狂ったもの 都時彰編 3

皆河さんを先頭に楓さん、俺の順番で家に入る

するとそこに、太めのサイドフレームのみシルバーのメガネをかけた理知的なイメージを受ける金色短髪で蒼眼の女性がいた

まあ、そのですね。楓さんより少しあるくらいの····アレで女性だとわかったくらいでジャミーズに所属してると言われても納得できるくらいの中性的な顔立ちをしているからこれは見ても不可抗力である

「皆河さんのお母さんですが?紫衣さんには大変世話になって」

「トトキン、ペルートはメイドだよ。それにぼくらと同い年だし、母親なら超常現象ものだよ」

「「メえええイいいいドおおおお!!」」

俺と楓さんの金髪の女性の見る目が変わる

何せこの人、ジーパンに黒地の長袖Tシャツでいるからメイドとは思わなかったのだ

「紫衣お嬢様、そこは養女で良いじゃ有りませんか」

「だめ。今はこの家で家事とぼくらの世話を仕事にしてるからメイドだよ。だから用意したメイド服を着ること。いいね?」

「それは着ませんって前から言ってるじゃないですか。確かに仕事上そうなりますが、いきなり自己紹介でメイドはおかしいでしょう?」

「あの?ペルートさん?」

俺がそう話しかけると

「あん?」

すごい勢いで睨み付けられた

怖くて楓さんにしがみつく

「彰くん、どさくさに紛れてお尻触らないで」

腕を捻られた。痛い痛い

でも、怖いのは事実だ

なんだ?この嫌悪感の塊でも見てるかのように目を細めて睨み付けてくるこの視線は

そうでなくてもこの人、少し切れ長の目をしてるからやめて欲しい

クールなインテリオーラの中に怖さが入り交じっている。そんな印象を受ける

「あのう····ペルートさん?」

楓さんがおっかなびっくり声をかけると

顔をキョトンとさせるペルートさん

「わたし、何か粗相した?」

「いや」

楓さんと俺でそんな会話をしているとペルートさんが無表情のまま楓さんの前にスタスタと移動した

その際に元来ビビりのヘタレである楓さんはビクッと体を震わせた

そしてあっという間に楓さんの両手を自分の両手で包みこむように握った

「ひっ!」

いきなり手を繋がれた事に楓さんが短く悲鳴をあげる

反射で振りほどこうとするが相手の方が力が強い為、振りほどけないでいる

「あなたの名前は何ですか?」

そうペルートさんが聞くと

「芹沢楓」

とっさにそれだけ言ってしまう楓さん

するとペルートさんはふるふる震えたかと思ったら目の瞳孔が開ききった狂ったものの体をなしていた

なんか息もどことなく荒いような気がする

「私の名前はペルフォニア アガート。アメリカ人だ。さぁ、話の続きは私の部屋で」

そのまま自然な流れかのように楓さんをお姫様だっこして家の中へ入ろうとするペルートさん

「ちょ!?待って!!はなしてよ!!彰くん助けて!!」

明らかな異常に、さっさと玄関に入り膝下まである敷居に足をつけているペルートさんに追い付くため俺は走り、止めに入ろうと玄関の敷居を上がったところで


ペルートさんが振り返り様に足を蹴りあげ俺に金的を食らわせた


そのスピードと威力にとてつもない衝撃を受けた俺はその場で屈みこもうとしたところをさらに前蹴りを食らって敷居を越え下に落下してしまった

「わ!!!」

後ろから皆河さんが大きく悲鳴をあげた

この際、後ろにいた皆河さんを巻き込んだ為、皆河さんを下敷きにする形になってしまった

メイドがお嬢様を攻撃していいのか

皆河さんの体の一部大きいところのお陰で背中にクッションのような感触を受けたが、そこに意識がいくよりもペルートさんからの蹴りのダメージの方が大きかった

「いたたた。ごめん皆河さん大丈夫?」

金的のダメージがひどいため、ゆっくり皆河さんから降りながら振り返って皆河さんの様子を確認する

「いててて。一応なんとか。頭とか背中とかうってるから痛いけど生きてる」

「ごめんね!!頭から血とか出ていない!?」

頭をうったという言葉にすかさず皆河さんの頭を隅々まで触って確認する···血は出ていないようだ

「大袈裟だな~」

小さくクスリと笑んだ皆河さん

「あ、ここ。たんこぶできてる。皆河さん台所どこ?」

そこは皆河さんの後頭部の少し上のところだった

「いいよいいよ。自分でやるから」

「でもつ!」

なぜか皆河さんが俺の金玉を握ってきた

今そこはおそらく蹴られて内出血起こしてるから握ると滅茶苦茶痛いんだが

そして素早く俺のズボンとパンツをはがし金玉が赤黒い色になってるのを確認する

「トトキンのほうが重傷じゃん。待ってて。冷やすもの取ってくるから」

だからってお嬢様が男子中学生のタマタマを握ったり見たりしちゃいけません

そう言いながら皆河さんはひらけた空間になっている玄関から右へ向かい、左右に扉があるその先の開きかけの大扉を開けて中に入っていく

俺も楓さんを探したいため、さっきアメリカ人が開けたのだろうと思われる右側の大扉から入ろうとすると

「やめてよ!!」

楓さんの大声が聞こえた為、急いで中へ入る

大扉の先には右手側に4枚仕立ての洋式の引き戸、左には2メートルくらい先に扉がある

すると右手の4枚仕立ての引き戸から皆河さんが急いで開けて出てきた

その顔には焦りと言うより怒りが滲み出ているように見える

「はなしてよ!!やだ!!」

そうしている間にもドタバタと暴れる音と楓さんの悲鳴が聞こえるため皆河さんに案内されるようにして俺も後に続いた

そのまままっすぐ足早に進んだ左側の扉を過ぎた先を左に向くとそこには階段があった

「ペルートの部屋は2階の階段を登った180度左の扉」

180度って指定はなんだろうと思うと確かに、90度左にも引き戸がある

