狂ったもの 都時彰編 1


これはまだ俺が中学に入ったばかりの頃の話だ

当時の俺は小さい頃から本を読むのが好きで小学校高学年には図書館の本を全部制覇していた

そんなこともあり、中学に入ったら読書部に入ろうと思った訳なのだが

「都時は読書部?」

「うん。椎堂は陸上部だよね」

「そうだね」

今俺と椎堂は学ランとセーラー服に身を包み入学式も過ぎた2週間後の放課後の廊下を歩いていた

「小学校の時は大会で何度も優勝してたもんね」

「あまり自慢は言いたくないんだけどなぁ。そういう結果は言わないのが美徳だよ」

「でも言わなきゃ誰もわからないよ?」

「分からなくていいんだよ。ボ···私さえ分かれば達成感に満たされるし」

「椎堂。別に俺の前でくらい僕って言ってもいいと思うんだけど」

「駄目。小学生の時さんざんからかわれたし、あの時言ってた連中はここにいるだろうし」

「人間ありのままの方がいいって絶対」

「都時は僕っ娘じゃないからそんなことが言えるんだ」

この頃の椎堂はもちろん足があったので陸上もできた。そして成績も良かった。小学校の体育館の檀上で何度も表彰される姿を見てると誇りにさえ思えてくる

俺も中学生。椎堂の顔を見ると少し怒っているのが見えるがかわいいから許す

すらりと伸びた足は筋肉がうっすらとついている。それがセーラー服のスカートの下からチラリと見えると鼓動が速くなる

これが青春というものかと勘違いをしていると、ふと思い出した事があるから言ってみる

「そういえば椎堂昔『好きな男の子はだれ?』って女の子たちに聞かれたときに長渕弱(ながぶち よわし)って」

そこまで言って椎堂の目の表情が激変した

「都時。それは言わない約束だって言ったよね?黒歴史だって?ね?それでクラスじゅうから浮いたんだから掘り返さない。分かったね?」

「お!おう」

椎堂の底冷えするような視線とともにそんな約束があったことを思い出し、俺の肩を壊そうとする手をバンバン叩いてギブの意思表示をする

顔が笑っているようで目だけ笑ってないですよ椎堂さん!!

ちなみに長渕弱とは長年ロックを貫いている壮年の男性アーティストだ

椎堂は父親が好きだった影響で自分1人かまたは俺を道連れにライブに行くほどのファンになっていた

「じゃあ部活見てくるから」

「ん。わかった」

お互い陸上部と読書部の部室に向かう

椎堂は廊下を真っ直ぐ突き当たった左手側の階段を降りて下駄箱に向かえばグラウンドでやっている陸上部にたどり着くだろう

さて俺も向かいますかと思いながら読書部の部室である図書室へ向かう為横長の直方体5階建て構造になっている校舎の真ん中に位置する階段を2階から3階へ上がり、椎堂が向かった階段の方向とは逆方向へ足を進める

その突き当たりが図書室である

そこの扉を開けると誰もいなかった

まあ、読書部が誰も在籍してないなんてザラだもんな

そう思ったら、俺の入ってきた入り口から見て受付を挟んだ右側の扉が開いた

キイーッという使い古された扉のような音を立てて15度くらい扉が開くとそこから少し長めの黒髪が覗いていた

そしてすぐ扉が閉まった

何なんだ?

とにかく、このまま中に入る選択肢以外考えなかった俺はその一瞬開いた扉に手をかけ開けた


そこに黒髪でセーラー服を着た少女が座ってこちらを振り返っていた


振り返ったと同時に机にお腹と脇腹を打ちつけて悶絶していた

「~~~~~~~~!!」

「あ、あの·····大丈夫?」



よくよく話を聞くとこの人はここ西ノ鳥(にしのとり)中学2年の芹沢楓(せりざわ かえで)さんであった。

「いたたた!」

「まだ痛む?」

「驚いたから」

「いやでも···人がいる事分かったら入ることくらい予想できません?」

「わたし、その···女の子となら会話できるんだけど男の子と会話しないタイプの人間だから」

「男性恐怖症とか?」

「そこまでじゃないけど···いるじゃない?男子と会話するのが苦手な女子。それがわたし」

「なら女子だけでわいわいやる所へ行くとか帰宅部にするとか」

「かといってわたし、本読むの好きだし」

「まあ読書部に入る理由第一位だね」

「本を買うにもお金はかかるから、ここならいくらでも読めるし人はこないし女の子同士のキャッキャウフフな雰囲気も苦手だし」

「さっき女の子となら会話できるって言ったばかりなんだけど」

「訂正。会話はできるけどすすんでしようとは思わない」

「もう駄目人間街道まっしぐらだ」

「誰がパソコンが友達の毛布被って締め切った部屋にいる社会不適合者だ。仕事くらいできるから」

「その前にお腹見せてくれません?」

「何でここでセクハラ発言!?」

「違う違う。元はと言えば俺が驚かせたのが原因なんだから責任とって軟膏塗らないと」

「さりげなくセクハラをしようとしないでくれる!?」

「そんだけ細いと女子からうらやましがられるだろうに」

「なんかそれらしい視線は感じる時あるけど···無視してる」

「ちなみに今の俺の視線もそれです」

「絶対嘘だ!セクハラの目だよそれ!」

「芹沢さんここ隣図書室なんだから静かにしないと」

「誰のせいだ誰の!」

この時、俺は面白い先輩を見つけたと思った



次の日の放課後

「入りまーす」

「帰って結構でーす」

「···つれないなぁ」

「昨日の今日でウェルカムな関係にならないでしょ」

「あ、芹沢さん」

「先輩!!昨日も思ったけどわたし先輩なの!!なら『先輩』つけて!!」

「芹沢大明神様」

「わたしを拝めないでよ!!」

「芹沢の君」

「ロミジュリみたいな関係じゃないから!!」

「芹沢直樹」

「倍返しだ!って何よこれは!!」

本当に面白い人だから助かる

これは毎日いても飽きない

「っと、そうだそうだ。そんなことより大事なお知らせが」

「ねえーっ!お願いだから先輩って言ってー!」

そうやって屈んで涙目の上目遣いで人の裾を引っ張ってる内は弄りたくなるじゃないか


「この部は今日から文芸部になります」


「········はあああああああああ!!!」

ここまできれいにリアクションしてくれると面白い限りである

さらにここで言っておくと芹沢楓さん中学2年一応女子

きれいな黒髪を肩より少し上で流し、その身長は女子の平均より小さめに見える、顔は童顔ってわけではなく、イケてると思うんだがびくびくしたりリアクションが大きかったりでも胸は小さすぎたり涙目になりやすかったりドジしたりするからどうしても雰囲気が同い年オーラを漂わせてしまう

「あんたなにしてくれてんのーーー!ここに部長がいるのに!」

「部員たった1人の繰り上げ部長なだけだからいいかと」

「わたしは別に読書部のままでよかったのに!!何をどうしたらそうなるわけ!?ああもうまたクラスから奇異の目で見られる!!わたしアレ嫌いだから平穏無事でいてくれればいいのに~~~~~!!!」

