狂ったもの 都時彰編 2
そして翌日
生徒会選挙活動期間ということでお昼休みに教室を巡るのだが給食を早めに食べ終えて芹沢先輩の教室に行くがそこに芹沢先輩はいなかった
おかしいな?図書室のすぐ隣だから2年6組であってるはず
すると黒板側の一番前の廊下側に座ってる女子がこっちに来いと手を振ってるのが見えるからそっちへ行ってみる
「都時少年?」
いきなり言われ慣れてない言い方に、へ?という声が出てしまう
「楓っちの選挙っしょ?」
黒髪に所々束で茶色が入った髪型の女子生徒だった
校則違反ぶっちぎりの短いスカートと胸元を思い切り着崩したセーラー服が目のやり場に困る。
「あ、うち外村文乃(そとむら ふみの)。楓っちの中学からのダチなんで。よろ」
どうもギャルといった印象を受けるこの人が、堅物に生きてきた芹沢先輩と相性がいいとは思えないという理由から本当に友達なのかと先輩相手に申し訳ないが疑ってしまう
「楓っちなら今はトイレだからここで待ってな。ありゃあ緊張しいだな」
「はあ」
「ところで都時少年」
「それ俺のこと?」
「そ、楓っちから君のことは聞いてっから。気に入らね?なら変えっけど?」
「いや、戸惑っただけです」
「そ」
「で、なんです?」
「ぶっちゃけ楓っちとはどこまでいった?」
その場で崩れ落ちそうになった
「お、その反応はまさか?まさか?」
「まだ全然です!」
外村先輩に怒って言い返した
「嘘?キスも?」
「まだですよ!中学生ですよ俺ら」
「でも楓っちキスしたかって聞いたらすごい反応してたからあれはしたんだろうけど」
あの先輩、嘘下手くそ過ぎだろ
「まぁ少年の反応的にもキスは確だけどね。で、どっちから?」
「違います!人工呼吸だけで」
「ほうほう。で、それを楓っちの前でばらしてオッケーな話?」
外村先輩に言われて恐る恐る廊下を見るとそこには信じられないものを見たような目でこちらを見る芹沢先輩がいた
「ごめんなさい芹沢先輩!!俺が悪かったですので無視しないでください!!」
外村先輩はヘラヘラ笑っていた
「もう許してくださいよ。あの先輩相手だとなんでも喋りそうで」
「知らない。文乃相手にあんなこと、後でからかわれるのが目に見えてるし」
はじめに来たのは1年4組の教室
ここにいるのは
「皆さんはじめまして。2年6組の芹沢楓といいます」
芹沢先輩が黒板の前でそう言う前に見てくる奴がいた
それがこのクラスの生徒である椎堂だった
最初はここにすると芹沢先輩が言ったとき、大丈夫かと気になった
ないとは思うけど乱闘にならないか心配だったから
まあ実際はお互い笑顔で数秒見つめてるだけだが
知らない人はそこに込められたメッセージが憎悪だとは思うまい
俺は感じ取れるから芹沢先輩の隣で内心冷や汗をかいていた
そのまま芹沢先輩が話し出すと突然横から強い風が吹いた
「ぎゃあ!!」
その風で芹沢先輩のスカートが捲れて中の黒い下着が一瞬見えたところで俺は持ってたプラカードで隠した
クラス内の空気が色めき立った
「ごめんなさい?次期生徒会長候補さまが残暑厳しいだろうと思って扇風機のタイマー予約をしたんですけど強すぎたようでして」
口元を手で押さえてほほ笑む椎堂
芹沢先輩の右側には大きな扇風機があった
芹沢先輩の椎堂を見る目がきつい物になる
「でも次期生徒会長候補さんが黒のショーツって誘ってるんですか?やらしい人、コネだけじゃなれませんよ?」
そして芹沢先輩は椎堂に掴みかかったので俺は羽交い締めにして教室を出て文芸部の部室まで無理矢理連れて行った
「何やってるんですか芹沢先輩!!」
部室に着いて椎堂に対する怒りでイライラしてた俺は乱暴に芹沢先輩を床に叩きつけるように解放した
その場で崩れ落ちる芹沢先輩は涙にまみれた顔を俺に向け
「だって悔しいじゃない!!!あそこまで言われて!!!」
「あいつはただ俺との時間を芹沢先輩に割かれるのが嫌でああしてるんです!!こうなることぐらい想定できるでしょ!!」
そこで今度は芹沢先輩が俺の胸ぐらを掴みかかった
「よく思わない事ぐらい分かってたわよ!!それぐらいは覚悟してた!!でも···椎堂さんがあそこまでするような人間だなんて思わなかったの!!!」
それは俺も思うところだった
椎堂の性格は俺の方がよく知っている
だから今回の事は腸煮えくり返る思いだった
「ここで暴動起こしたら落選ですよ!!」
「分かってるわよ!!!でも····耐えられなかったの!!!わたしは生徒会長の妹じゃない!!!芹沢楓だって!!!そう言いたかった!!!先生からもそう言われたわたしにコネだとか言われた時の気持ちがわかる!?」
「どした楓っち?」
そこへ外村先輩が入ってきた
俺達の怒鳴り声が教室まで聞こえてきたのだろう
外村先輩は芹沢先輩の肩を両手で支えて椅子に座らせて落ち着かせてからゆっくり話を聞いた
「そっか。そりゃあ嫌だよね。そんなこと言われたらうちだってやだし」
「うん」
「楓っち。そんなに嫌なら生徒会長なんの辞めてもいいとうちは思うよ」
「それはいや!!みんなもわたしもそれを望んでる!!」
「なんで?」
「だって····先生もお母さんもお父さんも」
「それってそんなに大事?」
「だって」
「これはうちの考えだけど、親とかセンコーとかってどうでもいいと思ってる」
「······」
「んで正直な話、親はまだ子供の事考えてる部分もあるよ?でもセンコーの場合、人を見ないと自分の保身に走ってる手合いもいるからそこは見抜かなきゃだめだし」
驚いた
正直この先輩、見た目がアレだから考えなしの人かと思ったけど言ってる事はしっかりしてる
「だから最後は自分がその後も考えてどうするかだし。今のタイミングから計算してさ。うちら半年したら受験じゃん?だったら稼げるものは稼ぐべきだけど楓っちの場合、もうちっと気抜いて生きてもいいと思う。成績も申し分ないし。あ、ただコミュはもっととるべきか」
もう芹沢先輩の目に涙はなかった
芹沢先輩も外村先輩の言ってる事に驚いてるのが表情でわかる
「ま、後は楓っち次第だかんね。うちがどうこうじゃないし。ただ苦しくても頑張るか、辞めるかは自分の中で考えて決めなよ。選択肢は1個じゃないからさ」
