狂ったもの 都時彰編 11
そんな話をしながら向かった先は楓さんの家である。
「········今さら聞くけどなんでわたしの家に皆来るの?わたし聞いてないんだけど」
「まあまあ取り敢えず中へ」
「待って!」
「まさか楓さん。部屋の中····」
「汚くない!そうだったらお母さん大激怒だから!そこはいいけど心の準備が」
そこへ無情にもお母さんである椿さんがたまたま家に居たので俺達が来るのに涙を流しながら招き入れてくれた。
どうも楓さんが友達を連れてくることが珍しいことのようだ。
俺は将来親戚になる訳だけれども
先にリビングに通された俺達が各々ソファに座って待っていると楓さんと椿さんのいざこざが聞こえて来た
「いいから!お茶くらいわたしが出すから!」
「でもせっかくの機会だし楓が学校でどうしてるか聞きたいし」
「さっさと行って!!」
もう既に扉の前まで来てるのが扉上部の透明なガラス部から見える
「椿さん。楓さんは学校でもかわいいから問題ないですよ」
「彰くんは黙ってて!!」
「そうよ彰君。そんな既に周知済みの情報じゃなくて新しい情報が欲しいの」
「お母さんも黙ってて!!」
楓さんが大忙しだった。
こんなとき、星宮先輩や本上先輩が居ないことが悔やまれる。
「芹沢先輩ってクラスどこだっけ?」
「2年6組」
平間さんからの突然の質問に答える鷹峰先輩。
「んーと。確か·····」
そう言われ連絡したのが
「桜都手 海里(おうとで かいり)先輩って楓さんのクラスだよね?」
楓さんに確認をとる平間さん。
「え?あー。······あの先輩か」
椎堂がその名前にすぐ反応するあたり陸上部員なのだろう。
「ちょっと!あの人でしょ!だんまりの!」
楓さんもすぐ反応する。だんまりとはまた言い方にちょっと問題な気もするが無口な人なのだろうか。
「平間さん。今ラ〇ンで聞いてます?」
「うん。そうそう、あの先輩ラ〇ンじゃないと上手く話せないからさ」
どんだけ口下手なのか気になるがそれなら俺が外村先輩や星宮先輩、本上先輩に聞いても良かったのではと思うのだが
「ま、いいっていいって。こんな時でもなきゃワタシも桜都手先輩と話す機会ないし」
どこまで距離があるんだろう。
「えーと。桜都手先輩情報その1」
「やめてーーー!!」
楓さんの制止も聞かず話し出す平間さんともう中に入り込んだ椿さんは前のめり体勢。
楓さんはOTZ体勢
椿さんがジュース、コーヒー。人数分のコップを机に置いたのを見て、一番近くの俺が皆に好みを聞きながらコップに汲んで渡していく。
椎堂、平間さんはアク〇リ。楓さんはリンゴジュース。鷹峰先輩と俺はファ〇タグレープ。
「中学2年の最初は怖かった」
「楓!何やったの!!」
「何もやってないよ!!」
「と、言ってますが本上先輩、星宮先輩この真意はいかに」
俺は急遽作成した本上先輩、星宮先輩、俺の3人グループ通話を開いた
この方達もすぐ入ってくれるあたりノリがいい。
ま、1度新屋敷先輩のいじめの事で話があるとラ〇ンした後なのもあるが
『かえは嘘ついてねーな。本当になにもやってねーし。ただ、誰とも話さなかったからそれじゃね?話しかけても睨んでたし。正直あーしも最初びびったし』
星宮先輩に言われるのは心外な気もするけども
『まあ、カマキリみたいでかわいかったけどね』
カマキリに例えられるのは普通の女子中学生は嬉しくないと思いますよ本上先輩
「ごめんなさい。話の腰を折るようだけど、カマキリどうこう言ってる子も楓の友達?」
「そうです。本上先輩、楓さんのお母さんの椿さんです」
『こんにちは。本上田鼈です』
「どうも。楓の母の椿です。」
椿さんが困惑している。原因は本上先輩の楓さんをカマキリ呼ばわり発言だろう。
『えーと······どこから話せばいいかねえ』
そこへ星宮先輩が本上先輩の身の上を椿さんに説明する。
「な、なるほど··········虫好き」
内容を飲み込むのに時間を要するようだ。
『アキくん。これビデオ通話にしてもいいよね?わたしのコレクションを見せてもいい流れだよね?』
「ではこれで失礼します」
『こらアキく』
ポコンという電子音と共に切れたことを確認してすると俺のラ〇ンからとてつもない量の昆虫の写真が送られてきた
こっちはブレイクタイムなんだ。そんなものを送るんじゃありません。