「気に入って頂いたようで何より」

「どこがよ!!戻しなさいよ読書部に!!」

「それはできない」

「なんでよ!!」

「俺が小説書きたいから」

「読書部でもいいじゃん!!」

「俺形から入るタイプなので」

「知らないよそんなの!!」

「もっと言うと俺が書く小説は今こうして芹沢さんと話してる一部始終です」

「はああああ!?」

追加。この人目が大きい。リアクションにも磨きがかかるな

「何どういう事それ!!」

ついには俺の肩を掴んで揺さぶってきた。ぐわんぐわんぐわん

「いやね、こうして話してても芹沢さん面白いからこれは小説にした方がいいなと思ってすぐさま生徒会長の元へすたこらさっさと」

「お兄ちゃんの所行ったの!?」

お兄ちゃんか。この歳でお兄ちゃんは貴重な存在だな。これは指摘しないでおこう。天然記念物万歳

「芹沢徹(せりざわ とおる)···なんと!?こんな偶然が!?」

「絶対知っててやってたでしょそれ!!」

「そんな事はない。変更手続きしてる最中に『あんな妹でよければよろしく』って言われたけど」

「お兄ちゃん変なこと言わないでよ!!」

すぐさま生徒会長(おにいちゃん)に電話する

きっとこの人ブラコンなんだろうな。だから人付き合い苦手なんだろうな

「でもあの人ってすごいよね。アメリカン・ユニバーシティ・プレパトリースクール行くって」

「···ずっとそばにいられると思ったのに」

小声でも聞こえるよ

この人は怒ってても拗ねててもかわいい事が分かった

今日もいい日だ

「あ、そうそう。芹沢さんがキャバクラへ行く話に戻すと」

「そもそもしてないからねそんな話!!」

「芹沢さんと話してて面白いからこれを本にして出そうかと」

「·····本気で言ってるの?」

「マジだよ。出版社も決めてるくらい」

「どこへ持ってくのさぁ?こんな会話だけで対して動きのない物語。文芸部だよ?」

さすが本好きなだけあってどんなストーリーになるかわかってるか

「会話劇プラス芹沢さんのストリップで売る」

「絶対脱がないし売れないしわたし胸ないしそもそも中学生にさせるなバカーーー!!!」

「まあストリップは冗談だけどさ。売れる要素ゼロだろうし」

おお芹沢さんの眉ピクピクは貴重だ。本人の許可が出るなら写真と動画に納めときたい

「まあ実際はここの読書部の活動プラス俺が芹沢さんの事を知るために色々調べるんだけど」

「···お兄ちゃんは禁止だからね。喋らないように言っとくし」

「大丈夫大丈夫。もうそこはすでに把握してあるから」

「お兄ちゃーーーーーーーん!!!!」

もう顔の赤色がとんでもない事になってる芹沢さん。ここは写真撮ってもいいよね

「撮んなし!!」

もう撮った後で手で押さえても意味ないよ

「消して!!今すぐに!!」

「俺と芹沢さんの愛の証を?」

「そんなものは毛頭ないから!!さっき撮った写真を消して!!つうか携帯を貸せ!!」

「キスしてくれたら携帯貸すけど?」

「消す意味なくなるでしょそれ!!愛の証残そうとしないでよ!!」

「そしてそこを撮って携帯を貸さないという」

「悪魔なのあんた!?」

「そういう芹沢さんは5歳の時、将来は天使になるって家族に言ったことがあるとか」

「分かった。あんたの記憶を消せばいいのね」

今日はこのくらいにして帰りますか

「待てーーー!!!逃げんなーーー!!!」

男の全力疾走にかなうはずがない



またとある日の読書部

「は!そういえば元々は読書部なのに読書してない!」

「あんたのせいでしょ!!」

「まぁ今は文芸部だからいいか」

「書いてもいないでしょ!!」

「それは書くネタが貯まらない事には書けないから」

「知ってる?部活として続けていくにはそれなりの成果がないといけないんだけど」

「そこは生徒会長に芹沢さんの恥ずかしくて赤くなった顔の写真を送ったら問題なしって事になってるし」

「まだ残ってたのあれ!?消してって言ったでしょ!!」

いやぁ話がよく分かるお兄さんで助かるわぁ

芹沢さんは机を回り込み俺の方へ向かおうとして胸からこけた

そして俺はその上に座った

「座らないでどいて!!」

「どいたら写真消してくるでしょ?」

「重いんだけど!!」

「これが逆の立場でも同じ事が起こりうるという」

「あんた後で覚えときなさいよ!!」

まあ女に負けるような体重差はしてない訳じゃないけど痩せ型だし

でも、この人が細くて小柄なんだよ

「あ、ブラの紐緑なんだ?」

「見るな!!」

「大丈夫。芹沢さんに似合ってるから」

「どこ目線よそれ!?」

「でもこんなに太めの紐じゃなくても芹沢さんの胸なら食い込まないと思うんだけど」

「気に入ってるのそのブラ!!いいからどいて!!!」

「写真の為ならこのくらい。でも芹沢さん本当肌白いよねえ、背中だけだけど。うなじのラインもいいしあ、この背中の真ん中にほくろが」

「わかった!!分かったからその写真はあげるからそれ以上脱がさないでよお願いだから~~~~~~!!!」

正義は必ず勝つ




またまたある日

「芹沢さんっていつも俺より先に部室(ここ)来るよね」

「気づかなかった?ここのすぐ横の教室。わたしのクラスなのよ」

「じゃあ芹沢さんが3年になるまでは勝てないと」

「そういう事ね」

いつもと違って大人の余裕を見せる芹沢さん

はっきり言って子供っぽい。そしてかわいいだけで先輩らしさがない

「じゃあ勝負してみませんか?この1年間で俺が芹沢さんより早く部活に来れたら何でも言うことを聞いてくれるって条件で」

「あらいいの?勝っちゃうよ?」

「いいよ」

「じゃあわたしが勝ったら···ずっと『先輩』って呼んでよ」



そして翌日

「お疲れ~」

「あんた6限目体育(プール)なの分かってて勝負するのは卑怯でしょ!!」

水気の残った髪の毛とセーラー服が所々水で透けている芹沢さん

「さーて何にしようかな~」

「胸見せてとかは無しだからね」

とっさに胸を隠す芹沢さん

「大丈夫。そもそも見ようと思わないし」

「ねえ?一応わたし女子なんだけど?」

「ドライヤーで髪乾かせて」

「······え?そんなんでいいの?」

「うん。そのためにほら、ドライヤー持ってきたし」

「うわ~。何もかも確信犯だこいつ~」

否定はしない

「じゃあはい、そこ座って」

そう言って芹沢さんの椅子を少し後ろに引く

「じゃあ」

「温めておきましたので」

「今夏だから。そして座ったのか?変態」

「まさか」

「だよねえ。女子の椅子に座るなんて」

「匂いは嗅いだけど?」

「警察に通報していい?これできる案件だよね?」

そもそも今までのもグレーゾーンいってるような気がするんだけど

そして家から持ってきたドライヤーをセットする

「あ、待って」

「何?お尻がアーモンド臭の先輩」

「わたしそんな匂いさせてないからね!!絶対木の匂いそれ!!」

「それより先輩呼びしたんだから喜ばないと」

「その前の呼び方に異議を申し立てる」

「じゃあ間をとって芹沢さん」

「ねえそれ何の間!?戻っただけだよね!?」

「先輩と呼んでも異議を申し立てる芹沢さん。芹沢さんには先輩と呼べるオーラがないから呼ばない俺。ほら、両者の間をとってる」

「あんたそんな風にわたしの事思ってたの!?」

「で、早く乾かさないと痛むでしょ。ほら座って座って」

「なんか釈然としないなぁ」

「じゃあやるよ」

「あ、待って。ドライヤーはこっち使って」

そう言って芹沢さんは自身の通学鞄からドライヤーを出した

「これ。何か違うの?」

「わたし、軟毛って言って簡単に痛む髪質だから市販のドライヤーより弱いやつ使ってるの」

「ほーほー」

「で、それのハードじゃなくてノーマルにスイッチをあわせて10センチくらい離してやってくれる?」

「なるほど。つまり今はハードプレイよりノーマルプレイの方が好きだと」

「ねえわたし女子なんだけど!?変な話しないでくれる!?」

そしてこの日は芹沢さんの髪の毛の柔らかさと滑らかさを実感し、目を細めたりして気持ち良さそうにしてる芹沢さんの顔の可愛らしさをドライヤーの音でうまく隠して写真を撮りまくった