んじゃと言って部室から出る間際に俺に小さく「頼んだよ」と言ってくるこの先輩には頭が下がる思いだ
俺はゆっくりと芹沢先輩に近づいた
またグスグスという鼻をすする音が聞こえてくる
「芹沢先輩。俺は外村先輩と比べて付き合いが短いからどうこう言えた義理じゃありません」
まだ芹沢先輩がうつむいている
「でも芹沢先輩が俺との時間を大切にしたい思いは汲みたいとは思います」
「だから生徒会で」
「俺と学校の行き帰りで一緒になれる。そういう関係だけじゃ駄目ですか?」
「······」
「俺に芹沢先輩の親への説得は残念ですができません。でも、学校から家までの時間が良い思い出になる努力はしたいと思ってます」
「椎堂さんは?」
「あいつは見限ります。最低でも芹沢先輩に謝らない限りは」
「········」
「これから先、また椎堂が何かしてきたら俺に言ってください。あいつへ注意して。それでも駄目なら親に言いつけます」
「·······」
「俺は、頑張るのは芹沢先輩なのに『頑張りましょう』なんて無責任には言えません。傷ついてる芹沢先輩も見たくありません。だからこう言います」
そして芹沢先輩の耳元で優しく言った
「頑張れますか?」
芹沢先輩は泣き出した
塞き止めていたものがあふれるように
先輩だから、生徒会長の妹じゃないから。生徒会長になるだけの人間になるから
そんな思いがこの人にのし掛かっていたのだろう
こんなに触れたら壊れそうな細い肩で
こんなにも男の俺が抱きしめたら全身を覆い尽くせてしまえそうな小柄な体で
それでも女性の前に先輩だからと鼓舞をして後輩の前で頑張って無理をして
今でも泣き崩れて椅子から倒れそうなのを俺が肩を掴んで支えなきゃいけないくらいに弱いのにこの人は
「一緒に生徒会長に辞退を言いに行きましょう。少しは後輩に頼ってください」
「うん······うん·····ありがとう」
その日の放課後、俺と芹沢先輩は現生徒会長の元へ行き、生徒会長選の辞退を申し入れる旨を伝えた
「話は聞いてる。妹がすまなかった」
上側のみ黒のフレームの眼鏡にすらっとした体躯、髪型は校則通りの短めの爽やかな黒髪をした優等生然とした中学3年男子生徒、それが芹沢徹生徒会長だ
生徒会長と芹沢楓先輩、俺以外いない生徒会室は普段授業で使ってる教室と広さも床と壁も変わらず、4つ四角く長机を並べたものが中央に置かれている
黒板側に1つ教室で使うのと変わらない机と椅子が置いてある
そこが生徒会長の席である
その席を挟んで生徒会長、俺と芹沢楓先輩の配置である
厳格な態度で生徒会長である芹沢徹先輩は立って頭を下げた
「いやいや!頭を上げてください!」
「いや本当に申し訳ない。後でお詫びはする」
「いやいいですよ。そこまでしなくても」
そこで生徒会長は厳しい視線を俺に向けた
「都時くん。今回の件はよく聞いている。妹が女子生徒に掴みかかる暴挙をしたと。それは間違いないね?」
生徒会長の並々ならぬ威圧と嘘をつけない状況に震えながら「はい」と返事をした
「理由はなんだ。楓?」
そこへ、唇を噛んでいた芹沢先輩に質問する
「···都時くんの幼なじみにスカートを捲られて、卑猥だのコネだの言われて」
「それだけか?」
芹沢楓先輩が生徒会長を睨み付ける
「それじゃあ子供のやることだぞ楓。大人になれ」
我慢できずに芹沢先輩が生徒会長に殴りかかる
生徒会長は抵抗もせず、頬に拳を受けた
ふーっふーっと肩で息をする芹沢楓先輩が追撃しないように押さえる俺は生徒会長に背中を向けている状態で芹沢楓先輩の涙と怒りで満たされた顔を間近で感じている
「芹沢先輩、ストップ!ストップ!落ち着いてください!」
「おれが何も無しに生徒会長になってるとでも思ってるのかお前は!!!!」
生徒会長が怒鳴り出した
こんな冷静沈着な人が怒るとは思いもしなかった俺は心臓が縮み上がるような感覚に陥った
「あの親からのプレッシャーにおれがどんな思いでやってきたと思ってるんだ!!この家を守っていくんだと何度も言われて目標が高いあの親に態度も改めるように小さい頃から散々言われて泣いても許されない気持ちがお前に分かるか!!挙げ句には『妹の成績が悪いのはお前がしっかりしないからだ』と理不尽を言われた時の気持ちが分かるか!!」
芹沢先輩も驚きの表情で震えている
だが生徒会長から視線をそらさず真っ直ぐ見つめている
これなら大丈夫だろうと俺は手を離し、芹沢楓先輩の横に立った
生徒会長は芹沢楓先輩の前に立ち、その肩を掴んだ
「残念ながらこの世の中は理不尽というものが存在するんだ。それは上の立場になればなるほどある。その度に感情任せになってたらきりがないし、一回やればもう終わりのルールがある」
そこで生徒会長は芹沢楓先輩を抱きしめた
芹沢楓先輩はまた別の意味で驚いた
「お前の顔を見れば都時くんが好きでその幼なじみと取り合いになってることも分かる」
芹沢楓先輩は顔を真っ赤にして首をブンブン横に振るが、ばれてますよ先輩
「おれは、女の恋というのは分からないが。それでも、これから2人で結婚することまで考えての事なら対立する場面があった時の対処ができないと長続きしないことは想像できる。だから、都時くんの為にも大人になってくれ。お前の幸せをおれも願ってるから」
芹沢楓先輩はついに声をあげて泣き出した
「ちょっと都時くん、妹を預けるよ」
そう言って泣いてる芹沢楓先輩を差し出す生徒会長
俺は泣いてる芹沢楓先輩を抱きしめる
「あ、そうそう」
こういう事言う時の顔は芹沢楓先輩にそっくりでやっぱり兄妹なんだなって思う
「これで妹を泣かせるような事をしたら川に沈めるからな都時くん」
ボソッと俺にそう言う生徒会長に俺はゾクリと悪寒がした
どうも芹沢楓先輩は聞こえてないようで未だに泣いていた
それだけ言って離れた生徒会長はニコニコ笑顔だった
この恐怖の植え付け方は芹沢家の血筋なのだろうかと思う俺だった
「やっほー!ダチとも喋ったし、とおるん帰ろー!!」
そう言ってガラガラと教室の引き戸を開けて入ってきたのは外村先輩だった
俺と芹沢楓先輩は急遽離れて。入ってきた人物に眼を見開いたまま動けなかった