皆河さんが開けようとするが、ガチャガチャとした音がするだけだった

鍵がかかっているようだ

「彰くん助けて!!」

「楓さん!!」

楓さんの悲痛の叫び声に俺は扉の前で声をかける

「ペルート!ここを開けて!」

普段大声を出すような人じゃない皆河さんもこの時ばかりは耳をつんざくような大声でメイドに開けるように命令する

「大丈夫ですよお嬢様!もう少しで仲良くなりますから!」

声からして興奮状態なのが伺えるアメリカ人メイドがそんな意味不明な事を言い出す

「助けてよ彰くん!!この人怖い!!ペッドに手も足も手錠で拘束されて!!」

なにやってんだよあいつ!!

皆河さんは先ほどの90度左にあった引き戸を開けた

中は8帖の洋室になっており北と東には窓がある

西に引き戸になっているそこは気違いメイドと部屋が繋がっているのだろう2枚の引き戸にも鍵がかかっていた

皆河さんは南側の襖を開け、押し入れなのだろう、そこからなにかを物色し始め1メートル程の長さのトロフィーを1枚の引き戸の真ん中にあるガラスに投げ入れた

ガシャンと割れる音がした後、皆河さんは躊躇せず縦120センチ横幅10センチくらいだろうそのガラスのはまっていた空間に手を伸ばした

横は10センチとはいえまだ割れた破片が残っているそれは狭ければ5センチ程だろうそのすき間からツマミで開くタイプの鍵らしくカチッという音がした

音がして引っこ抜いた皆河さんの腕は切り傷が数本できていた

「皆河さん!!」

「行って!!」

一瞬皆河さんを心配しそうになったが事態は楓さんのほうが深刻だった為即座に切り替え、俺は引き戸を開け中に入った

そこでは西側の壁にくっ付けられたベッドに両手両足手錠でくくりつけられた楓さんがブラジャーを身につけず、セーラー服は首元までたくしあげられて涙を流しながら抵抗している姿とメイドがさらに楓さんのスカートとパンツも脱がし終えてそこに顔を近づけている現場だった

「何してんだよ!!!!」

俺は怒りのまま叫び、ふざけたアメリカ人を蹴り飛ばした

蹴られたそいつは西側の壁に激突したがすぐに復帰しこちらに回し蹴りしてきた

「ぐっ!」

「私、空手習ってるから」

俺は腰にもろに喰らいあっけなく倒れてしまう

さっき投げたトロフィーを持ってペルートさんに殴りかかっている皆河さんは姿勢を低くしてよけたペルートさんの顎に膝蹴りを

当てて倒してしまった

おそらく脳震盪なのだろう。横になったまま動かなくなっている

「ぼく少林寺拳法習ってたから」

そう言って小さく笑いVサインする皆河さん

俺は床に落ちていた鍵を拾い、楓さんの手錠を外した

「うわあああん!!!」

すぐさま俺に抱きついてもう既に泣いていた涙の跡からまた洪水のように泣き始めた楓さん

俺は何も言わず抱きしめる

「もう帰る!!やだこんなとこ!!」

俺は楓さんに服を着るように促してから皆河さんに一言かけて一階の先ほど皆河さんが出てきた4枚仕立ての引き戸部屋へ楓さんを連れていく事にした

あの竹林を抜けるには皆河さんの案内がないと帰れないくらいに入り組んでる為、ここはあのアホに手錠をかけて落ち着かせてから家を離れる方が後々のことを考えると良いので楓さんは離れて休むしかないのだ

「ぐすっ!ずびっ!」

この人は泣く場面が多いけど今回は心の傷が深い事はわかる

「ちょっとここで休んでてください」

俺は広いLDKの4枚仕立ての扉から見て左寄りに位置する大きなテーブルに設けられた椅子の上に座らせた

そして2階へ上がろうと体を反対にむけ歩きながらあのアホメイドに反省させる方法を考えようとすると楓さんに服の裾を掴まれた

まだ彼女は泣き続けている

「····何があったのか聞いてもいいですか?」

「·······最初は····部屋の冷蔵庫からお茶を出してきて飲むように勧められたけど、怖くて···飲めそうになかったからそのまま座ってあの人の話を聞いてただけなんだけど。訳分からない事ばかりで····好きだとか、顔が好みだとか·····守ってあげたい存在だとか」

いきなり部屋まで連れ込んでそれを言い出されても混乱する楓さんの気持ちは最もだ

あの女が言う好きだとか顔が好みだ、守ってあげたい存在云々は分からないでもないが。でも同性同士でそれを言われても余計混乱するだけだろう

そしたら楓さんの体の震えが止まらなくなり

「楓さん!?」

「怖かった!!私も空手やってたけどあの人の方が体格が上だから歯向かえなかった!!」

楓さんは女性の平均以下の身長と小柄な体型。空手も一時のものだ

対してアレは180超えの身長に少し肉付きのある体型をしているため現役で空手もやっているのかもしれない

体術で逆らえる訳がない

「わたしが帰ろうとすると。私には君しかいない付き合ってくれって。·····鍵かけられて」

顔も真っ青になってきたので俺は楓さんを抱きしめる

「いきなりベッドに押し倒されて····キスされて·····舌まで····入れてきて·····それから····」

「もういいから、楓さん。今は思いっきり泣いてください」

声まで震えあがっていた楓さんにこれ以上話をさせるのは酷だったのでそのまま俺の制服が濡れるのも構わず泣かせて抱きしめた

しばらくすると精神的ダメージと身体的疲労からか寝始めたので右半分の面積の大部分を占めている右中央にある大きなソファに楓さんを寝かせた

大きなソファに眠る楓さんを置いてもまだ人が2人は座れそうなスペースのあるその光景は、まるでおとぎ話に出てくる白雪姫かのように思えてくる

だけどここはキスしたいのをぐっと堪えて2階の先ほどの戦場跡地へ舞い戻ると両手足を後ろ側に手錠で拘束し口にボールギャグをした金髪のアホと怒髪天をつく勢いの顔をした僕っ娘がいた