「ふあ~~~~」

「大丈夫?(髪の毛)痛くない?」

「ん?平気。(手櫛が)気持ちいいし」

「じゃあもっと(髪の毛の)奥までいくね」

「いいよ」

録音もさせて頂く事にした

この人はどうしてこうも面白いコメントができるんだろう

「ちょっとそこやめっ!くすぐったいって!」

「ああ、首元(ここ)弱いんだ」

「やめてよぉ」

都時彰は芹沢楓の性感帯を手に入れた

「よし、できた」

「ねえ?もしかして(ドライヤーで乾かすの)他の女の子と経験済み?」

「違うよ。初めて」

「にしては上手いわね」




そして夏休み

「ちょっとあんた!!」

「俺はあんたなんて名前じゃありませーん」

「ぐぬぬぬぬ!と!都時くん?ちょっと降りて来てくれる?」

俺は家にいるのだが、なんとあら不思議?芹沢さんが俺の家の前に来ているじゃありませんか

まあインターホンの前で立ち往生してる芹沢さん。モニターでその様子を見てる俺という構図なんだけど

「俺は今課題をやっているので降りられないんだけど」

「ならせめて開けてくれる?暑いのよ」

それはそうだろう。今日の最高気温は35℃、現在13時00分のこの時間はそのピークといえようか

ここで注目すべきは芹沢さんが私服であるということだ

水色のワンピースに麦わら帽子とビーチサンダルというファッションだが芹沢さんに似合っている

芹沢さんは服の胸元をパタパタやっているが全然色気がない

「俺がここを開ける理由がない」

「わたしはあるんだけど!?」

「どうしようかなあ~。『あけてくださいごしゅじんさま』と言ってくれたら開けようかなあ」

「あんた、調子に乗って···ねえ?ご両親とかはいないの?」

「今2人して北海道に行ってるからいないよ。親戚の集まりもないし」

「あんたをどうにかしなきゃいけないと···」

「そういうことだよ芹沢くん」

「ねえ?わたし明智小五郎ポジションなの?」

「マジな話今エロDVD見てるから引き取ってくれる?」

「絶対嘘よね!!やってたら捕まるよ私達中学生だしそもそも売ってもらえないでしょ!!」

「まあ嘘だけど」

「ねえ時間ばっか使わせないで開けてよ~~~~~!!!」

「ならどうするかさっき言ったよね?」

「ふざけないでよ···」

「さあ···いつでも録音OKだよ?」

「やるかばか!!」

「じゃあここまでだね。」

「ねえ。あんたまた勝手に写真撮ったでしょ!!」

「あらいやだ。何を根拠に?」

「お兄ちゃんが全部吐いたんだからね!!だから今すぐに開けないと反撃はもっと恐ろしいものになるからね!!登校日になったら覚悟しなさいよ!!」

「じゃあそれまで待てばいいじゃん」

「うぬぬぬ!···あんたあの会話録音したでしょ」

「録音?何の事やらさっぱり」

「お兄ちゃんが洗いざらい全部吐いたって言ったでしょ!!あんたがドライヤーで私の髪乾かしてる時の会話がその····やらしい事してるみたいに聞こえるからそれをお兄ちゃんが本当にしてると思い込んでて、わたしがいくら説明しても聞かないから今、家族全員から距離置かれてるから困ってるの!!お願いだからあんたからも説得してよ!!今居場所なくて会話できなくて心が痛むの~~~~!!!」

「いや、でもあれはそれっぽく聞こえるように言ってる芹沢さんにも問題があるんじゃないかと」

「うぐぐぐ!た!確かに後で聞いてみるとしまったわたしって思ったけど!!でもそんなの流したら勘違いするって分かるでしょ!!」

「そもそもあの音声を何と勘違いすると言うのだね?ただの男女がドライヤーで髪を乾かしてるだけじゃないか」

「だ!だから···やらしい事って···」

「何がやらしいというのだね芹沢くん。そのやらしいとは一体どういう意味なのか説明したまえ」

「うう~~~~□▶◇▼◈◆▶◻☀♔」

「呻いてたって分からないよ」

「いい加減に開けてあげなよ都時」

そういうと椎堂が2階からやってきた

「椎堂。また隣の自分の部屋から窓づたいに来ただろ」

そうして、勝手知ったる風で俺の横を通りすぎ鍵を開けた

「都時がクーラー使わずに網戸にするの知ってるからね」

「ありがとう~~~~~。え?誰?」

「俺の家のメイド」

「ええええええ~~~~~~~~!!!!」

「都時嘘をつかないで!家が隣のただの幼なじみだからね!」

「ど!道理で胸が大きいと思ったら」

「ねえ?メイド=(いこーる)巨乳ってどうなの?」

「大丈夫。この人の平常運転だから」

「ねえ?あなた名前は?」

「椎堂蓮だけど?」

「都時家のメイド。椎堂蓮か」

「ねえ?メイドじゃないんだけど?聞いてる?」

「あんたそれ何カップ?」

「Fカップだけど···」

「あんた、わたしなんかAカップなのにねぇ。で、あいつにどこまでされたの?」

「されてない!!」

「メイドなのに?」

「メイドじゃないしメイドだとしてもされるのはおかしいよ!!」

「であんた。このメイドはいつから雇ってるの」

「俺が小学校に入る頃に雇ったの」

「ねえ都時。この妄想が一人歩きしてる人どうにかしてよ~」

「あ、椎堂。この面白い人が文芸部の先輩の芹沢楓さん」

「文芸部!?先輩!?ねえ?文芸部って変人が集まるってきくけどそれなの!?」

「で、芹沢さん。こっちの椎堂蓮は俺と同じ学年で正真正銘幼なじみなの」

「こうはい~~~~!?なのにこの胸って!?成長期仕事どうなってんの~~~!!人生多く生きてるわたしにも恩恵ちょうだいよ~~~。どうしてこうなったのよ~~~~!!!!」

「ちょ!!やめ!!揉まないで!!知らないってば!!中学に入ってから胸がスリーカップくらい上がったけどわたしも訳わからなくて」

「はあ!?あんたバカ!?」

某エバですか。体型的にも似てるからいいけど

「後輩の癖にわたしより胸がでかいとは何様よ~~~~~~!!!わたし先輩なのよ!!」

「だから知りませんって!!都時助けてよぉ!!」

「眼福眼福♪」

「裏切り者!!!!」



「···で。芹沢先輩としては今家の中で勘違いが起きてるのを何とかして欲しいと」

「勘違いなんてレベルじゃないわ。冷戦よ冷戦。ったく!何が悲しくて1人だけご飯別メニューにされなきゃいけないのよ!」

「でも都時、君もさすがにこれは親御さんに説明に言った方がいいぞ」

「もうすでに言ったぞ」

「はああああ!?ってわーーーー!!!」

芹沢さん、今俺の部屋でテーブルを囲んでお茶を三方の前に置いて会話中に机を叩いて前のめりにこの反応。おかげでお茶がこぼれて自身のスカートにかかってる

芹沢さんは俺のべットの上にティッシュがあることに気付き、ベットに上がってティッシュで拭き取ろうとするが、スカートをめくっているため黒いショーツと艶かしい太ももがあらわに

やったね芹沢さん、色気が出たよ

「ちょ!ちょっと芹沢先輩!ストップストップ!!」

すかさず椎堂が止めに入る

タイミングの悪いやつめ

やっと事態に気付き悲鳴をあげている芹沢さん。自業自得じゃないか?こちらを睨んだところでなんにもならない




「芹沢さんが玄関についたときに、生徒会長にライ〇しといたんだ。『ただドライヤーで芹沢さんの髪を乾かしてたときの会話なので。芹沢さんはまだ処女です。このままじゃ一生処女かもしれません』って」

「大きなお世話よ!!」

「生徒会長?····芹沢徹···って芹沢先輩って生徒会長の妹なの!?」

「先輩をつけてくれるのは嬉しいけどタメ口はやめて椎堂さん!」

いや。現時点の椎堂の評価が同い年になってるんだと思う

なんか目を離すとあぶない妹くらいに見てるかもしれない

「はぁ~~~。じゃあ何?わたしここまで来たのって無意味?」

「俺に胸チラと太ももと黒色のショーツを見せてくれたという功績がありますよ」

「それ汚点って言うの!!絶対功績じゃない!!」

「それとは別に生徒会長からライ〇で『すまなかったと妹に伝えてやってくれ』ってきてるから今日はこのまま俺の家で遊ぶという手もありますよ」

「とか言って襲う気でしょ」

自分の体をかき抱いて警戒する芹沢さん

「でも椎堂もここに来ること多いけど間違いが起きたこと1回もないよ」

「え!?あなたそれ大丈夫!?あんな巨乳がそばにいて思春期真っ盛りな中学生男子がそれで大丈夫!?」

「ねえ?私を性的に見るのやめてくれません?巨乳(これ)も大変なんですよ。重いし肩凝るし男子が凄い見てくるから気持ち悪いし。走りづらいから陸上のタイムに響いてライバルに抜かれて2番どまりになってしまうんです」