生徒会長は目に手を当てて天を仰いでいた
「外村先輩?なぜここに?」
「え?なんでって?そりゃとおるんと付き合ってるしうち」
「ちなみに····とおるんって?」
「え?芹沢徹先輩、生徒会長のことだけど?分かりにきー?」
芹沢楓先輩も事の次第に謎要素が大きく、混乱しているところで、スマホで2ギガくらいの容量の大きいゲームをインストールしている時くらいの時間を空けてから
「「えええええええええええ!!!」」
俺と芹沢先輩の大絶叫
「ちょっと待って!!お兄ちゃんからそんな話聞いてない!!」
「あははっ!恥ずかしがってるだけだし!!」
「なんで文乃言わないの!?」
「そりゃ聞かれなかったし、楓っちその手の話題パスしてたっしょ?」
「うぐ!!」
「え!?じゃあ外村先輩と生徒会長はけっこう進んでて」
「都時少年も際どいとこ聞くね。でも、とおるんが受験に集中するためにおあずけなのよこれが」
「そもそもこいつが言ってるだけでそんなんじゃない!!」
生徒会長が赤い顔をして否定する
こういう反応も芹沢家の伝統ですか
「でもうちが付き合ってと言ったらOKしたじゃんとおるん」
「お前が何度も言うから仕方なくだ!!」
「でも嬉しそうだったじゃん」
「腕にそんなもん当てるな!!」
「嬉しいくせに~」
何の恥ずかしげもなく外村先輩が生徒会長の腕に芹沢楓先輩以上椎堂以下の···推定Cカップを押し付ける
外村先輩のは男の手のひらにちょうど収まるか余るかくらいと、大事な事だから脳内にメモメモ
「···お兄ちゃんのばか」
「違う楓!!これは誤解だ」
「後でお母さん達に言いつけたらどうなるかな?」
「卑怯だぞお前!!」
「お兄ちゃんが言ったんだよ?この世には理不尽なんてたくさんあるって。ならわたしはその理不尽を利用するまでの事」
「この···」
「えへへ~。今まではとおるんの家、うちの家と学校挟んで逆だったからうち送った後で帰ったってばれなかったもんね~」
「····それはそれは、楽しい事で」
妹がお兄ちゃんをクソムシでも見るかのような視線で言っている
「待て!!女性を1人で帰らせるのはなにかと物騒だから仕方なくだ!そう、これは生徒会長として行ってるだけで恋人とかそんなんじゃ」
「とおるん、今日の分のキスしよ~」
「おいやめ!んっ!んっ!ん~~~~~~!!」
外村先輩が空気関係なく芹沢徹先輩に唇を合わせてキスしだした
2回くらい、唇同士を合わせたら今度は舌を入れてくちゅくちゅと唾液の混ざる音を俺達2人にも十分に聞こえるくらいの音量でやってのける
今、今日の分って言ったよね?この先輩(ギャル)
ここぞとばかりに復讐に駆られた妹がスマホを構えて連写機能も駆使して色んな角度から証拠写真を収めていく
そこへノリノリでカメラ目線を送る外村先輩とカメラを止めたくて動くが文系故か、女子2人に壁に追いやられ腕を塞がれ、されるがままになっている生徒会長
生徒会長の視線がこっちを見たけど気のせいだよね
唇の間からテラテラと涎が少し垂れるのが見えて思春期男子としてはドキドキが止まらず、そこを逃さないようにシャッターを切る芹沢楓復讐マシン
仕上げとばかりに唇を吸ってチュパッという音をさせて離れたその間には細く伸びた唾液が両者の唇を繋いでいた
外村先輩はそれを生徒会長の唇に指を伸ばしその端を拭いその糸状になった2人分の唾液を床へ1滴も落とさないように外村先輩の上気した顔についているピンク色の色っぽい唇のその中へ入れてわざと生徒会長の耳元に近づきくちゅくちゅと音をさせて味わってから対面して飲み込んだ
「ごちそうさま。じゃ行こ?」
そう言って手を差し出す外村先輩
だがそこに待ったをかけるのは芹沢楓先輩
どうでもいいけど兄妹がいるとこういう名前を書くとき不便だな
「その前にお兄ちゃん、わたしを生徒会長になれるように工作して」
その顔は完全に悪人のそれである
もう工作って言ってるし
「おれを脅したって無駄だぞ」
「あっそう?ならお母さん達にこの写真見せてもいいんだ?」
「無理なものは無理だ!そんなことしたところでお前の評価も下がるだけだ!!」
「なら文乃。ここでセックスできる?写真撮るから」
「悪魔か!?」
「ちょっと楓っちそれは···」
それはそうだろう。常識で考えて
さすがに外村先輩も見た目があれだからって中身は
「とおるんが卒業したら生徒会室(ここ)でする事にしてるから」
中身も若干アレかもしれないこの先輩
「ふみの!!お前そんなこと考えてたのか!?」
中学童貞同時卒業予定者が恋人に詰め寄る
「だってその頃ならいいかなって、ほら?とおるん中学卒業したらアメリカ行くって言ったじゃん?ならその前に」
「国際弁護士になって収入が安定したらじゃ駄目か?」
「そんなに待てないし!その前に向こうのダイナマイトボインに奪われるかもしれないし」
「お前はおれをどう見てるんだ!?」
「でも男っておっぱいは大きい方がいいでしょ?」
「そんなことはない!!」
「と、言ってるけど都時少年。揉むならうちと楓っちのどっち?」
「外村先輩」と間髪容れずに答えたら聞いた本人も若干引いていた。なら聞かないでくださいよ
それよりも俺の隣の気配がとんでもない事になっていた
もしもドラゴソボールのスカウターがあればもう魔神プーくらいになってるんじゃないかというくらいの怒り戦闘力を叩き出していた
「·······都時くん。わたし、あなたと付き合おうと決めてたんだけど」
「芹沢先輩!?違うんです!!これは脊髄反射と言いますか」
「そりゃあわたしの胸は揉もうと思ってもないから揉みたいなんて思わないでしょうね」
「ちょっと芹沢先輩!!俺を窓際へ追いやってどうするつもりですか!!悪かったから落とそうとしないでくださいここ5階ですからごめんなさい!!」
「ふんっ!!」
「いっ!!!」
背中に思いっきり膝蹴りを入れられ、一瞬呼吸が止まったような感覚と痛みに震えて動けない俺
「都時少年。間違っても楓っちのが物足りないからってうちのを揉もうとしたら通報するから先に言っとくね?」
そう言って胸を腕で隠しながら俺から距離をとる外村先輩
これ理不尽じゃないか?