これ以上見ると机の上のチョコレート菓子がGとかぶって見えるので即効閉じ、ここは桜都手先輩とやらに教室での楓さん情報を待つとしよう。
ぶっちゃけ俺も聞きたいし
「桜都手先輩情報その2。都時彰君と仲良くしてからは対応が柔らかくなった。むしろかわいい」
「止めなさい。先輩命令よ」
いや、楓さん。これは俺も少し恥ずかしいんですけど
「それは私も氷見先生から伺ってるわ。できれば授業態度とか友達とどんな話をするか聞きたいわ」
「先生ーーー!!」
さもありなん楓さん。
「えーと·······ちょっと待ってください」
まずこちらから質問しているのだろう。そこから5分ほど時間が空く。
その間に頂いたジュースやお菓子にありつく。
「でも、芹沢先輩とは都時くん通して知ってるけど良い先輩やってますよ」
平間さんの言葉に先輩らしいかは疑問を呈したいがここは母親の前なので自重する俺。
「そう?なら良いけど」
「そうですね。今なら私もこの人と彰を一緒にしてもいいかなって」
椎堂が爆弾を放ったということを椿さんの雰囲気が急変したことでやっと理解する。
「椎堂さん。それは····どういう···」
「え?そのままの意味ですよ。都時と芹沢先輩はお互い好きで付き合っていて。あれ、もう知ってたとばかり」
椎堂が目をぱちくりさせ手を口に当てたアクションをとりながらそう言うが、これは確信犯じゃないかな?
ここでこのお母さんが簡単に賛成するとは思えないことを計算に入れた作戦だろう。
「確かに何か距離が近いからそうかなとは思ってたけど。いざそうなると思うと·····うーん。ごめんなさい、覚悟が足りなかったわね私」
俺の対面に座ろうとする椿さんに陸上で鍛えた運動神経をここで駆使して場所を空ける椎堂と平間さん
「彰くん。あなたは楓と一生を共にすると誓いますか?」
「お母さん!もういいから出てって!!」
楓さんの顔の赤み具合が首筋まで出ているのを鎖骨ラインの真っ白な肌と対比してよく分かるのを写真に納めたい衝動に狩られながら楓さんが一生懸命部屋から椿さんを追いたてるのを眺めている。
そして、楓さんが勝利を収め、扉の前まできた所で
「芹沢さんは授業態度は良いし、よく外村さんとかとショッピングモールにできた服屋の話とかしてますよ」
そう話す鷹峰先輩の話を
「そう」
あたたかい笑顔で部屋から去る椿さん。
そして、それから皆思った。
「そうじゃん!鷹峰君が居たじゃん!!一番口を塞がなきゃいけないのが!!」
楓さんが口封じ宣言をしだしたのを皮切りに
「なーんだ。わざわざワタシが桜都手先輩に話した事と同じ感じじゃん。ま、今更だけど」
平間さんはあっけらかんとしたもので
「ここに楓さんのクラスメイトが···じゃあなんで話さなかったの?」
椎堂は事態の整理に入り
「その·····女の子が話してる間に男が入るのは躊躇うというか」
女子3人はよく分からないというジェスチャーをするが俺はよくわかる。
かなり脱線したが新屋敷先輩と鷹峰先輩がいじめに遭っている事を話した。
「新屋敷さん大丈夫じゃないでしょそれ!!絶対我慢してるよ!!」
話を聞いて一番怒っているのは楓さんだったのは少し意外だった。
こういう話は平間さんがぶちギレる未来が見えるから。
「実はあの話はまだ言ってない事があって」
そう切り出した鷹峰先輩に噛みつくように楓さんが
「何?あんたも加勢したんじゃないでしょうね?自分が助かりたいばかりに」
もうそれはそれは掴みかかる勢いの怒りだった。
「ち!違う!拘束されてバケツの水をかけられて動けなかったし!実はリブライテッド裸にされて写真を撮られて。大声で叫んでたけど口をテープで塞がれてて」
「あんた止めなかったのかよ!!彼氏だろ!!」
平間さんがぶちギレた。
平間さん、拘束されていたって聞きませんでしたか。
しかも彼氏····なのか?今の現状?疑問なのだが彼氏の一言に一瞬鷹峰先輩喜んでるからよしとするか。
「それでもやるんだよ男ならよぉ!!」
平間さん、気持ちは分からなくはないですが根性論は止めてください。鷹峰先輩、後輩女子に詰め寄られてどうしたらいいか分からなくて困惑してるじゃないですか。