「いやみ~~~~!!!それわたしに対するい~~や~~~~み~~~~~!!!」

「そろそろ芹沢さん止まりましょうか」

「ちょっと離してよ変態!!」

「女の子を羽交い締めにしたら変態になるのか」

「そうよ。女の子の体に簡単に触らないで!」

「その割には椎堂の巨乳(むね)をものすごい勢いで揉みしだいていたけど」

「女子同士ならOKなの」

「と、言ってますけど椎堂、OK?」

「ちょっとこの先輩はNo Thank Youで」

「というわけだ。残念だったな」

「ねえ何の残念なの!?わたしそこまで椎堂さんに嫌われる事した!?」

「揉み方が強くて痛いんです!!」

「ごめんね椎堂。自分の胸がないばかりに女性の胸の揉み方がわからない人で」

「うっさいわね!!!ないんじゃないわ!!わたしの成長期はこれからなだけよ!!!だからいい加減に離して」

「離したら椎堂の胸を鷲掴みするでしょ?」

「そこまではしないわ!長時間揉みしだくだけよ!!あ、待ってよ!なんでわたしから距離とるのよ椎堂さん!!あなたも貧乳になれば分かるから話を聞いて!!!」

「どうやら判決は出たようですな」

「わたし有罪なの!?しょうがないじゃない」

「とりあえずこのまま芹沢さんに後ろから抱きつくの刑ということで」

「あんたがそうしたいだけでしょ!?」

俺は芹沢さんを後ろから羽交い締めにしたまま後ろに倒れる

「あ、そうだ。生徒会長とのライ〇で『妹さんをお借りします』って打っといたから」

「ちょっと勝手な事をしないでよ!!」

「そしたら生徒会長さん。『どうぞご自由に、なんなら勉強を教えてやるために夏休みじゅうそちらでも大丈夫です』って」

「絶対それ冷戦状態のときに送ったでしょ!」

「違うよ。今『じゃあ夏休みじゅう借ります』って送ったら『どうぞ』って」

「腰に手を回すな!!止めろ!!そしてお兄ちゃんの薄情者~~~~~~~~~~~!!!!!!」

「にしてもこの匂い···カシスオレンジ?」

「嗅ぐな変態!!まぁそのシャンプー気に入ってるから」

「芹沢さんに似合っているからよし」

「ねえ!いつまでも抱いてるのよ!わたし帰りたいんだけど!!」

「じゃあ芹沢さんの小学生時代の写真をネットにあげとくね。そしたらなんと夏休み明けにはネットアイドルに。凄いよね芹沢さんこんな頃は黒髪伸ばしてたんだね。で、6年生になるまでお兄ちゃんとお風呂に入ってて。あ、それは今でもか」

「わかった!!分かったから!!何でも言うこと聞くからネットには流さないでよ!!お願いだから~~~~~~!!!」

「·····なあ都時、私この先輩がかわいそうに見えてきたんだが」

「それはつまり先輩のはずなのに先輩に見えないと?」

「そ·····そんなこと·····な···い···と···」

「そこまで歯切れ悪いならフォローしない方がマシよ!!何よ2人して!!何か協定でも結んでるの!?」

「違うよ。これが芹沢さんの現実だよ」

「もう煮るなり焼くなり好きにして~」

「じゃあさ···ゲームしない?」

「ゲーム?····わたしが負けたらなにされるのよ?」

「そういうのじゃないって」

「じゃあ時間内にわたしのスカートめくることができるかどうかのゲーム?」

「都時···普段から文芸部で芹沢さんと何してるのか想像つくんだけど···」

「ごめんごめん。日頃の行いが悪いのは認めるよ。じゃなくて····Swi〇chあるからやらない」

「テレビゲームか····どれくらいぶりだろ?」

「芹沢さんゲームとかしないんだ?」

「小学生の頃はお兄ちゃんの部屋に入り浸ってゲームしてたんだけど中学からは部屋を分けられたから全然。元々ゲーム好きじゃなかったしお兄ちゃんと一緒にいたい口実だったし」

「ねえねえ、都時。この人ってブラコむぐっ」

おっと天然記念物は保護せねば

「椎堂。長渕弱事件」

椎堂は顔を青くして何度も頷いた

このまま芹沢さんがお兄ちゃん呼びしなくなったら大変だからな。原因の芽は摘んでおかないと

「じゃあさっそくだけどスマ〇ラやろうか?」

「いいけど、あんたたち宿題は終わったの?」


「「·····」」


「やってないのね。そうなのね」

「ま!まだ夏休みは長いし少しくらい遊んだって」

「わたしの家ね。父親も母親も弁護士やってるの。だから芹沢家では夏休みの宿題は2週間以内に終わらせるようにするっていうルールがあるの」

「へ、へえ?でも私の家は父が飲食店だし母は専業主婦だし」

「俺の家は父さんが鉄工所勤務で母さんが小説家だし」

「あんたらの家の都合はいいの。わたしが来たからには宿題終わらせずに遊ぶなんてあり得ないから」

ヤバい···何か芹沢さんの周りの空気が暗雲立ち込めた感じになっているんだけど

「せ!芹沢さん俺の母さんの本読まない?恋愛小説なんだけど」

「話をすり替えないで。そんな本より今すぐ宿題の本を持ってきて」

もう有無を言わさないとはこの事だ

この人、こんな冷たい表情できたんだ。正直驚いている

あ。ずるい椎堂。悪い予感がするからって俺を生け贄にさっさと自分の家に戻っていったぞあいつ卑怯者。

「で、鞄はこれね。うちの中学鞄共通だからすぐ分かるし」

「ねえ?何?この数学の問題集全50ページ空欄って?もう2週間たつんだけど何やってたの?」

「いや、あのですね。···なかなかやる気が出ないと言いますか」

もうこの時点で芹沢さんの表情から見てかなり切れてるのが分かるから怒らせないように注意して発言する

芹沢さんのご両親様。よほどスパルタに育ててきたんですね!

それは余すことなく俺に降りかかってきてるんですが

「やる気が出ない?は?やらないだけでしょ?さあシャーペン持って!全教科終わるまで寝かさないからね!」

机に片手を置いて膝立ちにして上から目線で脅迫する芹沢さん。小さいから嘗められないように···いやただサボらないか両手の動きを見てるだけだ。ガチだよこの人

「け!健康に支障が出るのではないかと」

「は?支障出てから言いなさいよ。そういうのはねえ?1回なってみないとわからないものよ。そして1度少しくらいコンディションが悪くてもできるようにすれば後の人生で自信になるから『あ、自分は体調がここまで悪くてもやりきれたんだ』って。さぁ解き方は教えるから自力で解きなさい」