「まあ文乃。そういうのはおいおい考えていくということで手を打たないか?」
「えー?中学卒業じゃだめ?」
「さすがにそこで子供ができたら親に顔向け出来ん」
「そこはゴムするから大丈夫だし!うちも薬飲むし」
「絶対じゃないだろ?もし、できたときその子供を世話できるか?お金は?1人の子供を大学まで入れるつもりなら4000万はかかる計算だぞ」
「考えすぎぃ」
「もしもの時のリスクが大きすぎるんだ」
そんな話を生徒会長と外村先輩がしだすなか
「芹沢先輩」
「楓と言って」
俺と芹沢先輩も話し出す
「え?」
「お兄ちゃんも芹沢先輩だから紛らわしいし。うん、これは仕方ない仕方ない」
芹沢先輩が恥ずかしげに目を閉じて自分自身に言い聞かせるように言ってくる
今さらだけど芹沢先輩のお兄ちゃん呼び復活に内心大喜びしている
それは俺にも良い話だったので
「楓さん」
「さんづけかぁ」
「俺的に選択肢はこれしかなかったので」
「楓先輩は?」
「例によって」
「····なんかここまでくると逆にどうでもよくなってくるなぁ」
なにか吹っ切れたような笑い方をする楓さんは美しく見えた
「じゃあこっちはダーリンと呼ぶことを要求します」
「分かった。彰くんね」
人の言うことをさらっと流す楓さん
「なにか悪代官のような事をやろうとしたみたいですけど」
「どっちかというと越後屋の気分だったんだけどなぁ」
「どちらにせよ御用ですけどね。生徒会長は諦めようって事で?」
「まあそんなとこ。わたしはわたしのやり方で進路選んだ方がいいのかなって、あの2人見てたら思えたし。汚れたやり方なんてわたしらしくないし。多分それだけのメンタルもないだろうし。それに、私はまだ親に甘やかされてたんだなぁと分かったから」
「まぁ、そうですね」
勉強に関して以外はがつきますが
「それに···お兄ちゃんの真似してたんだろうなって思ったし」
「·······」
楓さんの目には未だにあーだこーだ言ってる生徒会長と外村先輩が写っている
「結局、自分の人生。誰と誰が付き合ってどうなるかとかなんて分かんないし、それこそ一人一人違うわけだから同じ進路選べば同じ幸せ得られるかっていったらそうじゃない事が分かったから。もういいや」
「俺と楓さんが付き合う事で幸せは貯まりますもんね」
「調子乗るな。まぁ勉強とかの努力は続けるつもりだよ。これまで積み上げたものを放り出したくないし」
「そういえば楓さん。卒業後の進路ってどうします?」
横目でちらりと見ながら聞くと楓さんは少し焦った顔をして
「えっ!?あっ!?····うーん」
「なんですか?まさか····アメリカに行こうとか考えてたんじゃないですよね?」
「少し前まではそうだったけど今は違うから!!」
「じゃあなんなんです」
ジト目の俺に楓さんは俺の耳元でこう囁いた
「彰くんのお嫁さん」
一瞬本気と思ってドキドキしたが冷静になったら気づいた
「待ってくださいよ!女性が結婚できるのは16歳で男性が19歳からなんですから不可能じゃないですか!!」
「あ、気づかれた」
「そりゃ気づきますよ!!」
「まあまあ。手繋いであげるから。ほら、帰ろう?」
「なんか釈然としないんですよねー」
「今度今日喧嘩止めてくれたお詫びも兼ねてチーズケーキ作って持ってくるから」
「卒業前には言ってくださいよ」
「分かりやすい後輩で助かるよ」
そして後日、椎堂家のアパートに楓さんのチーズケーキと生徒会長からのハーゲソダッツ6個入り1箱がお詫びの品として持ってきて頂いた芹沢兄妹と、その後ろに控えた芹沢家御両親の4人で謝りに来た。
そのチーズケーキとハーゲソダッツを玄関先で楓さんに土下座した椎堂(結局母さんと父さんに報告した結果しこたま怒られた)とその両親、俺で食べ
そして俺の両親の分を仏壇にお供えした
今、仏壇の前に俺と楓さん。その後ろに椎堂と芹沢家ご一同がいる
「偶然、彰君の火事の裁判の弁護を受ける事になったんだけど」
こう切り出すのは楓さんの母親である芹沢椿(せりざわ つばき)さん
キャリアウーマンの印象は変わらないが深めの茶髪に肩より少し下まで垂れたポニーテールと化粧の仕方で一目見たら20代後半にみえなくもない
よく見ると。これ以上書くと後々怖いのでノーコメントで
縁なしの丸い眼鏡は通夜の時はきつい印象に見えたが、俺の事を気遣ってるのが分かると理知的なだけで気遣いのできる人だということに気づく
「おそらくあの放火犯は懲役15年といったところね」
それはつまり新入社員と聞いてたから33歳くらいには出れるということで
俺の両親は戻ってこないのに
「この仕事してるとこういうとき嫌なのよ。被告人側の家族から『あの子がそんなことする筈がない。真犯人を探してくれ。無罪にしてくれ』って言われるからこの判決に恨まれるし」
「すみません」
「彰君は悪くないわ。悪いのはあの男よ。注意されたくらいで放火って?馬鹿じゃないの!!」
こういうときの椿さんは恐ろしいという表現がしっくりくるほどの表情、声を出す
まさかとは思うけど恐怖心を植え付けるやり方はこの母親の血じゃないよね?
「えーと。それでまだ裁判は続いてるんですよね」
よく分からないが上告とかなにかあったとと思う
そう聞くと椿さんはわかりやすい溜め息をつき
「被告人の家族から告訴するように言われているから仕事の都合で行うけど···正直気が進まないわ。まあ上告はあり得ないからこれで判決が出るわ」
俺は椿さんに再度頭を下げた
「それにしても写真と棺桶通してでしか知りませんが、良い御両親ですね」
椿さんが柔らかな笑顔でそう切り出す
「ありがとうございます」
「お世辞じゃないわ。この仕事してると色んな被告人や被害者の家族構成とかの情報が入ってくるけど。その場しのぎの仲の良い家族を演じてたり、優しい人なんですって聞いてもすぐ分かるから」
「それを···本人に伝えたかったです」
そう言って涙が出る俺を楓さんが支える
笑顔でそれを見守る椿さんの姿にやっぱり母親なんだなって思った
そしてとある日
この日はある恒例行事が待ち受けていた
文化祭である
「彰くんとこは文化祭何するの?」
「お化け屋敷」
そう聞くと楓さんが俺の顔を見てムッとした顔になる
「彰くん。その提案、却下した?」
「いや」
「そんなの絶対いじめだよ。ねえ椎堂さん」
「そうだって都時。そこは言わなきゃ」
椎堂も怒っている
この2人がこういうのは火事のせいで俺の目の辺りが爛れたような火傷になっているからだろう
なお、椎堂が土下座の際にさんざん泣いてお願いだから俺を取らないでと懇願した為見るに見かねた楓さんが3人での登校はOKにしたのだ
さすがに帰りまでとなると椎堂の陸上部の終わりを待たなきゃいけないのでそこは妥協して2人きりにした
「なんて言うかな。多勢の空気?みたいなのってなかなか抜け出せなくて」
「それはすごーくわかる」
「おーいそこのバカップルー。完結すなー」
もちろん、賛成派が楓さん。反対派が椎堂である
「あ、そういえば椎堂さん陸上部って朝練はないの?」
「残念でした。そういうのは大会の近い日だけなんでもう今年の分は先月に終わりましたので」
「来年待ちか」
「その間、変なことしないでくださいよ」
「わたしはあなたと違ってふしだらな関係でいようだなんて思わないし。やっぱり胸がそうさせるのかしらね」
「こんの····」
この2人、仲良くしようとは思わないのか
「2人とも俺は喧嘩してる思い出はつくりたくないからさ。仲良くしようよ」
「あ、そうだ。でお化け屋敷の話。なんならわたし殴り込みに行くよ」
「それなら私だって」
「それは止めて」
特に楓さんは本当に殴り込みになってしまいそうだから止めてほしい
「「じゃあどうするの?」」
「····その日休む事にするよ」
「逃げじゃん。わたし、彰くんと回る予定にしてるのに」
「綾城圭一でしょそんなこと言うの」
俺は押し黙った
