
そこへ20代前半くらいの男性がこちらへ歩み寄った。
「みっちゃん?どうした?」
「んーん?部活の後輩がいたから声かけただけ」
そう言うと、その男は土居先輩の手を取りこちらになにも言わずそのまま映画の上映場所まで行ってしまうようだ。
「けっ!あれのせいで夏の大会出れなくなっただろうが。あいつ、やっぱ気に入らねえ」
平間さんは床に唾でも吐こうかという態度だった。本当にしないでね。後でどこの中学か店側が調べたら大変な事になるから。
「ああもう!なんか買い物とかしたい気分じゃねえからこれで帰るわ。んじゃなお二人さん」
そう言い残し、スタスタ歩いて去ってしまう。
「俺達も帰ろうか」
「そう····だね。またあの先輩····部長だけど。今日の話聞いたら余計会うの嫌になるし」
そうして俺と椎堂も帰る方向で進める。 「にしても陸上の成績が良い椎堂が土居先輩に何もされてないのはなんでだろう」
「分かんない。でも、最近は佐江には勝てないし。私自身どこかで勝てないのかなって思ってしまう時があるからそれかもしれないし」
椎堂が弱気とは珍しいなと感じた。
本人の表情も悩んでいるようには読めなかったから余計そう感じられた。
「椎堂、悩んでいる割には顔に出ないんだが」
「逆にそういう時笑おうとしてるからね。陸上やってると不安な気持ちがあると記録に響くから。切り替えないとね」
なるほど。
そのメンタルを俺の彼女にも伝授してやってください。
あの人、未だに誰かが部屋の扉をノックするだけでビクッてするからな。
まぁ写真に納めてるからこれからもそれでもOKだけれども。
「あの人が部長になったのは仕方ないけどさ。佐江が嫌ってるから今後またどうなるか分かんないけど間には入ろうとは思う。佐江って喧嘩ッ早いから」
そっちでもかい。あの人、土居先輩云々関係なく大会出場禁止になるんじゃないか。
「でも、あれだよ。佐江のまっすぐなとこ、私も好きだからさ」
慌てて椎堂がフォローを容れる。
将来、平間さんの旦那になる人には宥める器のある人間じゃないと勤まらないな。
浮気する男なんて秒で離婚しそうだし。
そういう人だ。あの人は。
さてさて。これで帰ってる間に楓さんが無事帰っていれば万々歳なのだが。
あ、そうだ。楓さんに電話すればいいんだ。
········どうして、着信拒否されてるんだ?おかしいな。あ、そうかアドレス間違えたかなー?あははー。
「都時!芹沢先輩だってたまには他の男性との交流も必要だと思わないか?」
思いません。楓さんは俺のものだ。あのかわいらしさを他の男が見たらどうなるかわかったものじゃありません。
「よし、今から木場と梶姫も呼ぶからボウリングやりに行こう。そっちも星宮先輩とか本上先輩呼んでさ。そうしよう。夕食はおいおい考えるからうん。こういう日も必要だよきっと」
椎堂がなにやら病人でも見るかのような視線でなにやら言っている。
そして俺を近くの公園の公衆トイレの個室まで連れていき。
「~~~~~。ああもう!――――ほら?」
顔から火が出るんじゃないかというほどに赤くなっている椎堂がグレーのコートと黒のセーター。さらにはハイネック、下着を取って上半身裸になった。
つまりはその·······大きな双丘が見えまして。
「────椎堂、ありがとう」
「·········自分でやっといて言うのもなんだけど他に正常に戻る方法ないの?そこまで笑顔で対応されると最低という感想とドン引きという反応しかないよ」
中学生男子の暴走を止めるのは強い刺激だと相場は決まっているのです。
「とにかく。ここまでしたんだから後は分かっているよね?」
「もちろん。このまま押し倒して舐めて挿れればOKだよね」
「芹沢先輩に最低って言われてきなよ都時」
違うのかと椎堂に問うと
「焼き肉食べに行くからついてきて」
「楓さんいるの?」
「いない」