「ねえ。いい加減諦めたら?かえちー先輩はペルートを嫌ってるの。暴れてたって意味ないよ」

結構長いこと一階にいた後でも、完全に疲れているお嬢様が言い聞かせてもこいつは回復したら暴れていたと

もういい。わかった。今の俺は完全にキレている

「皆河さん、腕は大丈夫です?」

「いい。かえちー先輩に比べたらこのくらい」

「救急車呼びますよ」

「ここの竹林、車入らないから歩かなきゃいけない」

面倒な家だなぁ

「主治医とか別室にいたりとか」

「しないから。大丈夫。浅いから」

「じゃあせめて救急箱持ってきて下さい。跡が残ったら大変です。皆河さんも女の子なんですから」

「···分かったよ」

そう言うとむすっとしながらも一階へ降りていく皆河さん

さて、こちらの処遇だな

俺は部屋を物色するとなにやらネット通販で買ったのだろう大人のおもちゃが机の引き出しからわんさか出てきた

年齢認証、宅配業者。仕事しろやと言いたくなるがクリックしたのも置き配OKにしたのもこいつだからそこにあたっても仕方ないのかもしれない

「んー!!んーー!!!」

自分の部屋を荒らされて怒ってるのだろうアレが声を出すが何が言いたいのか分からないから無視をする

そしてその中でも比較的太くて大きい棒状のバイブを2本取り出し、ろくでなしのジーンズと白色のパンツを足元までずり下ろす

「んーーーー!!!!」

俺の尻をあいつの顔に置いてる為攻撃しようとしても届かない

ただ暴れるとその分パンツまで降ろすのに時間がかかった

バタンバタンとベッドや床を蹴る音がやかましいのでロープで足を開いたままベッドにくくりつけた

「んんんーーー!!!んんんんーーー!!!」

おそらくやめろ変態と言いたいのだろうが、その言葉そっくりそのまま返してやろう

「一応聞くが、楓さんに土下座して金輪際近づかないと約束するなら止めてやるがどうする?約束するなら首を縦に振れ」

そう聞くが一切首を縦に振る気配が無いため、バイブのスイッチを入れた

「んーーーーんーーーーー!!!んーーーーんーーーー!!!」

ガタガタ暴れだすがこちらは楓さんも恐怖に震えていたのは知ってるんだ。それ以上の恐怖を与えないと気が済まない

そのバイブをヤツの股の穴に無理矢理入れようとグリグリとバイブの先端を押し付けたところで皆河さんが腕全体を包帯でぐるぐる巻きになった手で止められた

「もうペルートは首を縦に振ってる」

見るとあいつが涙で顔を汚したまま、ものすごい勢いで何度も首を縦に振っている

俺は持ってたバイブのスイッチを切り、くずアメリカ人の耳元で

「騒いだらケツの穴にも入れるからな」

そう言われてびくっと大きく震わせてからまたブンブンと縦に首を振るのを確認するとボールギャグを外した

「分かったから·····もうそれだけは止めて···もうあの時みたいのはいやぁ···」

先っぽだけ入れてあった股のバイブを抜き取り、少しずつ話を聞くことにする

「あのときってのは?」


「私···小学生の時。父親にレイプされたんです」

想像を絶する内容に俺も皆河さんもびびった

「母親は生まれつき心臓が弱くて病弱だったから····結婚できないと思ってたら。あの····父親が結婚を申し出て····金持ちだと嘘をついて親の反対を押しきってまで結婚したら実は、酒ばっか飲む能無し仕事無し一文無しのクズで····結婚したとたん。同意もなく襲って私が生まれて。そっからはDVも酷くなって···私が小学生にあがる頃には母親も力尽きて亡くなって。父親のDVと逃げ場のないセックスの対象は私になって。私は小学2年生で処女喪失した」

壮絶な人生に俺も皆河さんも言葉を失くす


「そんな生活が続いたのは大学を卒業した頃の事」


ちょっと待て

「ペルートさんよう。確か皆河さんと同い年だろ?」

一瞬なんの事かと顔に書いてある学歴詐称者は、はたと気づいて


「私飛び級で、12歳で大学卒業してますから」

「「はあああああああああああああああああ!!!」」

俺と皆河さんは一階の楓さんも無視して大声でこいつに吠えた

「何!?じゃあその頭で今回の件に至ったと!?」

「元々は母親を助ける為に早く医者になりたくて飛び級できるまでに勉強してたんだ。それをあの父親は心臓に負荷がかかるまで乱暴するから····。そっからはあいつから逃げたくて飛び級して勉強してたな。その間も夜になっても街中を彷徨ってたら旅行中の日本人女性のグループに保護されて。そこから日本人女性が好きになって。ほら、背中のTシャツにも『大和撫子』って書かれてるだろ?」

背中を反らせているので覗き見ると、確かに黒地に白の毛筆で大和撫子と書かれていた

知らんがな

「だから私、日本語話せるようになって。大学卒業してからの進路を日本の研究施設にして。行ってみたら向こうの研究者と反りが合わなくて、どこへ行ってもつまはじきにされた私は、そこのお嬢様の父親に出会ってね。養女と家政婦として雇ってくれて」