やっぱり椎堂にはわかるんだなと思ってしまう
「誰そいつ?」
「同じ学年のワルよ。兄が暴走族入ってるからって幅利かせてるようなやつ。性格が合わないからって都時に何かと突っかかるから一度校門で見かけた時、ぶちギレたったわ」
「そんなやつ、他の生徒も辟易してるんじゃないの?」
「それが男子連中はそいつの味方するから余計タチ悪いのよ。ここのクラス」
「彰くんって1年6組だっけ」
「はい」
「わたし本当に行こうか?」
「やめてください。ややこしくなりますから」
「だってこのままじゃお化け屋敷に」
「なんとかしますから楓さんはメイド喫茶頑張ってください」
「勝手に決めないでよ!」
「でも外村先輩にそうするようにライ〇しましたし」
「やめてよそれ本当になるから!!」
そこからおそらく外村先輩を説得する為だろう楓さんが学校まで全力ダッシュする
「じゃあ邪魔者もいなくなったから。はい、朝のチュ」
「ごめんそれはできないから椎堂」
俺も全力疾走する羽目になった
「待ってよ!!」
が、陸上部に勝てる訳もなく捕まって
「楓さん助けて犯される!!」
「キスならゆる」
「こらレン。やめたげな」
そう言って後ろにいるのは背が高くて細目が印象的な女子生徒だ。というより、俺のクラスにいるから覚えてる
「平間(ひらま)さん」
「よっ。都時くん」
助かったと内心思って呼び掛ける俺に片手を上げて挨拶をする平間さん
快活な性格をしてるこの人は椎堂と同じ陸上部という事でよく話をする仲である
「佐江(さえ)。止めるつもり?」
少し怒った顔で平間さんを見る椎堂
「陸上部の同志が横恋慕はよくないからね」
平間佐江(ひらま さえ)。俺と同じ1年6組
黒髪のベリーショートは他の女子中学生と対比して浮くのだがこの人は馴染んでるからおかしな印象を受けない
「さて、この色魔にやられるまえに教室まで逃げよっか?」
そう言って平間さんが俺をお姫様抱っこして走り出す
「でも椎堂って陸上の成績いいから追い付くんじゃ?」
「大丈夫。ワタシ、レンより成績良いから」
「え?あ?そういえば前に中学の成績が2番止まりって」
「ワタシが1番だからね」
「はい捕まえたー」
そう自信満々に言ってた時期が平間さんにもありました
「さすがに都時を抱えるハンデで負けたら私も凹むわ」
その割には息切れがやばい事になってるけど椎堂大丈夫?
はいおろしておろしてと急かして、椎堂が平間さんから俺を奪還する
「そういうレンだってこんな大きな巨乳(ハンデ)抱えてるでしょ!!」
「揉むな揉むなやめえ!!」
平間さん、名前通り真っ平らだから
椎堂が平間さんを剥がしにかかるが、平間さんの目がガチで憎い物を見てる目をしてるのが怖い。
「そういえば、佐江って都時と同じクラス?」
「そうだけど?」
「ならちょっとそこのクラスの文化祭の出し物お化け屋敷っていうの止めるようにしてくれない?」
「ああ、それ。まだあの男子のアホ共が言ってるだけだから。特に綾城(アレ)が都時くんをいじめてんの見てるから腹立ってるとこ。委員長とも話をして却下できることが分かってるから大丈夫。今日クラスで話し合いがあるし」
「ありがとう。それなら安心したわ」
「なんだかんだで幼なじみだもんね」
「できれば彼氏彼女として」
「諦めなさい。あなたが生徒会選挙でしたことワタシも知ってるからね」
というわけで1限目を使っての文化祭の出し物決め
1年6組
「だからこの中学はお化け屋敷は禁止だって言ってんだろ!」
教壇の前にクラス委員長である姉岳恵(しだけ めぐみ)が男口調でいきりたつ
肩にかかるセミロングの黒髪を前髪部分だけ上げてカチューシャで止め、かわいらしい風貌の割に男兄弟が多い家系で育ったため男勝りに育ったまっすぐな性格の女子中学生だ。
「それをなんとかするのが委員長の仕事なんじゃねーの?」
そこへ綾城が誰も逆らえないと高をくくって言い返す
「だーかーらー!去年それやったクラスが教室内で不謹慎行為したから学校側が全面禁止になったっつったろ!!」
教壇をバン!!と強く叩いて意見を否定する
「そんなん。おれらには関係ねえし。なあ?」
「そもそも不謹慎行為って何ですかー?」
そうだそうだと無責任に言い放つのは綾城を取り巻く男子生徒
「おめえら···」
怒りにぶるぶる震えてキレかかっている姉岳委員長
こういう時、副委員長は綾城派の人間だから余計タチが悪い
いつも面倒事を姉岳さん1人ですることになるから精神的にあぶないのは目に見えている
こういうやり取りに泣いている女子生徒もいる
このクラスでは中間、期末試験中も綾城らが騒いだりふざけたりして止める先生がいないと分かると調子にのるからその時も泣き出す女子生徒がいて大変な状態なのである
ここのクラスの担任はこの中学に入って5年目の35歳の男の教師だが面倒事はほったらかしにする人なので役に立たない
姉岳さんが何度もその教師にこの状況を言ってるが「はいはい」とか「そうですね」とか言うばかりでちっとも取り合ってくれないのも姉岳さんが怒っている一端だ。
「今は消防法の絡みもあるから教室の中を真っ暗にするのは禁止になってんの!!」
「そうなんすかせんせー?」
そう綾城が先生に聞くと
「そうですね」
この一言だけでこれ以上は何も言ってこない
「でも懐中電灯持たせれば明るいからOKなんじゃないッスかせんせー?」
「そうですね」
この担任は生徒を導くという事を知らないのだろうか
「いい加減にしなよ男子!!無理なもんは無理なんだから諦めなって!!」
こう怒鳴るのは平間さんだ
後ろから2番目の右から2番目の自分の席を立ち上がる際、自分の机をバン!と叩いて教壇まで向かう
「じゃあ何すんの?」
そう綾城が平間さんに聞くと
「文化祭の出し物準備に美術の時間を使っていいことになってるんだから絵を描くとかでいいじゃん」
「くっだらねー。小学生かよ」
綾城がそういうと侮蔑の笑い声をあげる綾城の取り巻き共
「有志は出し物を出せばいいってだけで出さないもしくは休憩室も可って学校の資料にも書いてあるよ~」
驚いた。
こんな事を言うのは机に体を投げ出してその資料を見ている少しつり目気味の猫のような目をした女子生徒だ
俺が40人クラス(縦7横6の机の並びで教室の後ろから見て、左手前の横2つがなし)の右から3列目後ろから4列目なのに対し、その生徒は俺の左隣にいる
名前を皆河 紫衣(みなご しえ)。お母さんが中国人でハーフだとの事。甘い猫なで声なのは地声のようだが本人は気にしていないようで髪の毛の銀髪もお母さんゆずりなんだとか
それを頭のてっぺんでお団子にしているがこれはお母さんがやっているようで自分は構わずそのままで出かける事もあると言っている
席が隣ということでよく話をするがこの子は我が道をゆくというか。マイペースなところがあるため、会話がままならない時もある
そんな子がこの場でこの発言をすることが意外でならなかった
「んだよ猫。おめえまで因縁つけんのかよ」
皆からは猫というあだ名が浸透している
「違うよ~。お化け屋敷やるなら壁を作る材料とか暗幕とかの手配とかやることいっぱいじゃん?それは誰がやるの?」
「そりゃあ···」
「ぼくは、何も決めずにうだうだするの嫌いなの。やるなら誰が何をするのかまで考えてからにしてくれる?」
皆河さんはぼくっ子である
そして怒ってるのかと顔を見たら少し眠たげな顔で伸びをしているだけで怒った表情じゃない
というより、この人が隣になってから1ヵ月しか経ってないけど表情があまり変わらないんだ
感情の起伏が緩やかというのか
無防備に伸びをしているものだからおへそがモロに見えてるのに恥ずかしがったりしない。
「おめえだって昔からだらだらしてんじゃねえか!!」
綾城がそう皆河さんに言い返す
「ぼくはのんびりしたいと決めて行動してるの。うー、えびせんが食べたくなってきた」
なぜえびせん?