「▪▪▪▪▪俺帰る」
「分かりやすいなあ君!私の胸見といてその対応はなしだよ!この借りは大きいんだから一緒に焼き肉たべようよねえ!」
確かに思春期男子のご褒美を得たんだから、その恩を椎堂に返さなきゃな。
「そういうことなら分かった」
「まさか私の胸をタダ見できると思ってたんじゃないだろうね。」
だって俺の中では映画に付き合ったお礼に大きい胸見せたのだと思ったんだもん。
まさかこちらの利息の方が大きいだなんて気づかないよ。
てな訳で椎堂がスマホで近くで安くて上手い食べ放題の焼き肉屋を見つけてくれたのだが
「よし、皆の者善きに計らえ~」
皆河さんが上座に座布団3枚の上に乗り
「ははーー!ありがたきしあわせ~」
平間さんが地べたにひれ伏して拝み倒し
「わたし高級焼肉店って初めてなんだけど桜都手先輩は?」
「ボクも初めてだな」
本上先輩が桜都手先輩と仲良く話し合い
「わりぃなトーキ。あーしらまで来ちまってよ」
「愛実ちゃん。いい?脂身の少ないものだけだよ」
「わーってるよ。家でもそうしてるし、今更グチグチいうなよ。こっちは食べたいもの食べれなくてイライラしてんだから」
「すみません。お父さんの施設代まで工面して頂いて」
「あ。いえいえ、お礼はあの子に言って下さい。自由奔放な子ですけどお嬢様なんですよ。この子が····良い行いをするなんて········あー涙が出る」
「だーーー!気持ちはわかっけど本当に泣くなよ氷見先生!本当に気まぐれ程度だぞルォシーのは」
「よし、クルメグだけつまみ出しといてヒラサー」
「アイアイサー」
「横暴だろ!ってか平間も食い物に取り憑かれてルォシーの言いなりになるんじゃねーーーー!!」
星宮先輩プラス土岐シスターが和気藹々としてる中、土岐雪恵さんが氷見先生と涙ながらに感謝を述べつつ姉岳さんが落ち着かせつつカオスになった頃
「聞けええええええ!!!」
椎堂がぶちギレて網付きの机を叩いた。
総員黙り込んだ
「ちょっと突っ込みどころ多すぎるからひとつひとついくよ。まず佐江はなんで来た?」
「そこに焼肉があるからだよ」
「なんでこの子話が通じないの!?違う!誰が呼んだのさ!私は都時には星宮先輩と本上先輩しか誘ってないよ!残念な事にこっちで呼んだ梶姫は風邪ひいてるようだし、木場は肉は嫌いだけどレンの姉御の胸肉なら味わいますぜとかふざけた事言ってきたから表に簀巻きにしといたけど」
「いや椎堂さん。暴力沙汰は駄目だと思うんだけどー?」
土居先輩が困り顔で間に入る。
「嘘!?誰土居先輩呼んだの!?」
「あ、ぼくだけどまずかった?そこでみっちゃん先輩とまこちゃん先輩に会ったから」
皆河さんが挙手をする。今更だが交流関係広いな皆河さん。
「まずいなんてもんじゃないって!佐江と土居先輩は離れて下さい!席はたくさんありますからわざわざ近くにいかなくても大丈夫ですから!岡庭先輩も手伝ってください!って待ってなんで岡庭先輩がまこちゃん先輩!?」
だんだん椎堂の処理が追い付かなくなってきた。
「皆河。私はその言い方止めろと言ったはずだが」
「え?岡庭真琴(おかにわ まこと)だからまこちゃん先輩のどこがおかしいんですか?」
「ネーミングセンスじゃない。呼び方を止めろといってるんだ」
「え?岡庭先輩って女性ですよね」
すると岡庭先輩は発言元である俺に鋭い視線を送った
「女子中学生のはずなんだが。よく男に間違われるのは確かだな。別に名前がどうとかはないがその質問の意図には引っ掛かりを覚えるから気をつけたまえ」
「と言いつつ、本当は美津江(みつえ)って名前を羨ましいと思ってると」
「土居!お前皆河に喋っただろ!」
「だって秘密だなんて言ってないし」
土居先輩はクチブエを吹いて素知らぬ様子。
「なんなんだよ~!悪いか!?名前に不満があって!?え!?」
逆ギレするとは元部長の肩書きが崩れるのではと他人ながら思いますがいかがでしょう。