「で、もっと酷いのはその·····われが行った昼には色々漏らした後ですごい臭いからって新品のトイレ用の洗剤を亜久里(あぐり)が持って来てそれの中身を全部リブライテッドのお尻と尿道と····アソコに全部無理矢理入れて。暴れるのを男数人で押さえつけて····リブライテッド泣き叫んで」
楓さんと平間さん、椎堂がリビングの机を思いっきり叩いた。
「「亜久里って誰?」」
椎堂、平間さんの2人揃って言うことがそれである。
もう目が殺人鬼のそれになっていることに男2人は震え上がっている。
「あの男。落ちたわね」
一方、同じ学年だから知ってる楓さんは雪女のような冷えきった目をしていた。
「それ。元竜西 橙子(げんりゅうさい とうこ)絡みでしょ?」
「そうだね。十中八九」
楓さんの確認に鷹峰先輩が肯定する。
「何そのクズの親玉?」
もう平間さんの中では亜久里先輩はクズ判定しているようだ。
「そんなとこ。ああもう、あそことは絡みたくないけど、そんな話聞いたらそうも言ってられないわ。はっきり言うわ。元竜西 橙子っていう女は自分の思い通りにならなければどんな手でも使う女よ。それの奴隷がその亜久里光紀(あぐり みつき)って訳」
自分は手を汚さずにってヤツか。
「芹沢先輩。ちょっとその亜久里ってのの住所分かるか。」
平間さん、絶対殴り込みする気でしょ。椎堂もそれについてく気満々だし。
「そんなことあったら新屋敷先輩、明日から学校来れないじゃん。その後は何かあったの?」
そう不機嫌丸出しで鷹峰先輩に聞く椎堂はチンピラを想起させた。
「その後は。またバケツの水をかけられて·····止めてと言っても聞いてくれなくて。リブライテッドも俺も何も云わなくなってから2人とも縄とテープをほどかれて。『この事をばらしたらリブライテッドのお漏らし画像をネットに流す』と脅されて」
「酷い····」
「とにかく、今は少しでも仲間が欲しいから都時のとこからも誰か出せない?正義感のある人」
椎堂がそう言って思い浮かぶのは姉岳さんだがタイミングが悪かった。
「ごめん。姉岳さんと皆河さん。後、ペルートさん、外村先輩は助けに入れないと思う。」
「なんで!?猫はともかく恵なら余裕で助けるでしょ!?」
「そうよ彰くん。文乃はまだ入院中だから無理だけどさ」
いや、うん。そこは間違いなくそうなんだけど。
待て皆河さん?あなたの存在意義って平間さんにどう見られてるんだろうね。
こうなったら言わなきゃいけないだろうと覚悟する俺
「実は外村先輩と姉岳さんは今、皆河さんとペルートさんの協力で氷見先生の養子にしようとしてるんだよ」
「「「はああああああああ!!!」」」
女性陣驚愕の三重唱がリビングいっぱいに響き渡った。
「ちょ!ちょっと待って!そんな話わたし文乃から聞かされてないんだけど」
楓さんは外村先輩と病院にいたから話す時間はあっただろう。
「今話しても混乱するだけだから話さなかったんだと思う」
「その今話されて混乱してるんですけども!!」
「何?恵が養子って何のため···ってああ。氷見ちゃんの老後の為か」
平間さん。自分で勝手に完結させないで。
氷見先生泣くよそれ。
「じゃなくて」
俺は、姉岳さんの家の事情。外村先輩の家庭の内情を話す。
「そうか。姉岳さん辛いだろうな。でも、そう上手くいく?」
少なくとも椎堂に任せるよりはという言葉を飲み込み、安心の言葉をかける
「大丈夫、ペルートさん自身、皆河さんの家に養子で入ってるからその辺の知識はあるはずだし」
「じゃあちょっと私のクラスの人間で協力者いないか聞いてみる」
椎堂のクラスか。どんな奴がいるのか見当もつかないが。協力してくれるならありがたい。
なにせ、こちらのクラスは男子は問題外だし。女子生徒は水戸日和グループは平間さんと相性悪いから誘いづらいし。
椎堂がスマホを操作している。誰かにラ〇ンで連絡しているのだろう。
「にしても、あれから椿さん。こっちに来ないけど」
「ああ。こういう休みの日は韓国アイドルのライブDVDを大音量で見てるから聞こえないの」
俺は斜め上の椿さん情報にフリーズする。
「······ごめん。それ椿さん『が』韓国アイドル『の』ファンをやってるってことでいいの?」
「てにをはの強調してるけど事実よ。いい歳して防音壁の部屋でフィーバーしてるのよ」
フィーバーですか。さいですか。
まあ、オンとオフの切り替えって大切ですもんね。
でも、あの仕事熱心かつ良き母親のイメージのある椿さんが韓国アイドルファンというのはショックが大きいのも事実。