実際やってみると、芹沢さんが意外と頭良いことが分かった

というより、お兄さんがああだからDNA繋がってるのか

頭から湯気が出そうになりながら数学が終わった

始めたのが14時00分頃で今18時00分だから大体4時間か

「ふう~。終わった」

「終ってないわよ。他の教科もほら」

もう俺の鞄の所有権を芹沢さんに獲られちゃった

机の上には国語、理科、地理。英語と美術の為のポスター製作用の大きめの紙と絵の具セット、アルトリコーダーと楽譜は音楽の宿題。マジかこれ終わらせるのか

「芹沢さん」

ギロッと一睨みするだけで恐怖に震え上がる

「····何?」

「音楽は近所迷惑になるから···やらない方がいいかと」

「そうね。夜中にやると安眠妨害になりそうだからまずそれからやろっか」

やぶ蛇だったかもしれない

「じゃあ···去年と変わらないか。じゃあ滝廉太郎の花 できるようになるまでやって」

鬼かこの人

恐怖に震えながらやってるとどうしても息が詰まってしまい曲の途中で止まるため何度もやり直しをくらう

リテイクが100を越えた頃には20時00分になろうとしていた

「ねえ?なんでこんな簡単な事が出来ないの?」

芹沢さんが怖いからですなんて言えない

一音の一音の流れまでおかしいとストップかけるし。俺、プロの楽団になりたいんじゃないのに

「ごめん」

すると芹沢さんの表情がいつも通りになった

芹沢さんは顔に手を当てて申し訳無さそうにしている

「昔から両親にこの手の教育方針食らってるからついスイッチ入っちゃって。何をやるにしても徹底的にってよく言われたなぁ」

「芹沢さん、よくこれで精神もってるよね」

「馬鹿言わないで、実際はこんなもんじゃないわよ」

「そ!そうですよね!」

そしてお互い顔を見て笑ったあと

「これ以上のスパルタだったから」

芹沢さん。目が死んでますよ

マジですか芹沢さん

「でも凄いじゃないですか?こんだけ芹沢さん頭良いんだから」

「何言ってるのよ。お兄ちゃんに比べたら全然」

「そうなの?」

こくりと頷く芹沢さん

「わたしなんて夏休みの宿題に2週間もかけちゃうのにお兄ちゃんは1週間で終わっちゃうから」

それはちょっと違うような

比べてる次元が違うというか

でも、他所の家の事情なので口出しするわけにもいかない

「お兄ちゃん、テストの順位毎回1位取るからわたしもそうなるように親から言われるの。わたしだってがんばってるのに···5位どまりだから」

なんだろう。いますぐその親に文句を言ってやりたい気分なんだが、それは出来ないだろうか

「にしても、ここまで来ると音楽くらいクリアしたいわね」

「芹沢さん。お腹空いたので1度ご飯にしたほうが」

「そうね。何か作ろうか?」

「え?芹沢さん料理できるの?」

「あんたわたしを····バカにしてるから先輩呼びしないのよね?」

「そんなことないですよ!!何か芹沢さんは頼りにするというより守ってあげたい女性って感じがするから親近感が湧くんですよ!!」

「物は言い様よね」

「ほ!ほら!芹沢さん料理もできるから女子力半端ないですよ!椎堂なんてからっきしですからね」

「両親がよく家を留守にしてるから自然に身に付いただけよ」

「じゃあ洗濯や掃除、裁縫もできるの?」

「洗濯掃除なら···でも裁縫はだめね。指に指すし」

「さすが期待を裏切らないドジっ娘クイーン」

「ドジっ娘クイーン言うな!あのね。わたしはドジじゃないの!焦って失敗するだけなの!」

「でも芹沢さん。椎堂に比べたらましですよ。あいつはからっきしなんで」

「え?からっきしって?」

「全部できません」

「料理も?」

「火加減やら手順やら滅茶苦茶です」

「掃除も?」

「片付けようとすると別の所が散らかってる有り様で」

「裁縫も?」

「全部母親任せで」

「ちょっと椎堂さんの家に行きたくなってきたなぁ」

「どうぞどうぞ」

「ねえ?顔が笑ってるのは何故なのかしら?」

「ち、違うよ!ほら、芹沢さんも女の子だから女の子同士の方がいいだろうし、もう暗くなってきたし」

「もうどういう魂胆か分かったわ。よし、じゃあこの全教科終わったら一緒にプールに行ってあげるからご飯の前に音楽(こ)の宿題片付けて」

1発でできた

「出来るじゃないの!?」

「プールの力は凄いって事だよ」

「なら始めからやってくれればいいのに」

半眼で睨まれる事にもう慣れてきてしまった

「にしても、言っといてなんだけどわたしでいいの?胸ないし」

「何言ってるんですか!芹沢さんとプールですよ!魅力的な女性と2人っきりってご褒美ですよ!」

「そ!そう?」

芹沢さんもまんざらでもなさそうだ

「椎堂も呼びましょうか?」

「あー····それも考えたけどあの子の水着姿見た瞬間に怒りでポロリさせないか不安だから」

「あ~~~~。なんかありえそうで怖いですね。最悪そのプール出禁とか」

「まったく。生命の不平等なんてありえないわ」

「じゃあ俺、英語の宿題やってますので」

「分かったわ。じゃあ冷蔵庫のもの使うわね」



そして出てきたのは冷やし中華だった

「すげえ!芹沢さん女子みたい!」

「女子なんですけど!?」

「食べていい?」

「その為に作ったんですけど···どうぞ」

「うまうま。うちに冷やし中華なんてあったんだ」

「あんた自分の家の冷蔵庫くらい把握してないの?」

「お茶の位置くらいは把握してるかな」

「それでよく生活できたわね」

「料理は専ら母親任せなんで」

「そういえばお母さん小説家なんだって」

「うん、恋愛小説家。芹沢さんは『会いに行き、愛に生きよ』って本知ってる?」

「あの昨年実写映画化も決まった30万部越えの?」

「やっぱり知ってたか。あれの作者が俺の母親」

「ホントに!?あの高井アキさん!?」

「ペンネームまでは知らないけど」

「ねえ?なんで実の息子が母親のペンネーム知らないのよ?」

「知らなくても家族としては成り立つでしょ」

それから俺の母親がいる時に会いたいから連絡してくれと言うものだからスマホの連絡先を交換することになった

冷やし中華も食べ終え、芹沢さんが皿洗いまで買って出るのでその間に宿題を済ませる事にした

そして芹沢さんが戻って来る頃には英語の宿題だったプリント両面印刷の25枚が終わっていた

「やればできるじゃないのよ」

「プールの力だよ」

「ここまでくると呆れるわね」

「ちゃんと約束は守ってくださいよ」

「わかってるわよ」

「ちゃんとこの水着着てきてくださいよ」

そう言って俺のスマホに映っている水着を芹沢さんに見せる

「ほぼ紐の水着じゃないのよ!!そんなのわたしがきたらポロリじゃない!!」

「だめかー」

「当たり前でしょ。はい続きやるわよ」

そう言って国語に取りかかる

ここはなんとか終わった

だがこの時、時刻は夜中の11時00分を回っていた

正直少し眠い。さっきから文字やら数字やらアルファベットやらを見続けているため目の疲労が半端ないのだ

なので芹沢さんは残りの地理と理科と美術を終わらせようとするのだが

「もう無理···」

「何言ってるのよ。ここまでやれたんだから最後までやりきるわよ」

「眠いんだよ~」

「わたしだって眠いわよ」

「芹沢さん。寝不足は肌荒れの原因になりますよ」

「大きなお世話よ!ほら、プールの約束はどうしたの?」

「それでも睡眠欲求には勝てません」

「意気地無し」

「なんとでも言ってください。そんな約束、芹沢さんの一言でどうにでもなりますし」

「なに?わたしが反故にするとでも?」

「だって家族と旅行だとかになるかもしれないじゃないですか?いつに行くかも未定だし」

すると少し怒った顔をした芹沢さんが俺の耳元で囁いた

「家族でどこかに行った事はないわ」

「······」

「仕事詰めなのよ、あの両親は。まあ、子供に英才教育させたいって思いがあるのは分かるけどね」

「·····じゃあいつなら空いてます?」

「都時くんが空いてるときでいいわよ。わたしはいつでも」

「じゃあ明日!」

「この宿題終わったら寝なさい。さすがにわたしも疲労困憊では行きたくないし」

「それなら1週間後の8月14日で」

そしたら芹沢さんがニッコリと笑っているのが見えた

「分かったわ。それならその日空けとくわ」

それからは速かった

地理も理科もプリント両面印刷25枚の宿題を終わらせる頃には深夜の2時を回っていた

その頃には脳も体も無理して起きてる状態だったからまともな精神状態ではなかった


それは芹沢さんも同じだった

だがあとこの美術さえ終わらせれば解放されるんだというその一心は両者同じくしていた

俺は一階の洗面台から水彩絵具用の小さなバケツに水をくみ、ふらつきながらも2階に上がり。 芹沢さんは禁煙告発ポスターの構図をどうするか真剣に考えるという本人がやらなければ力にならないという本来の目的から逸脱した行為をしていたが、事ここにきてはそんなことは気にならなくなっていた

そして芹沢さんの導き出した構図から計算された配色を俺が指示を受けパレットに出すのだが、なぜか謎のクリエイター魂を発揮し芹沢さんに反論

そこへ芹沢さんも脳内のアドレナリンがヤバい事になってるのか謎のクリエイター魂なのか、はたまたその両方なのかは定かではないがその意見は頑として聞き入れず自分の持論を展開するというカオスな事態になっている。

かくしてできた作品は後に優秀作品賞を獲ったとか獲らないとか、そもそもお前ら文芸部だろうがそんなものに力入れてどうするんだ。なんでこの学校は読書感想文がないんだよとか外野からは言いたい事は山積みなんだが一言で言うならこうだろう


そんなんどうでもいい


かくして出来上がった作品を前に2人は抱き合った

もうテンションは甲子園で優勝したチームのようだった

「せりざわさん」

俺には思考も定かでない状態で芹沢さんを読んでいた

「なに?」

目がとろんとしてる芹沢さんも特に考えずに返事をしてるような状態なのが声色から伺える

「きすをしたいな~」

多分覚醒してたら言えないだろう台詞だがこの時理性は完全に手放していた

「え~」

でも芹沢さんは拒否をする。当然だろう、でもテンションがハイになっているのか顔が笑っているのがわかる

「ほっぺでいいから」

「しょうがないな~」

簡単にOKしてくれた

そして少し背伸びした芹沢の右側の髪の毛を視界の右端に入れながら頬に柔らかい感触がした

「ねー?くちにもしたくなっちゃったな~」

「え~?ほっぺにキスされてうれしくないの~?」

「すんごくうれしい」

「ならいいじゃない」

「でも~もっとしたくなっちゃった」

「そうか~。ならしかたないね~」



そして芹沢さんはその場で崩れ落ちた

そして俺も頭に衝撃を食らったと思ったら目の前が真っ暗になった

「仕方ないわけあるか。目が覚めたらまだ明かりがついてるから入ってみたら······2人して何やってるのよ」



そしてやってきた8月14日の午前9時

忘れる訳がない。今日は芹沢さんとプールに行く日だ

だけどあの約束を交わした日の美術の宿題からの記憶がないのだが、大丈夫なのだろうか。ゾーンに入っていたといえばそこまでなのだろうが、どうもすごいことされてるような気がしてならない