「すみません先輩。まだ話が」
「そんな話より皆の者箸を取れー」
「あんたが勝手に高級焼肉店に変更してることについて聞きたいんだよ!!!」
椎堂が皆河さんをコブラツイストしていた。
「ぎぶ!!ギブ!!折れる!!」
「近所くらいで済まそうと思ったら銀座まで足を運んで!執事が黒くて長い高級車運転してる光景を車内で見るってなんなのさ!!本当に申し訳ないんだけど!!」
「その発案者の····ぼくに申し訳なく思わないかい?この仕打ちは」
「いきなりの展開に戸惑ってるの!!」
お金は出すからいいとか言ってる辺り、文化祭の件で懲りてないようだ。
いいぞ椎堂もっとやれ。
欲を言うならもっと体を密着させて。胸と胸が形を変える様を見せてくれ。
すると、平間さんが俺をヘッドロックしてきた。
「平間さんなんで!?俺が何したの!?」
「なんでだろうねー?レン達と同じ事してるはずなのになんで都時くん嫌がってるのかなー?同じことされたいと思ったんだろうなあって気遣いなんだけど間違ってるかなー?」
これ、あれだ。持つもの持たざる者の格差によるやつだ。
「じゃあ純くんも食べよっか」
「は、はい。頂きます···」
「家でもそのくらい礼儀正しければ良いのによこいつ」
「礼儀とか姉ちゃんには言われたくねえよ」
「なにおー!やるかこら!」
「姉ちゃん待って!!家じゃねえんだからここで電気あんまはあああああ!!!」
「そこは佐江の弟?」
「あ、分かる?」
「だって目がそっくりだもん」
「似たくもなかったけどな」
「まだ言うかこの生意気が」
「できればそっちの姉ちゃんの方がいい。やさしそうだし」
平間さんの弟。純くんか?は椎堂を指差して姉候補を希望した。
「私?んー?でも確かに弟か妹がほしいなって思った事もあるからいっかな。おいで純くん」
「わーい」
「レン!ぜってえこいつレンのデカパイ狙いだから止めとけ!おめえの姉はこっちですよーだ!」
平間さんが純くんの首根っこを捕まえてズボンの上から股間を握り潰していた。
「離せーーー!!この姉ゴリラ!変態!サディスト女!」
「ちょっと佐江止めてあげなよ」
そこへわざわざ椎堂が間に入って平間さんから純くんを奪って抱きしめた
「むぐぐ!」
お陰で純くんの顔面いっぱいに椎堂の胸が沈んでいく。
椎堂本人はそこはどうでもよく、むしろ純くんの股間を触りながら
「大丈夫?痛くない?」
なんと、さすりだしたではありませんか。
「止めろ!純の情操教育に悪いことすんな馬鹿!」
平間さんが怒鳴るが椎堂は聞かず
「純くん痛がってるんだから心配なんだよ。大丈夫?純くん」
その渦中である純くんはというと
「んんーーー。むぐ~~~~」
茹でダコのようになっていた。
アソコはテントになってることでしょう。
脳内で暴走モードになってるかも。
あ、ビクビクしだした。出すかな
「純くん小学生だし問題ないでしょ」
「あるわ馬鹿!!ソッコーはなせ!!純がレンの胸で窒息しかけてるぞ!!」
本当だ。顔に胸が密着してて息できてないや。
「ぷはっ!·····ふーーー!····ふーーー!ハア····ハア···」
「ごめんね純くん。痛かった?」
「いえ!もっとやってくだギャーーー!!」
お姉さんの壁に押し付けられました。
そのお姉さんは大層弟に胸を押し付けたそうな。
「このエロガキ!これでもか!同じ女子中学生の胸だぞ!これがいいんだろ!」
いえ、平間さん。それで喜ぶのは一部の男子だけですよ。
「にしても·····皆河さん達は良かったの?今日こっちにきて?」
「まああれだ。まだ時間はかかるがそれまで申請が通るのかのやり取りに手間取ってるんだよ」
「そういえば········ペルートさんは?」
「ああ。あの人ならこの機にかえちー先輩の家に満たされに行くって」
······あの人。まさか、クンカクンカする気か?