その当時の事を思い出しているのだろうしばし回想している時間があった

「言っとくがお嬢様には一切手を出しちゃいいませんよ。純日本人女性じゃないと興奮しないので。お嬢様、中国人特有の目付きしてますから」

女性の魅力は胸だけじゃないとは聞くが顔で選ぶとはいっそ清々しいな

「色々聞くぞ。その父親は今どうしてる?」

「あいつは私が日本に行った途端にむこうでレイプ事件起こして捕まってます。あんな自分の思い通りじゃなきゃ気が済まないわがままなヤツは一生入ってればいいんです」

「で、その父親のせいで男嫌いになったと」

「そうです。男の···アレをを何百回も見せつけられ口に含んだり入れられたりしてから男が嫌悪にしか感じなくなりましたし」


「でも、今のお前もその父親と同じことやってるぞ」


ペルフォニア アガートは激怒した

「何がですか!!私はただ女同士の恋愛を説こうとしただけです!!気持ち悪いアレを向けてません!!」

「自分の都合だけで動いてるって言ってんだよ!!父親が父親なら娘も娘だな!!似てくるもんだな!!」

「人が拘束されてるからって好き放題言って!!後で承知しませよ!!今までだって良さそうな女性もいたけど芹沢のような女性は私の理想だった!逃したくなかった!だから!!」

「だからってお前は昔、自分が父親にされた事と同じ恐怖を与えてるんだぞ!!それが分からないのか!!」

「あいつはこっちが痛くても関係なくヤッてたんです!!私は気持ち良くなるように段階を得て」

「だったら楓さんが怖がってる時点で止めろよ!!」

「あそこで逃がしたらあの子は私から距離をとるでしょ!!何としても私の女にしたかったんです!!そのためなら多少手荒なことをしないと」

こいつはまだ分からねえのか

そうしたら皆河さんがいつの間に退室してたのか戻ってきた


体長2メートルはあろうかという蛇を抱えて

不機嫌丸出しの顔で


「····お嬢様、それ。お嬢様が買ってる中でも一番大きいサイズの蛇ですよね?」

ペルートが若干焦った顔になっている

「そうだね~。ジャングルカーペットパイソンのアキラくん。男の子です」

アキラね。人の名前をつけるのはいいけど同名はちょっと恥ずかしいな

「ちなみに女の子もいます。名前はカエデです」

「お嬢様。メスはレンじゃありませんでしたか?」

「今日決めた。今度からそれで覚えるように」

「出たよ、お嬢様の気まぐれ改名。はいよ」

あ、これ。確信犯だ

「で。この蛇を今からペルートのおまんこに入れます」

メイドの顔が一気に青ざめた

「止めてよ!!なんで蛇に犯されなきゃいけないの!!そんな太いの入らないから!!!ホントにやめて!!!」

目が楓さんの時とはまた違う。恐怖に彩られ発狂した目と表情で体全体を動かしてガタガタと暴れだす

その蛇の太さは人間の手首より少し太いくらいだった

黒色に所々黄色の斑点が見られる野性味のある感じの蛇だった

頭も少しずんぐりとした感じで、皆河さんが持っていてもまだ体を投げ出している部分が大きい

「ちなみに皆河さん、その蛇長さどのくらいあるの?」

「2.5メートル。いい加減ぼくも怒ってるんだ。このくらいしないと」

「ほんとにやめてください!!勘弁してください!!蛇に処女捧げるとか!!」

「処女はお父さんに捧げたでしょ。なら大丈夫。ペルートはヤればできるメイド」

「父親はカウントしたくない!!いやだって!!お前もやめて!!足開かせないで!!やだやだやだ!!やめて!!そこは蛇を入れるとこじゃないから!!お願いします!!助けてください!!何でも言うこと聞きますから!!」