あの後朝起きたら芹沢さんは椎堂のマンションで寝ていたらしく帰って行った旨を椎堂から伝えられた


芹沢さんに連絡をしてみたが向こうも頭が痛いらしく美術の宿題からの記憶が消えていると真剣に言われた

と、そんなわけだが芹沢さんは····と、いた

「おまたせ」

「おう。て待って」

無事芹沢さんが時間通り来たのはいい

ちなみに今日の芹沢さんのファッションは水色のノースリーブシャツに下を白のショートパンツとスポーティーな感じで胸のない芹沢さんにはぴったりである

だが似合うよとか、そんな質問の前に言いたい事がある

「なんで椎堂が後ろについてるんだ」

「アッハハハハ···」

そう。苦笑いしている芹沢さんの後ろには瞳孔が開きっぱなしの椎堂が芹沢さんの背中越しに俺をガン見している

「都時、ひどいじゃないか。幼なじみを置いて2人で抜け駆けしてプールなんて」

「これには色々あるんだよ。んでなんで椎堂がここに」

「あ~。実はわたし、駅前を歩いてたら3人組の高校生の男の子たちにナンパされてて」

自分で言ってて恥ずかしいのかこちらに視線を合わせず少し赤い顔で説明を始める芹沢さん、これもこれで貴重だから写真に残しとくけど

「え?芹沢さんのくせに?」

「ちょっと待って!なんでさりげなく写真撮ってるの!?そして『くせに』っ何!?わたしも女なんですけど!?」

「でも、芹沢先輩本心としてはまさか自分がナンパされるなんて思いもしなかったって感じじゃない?」

椎堂が苦笑まじりにそう言い放つ

「うっ!ま、まぁそうなんですけど··なんでかなぁ」

「芹沢さん!自分の魅力わかってないですよ!確かに芹沢さんは先輩らしさは皆無ですけど女性らしさは結構高いんですからね。自覚してくださいよ!」

「ちょっと待ってよ!!自覚云々の前にわたし ディスられたんだけど!?」

そして俺に取っ組み合いの喧嘩を挑もうとした芹沢さんを持ち上げ肩にかけて持ち歩くことにする

「ちょっと!!下ろしなさいよ!!」

「街中で喧嘩をするような恥ずかしい先輩は持ち歩くしかありません」

「わたしが恥ずかしいんですけど!?」

プールの約束まで体を鍛えた甲斐があった

お陰で小柄な芹沢さんなら持ち上げる事ができるようになった

「あ、そうだ。なんでそのナンパの流れで椎堂が?」

「その駅前でたまたま通りかかってさ。で、不本意ではあるけど彼氏のフリして回避したというわけさ」

そう言われると今日の椎堂の服装は少し空間を残したゆったりめのブラウンのシャツに丈が腰まである薄手の白いコート、下のズボンをシャツと同じ色と素材にしてある

その為、大きな胸が強調されずに全体にすらっとした感じに見える

だから体型云々はさておき、芹沢さんが彼女役、椎堂を彼氏役と見ることができるという訳か

「で、今日これからプールに行くことも」

「もちろん。芹沢先輩から聞いたよ」

椎堂さんずるい、わたしが少し口を滑らせたら尋問してきたじゃんとかギャーギャー言ってる人がいるが、聞き流すことにする

そして、芹沢さんが騒いだまま市民プール前に到着

「じゃあ私はこれで」

ここまで一緒に来た椎堂は施設に入る前に別れる事になった

「え?椎堂も泳ぐんじゃないのか?」

「さすがに水着は持ってきてないのでな」

「レンタルがあるじゃん。ここ」

「レ、レンタルだと····その····入らないから」

「ふんっ!」

担がれた状態の芹沢さんが腹筋で上体を起こし自重を加えたチョップを椎堂に食らわせた

「いたっ!」

「この巨乳族め。ポロリしてしまえ」

「し、しかたないだろ!」

担がれてる芹沢さんからどす黒いオーラを感じる

「そ!それに······今日はあの日だし·····」

「椎堂?何か予定が入ってたのか?なら急がなくていいのか?」

「そ!そうじゃなくてだな!私にとって大事な日なんだ」

「えーと。椎堂の誕生日は11月8日だから違うし俺の誕生日は4月22日だし」

あうあう言って顔を赤くする椎堂

そういうのは芹沢さんの専売特許なんだからやめなさい

「そこですぐ自分の誕生日が幼なじみにとって大事な日って思うってどうよ?」

芹沢さんからジト目で言われてる気がする

「これからは芹沢さんにとっても4月22日は大事な日になったね」

「はいはい。もっといい男見つけたらその限りじゃないわよ」

「と!とにかく私はこれで」

「あ!大事な日ってなん」

困惑顔で走っていく椎堂と思いっきりお腹を殴ってくる芹沢さんの動きは同時だった

すかさず屈み込んだ俺からするすると抜け出した芹沢さん

なんとか声を絞りだし何すんだと言って見上げるそこには鬼の形相をした芹沢さんがまっすぐ俺を見下ろしていた

「いい?今からあんたはわたしとプールにいく。それ以外は考えない。OK?」

他の女に現を抜かすと思ったのかそう言う芹沢さんにはいと言う他なかった



そしてプールサイドで待つこと15分ほど

「おまたせ」

芹沢さんがやってきた

芹沢さんはフリルのついた白のビキニである

「なるほど。フリルと大きく覆うデザインで胸の小ささをごまかしていると」

脛を容赦なく蹴ってきた

「おま·····」

言葉にできない

「水着の女の子相手にすぐ言うのがそれって·····怒るだけじゃなくて帰るわよ」

「すみませんでした」

即刻土下座した

「で·····どうなのよ?」

「え?」

俺は顔を上げると少し恥ずかしそうにしている芹沢さんがいた

ついさっき怒ってた人の顔とは思えないくらいかわいかった

「水着。感想は?まさかさっきのが全てなら呆れて帰る事になるわよ」

「いや!その·····かわいくて似合ってます」

「あ!ありがと····」

かわいいと言われるのは予想外だったのか照れてうつむいている

「じゃあ····はい」

芹沢さんが手を差し出してくる

「え?」

「もう!男だったらエスコートするくらいしなさいよ」

「いやいや!そんな経験ないし!芹沢さんこそ先輩だし経験ありそうだしお願いします」

「ないわよそんなの。言ったでしょ。わたしが男子と話すの苦手だって」

「でもナンパされてたし」

「あんなの全部断ってるわよ!」

「でも俺とはこうして話してるじゃん」

「あんたがわたしの読書部(テリトリー)に入るからでしょ!」

もう怒りなのか恥ずかしさなのかわからないが芹沢さんは怒りと戸惑いが綯交ぜになったような表情でこちらを見てる

「わかりました。ではお姫さま、こちらへ」

「お姫さまやめい!」

「ならばお嬢様?我が君?姫?」

「恥ずかしいから芹沢さんでいいから!」

「よし!本人の許可も取ったからこれからもずっと芹沢さんって呼ぶね」

「しまった!!これから先の事も考えての行動だったか」

そして俺の手をとった芹沢さんから恨みがましい視線が送られる

「まあまあ。ウォータースライダーやろうよ」

「·······ポロリとか期待しないでよ。これほどけにくいタイプだから」

「大丈夫大丈夫。そんなの期待すらしてないっ!」

もう最後まで言わせず首をヘッドロックしてきた

「いたいっ!いたいって!肋骨がこめかみに

当たっていてててて!!」

「わたしが貧乳って!貧乳って!そう言いたいのね!!」

これ俺が悪いのか

ポロリしないのは良いことじゃないか。これじゃさもポロリ期待しててねって言ってるようなものだと思うんだが

だがそんなことをここで言えるほど大胆ではないから言わないが

そんなこんなあってスライダーも無事なにもなく済み、2人でわいわい楽しんだ

その日、市民プールは結構な人数が入っていたので思いっきり泳ぐ訳にいかず最初は水を掛け合ってたのだがそれだけじゃ飽きたらず少し泳ぐ事にしたのだが

俺が先に泳いで後ろから芹沢さんが追いかけるような構図、正直俺的には逆の方がいい

待てこいつ~ アハハ

つかまえてごらんなさ~い キャハハハみたいな

だけど、芹沢さんがあまりに運動音痴(泳げないとは言ってない)で簡単につかまって(冗談半分で思いっきり胸を触って抱き締めたら首を絞められたけど)しまうので逆の形にした

「誰かのせいでまだ息が」

「なんか言った変態」

「いいえ、言ってませんよ芹沢先輩」

「ならよろしい」

挙げ句には警察呼ぶか先輩と呼ぶかの2択を突きつけられた

ちくしょい。いつもなら立場が逆のはずなのに

先輩と呼ばれて芹沢先輩は上機嫌だ

鼻歌まで唄ってる

カメラがあったら撮ってるところだ

監視員さん、カメラ代行サービスやってませんか?