だからこっちの声は聞こえないと結論づける楓さん。
「ちょっと2人増える」
そう声がかかる椎堂の表情はどこか疲れた感じに見えた。
「椎堂。気のせいなら良いけどなんか疲れた顔をしてるように見えるんだけど」
「ハハハ········半分当たり」
そう言いながらスマホを鞄に仕舞い、ストレス抑制効果を謳ったパッケージのチョコレートの菓子にありつく。
1個2個····6個目に手を伸ばす。
そんなに一気に食べるのはアスリートとしてどうなのかと思うがという視線を平間さんに示すが、知ってるからか苦笑気味な顔で応える
「これからここに、その2人が来るとかなーーーり疲れるからさ」
椎堂の目から光が失せていた。
椎堂にこんな顔をさせる奴って一体どんな奴なんだ?
その後も新屋敷先輩の家に行くのはしばらく止めておく方針であること。まずは亜久里光紀(あぐり みつき)から当たって新屋敷先輩を虐めた理由を聞く。それでも駄目なら元竜西橙子を当たる。理由次第ではただじゃおかない発言する平間さん、椎堂を抑えることを鷹峰先輩とアイコンタクトで指し示す等してる間に1人目がやってきた。
いや、正確には1人目と1名か。
「ただい」「たのもーーー!!」
と声がした途端「お兄ちゃん!?」と行って駆け出したからまず芹沢徹生徒会長さんが来たのは確定でもう1人。威勢のいい声で入ってきた人物はドタドタと走りながらリビングまでやってきた。
「レンの姉御!木場 渡真利(きば とまり)、ただいま参りやした」
椎堂が軽く溜め息をついている。
「どうも」
「あ!あんたね~~~~~~!」
次の言葉を椎堂がかける前に楓さんが玄関でお兄さんを迎えに行ったすぐ後木場さんに詰めよった。
「何わたしのお兄ちゃんを踏んづけてるのよ!!」
「てやんでい!こちとらレンの姉御が一刻を争う一大事だってんで着の身着のまま駆けつけたんじゃねえか!それをなんだいおめぇさんはえ?聞きゃあ酷いなんて言葉じゃ済まねえ大事(おおごと)にあっしより1個上の先輩が巻き込まれたって言うじゃねーか!こうしちゃいられねえ今すぐそいつを叩きのめしてやりましょうよレンの姉御!」
なんとも喧嘩っ早い人のようで。
性格も一線を画すようだが、この人の容姿がまたすごい。
青く長い髪の毛をツインテールにした女子中学生。見た目かわいい系のその顔から江戸っ子気質だとは想像つかないだろう。
「ちょっとー!せっかくこの珉珉(みんみん)が来たのに邪魔する男がいるって何?」
コテコテの甘いシュガーボイスという表現が良いだろうか。これまた強烈な個性の予感がする。
椎堂に至っては『呼ばなかった方が良かったかな』と言い始める始末。
あなたのクラスメイトでしょ。友達でしょ。
「ぐえっ!」
「おにーーーちゃーーーーん!!」
次いでやってきた人物もまた生徒会長を踏みつけたのだろう。生徒会長の苦しい声と楓さんの悲鳴から想定できる。
その人物はスタスタと何事もなかったかのようにリビングにやってきて。
「蓮様。みんみんがやってきたよー。みんみんは蓮様の為ならなんだってやるからなんだって言ってねー。」
「ちょ!待って木場!胸揉むのやめ!」
珉珉とやらが椎堂に詰め寄る中、木場さんが椎堂の胸を揉みしだいている。
「うへへへへ!やっぱレンの姉御の巨乳は最高ですぜ!」
「学校でも揉んだでしょ!」
「いいじゃねえですかい?あっしとレンの姉御の仲じゃねえの」
「ちょっと渡真利。蓮様が迷惑してるんだからそのくらいにして珉珉にも揉ませてよ」
「梶姫(かじひめ)は止めてーーー!」
すると梶姫と呼ばれたシュガーボイス女は木場さんの腕を取ると床に組み伏せた。
「いててててて!タンマ!タンマ!」
組み伏された木場さんは空いた方の手でシュガーボイスの腕を叩く
そこへ椎堂に視線を送ると
「放してやって」
そう言われてやっと手を放す
直ぐ様シュガーボイス女から距離を取る木場さん。
しかし。シュガーボイス女の容姿もまたすごい。
明るい茶髪を肩までにしたショートカットなのは他にも居るが。そこに星型の小さなシールみたいなのがついててキラキラ光るようにしてあるように見える。
「椎堂。この人もクラスメイト?」
「蓮様?何この男は」
俺と相対した瞬間睨まれた
「珉珉。都時は私の幼なじみだ」