ペルートの足を俺が押さえつけ、皆河さんが一歩ずつペルートに近づいていく

ついに泣き出した

「今だけ調子の良いこと言って後でまたやるでしょ?さっきトトキンが言った事覚えてる?反省の色が見られないからこのくらいやらないと」

もう歯もガタガタ鳴るくらいに震えている

汗も涙も鼻水もごちゃ混ぜになっていて最初見たクールで美人な印象はどこにもなく醜い様を呈している

「いやだって!!誰か助けて!!!やだ!!いーーやーーーだーーーー!!!!いれたくない!!!やーーーだーーーー!!!」

蛇の頭がペルートの股間にくっつくくらいにまで近づけた

「うわあああああああああああああああ!!!だれかたすけて!!いやあああああああああいやあああああああああああああ!!!」

もう赤ん坊のように泣き出すペルートメイド


「もう止めてあげてください!!!」


ガタン!と部屋全体に響くくらいの音で扉を開けて部屋に入ってきたのは楓さんだった

「もう十分です。わたしは許しますから、それ以上やらないであげてください。あまりにもかわいそうです」

「せりざわ···」

まさか助けてくれるとは思わなかったのだろう。マニアックプレイ体験予定者が救いの女神でも見たかのようにきょとんとしながら一言その女神の名をもらす

ただしこの女神、駄女神感もあるので要注意。先輩女神は駄女神が多いのかもしれない

楓さんの顔は呼吸に苦しみながら、涙に濡れていて。それでも助けなきゃという強い意志が目に浮かんでいた

多分葛藤してたんだろう。あまりに俺たちの声がうるさくて起きて、一人じゃ怖くて2階まで来たけど、この部屋に入る勇気はなくて。寧ろ立ち去りたくて

でも、この状況を扉越しにも分かってたから助けたかったのだろう

「かえちー先輩?ペルートがしたこと分かってます?かえちー先輩に心の傷作ったんですよ?それも自分の自己都合で」

「分かってます。正直わたしも許せません。」

でしょうね

「でも、その為とはいえそこまでの罰を与えたら。今度はわたしがわたしを許せません」

「······」

皆河さんが楓さんを無言のまま驚きの表情で見ている

「楓さん。人が良すぎですよ」

俺も半分呆れた顔で楓さんを見やる

「彰くん。もし、自分が蛇を体の中に入れられるなんて拷問にあったら嫌でしょ」

「そりゃあ自分に振りかかってくるなら逃げたいですよ」

「彰くん的に言えばお尻の穴にその蛇を突っ込まれるようなものだね」

「なんてことを!?止めてくださいよ!!!冗談じゃない!!」

「でしょ?女の子にとってのアソコはそれ以上にデリケートだし異物は怖いの。トラウマになっちゃうよ。だからだめ。ほら、紫衣さんも戻してきなさい」

「えぐっ!!えぐっ!!」

さっきからペルートの泣き声が止まらなかった


「別にぼくはかえちー先輩に好かれる必要はないからこのまま自分のメイドを躾る義務に徹するまでですけども。トトキンの金玉の恨みも果たさなきゃいけないし。男のアソコはこのくらいの代償が必要なはずです。これでトトキンがセックスできなくなったらどうしてくれるんです?ねえペルート?」


「お願いじます!!止めてぐだざい!!ぼんどにばんぜいじでまずがら!!」

皆河さんだけは続行する姿勢にまたペルートが泣き叫ぶ

そして本当に蛇の頭をペルートのアソコの中に入れた

「やめでぬいでぬいでぬいで!!やだせりざわとどぎ!!だずげで!!いやだ!!やめで!やだやだやだああああああああ!!」

俺も楓さんも皆河さんを取り押さえたいところなのだが、あの持ってる蛇が解き放たれたら大丈夫なのか。毒はないのか。飼い主だけで俺たちが触ったら暴れださないか咬まないかとの不安と多分楓さんは蛇に触れない為に動けないのだと思う

「紫衣さん!!もう止めて!!そんな事してもわたしは嬉しくないから!!」

「ぼくの気が済まない。やるならとことんやるのがぼくの考え方なの。ペルート?マンコに蛇を入れられる気分はどう?」

「いだいいだいいだいいだい!!!なかで口うごかざないでいだい!!かまないでいやーーーー!!!おじょうざまおやめぐたざい!!わたしがわるがっだですがらもうやめでくだざいいい壊れぢゃう!!マンコごわれぢゃういやああああああああ!!しぎゅうはだめ!!咬まないでやだああああああああ!!!」

蛇はまだ全長の10分の1ほどしか入ってない

「そっか。もっと入るか」

「もうむりもうむり!!もうむりです!!これ以上ははいりませんがら!!抜いてくだざい!!!おねがいじます!!」

「ちょっとアキラを刺激したら進んでくれそう」

「いやああいだいいだいじぎゅうがんだ!!やめで!!おねがい!!ごれいじょおはほんどにやめで!!おねがいだからああああああああ!!!」

「子宮に到達したか。ならもう1体持ってくる。シンジならはいるでしょ」

「あれ毒蛇ですよ!!いやですっていた!!!あんなのいたい!!入れたらまんこ壊れちゃいますかいた!!壊れぢゃうからやめでください!!お嬢様!!」

「まあ入らなかったらお尻の穴だね」

「やめでっいだああああああああい!!!」

蛇を無理矢理入れられた痛みと咬まれた痛みに絶叫という言葉が当てはまるくらいに声をだしてのたうち回るように暴れて泣き叫ぶペルートさんはかわいそうで見ていられなかった

「彰くん」

「分かった」

楓さんでなくともこんな悲惨な状態はメイドに同情したくなる

俺は怖いながらもペルートに入ってる蛇を抜こうとするが牙が子宮に引っ掛かっているのか引っ張っても取れない

「いだいいだいいだいいだいいだいいだい!!!きばがああああ!!!」

「ペルートさん今牙が食い込んでる状態なんですか!?」

ペルートさんが頷いた

どうしよう。こういう時下手に引き抜こうとしたら絶対ペルートさんの体を傷つけてしまうだろう

こういう時、時間が経てば離してくれるのか?

わからない

今、楓さんが皆河さんの頬を思いっきりひっぱたいて連れていったから多分さっきの一階LDKにいるのだろう


するとそこへ思いもよらぬ人物がやってきた

綾城圭一だった

「綾城!!なんでここに!!」

「猫の北隣が俺の家なんだよ。ったく。さっきから騒がしいと思ったらまたあのばかは」

そう言うとその手に持っていた大きめの風呂桶に入った水を蛇の先、ペルートの股の中に全部かけた

蛇を持ってる俺の手にもかかって、それがぬるま湯だと分かった

「引っ張れ」

何がなんだかわからないが引っ張ってみるとすんなり抜けた

「なんで!?あんなに牙が中で引っ掛かって抜けなかったのに」

「昔。兄貴と猫の家に行った時に間違えて腕を蛇に咬まれて離れない時に猫からぬるま湯に浸けとくと蛇は水の中じゃ息できないから離すんだと教わってよ」

「へえ?ってわ!!」

今度はその巨大な蛇が素早く逃げるものだから捕まえなくてはならなかった

触感も若干ヌメヌメというかゴム質な感じがして慣れてなかったせいか手からすり抜けてしまった

「ほらよ。このままゲージに入れるぞ」

あっさりと綾城が捕まえてしまった

「····手慣れてるんだな」

「ふん。昔はよく猫の家に遊びに行ってたからな。んな時によく掴みかた教わったもんだ。あいつ、ここで蛇を逃がしたりしたら発狂もんだぜ」

「まさか」

「いや、それがまじでだよ。昔あいつの部屋に行った時に兄貴のダチも来た事があんだけど、そんときにそのダチの1人が蛇が嫌いでよ、猫がふざけてそいつの腕に蛇を載せたらそいつ、ナイフでズタズタにしちまったんだよ」

え?