そんなことを思ってると芹沢先輩の鼻歌が突然止んだから振り向いた

すると芹沢先輩が溺れていた

「ぶはっ!たすっ!足が!」

つったのかこの先輩!?

運動音痴とは思ったがここまでとは!!

今いるプールは少し背伸びをすればなんとか顔を出せるくらいの水位のプールだが芹沢先輩は女子の平均より低いので立って背伸びしてもそこまで届かない

なので余計芹沢先輩はパニックになっており、腕をバタバタしてるがすぐさま沈んでしまう

俺も近づくが芹沢先輩がもがいてるのでうまく抱きつけない

すると芹沢先輩が俺の水着をもがいてる手で誤って下げてしまう

俺の息子がもろ見えになったのだろう。上からの泡の量が一気に増えてなくなったのを見て見たショックで気絶したのだろうと思いすぐ抱き上げた

「先輩!芹沢先輩!!」

呼び掛けながら休憩室へ向かう

そこはプールサイドの一角にある全面ガラス張りの20人くらいは入れそうなスペースだった

そこには誰も居なかった

そこの端の四方は70センチくらいの段になっていて椅子代わりなのだろうそこに芹沢先輩を寝かせた

さっきから全然返事がない

もしかして気絶だけじゃなくて水を飲んで溺れてる?

これは一刻も早く人工呼吸をせねばと思い軌道を確保して俺の口で芹沢先輩の口をふさいで息を送ろうとしたところで背中をバシバ

シ叩かれた

生きてる!と思い顔を上げるとそこにはなんともいえない羞恥に顔を染めた芹沢先輩がいた

「き!気絶しただけだから!!」

唇を左手の甲でおさえてそういう芹沢先輩は外側に視線を向けながらますます顔を赤くしてそう言う

そして右手で俺を指さして

「い!いつまで開けてんの!」

開けてる?

分からなかった

「チ〇コ丸見えよ!!」

「キャーーーーーー!!!」

本来芹沢先輩が言うべき台詞を俺が言ってしまう

あわてて上げた

だから芹沢先輩外に視線を向けていたのか

「もうバカ!」

「申し訳ありません。芹沢先輩にとんでもない事を言わせてしまって」

「それは忘れたいから言わないで思い出すから!!」

き!気まずい

両者恥ずかしくて気まずい時間が流れる「ごめん。ありがと」

ん?なんで芹沢先輩が感謝を?

「間違いだったとはいえ溺れてると思って助けたんでしょ?だからありがと」

ああ。人工呼吸の事か

俺の息子御開帳事件が鮮烈過ぎて忘れていた

「い、いえ···」

そう返すのがやっとだった

芹沢先輩の唇の柔らかさとか今になって思い出したから

すると芹沢先輩は俺の顔を両手で挟んで自分の顔に引き寄せて

「いい?あれは人命救助。キスじゃない。だからノーカン、忘れる事。OK?」

芹沢先輩。恥ずかしさマックスの顔で迫っても怖くないですよ

「芹沢先輩、思春期男子にそれは難しいかと」

すると怒るかなと思っていた芹沢先輩が急に上機嫌になり

「あら、そう?なら今からまだ行ってない高台飛び込みエリアに」

「忘れる努力をしますからそれだけはやめてください」

「よろしい」

そこは俺が苦手だから棄権したところだ

平身低頭の構えを見せる俺

すると、誰かが入ってきた

入ってきたのは2名の男女。双方白いメッシュ地に鍔が黒の帽子に小型の無線機、水色のカッターシャツの上に藍色のベストと同色のズボンって待て

「君ですね。ちょっとわいせつ物陳列罪と強姦の罪で署まで来てもらおうか」

警察だった

芹沢先輩の方も女性警官が大丈夫?怖かったよね?と声をかけられる

周りを見るとガラス越しに何人かの警察と共に野次馬がうじゃうじゃいた

きっと野次馬の誰かが芹沢先輩を助けようと思って通報したんだろうけども

これがガラス張りな事に早く気づくべきだった

そりゃあ端から見たら男の部分丸見えの男が弱ってる女にキスしてるように見えるから事件だと思うのも無理ないけれども



結果、警察署まで行った俺達は芹沢先輩が説明してくれたお陰でなんとか釈放できた

お陰で現在時刻午後3時20分過ぎ。お昼をまだ食べていないため食べに行こうかと思ったのだが

「なんでこうなるかなぁ」

俺の母親である都時明江(ととき あきえ)が迎えに来た為、今母さんが運転する車の中に芹沢先輩と2人乗っている

数本の白髪に黒髪を肩より少し長めにし、青色のフレームの細長い眼鏡をした御歳48歳のババアである

本人曰く心は二十歳だと言ってるが無茶言わないで欲しい

実の息子からの心からの願いです

その中で母さんが気を利かせてコンビニで買ってくれたペットボトルのお茶とおにぎり2つをお昼ごはんとしている

「あんた自分が中学生だって事忘れてない?中学生ならまだ親の責任として呼ばれるもんなの」

「自分の書いた小説だって中学生の恋愛とかで2人っきりで出掛けたりするじゃん」

「フィクションと現実を一緒にするな。そういうのはな、ある程度フィクションだから許される範囲ってのがあるの。現実ならアウトでもね」

「あ!あの!高井アキさんですか!?」

芹沢先輩がおにぎりを受け取ってお礼を言ってからずいぶんたっての二言目だった

そういえば会いたいって言ってたっけ

「ん?あなたは」

「あ、わたしあきらくんと同じ文芸部の先輩で芹沢楓と言います!高井先生の事は『オフィショナル』から全部読んでます」

「アッハッハッ!ありがとね。懐かしいなぁ。アレ書いてた頃まだ中学2年だったからね」

「そうなんですか!?あの作品って教師と生徒の恋愛物でしたよね!?」

「だからアレはアタシが当時好きだった先生の事を題材にして書いてるの。内容は妄想だけど」

「すごいですね。それだけで直木賞とっちゃうんですから」

「あんなの偶然の産物だよ。アタシゃ作品のヒットなんてそんな風に捉えてる」

へえとかほーとか感心しきりな芹沢先輩

サインとかねだればいいのに

まだ残ってる2個目のおにぎりの半分を口に入れる芹沢先輩。じっと見られてる事に気づいた芹沢先輩がこっちに見るなと視線で示してくるが、気づかないフリして唇を中心に見ていたら脛に攻撃を食らった

「いっっっっって!!!」

「あ!そうだ、芹沢さんだっけ?サインあげるからうちにあがりな」

「んっ!!~~~~~~~~~!!!」

突然の朗報に芹沢先輩が残ったおにぎりを喉に詰まらせた

まったくこの先輩は

憧れの大先生相手に緊張しっぱなしで喉が渇いたからなのか芹沢先輩のペットボトルのお茶は空だったため、俺の飲んでたお茶を芹沢先輩に飲ませた

やってる方としては赤ちゃんに哺乳瓶与えてる気分なんだが

必死だった為最初は普通に飲んでた芹沢先輩だが途中から間接キスだと言うことが分かり俺の顔に口に含んだお茶をぶちまけた

「きったね!!」

ハンカチが無いため服で顔を拭く俺

「あ!あんたね~!!」

怒りたいけど怒れないのが顔を見れば分かる

すると母さんが笑いだした

「アッハハハハハハ!!いやぁ面白いね楓ちゃん。もし良かったら小説の題材に使わせてよ」

「だめだよ。もう芹沢先輩は俺の小説の題材として使ってるから」

「そうか。あんたも書いてるのか。なら仕方ないね」

「わたし認めてないんだけど!?」

「書くって言ったじゃん?」

「言った!言ったけど認めないって言ってるの!!」

「こんなに芹沢先輩面白いのに」

「わたしはちっとも面白くない!!」

「まあまあ楓ちゃん。彰の気持ちも分かってやってくれないか。アタシだって書きたくなるし」

「だよねぇ」

「もうやだこの親子!!」

車の運転席の後ろ部分に頭を預けて嘆く芹沢先輩だった



そして家に着いたら父さんもお盆休みだったから家にいたので挨拶はしたが堅物な性格のためそれ以上の話はなかった

母さんはまだ世に出てない最新作の本にサインして渡すものだから芹沢先輩は遠慮したが無理矢理受け取らせて俺を置いて車に乗り込んで家まで芹沢先輩が案内して送り届けられた