「どうりで蓮様への優しさ溢れる対応で」
が、すぐに笑顔に変わった。
なんだろう。この子のキャラも分かりやすいというかなんというか。
「みんみんは梶姫 珉珉(かじひめ みんみん)って言うの。これからアイドルになる女の子の名前だから覚えておきなさいな」
まあ、見た目だけなら木場さんとはまた違った甘いショートケーキを連想させるような可愛らしさがあるからアイドルって言われても納得してしまうが。
だがこの子。性格に問題があるような気がする。
「椎堂。学校生活大丈夫か?」
「なんとか」
その返事は大丈夫なのか気になるがそれより今は楓さんがこの2人に怒り心頭なのがもっと気がかりだ。
「椎堂さん。友達は選んだ方がいいわよ」
「レンの姉御。なんですかい?この板女は」
「板?何、あなたは先輩に向かって何言った?そもそも板って何の事?ねえ?板って何?わかんなーい。そんな事言われてもわたしわかんないなー?」
「んー?確かにかわいいけど蓮様は言うに及ばず、みんみんの胸元にも及ばないね」
「ねえ?足元じゃないの?アイドル目指してて頭空っぽなの?なんで胸元なのかなあー?ねえ?後輩。ちょい面貸せや」
言葉使いからして可愛くないと梶姫さんに言われ喧嘩沙汰になる前に俺は楓さんを取り押さえる。
「楓、話は聞いたわ。」
そこへ椿さんが入ってくる。
「お母さん!?なんでライブ見てたんじゃ」
「ちょっと仕事先の同僚から貰ったものを楓に渡したくて来たのよ。それで聞いたわ。それ私に任せなさい」
「わたし、新屋敷さん虐めた奴ら許せないんだけど。それに先生に言ったってまたエスカレートするだけだって」
椿さんは溜め息をついた
「あのね楓。私弁護士やってること忘れてない?」
「「あ········」」
俺もつい声が出た。
そこへ椿さんが俺を見る。
なんで!?どうして!?楓さんも同罪じゃん!?俺だけ告訴はおかしいでしょ弁護士さん!?
「今回のケースだと被写体が18歳未満の撮影だから児童ポルノ禁止法違反に引っ掛かるし。脅迫罪もつくわね。インターネットに写真をのせたら、リベンジポルノ防止法違反にもなるし」
言われる事に対し、不満げにしているのは楓さんだった。
いや、他にも平間さんや椎堂も良い顔はしてないが楓さんは露骨だった。
その事に気づいている椿さんが楓さんの両肩に両手をそっと置く。
「楓。友達が酷いめにあって、仕返ししたい気持ちは分かるけど、あなたは中学生よ。ましてや女の子なら、まずは大人に頼りなさい。分かってる。お母さんは本当に分かってるから。こういういじめを学校側がなかったことにする事も。いじめる側を止めるのが難しい事も。色んな事例を知ってるから······だから。·····あなたがやり返されて取り返しのつかないことになったらいけないから·····」
椿さんは泣いていた。
そんな顔をされたら楓さんも強くは出られなかった。
「········分かった。······それとお母さん」
そこで疑問を顔に浮かべる椿さん
「今度の土曜日にわたし。姉岳充さんと食事することになったから」
俺は焦った。
「楓さん!!なんで!?どうしてですか!?」
「~~~~~~!!·······充さんって。あの楓が病院へ搬送された時にいた人よね?」
「うん。実はあの人、たまにわたしのお見舞いに来てたんだけど、文乃をわたしと同じ病室にしてくれたんだって。お兄さんがあそこの病院の医者やってたから」
あの野郎。人に恩を売って見返りを求めようとしたのか。
確かに、なんで外村先輩が楓さんと同じ大部屋にいたか謎だったけどそういうことか。
そのかいあってか楓さんも心に余裕ができた部分はあるから、強くは言えないがそれで誘うのは納得いかない。
あいつの事だ。絶対下心あるに決まっている。
「楓さん、断ってもいいんですよ」
「そうだぞ楓」
そこへ女子に2回も背中を踏まれた男がやってきて加勢した。
「お兄ちゃん。背中大丈夫?病院に行く?慰謝料請求?それとも······報復?」
いや、楓さん。最後の選択肢だけはやめて下さい。
「確かに、彰くんのクラスメイトのお兄さんってだけで。わたしからしたら知らない人だし。でも、文乃と同じ病室にしてくれたお礼と言われたら断りにくいし······」
楓さんって押しに弱いんだよなぁ。
将来楓さんと同棲したら来客対応のためにメイドを雇おうかな?