蛇が嫌いな人間もいる

それは分かる。俺も好きか嫌いかで言えば好きじゃない方だし

でも、皆河さんは好きなものにはとことんな人だからそんな事をすれば

「そしたらあいつ、そのナイフでズタズタにしたヤツ、兄貴と同じ小5でさ。おれと猫だけ小2なのにぶちギレてそいつに体当たりしてさ。そいつもそいつでびびって倒れてナイフを取り落としてやんの。で、猫は迷わずナイフを取ってそいつの上に乗って首筋を何度も切り裂いてさ」

この時、イカれてるのはペルートさんよりも皆河さんの方かもしれないと思った

「その内の1つが頸動脈に入って即死したもんでみんなパニックになってるのに、あいつだけまだナイフ握りしめてまだ切り裂いてんの。それも全身を」

ちょっと皆河さん。それおかしいよ

何やってるの

「お前の顔、分かりやすいな。あいつおかしいだろ?だからもちろん警察沙汰になったんだけど警察来るまでの間に聞いたんだよ。『なんでナイフで切り裂いてたんだ?』ってそしたらあいつ」


「『アカネも全身切り裂かれたから同じようにバラバラになるまで全身切り裂きたかったから』って」


蛇だろ?

蛇の仇のために人を殺したと?

なんで人間の友達が殺されたかのように

「そ、それで皆河さんは」

「本来なら少年院なんだが、そこであいつの両親2人共猫を甘やかしまくるからよ。財閥の娘だからって無理矢理サツの処罰無しにしやがった」

「それ被害者の親は」

「もちろん反対だった。でも、庶民の親にそこまでの力はなかった。それにだ。あいつも無傷じゃねえ」

「どういうこと?」


「お嬢様学校を退学になった」


「待って。皆河さんからはお嬢様とのやり取りが面倒だから普通の学校に移すよう自分から親に言ったって」

「ばーか。自分から人殺したから退学になったなんて言うかよ。伝説にもなんねえよ。んなの」

もう言葉にならなかった

皆河さんのイメージが変わり過ぎたからだ

少し前まであまり表情を変えない。マイペースな人のイメージのはずなのに

「ま、その件もその向こうの親が殺された子供の写真と猫がやった事を手紙に書いて学校に提出しに行った結果なんだがな。学校側もそんな生徒を歴史あるお嬢様学校にとどまらせるわけねえし」

そう言って移動しながらすっかり慣れた手つきで空いてるゲージに先ほどの蛇を入れてしっかり脱走しないように蓋をセットする

「猫の両親も退学と引き換えに財閥にダメージが及ばないようにすることを条件にしてるみてーだからこの話、誰も知らねえぜ」

「じゃあなんで綾城は知ってるんだ?」

「猫が教えてくれたんだよ」

「····普通は黙るだろ?」

「だよな?でも今はどうか知らねえが小学2年のあいつはそんなことお構い無しだった。ま、そっからはオレと同じ学校通ってるからな。小学校2年の冬からの幼なじみだ。家も当時から変わってないしな」

「じゃあ今でもその被害者の親は」

「いや、犯罪者と一緒の町にいたくねえって県外へ引っ越しやがった」

「で、後。なんで皆河さんの家の隣に綾城の家が?」

「ああ、それ。おれのじいさんと猫のじいさんは従兄弟でよ。昔から猫のとこは金持ちだったわけだけど。おれのとこは博打にはまって家も財産も無しで、見かねた猫のじいさんが土地を分けて家を建ててくれるもんだから今の場所つうわけだ」

「それ以来ずっと?」

「そういうこったな」

話すことは話したとばかりに綾城はさっさと一階へ降りていく

俺も階段を降りていく。痛みに耐えきれず泣いているペルートさんの手錠を外して一言かけてから背負って一階へ


するとそこは戦場だった


「だからやりすぎだって!!」

「やりすぎって何を思ってそう言ってるのかがわかんないんだけど?ペルートは生半可なやり方じゃ聞かないよ」

楓さんと皆河さんがそれぞれ怒りの炎をぶつけて机を挟んで相対してた

正直、これは距離を置きたいが今はそういう訳にはいかない

「あのー?ペルートさんを病院へ」

「あ!ありがとう。そうよね、絶対そうするべきだし」

ここで楓さんは礼を言うのに皆河さんは言わないというのは絶対おかしい

「もしもし。女の子がふざけて蛇を股間の中に入れたので。場所がですね。綾城寺(あやしろでら)の北側の竹林のはい、そこです。お願いします。····綾城の寺を北へ行った所に救急車呼んだから、案内する」