「というわけで委員長。ぼくは団子屋がいいとおもいます」
「なんでえびせんから団子になんの!」
話の突拍子がわからず姉岳さんが聞き返す
「今ぼくの中で再来の古き江戸の団子屋ブームだからだよ」
「知らねえよんなの!」
姉岳さんがさっきとは違う意味で教壇を叩いて怒鳴る
「でもそれなら市販品の団子とお茶のペットボトル買えばOKだよね?後それっぽい幟(のぼり)とか用意してさ」
平間さんが乗り気になっている
「だめ。それならお茶は茶葉から温度管理付きのポットと急須でやる」
そこへやる気を見せてすこしキリッとした皆河さんが言い出す
「どうしたの皆河さん」
「けっ!こいつ一度こうなったら止めらんねえよ。やると言ったらとことんやるんだよ。なんか白けた。いいやそれで」
綾城がそう言って意見を取り止めた
そこへクラスの誰もが息が止まり、姉岳さんでさえ口をあんぐりと開けて放心している
「じゃ!じゃあ1年6組は団子屋って事で」
1番に復帰した平間さんがそう言ってこのクラスの出し物は団子屋になった。
そしてその授業の放課後
「あ、皆河さん?」
俺は皆河さんに話しかけた
「何?ぼくの裸が見たいの?」
「違うよ!」
確かに次の時間体育だから早く出るけど
女子は教室で男子は廊下で着替える事になっている
「さっきはありがとう。おかげで文化祭の出し物早く決まったから」
「あ~あれ。ただ本当に団子屋やりたいから言っただけだよ」
本人に諍いを止める気はなかった
「そ、そうなんだ。まあいいや、それでもありがとう」
それだけ言って着替えを持って廊下に出た
するとその後ろから皆河さんも着替えを持って廊下を出た
男子生徒が皆、はてなマークを浮かべてこちらを。引いては皆河さんを見る
「あの····皆河さん?女子は教室で着替えるんだけど」
「分かってるよ。でもトトキンまだ話足りなさそうだったからここで着替えながら話す。で、何?」
皆河さんの俺のあだ名はトトキン
そして本当に着替えだした
「ちょっと待って!男子が見てるから!」
「別に問題ない。一応言うとケーイチとぼくは家が隣だから昔から知ってるの」
え?あー。そういうことか
あの綾城と皆河さんが家が隣
「幼なじみ?」
「そう」
「問題あるから!!皆河さんはこっちで着替えて!!」
「にゃう」
異変に気づいた平間さんが上半身下着姿の皆河さんの首根っこ掴んで教室へ引き入れる
本当に猫候う
そして扉が閉まったそこには皆河さんの鞄とセーラー服が···文化祭決めのイライラをぶつけたかのような睨んだ顔で姉岳さんに回収された。
「あれDカップだよな?」
そばにいたクラスの男子がそう言い出す
あれは外村先輩より絶対大きくて椎堂より少し小さいからEかもしれない
そしてその帰り道
今、中学の南に位置する正門をくぐり東へ歩き、自宅を目指す訳なのだが
楓さんがツンモードに入った
「あの·····楓さん?俺のとこの文化祭は団子屋になったんですけど楓さんのところは」
「色欲魔には教えません」
これは平間さん椎堂経由で皆河さんストリップ事件が伝わってるな
「いや···あの楓さん?皆河さんのことは自分から脱ぎ出した訳で」
「土下座」
無の境地で跪く
「舐めろ」
そう言って楓さんが履いたままの通学靴を俺の口元へ差し出す
何!?楓さんSに目覚めたの!?
俺がどうするべきかおろおろしてると
「なめろ」
なぜか皆河さんも靴を差し出してきた。
「何あんた?」
初対面の楓さんは突然の靴舐めろ乱入者に疑問を呈する。
楓さんも舐めさせようとしたでしょとかはここでは言わないお約束
「ぼくの名前は皆河紫衣。というのは仮の姿。又の名を王若汐(ワン ルォシー)。日本の女子中学生の生態を調べる為中国からやってきたスパイである。ところであなたはスリーサイズはうにゃ」
楓さんが皆河さんの首根っこを掴んでつり上げる。
楓さんも女子の平均より低くて小柄だけど皆河さんはさらにミニマムだからつり上げる事ができる。
ただ胸部だけマックスなのをつり上げる事で楓さんの視線にまっすぐ刺さるので怒りゲージはガン上がりなのだが。
「彰くん。この失礼な後輩は誰?」
「皆河さんだよ」
「それは本人からさっき聞いた。嘘じゃないのね」
「中国人嘘つかない」
「日本語ペラペラなのね」
「皆河さんは母親が中国人のハーフなだけで生まれも育ちも日本だから中身は完全日本人だよ」
「彰くん、詳しいのね」
そこで冷たい視線向けないでほしいな楓さん
隣の席の女の子と仲良くなるのもダメですか
「むー、トトキン。ネタバレだめだよー
」
皆河さんが少し膨れっ面になっている
少しかわいいなと思ってしまうのは中学生男子なら当然の反応なので仕方ない仕方ない
「席が隣なだけで、楓さんが思っているような関係じゃないから安心してください」
「彰くんと違って淫乱ではありませんー。付き合ってるんじゃないかと思っただけですー」
「あ、そうだ。トトキン付き合って」
楓さんと俺との間の空気が凍りついた
「皆河さんだっけ?人の男を取るなんていい度胸ね。その胸?その胸がそうさせるのかしら?あは!あはははは!」
「何のこと?ねえ、トトキン?この頭のおかしい人は誰?ちょっと茶葉買いに行くの付き合って欲しいだけなのに」
「俺の彼女でこの中学の先輩の芹沢楓さん」
「彼女?あー、なるなる。先輩、ちゃっす」
「まさか?彰くんの前で服を脱いだのって」
「あー。体育の時、うん。他にしたい事があったから」
「話をするために着替えてただけですからね楓さん!!」
「まさか?そんな。話をするためだけに?男の前で体育の着替え?そんなことあるわけないでしょ!」
あるんですよ。この人の場合
「ねえ、皆河さん?ちょっとそこの公園の公衆トイレに行かない?」
何する気ですか楓さん!?