最悪、昼だけペルートさん契約でもいいから。
俺の楓さんに怪しい勧誘は駄目ですよ。
と、いかんいかん。それより今は充さんの話だ。
「じゃあ、食事だけで帰るようにしてくださいね。他に寄るような真似した時の為にスタンガン用意をお願いしますね椿さん」
「彰くん。目が本気なんだけど!ちょっといくらわたしでもドン引きするわよ······」
楓さんはあの男から怪しい匂いを感じないんですか。
「大丈夫。食事だけでいいって言ってくれてるから」
あの男が口約束を守るとは考えにくいんだけどな。
その後もなんとか尾行できる手だてを考えるがなんとも出てこなかった。
「あ、そうそう」
椿さんが何か思い出したようで。黒色のジャージ下の ポケットからはがきの半分ほどの大きさの紙が何枚か机に出してきた。
見れば地下鉄で3駅先に行ったとこにある娯楽複合施設のまとめ買いチケットだった。
「すげー!!オンビックスのチケットじゃん。これ1枚で1日遊べるよ!ひーふーみー···················10枚もある!」
平間さんがテンション高めに話の輪に入ってきた。
「平間さんって遊んだりするんだ」
「ちょっと!ワタシ、女子中学生だよ!そりゃ遊ぶよ!」
「だって陸上にストイックなイメージがあったからさ。椎堂に負けないようにするにはそれくらいしなきゃいけないんじゃないかと」
「あのねぇ··········そりゃあ蓮に負けたら嫌なのは事実だけど、そこまではしないよ」
「あれ!?私、佐江にそこまでの感情持たれてるの!?」
「だってさぁ·······」
平間さんは椎堂の大きい胸部を睨み付ける。
自然現象で俺と鷹峰先輩も椎堂の胸の膨らみを視察する。
「見るな男子共。今すぐその眼球をくり貫かれたいか」
自然現象で楓さんが男の欲望を封殺する。
即座に土下座体勢を敷かれた俺と鷹峰先輩。
「とりあえず。この事は新屋敷さんに連絡して。1ヶ月は口を聞かないように言っておくから」
「待ってくれ芹沢!さすがに1ヶ月は堪えるから止めて!」
両者本気のようだった。
「楓さん。それは即ち俺には何も罰則は無いと言うことで?」
「ん~?違うね~?このままわたしの部屋へ来て朝まで正座だよ?」
男の生殺しですか!?寝ている楓さん相手に何もせず耐えろと!?
無理だ。男子中学生だよ俺?
その前に足が痛くなるだろという考えは浮かばなかった。
それだけ俺にとって寝ている楓さんはご褒美なのだ。
「まあ、なんて言うんでしょうねぇ。ここは一旦引き上げでまたどこかでオンビックスへしゃれこもうという事で良いんですかいレンの姉御?」
「ちょっとアンタは黙っててくれる?とてもそんな気分じゃないから」
越後屋よろしく悪い顔をして言う木場さんと眉間を押さえてうずくまり、窘める椎堂
「蓮様。どうかお慈悲を~!みんみんにもそのお胸を揉ませておくんなまし~!」
椎堂相手には強く出れないのか梶姫さんは椎堂に頭を足で踏まれていた。
あ、でもこれはこれでご褒美なのではとか言い出したけどこの子の頭の中大丈夫なのだろうか?既にアウトな感じしかしないけど
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