皆河さんは電話で救急車を呼んで案内する

俺がペルートさんをもう一度背負い直すとペルートさんがうめき声をあげた

「ごめん!ペルートさん痛かった!?」

「ちょっと彰くんそのまま」

「え?」

何やら楓さんがハンカチを取り出し俺の背後でごそごそしていた

「ありがとう」

ペルートさんが小さな声でお礼を言う

「傷が服の素材と擦れて痛いからハンカチ当てないと」

「あ、ああ」

そういう事か。でも、それを男の俺がやるのも気が引ける

「まあ、男の子に女の子のズボン脱がせてパンツの中にハンカチ入れるなんて高等テクニックかな」

ごもっともです

そして、さっき歩いて皆河さんの家まで来たのとは反対方面の道へ行く際に綾城の家、というか寺に出た

色々皆河さんに聞きたいがそれより病院が先だ

救急車へたどり着いたのはそれから15分後の事だった



病院内

「子供はできないってさ。もう中までズタズタだからって。まあ。子供作る気ないしいいけどさ」

そうペルートさんが待合室で医者から言われた事をさらっと言ってるが、手術するまでギャーギャー騒いでたのはどこの誰だよ

男(の医者)なんかに(アレを)見られたくないとか言い出すから強制的に眠らせたのだけども

何よりこういう時だからペルートさんの親が来るのはかなわないから皆河さんの親がくる····事もなかった

その理由が、ここの病院の院長が皆河財閥に大変世話になっているとかで御両親はご多忙でしょうから来なくてもよろしいですとか

御両親には大変お世話になってますのでお代は結構ですとか

今回の症状の原因は不明なままで大丈夫ですと聞いた時はぶちギレそうになった

はあ?ふざけんなよ

なんですか?皆河さん、ここぞとばかりに財閥の娘発動させてるんですか

財閥の娘禁止令出すぞ

てな訳で帰り道なのですが

夜も暗い時間なので、楓さんの母、椿さんに車で送ってもらってます

「もう。何がどうなれば蛇を陰部に入れようとするのかしら」

そう言いながら目くじらを立てて怒り心頭なご様子の椿さん

ちなみに席順は助手席楓さん、後部座席を運転している椿さんの右ハンドル後ろから皆河さん、俺、ペルートさんとなっている

この席順は椿さんが仕事を無理矢理切り上げて来たところ、待合室で楓さんと皆河さんが喧嘩しあってたのでたまらずこの2人を離すべくこうしたのである

「だから、お母さん、何度も言ってるようにわたしの言い分が正しいでしょ?やりすぎだってあれは」

「それで取っ組み合いの喧嘩から蹴り合いに発展しなけなればね」

「だってこの後輩なかなか言うこと聞いてくれないし」

「そもそも言ってる意味がわからないんだけど」

皆河さんが淡々と言ってのける

「この····」

皆河さんと楓さんの睨み合いが発生する

正直同じ空間にいるだけで胃がキリキリするから止めてほしい感はある

これ、一見すると楓さんだけが激昂してて皆河さんは涼しい顔をしてるようだけど、その実は皆河さんも表情的には薄く不機嫌を醸し出してるけど内心イライラしてるのがオーラで分かるからこれは下手に刺激したらダメだと分かるのにこの人は···

「楓、後で家で説教がいい?」

「でもさ!」

「皆河さん。楓の母です。弁護士やってます」

「あ、どうも。電話の時以来ですね。まさか美人な人だとは」

「ありがとう。で、聞かせてもらうけど。あなた今回のことで何か弁解があるなら聞くけど」

「裁判にするんですか?」

「いいえ、確かに私は弁護士だけど。起訴する気はないでしょ」

「そうですね。被害者はぼくのメイドですし」

「それはつまり身内なら何をしてもいいと思ってると捉えていいのかしら?」

「曲がりなりにもこのメイドの性格は把握してますので。と言いますより、お母さんとしては自分の娘さんがベッドに手錠で拘束されて裸にされている事には何も思わないと」

「ちょっと待ちなさい。え?楓、それは本当なの?」

楓さんが思い出したかのようにぶるぶる震えながら頷いた

「ペルートさんに···キスされて。胸を触られて····舐められて」

「で、え?ペルートさんってあなた?」

そう言って後部座席の左側をチラ見する椿さん

「一言言わせてください」

ペルートさんが堂々と椿さんに向き直る

「何かしら」

ただならぬ雰囲気に佇まいを正す椿さん


「私に娘さんをください」


「······楓。この人はあの····百合とかいう」

「違いますお義母様」

「誰がお義母様ですか。誰が」

「私は女性が好きなんじゃないんです」

「じゃあ人の娘に変態行為をする理由は何かしら」

「日本人女性が好きなんです。その思いが溢れる程に芹沢は魅力的なんです!いや、我が君と呼んだほうがいいか」

「呼ばなくていいわよ!芹沢で結構です!」

「ちょっと私、頭痛くなってきた」

「お母さん、もうすぐ竹林に着くからそこで休憩しよう。誰も運転代われないから」

「あーーーーーー!!!」

皆河さんが突然大声をあげた

「何よ!?」

「ペルート。キッカにご飯あげた!?」

「ああ。そういえばあの子は神経質だからまだあげてないですね」

「おばさん急いで!!1人餓死しそうな子がいるから!!」

「一応聞くけどそれ。蛇よね?」

「蛇差別は良くないよ!!あの子はなかなかご飯食べてくれない子だからぼくたちも気をつけてるんだ!冷凍ネズミを解凍させてから食べさせるから食べたい時に食べるから置いとくなんてできないし」

「うpっ!」

楓さんが吐きそうになっている

ただでさえ、ペルートさんの件を忘れていた所に思い出したものだからこの追撃はやばい

「楓大丈夫!?吐いても大丈夫だから気にせず吐いて!!」

「かえちー先輩、この車メルセデスベンツのAクラスだから500万はするよ。さぁ気にせずどうぞ」

吐けるかー!!と視線だけで皆河さんに訴えかける楓さん

皆河さん、それ意地悪で言ってるよね絶対

「ペルートさん。病院でもらった薬の袋ちょうだい」

「はい、我が君。これを」

もう分かっていたのだろう。もうすでに袋を空にして楓さんに渡していた

「おえーーー!!!······はあ!····はあ!」

しばらく楓さんは袋を口に当てたまま動けないでいた


そして、何も言えないまま少ししたら竹林についたのでそこで楓さんの吐瀉物を廃棄して竹林から家まで皆河さんとペルートさんを背負った俺が向かった

「行く前に1ついいかしら皆河さん」

「手短にどうぞ」

「じゃあ一言。楓の性被害に何も思わない訳じゃないわ。でも、人の家に行く以上危機感は持たなくてはいけないし。それこそ女の子1人で男の子の家に遊びに行くってなったら全力で止めるわね」