「それよりトトキンと買い物に行きたいから後にしてくれる?」
は?
何言っちゃってくれてんですか皆河さん!?
そんな事言ったら十中八九楓さん
「·····ギルティ」
ほら有罪宣告告げてきたよ!!
もうやだ怖い。何なのこの2人わかんない
「じゃあトトキン行こ」
鬼の形相の楓さんをほっといて行こうとすると
「どこ行くんだルォシー?」
「·····口のうるさいメグミン。中国の名前呼びは計画的に」
俺の手を皆河さんが握ってくるその後ろに姉岳さんが立っていた
なぜか薄ら笑いをしているのが怖いのだが
そのまま姉岳さんを置いて歩きだそうとする皆河さんを姉岳さんと楓さんの2人がかりで確保する
「はなせー!ぼくはむじつだー!」
·「うるせえ!誰が口のうるさいメグミンだ!お前が文化祭で出すお茶を高級な物にしようとするくらい小学校6年もいれば分かるっつーの!!白状なさい。そんなことしたら予算オーバーになんだろ!!」
「チッ」
女の子が舌打ちしない
「この失礼な後輩と小学校が同じで?」
そう気遣わしげに聞くのは楓さん
「悲しいことに」
姉岳さんも涙を拭く動作をしながら応える
「じゃあプライベートで買う分には問題ないでしょクルメグ?」
「····一応聞くけどクルメグって何の略?」
「口のうるさいメグミン」
そんな事言うのはこの口かー!と言いながら皆河さんのほっぺたを何度も引っ張る姉岳さん
皆河さんのほっぺたよく伸びるな。
そうだ。
「やらせないわよ」
目線だけで察する事ができる楓さんとはもう夫婦レベルなのだろう
「そこをなんとか楓さん。片頬だけで良いんで」
「手が気持ち悪いんだけどこの後輩!」
「揉むならこのほっぺたをどうぞ。今やられた分癒されないといけないので」
叱られ終えた皆河さんが俺の元へやってきた
グニッ!
「いたいいたいいたい。ひゃひぇひぇ、ひっひゃひゃひゃひひぇ(やめて、ひっぱらないで)」
楓さんが皆河さんのほっぺたを引っ張ってきた。
「なにすんのさ~。先輩が率先して嫌なことしていいんですか」
「大丈夫皆河さん。この人は先輩のようで先輩じゃないから」
「彰くんが公衆トイレに行きたいの?」
「今まではこのくらいは許容範囲内だったじゃないですか!?」
「彰くんだから親しくしててもいいの。他の人には馴れ馴れしくされたくないから」
「デレたよね?」
「デレましたね」
「楓、そんな男で本当にいいのか?」
人波から飛び出た外村先輩、それに応える俺、生徒会長の順に反応する
「文乃!?お兄ちゃん!?なんでここに!?」
「いや~。校門出たらたまたま楓っち夫婦がいるからちょいと様子見しようとしたんだけど、これはこれはいいもの見れちゃった」
「お兄ちゃん!なんで止めなかったの!?」
「いや!あのな!おれは文乃に連れられてだな」
「『楓にもしもの事があったら行けないから行こう』って言ったのとおるんじゃん」
妹の目から冷凍ビーム
お兄ちゃんに効果は抜群だー
「つか中国人の子ってしえっち?」
外村さんが皆河さんの顔を覗き込んで話し出す
「誰ですかあなた?」
対して皆河さんは知らない様子
「小学校の時集団下校の班一緒だった外村文乃だよ。フミフミって呼んでたじゃん」
「そんな人知りません勝手に捏造しないで下さい。誘拐の手口は熟知してるんです。そんな手には乗りませんよ。たとえあなたがよく帰り道にチョコレートを買ってくれたフミフミだとしても」
「知ってんじゃん」
「なのでチョコレートをくれたらフミフミだと信じます。くれないなら、あなたは誘拐犯なんです。あっちへ行ってください」
「タカる気満々じゃん。うち、中学生なんだけど」
「大丈夫。黙ってればおっぱいパブで働けるから。そのお金でチョコレート買って」
「見も蓋もねえし。なんだよ中学生が水商売する動機がチョコレートって」
「あ、そういえばぼくのクラス団子屋だからかえちー先輩来てくれませんか?」
「それって私の事?」
「大丈夫。気に入らなくてもそう言いますので」
「気に入らなければ訂正なさいよ。別にいいけど、誰かさんと違って先輩って呼んでくれるし」
聞こえませんよ
皆河さん、そんな事言ってると
ほら、後ろに控えてる姉岳さんの目がつり上がってるよ
「なんで私が彰くんのクラスの出し物出なきゃいけないのよ?まあ、一緒にいる時間が増えるのは構わないけど。ああ、団子とお茶を載せたお盆を彰くんから渡された時にふと指が触れてドキッ。いいわ~。文乃のふれあい喫茶より断然いいわ~」
楓さんのデレ数値が爆上がり中
「胸がない人の方が着物は似合いますし」
皆河さんからの楓さんを起用する理由を聞いた瞬間にデレ数値が大暴落した
「なーにー?皆してむねムネ胸バストって。そんなに巨乳が偉いの?え?上から目線であーだこーだ言いやがってからに!!こちとら毎日牛乳飲んでますよ!!それでも見た目が小学校低学年の時と変わりませんが何か!!笑いたければ笑えばいいじゃない?まな板壁あばら骨紙装甲ってさ?その代わり歳とって垂れてきたら全力でこちらも嘲笑うから覚悟しなさいよええ!!」
女子中学生が『やがって』はだめだと思う。
楓さん。その顔はもうバーサーカーですよ。
その顔で幼稚園児の帰り道行っちゃ駄目ですよ。振りじゃないですからね。
「やむっ!んっ!強すぎ!あんっ!」
皆河さんの楓さんに胸を揉まれた喘ぎ声がエロ過ぎて思春期男子なら当然の反応を見せる
「ぎゃあああああ」
生徒会長も当然の反応をして、その反応した部分を外村先輩がガチ蹴りした事による断末魔が後ろから聞こえてきた。
「はいはい、楓っちストップストップ!人前でそういうの禁止。しえっちも、うちのふれあい喫茶手伝うなら楓っち渡してもいいよ」
「待ちなさい文乃!!それはもしかしなくても皆河さん叱ってないよね!?なんか公認で団子屋手伝わされる事になってるし!?」
「ところでフミフミ。ふれあい喫茶とはなんぞや?」
「お客さんが来たら注文を取って、その飲み物と食べ物を置いた一緒の席で話をしたりするの」
「それってキャバクラと対して変わらないわよね文乃?」
「地域の方との交流を図る有意義な場の提供だって先生にも言ったじゃん?」
「露出多めの衣装着せられるようなら彰くんのクラスに引きこもるからね私」
「かえちー先輩ゲットだぜ?」
確かに皆河さんにとっては良い話だろう。
しかし、そんな有意義な出し物に楓さんが出ないなんて選択肢があろうか?いや、ない
「外村先輩。指名制ありますかいててて!!楓さん!痛いですって楓さん指名なのに」
楓さんに俺のほっぺたをつねられた
「もう!バカ」
「あ、指名制有り衣装選択有り回数券販売可だからよろ」
「ナース服10枚買いまだから痛いですって楓さん!!」
またつねったな!親父にもつねられた事ないのに!