え?枕や毛布や。なんなら下着をクンカクンカする気なんじゃないか。
楓さんに見つかったら着拒くらいでは済まないぞ。
「ま、ケーを呼ぶのは避けたがな」
そう言い笑う星宮先輩はどこまでいっても悪人面だった。
お陰で純くんもびびって椎堂の後ろに隠れていや違う!あれは椎堂のお尻を触りたい男の行動だ。
スタッフがやってきてまた注文したメニューがどんどん飯台の上に並べられる。
ん?
「ここ、シーザーサラダもあるんですね」
「いいでしょ~?しかも野菜も生産地から鮮度からこだわった高級品。さらに鶏の胸肉だから消化に良し美容に良しというわけでミニナルどうぞ召し上がれ」
「呼び方はともかく旨そうだしもらうわ」
美容は必要な要素かはともかく消化にいいならありがたく頂いた方がよさそうなのは確かだな。
「はなせ~~~~~!!」
おやおや。また純くんが姉に苛められているのかと思って見てみると違くて
「なんで?いいじゃん。せっかくまた知り合えたんだし。ね?なんかよそよそしいよ純くん、わたしと純くんの仲じゃん。一緒に野外プレイしたりさ」
すると平間さんが冷血な殺し屋の顔で純くんに抱きついている本上先輩の首筋に手刀を寸止めした。
「貴様。越えてはならない壁を越えてしまったようだな。最期に言い残した事があるなら聞くが。そうか、ないか。では」
「早い早い早い早い早い!待って!からかったのはごめんなさい!違うの!ただ一緒に虫取りしてただけだからその手をお願いします!!」
「····そうなのか純」
「うん。ただ········」
「ただ?」
純くんの一言に本上先輩の首が絞まる
余計な事をと言いたい本上先輩だがそれも叶わない
「その······いや、なんでもない」
「貴様やはり有罪じゃないか。口封じまでするとはいい度胸じゃないか」
その前に平間さんって意外に弟思いなんだなって思ったのだがそこのところどうだろう。
「ぐぐ!ぐががが!ががー!!」
これは本上先輩が壊れたのではありません。首が絞まって上手く弁解できないだけです。
「そういえば浅間くんは?」
そうあざとくかわいくキョロキョロしながら聞く土居先輩に
「トイレ」
そう簡潔に答える桜都手先輩は山のように動かず着飾らず冷静だった。
その低い声は焼肉の焼ける音の中では大きくしないと聞こえない程だった。
「んー?でもあそこの女子高生達に捕まってるの浅間じゃないか?」
そう岡庭先輩が視線を向けている方向を見やると確かに爽やかイケメン男子1名がスカート超短め女子や超ミニのズボンを履いた女子やらの太もももろ見せ軍団、金灰色黒色長短入り乱れた髪の毛含むに囲まれていた。
本人は笑顔でやり取りしているが、戻りたいなという様子をちらつかせているがそんなこと、そこな女子には関係なかろうもん。
「ちょっと行ってくる」
露骨に不機嫌な顔で席を立つ桜都手先輩。
「分かりやすいな」
岡庭先輩が桜都手先輩にそんな評価を下す。
「ま、男ができればあんなもんでしょ?」
土居先輩がホルモンをトングから大皿に取り分ける傍らそう呟く。
「言うねぇ。この男とっかえひっかえが」
「違うって。ただお兄さんのお友達と遊ぶ機会があるだけだって」
そう言うのは氷見先生がいるからか。
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