それはつまり俺は楓さんを家に誘えないと

「もしそこに男の人がいたら、楓はレイプ被害者。そうなったら目の前真っ暗よ。まあ親はどこまでも親って事ね。それと、悲しむのは本人だけじゃないって事、覚えときなさい」

それは即ち、皆河さんが今回したことの意味合いも含んでいると

ペルートさんの親も亡くなっていようと牢獄だろうと今回のことは悲しむだろう

それに娘がこんな人間に育ってしまったことを両親は良くは思わないだろう

推測だけど皆河さんは甘やかされて育ったんだろうなって思う

マイペースな性格といえば聞こえはいいがここまでくると我が儘だろう

個性って我が儘の事なんだろうかと考えさせられてしまう

そして、また綾城寺に入ってきた

入った先に服装からして住職なのだろうヨボヨボのじいさんが皆河さんを見るなり箒を上に持って叫んだ

「コラ!狐憑き!!ここはお前さんが入って良い場所じゃねえんだ!!とっとと帰れ!!」

「うるさいなー。今帰ってるとこだよ」

「ふん!お前さんが通るだけでうちの寺の客入りも減るわい」

「元々そんなに来てないでしょ」

「なんじゃと?」

「なんでもありませんよ~っと」

そして何事もなかったかのように皆河邸まで行き、そそくさとLDKで冷蔵庫からネズミを取り出し水の入った鍋に火をかけ、解凍させる

俺は2階へ上がりペルートさんをベッドへ寝かせた

「悪い」

そう言ってるペルートさんは痛みでまだ辛そうな顔をしていた

「痛み止め、飲むか?」

「そうする」

ずっとペルートさんが手に持っていた薬の入った包みを俺に渡してくるのでベッドのすぐ近くの台へそれを置く

「待ってな。水持ってくるから」

「ああ」

そうしてまた下のLDKでキッチン横の食器棚にコップがあるのを見ると

「ペルートさん用のコップはどれ?」

「その青いやつ」

「これか」

棚全体の高さが俺の身長の1.5倍はあるから2.5メートルくらいか。上から大きめの開き戸、小さな引き戸、中くらいの開き戸といった3つ扉がついている同じタイプの食器棚が3つ並んでいるなかで一番右側の、上から2番目、目線より少し下の小さな引き戸が外側から内側へ開けるタイプのが左右に2つついている。その両方とも2段構造になっている右側を開けると上側に俺の拳より少し大きめの高さの澄んだ青色をしたコップがあった

「綾城の家が何でお寺をやってるか聞いて良いか?」

「ああそれ。家が隣通しの経緯から言うと」

「それは綾城から聞いた」

「···トトキンってケーイチと仲悪くなかった?」

「そうなんだけど。どうも皆河さんの事になると綾城、饒舌になってるようで」

「ふむふむ。そうかそうか、ケーイチはそんな」

何やら皆河さんがそう言ってる声が嬉しそうだったので顔をうかがうと口の端を上げてにんまりして嬉しそうな猫そのものの顔をしていた

「あの····皆河さん」

「何?」

「ひょっとして···皆河さん、綾城の事好きなの?」

すると、解凍したネズミを入れる為だろうタッパを鍋の中へ落としてしまった

「な。なにをいっているのかなぁ?よくわからないんだけどなあっち!」

慌てて鍋に入れたタッパを取ろうとして素手で鍋に手を突っ込んで火傷をする皆河さん

お願いだから中のネズミをこちらに投げるような真似はしないでほしい

火傷した手を水につけたら10秒もしないうちにまた作業に戻った

「ちょっと皆河さんはそのまま手冷やしてて」

「いい。女性扱いは良いから私がやる。ここは譲れないから」

皆河さんは俺の言うことを聞かずそのまま作業に移る

俺は澄んだ青い色のコップを手に取り、シンクの蛇口の上のつまみを90度手前から下へ捻ると浄水機能になっているそれを使って浄水を組むと

「ケーイチのおじいさんがギャンブルにはまってた話は?」

「聞いた」

「なら、そのおじいさんをぼくのおじいさんが改心させる為に仏門に入れて戻った時の為に寺を建てたって訳。まあ、ぼくのおじいさんは仏教に熱心だったのもあるけど。ちなみに宗派は浄土宗大谷派」

それは俺も入れとの催促ですか。入りませんよ

「皆河さん、顔が少し赤いですけど」

「火傷のせいだよ」

「火傷は手だけだったよね」

「熱伝導なの」

「すごいね熱伝導。耳まで真っ赤」

「トトキン、ぼくをいじめて楽しい?」

いや驚いた。皆河さんの事だから無表情のまま態度だけおかしくなるくらいだと予想していたのに、顔全体がピンクがかった赤になるまでとは思わなかったからこれは新鮮だ

ピロリン♪

「盗撮は犯罪だよ」

「これを楓さんに」

「やめて」

皆河さんがむくっと膨れっ面しながら

俺に蹴りを入れたいがネズミの事があるからそれも叶わずにいる

対して俺は片手で水を持ちながらスマホを操作して皆河さんの赤くなった顔を連写する


「ごめんなさい!!ぼくが悪かったから!!かえちー先輩には送らないで何でも言うこと聞くからーーー!!!」





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