「バニーガールとか選んだら承知しないからね!!」
もうすでにバニーガール先輩は以下略
「え?楓さんがバニーガールなんて着れるようなスタだから痛いですって止めてください!!」
楓さんの猛攻を受ける俺の頬は痛みの為悲鳴を上げていた
このままやり取りだけして動かないと下校中の生徒の邪魔になるので話しながら歩いて家路を目指すことにする
尚、生徒会長と外村先輩はここで外村先輩の家に向かう為俺たちとは逆方向になる
「なあ?都時が付き合ってるのは良いんだけど、彼女の前の都時っていつもこうなの?少し意外なんだけど」
こう言うのは姉岳さん
「あ、どうも芹沢楓です」
「姉岳恵です。とと、彰くんのクラスで委員長やってます」
「ああ。お化け屋敷の件、なんとかしてくれたんですね。ありがとうございます」
「あの···いえ。それは、そこのルォシーが······」
「え!?ルォシーってのは···」
「ええと···ここから説明か。その子、皆河紫衣は日本では皆河紫衣って名前なんだけど中国人の母親と日本人の父親のハーフで中国での名前もあって。それが王若汐(ワン ルォシー)って訳です」
「へえ。そんな事あるんだ」
「私もスマホで調べた結果なんですけどね。日本でも中国でも同じ読み方の名前にするか、読み方は違うけど同じ名前にする方法もあるみたいですし」
「ぼく自身はどうでもいいよ。中国に行きたいなんて思わないし、生まれも育ちも国籍も日本だから日本人でいいし」
「で、もうひとつ。なんでコレがお化け屋敷回避に」
「団子屋提案がコレだからです」
真剣な表情で会話する楓さんと姉岳さん
「····マジですか?」
「マジなんです。ほぼ気まぐれなんですけど」
それを聞いて楓さんが皆河さんにお礼を言うべきかどうか迷っているのだろう事は彼女の方を向いてうんうん唸っているのを見れば想像がつく
一方、皆河さんはというと
「にゃーんにゃーんにゃにゃーん」
猫を頭に乗せ、もう1匹を抱きかかえて遊んでいた
何、初めて皆河さんと一緒に下校するけどこれが日常茶飯事なの?
「皆河さん猫好きなの?」
「んー?どっちかというと蛇かな」
「蛇?」
皆河さんが突拍子のないこと言うのはいつもの事だけどこれはきょとんとしてしまう
「そう。家で飼ってるの。今から来ない?」
皆河さんから家のお誘いを受けた
「大丈夫。今日は誰もいないから」
思春期男子には刺激的な内容が聞こえてきた
「都時。変な事考えてるとこ悪いがルォシーの家に行くなら覚悟した方が良いぞ」
そう言うのは若干険しい顔をした姉岳さん
「こいつの家蛇だらけだから」
「クルメグひどいなぁ。10匹ゲージ飼いしてるだけだよ。あ、クルメグも来る?」
「誰が行くか!!昔、ルォシーの家に行った時の光景がトラウマなんだよ!!」
「ああ小学3年の時にボールパイソンを首に巻き付けた」
「思い出せるんじゃねえ!!殺すぞ!!」
姉岳さん、よほど怖かったのはわかるけど殺すぞは女子中学生が言って良い台詞じゃないと思うんだけど。
皆河さんの胸ぐらを掴んでゼロ距離で睨むと左へ折れて繁華街の方へ姉岳さんだけ向かう
彼女の自宅はそっち方面らしい
さて、俺と楓さんはまだ真っ直ぐ進まなくてはいけないからそのまま進むが皆河さんは右へ進むようにこちらに背中を向けているからここで別れる事になる
が、背中から抱きつかれた
「皆河さ!?」
結構強めに皆河さんが抱きつくのであの2つの膨らみが俺の背中で形を変えてるだろう事を感じる
「トトキンもこっち。今日は遊ぶの」
「み~な~ご~さ~ん~」
ほら大魔人がお怒りになすった
「かえちー先輩も来ませんか。大歓迎ですよ
」
すると、現状でも不機嫌な楓さんは眉間に皺を寄せて
「そうしたいの山々なんだけどわたしの家寄り道に厳しくて。すぐ帰って勉強するようにって」
こめかみに人差し指を当てて考え込んでしまう楓さん
「ふむ····」
対し顎に手を当てて少し考える素振りを見せた皆河さんは楓さんのスマホを借りるよう催促した
「かえちー先輩の家って親が教師とかです?」
「両方弁護士よ」
「弁護士か···」
すると楓さんの母親である椿さんに電話し出した。
「あ、もしもし?私、楓さんの後輩の皆河紫衣と言いますけども。いえ、こちらこそお世話になります。はい、そうです。その皆河です。あのですね、今日お電話したのはですね。楓さんに勉強をみてもらいたくですね」
ああ。皆河さんの電話で思い出した。
楓さんが先輩で頭が良いことを。
ただしこれを声に出したら誠に嬉しくないヘッドロック待ったなしだから思うだけにとどめるけども。
「いえいえそんな。私も財閥の娘として教養を得たいですのではい。ではありがとうございます」
は?今財閥って聞こえた?
その反応は楓さんも同じだったようで。
「OKもらったから家に行こ···まあこうなるよね」
皆河さんがはっきりと苦笑いしている顔はレアなんだが今はそれどころじゃなく
「皆河さん財閥の娘って何!?」
「皆河さん弁護士(おかあさん)相手に経歴詐称したらまずいわよ!!」
「ちょっと色々言いたい事はあるけどまずはぼくの家に来て。何も聞かずに」
めんどくさそうな顔をしながら俺と楓さんを家まで急かせる皆河さん
これ絶対めんどくさくしてるの皆河さんの方だよね?
そして着いたのは竹藪に囲まれた立派な古きよき格調高い日本家屋
「ここがぼくの家」
もう何も言えねえ
なんだこの見るからにわかる高級感
日本庭園って東京にあるんだとかアホな感想しか出てこない自分を申し訳なく思う
ここが京都の隠れた名所ですと言われた方が納得できるんだけど
「彰くん、まさかとは思ったけど男子の前で服を脱ぐ人と皆河財閥が繋がるとは思わなかったから同姓くらいで処理してたけど。これが皆河さんが若年性アルツハイマーでない限り本当に」
「かえちー先輩?いくらなんでも酷すぎませんか?後輩ですよ」
でも疑いたくなる気持ちは分かる
「皆河さんなんでお嬢様学校に通ってないの!?」
俺は皆河さんの肩を何度も揺さぶった
「ぼく、お嬢様っていうの苦手なの。どーもコミュニケーションとりづらいというか。だからお父さんに言って今の中学に変えてもらったの」
「「もったいない」」
「2人とも実際、パーティーとか行かないから分からないんだよ。あの手のお嬢様は面倒な性格してる人が多いから話し相手が大変なんだ」
皆河さんが言うなよと言ったら怒るかな
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