そしてその後

芹沢先輩からライ〇が来て、もう夏休みじゅうは外出禁止令が親から下された事が書かれていた

親としては心配なのだろう

でも仕事柄なかなか迎えに来れないのも今回の事で分かって

その夜だった

芹沢先輩のことが気がかりで最初のうちは起きてたんだが、それもままならず深夜1時頃には眠っていた

だがそこから1時間くらいして異変が起きた

最初は部屋が暑いなくらいに思ってたが夏だからという理由でほっといたがバチバチという音に気がついて目を覚ますと見ると部屋の中が炎に覆われていた

すると、反対の窓から椎堂が窓を開けて手を伸ばしている

すかさず手を取ると椎堂に引っ張られる形で椎堂の部屋に入る

「逃げるよ!!」

椎堂にお姫様抱っこされながら椎堂の家を飛び出した

「父さんと母さんは!?」

俺はパニックになって椎堂に問いかける

が、椎堂は俺の頭を胸に抱えて抱きしめた

「都時、落ち着いて聞いてほしい。もうすでに私のお母さんが消防に連絡した。もうすぐくる」

「うん」

椎堂の柔らかくて大きな胸に安らぎを覚えて少し落ち着いた

「でも、その時にはもう火は回っていて多分都時のお父さんお母さんは助からないと思う。でも都時だけは助けたかったから」

「うん」

「ごめんね。もっと早く気づいてれば顔火傷せずに済んだのに」

椎堂は泣いていた

そう、これは椎堂の泣き声だ

実際、俺の髪に涙が落ちる感覚がある

「椎堂は·····怪我は···」

「ないから····大丈夫だから」


「今日ぐらいは泣きな。受け止めるから」

もうそこから塞き止めていたものが溢れてきた

優しい幼なじみは何も言わずに、時折背中をポンポンと叩き

消防車のサイレンにも負けないくらいの大声で泣いていた俺の涙は椎堂のパジャマ生地も吸いきって胸の肌にまで浸透していて

でも何も言わない幼なじみに甘えないと崩れ落ちそうで、何も立ち上がれなさそうで

消防隊が消火し終わるまで俺はそうしていた


そして消防隊を押し退け両親の寝室へ向かうと、一体だけかろうじて人間の形をした全身の肌が黒く炭になった状態でベットに横たわっていた

「母さん」

母さんは生きている。そう信じて母さんの仕事部屋へ行くとそこの扉は変形しているのか開けるのにかなり力を入れないとできなかった

部屋の扉の前。そこにうつ伏せのまま黒炭になった人間の遺体があった

椎堂が追い付いて急いで俺を家から出す

もう立つ気力もない俺を抱き抱えてまた椎堂の胸で泣いた



その後は椎堂のご両親の協力を得て通夜葬儀

等が終わり、今後は椎堂の家にお世話になる事が決まった

それだけでなく。その通夜の日に芹沢先輩と生徒会長、ご両親もやってきた

「この度は御愁傷様です」

キャリアウーマンの雰囲気漂う40代前半くらいの女性が挨拶する。芹沢先輩のお母さんだろう

後ろに控える聡明な感じを受ける先輩のお母さんと同年代くらいの男性はお父さんだろう

「楓の母です。後ろにいるのが夫です。先日は娘がご迷惑をおかけしました」

「いえ、そんな!ぼくの方こそすみません!娘さんに嫌な思いをさせてしまって」

「いえ。娘の危機回避能力が低いせいなのでお構い無く」

こんな状況じゃなければこの母親にぶちギレたいところだった

去り際、芹沢先輩も何か言いたそうなのを必死で堪えている様子だった



そしてそのまま椎堂家の家も半焼し為改修工事が済むまで仮住まいであるアパートに住んで夏休みも終わり

2学期の始業式が済み、ひと通りの授業をこなして椎堂のご両親から買い直してもらった教科書の類いを鞄に入れてる放課後に

俺は朝、芹沢先輩から来たライ〇を見直した

『今日から文芸部の活動はお休みします』

『ですが椅子の匂いを嗅いだりしないように』

プンプンと怒っている猫のイラストスタンプ

正直、休み明けには芹沢先輩に会いたいと思っていたから少しショックではある

だが、芹沢先輩の母親の性格を推測すると男女2人だけで同じ部屋にいるのは何か事件が発生しやすいと考えての事なのだろう

やりすぎなのかもしれない。でも警察から事のあらましを聞いてると、今後が心配になるのも事実だろう

俺はまだ 中学生だから親の気持ちはわからない

聞こうと思っても本当の親はもういない

今になって思えば父さんも母さんも良い親だったと思える

仕事一辺倒の不器用な父

フリーダムなように見えて子供の教育も家事もしっかりこなしてた母

こんな時、あの母親はなんて言うんだろう

そんな事を考えながら帰路についた

「ただいま~」

ドカッ!

誰かに俺の頭を叩かれた

というより一緒に帰ってきた椎堂による理不尽を被った

「ひどい」

「ただいまと言いながら女性の胸に顔をうずめられる方がひどいと思うのだが」

「火事の時は味わわせてくれたじゃん」

「あのときは特例だ!!そう安い女じゃないぞ私は!!そして味わう言うな!!」

こんなことを火事があってからずっと続けてるが受け入れてもらえない

キャパの低い幼なじみだ

「今日から学校。クラスのみんなの俺を見る目が痛かったなあ。それもそうだよなぁ、目のとこだけとはいえ顔に火傷があればドン引きだもんなぁ」

「だ!だから私も放課中とかにフォローに回っただろう!」

「椎堂とクラス別だもんなぁ。でも登校した最初のあの雰囲気はひどかったなぁ。授業中も椎堂がいないから心が擦りきれそうだしこの心はどうすれば」

「もう分かったよ!!好きにしてくれ!!」

「わーい」

椎堂の許可も降りたのでおっぱいに顔をうずめる

「····なあ?ちょっと中に入ってからにしないか?」

「ダメ!今が良い!」

「この甘えん坊」

やっといてなんだけど椎堂も甘いと思う

椎堂の胸の大きさと柔らかさを堪能してると

「きゃっ!こら!服めくるな!ブラ下げて舐めるな!」

「吸おうとしたのに」

「はいもうおわり!」

俺が乱したセーラー服を赤くなった顔で直す椎堂。ごちそうさまです

「まったく。お母さんもお父さんの仕事の手伝いで行ってなきゃどしかられてるぞ」

「あ、椎堂」

「何?もうダメだからね」

胸を手で隠してジト目でそういう椎堂に

「ありがとう。これで頑張れそう」

「····そっか」

今まで短い間だったが芹沢先輩と会話してて、それも途切れ。クラスの反応も火事が起きてから急激に変化し、警察から火事の原因が父さんの勤めてた会社の新入社員が注意されたことによる八つ当たりだと知り色々と心にダメージがあったのは事実だった

「でもまだミルクは出ないか」

「出るか馬鹿!!」

また叩かれた



こうして日々は過ぎ去り9月6日

この日の放課後、俺は芹沢さんに部室まで来るように呼ばれていた

なんだろう。あれか?離れてみて分かったの。わたし実はあなたの事が好きみたいとかそんなことが···

でも、あり得なくはない

部活のことでどうこうなんて文化祭関係だろうがうちは休憩所になるって芹沢さんもライ〇で言ってたし

じゃあやっぱりそれか

そう思いながら部室のドアを開けて

「あ、都時くん」

「芹沢さん俺はOKです!」

「キャーーーーー!!!」


開けてすぐ居たので抱きついたら思いっきりビンタされた

「····告白の呼び出しじゃないんですか?」

「違うわよばか!!そりゃあどっちかって言うと好きだけど」

「え?なんだって?」

「なんでもないわよ!!話っていうのは」

「待ってください!さっきの台詞録音したいのでこの機械に向かってもう一度」

「なんで一介の中学生が録音機器なんて持ってるのよ!!」

「そりゃあ男子中学生の嗜みですし」

「ぜったいうそよ!!」

「さあ芹沢さんもう一回、『そりゃあどっちかって言うと好きだけど』から」

「聞こえてんじゃないのよ!!」

机に拳をぶつけてギャンギャン言う芹沢さん

久しぶりに芹沢さんの赤く羞恥に染まった顔を見れて満足する俺

「それと、ちゃんと先輩って呼んで」

「はいはい。その内ね」

「今回はマジよ」

芹沢さんの目が真剣なものになる

「というより今回の話にそれも含まれるから」

これは俺も真剣にならないといけないと感じ姿勢を正した

「まったく、普段からそうしてくれればわたしも言うことないけど。単刀直入に言うわ。

わたし、生徒会選挙に生徒会長として出るから」

「は?」

思わず口を出た言葉と共に驚きが心を支配する

「芹沢さん、人前で話すのって大丈夫?」

「先輩!全然ダメ、コミュ力はトランプタワー並よ」

「簡単に崩れるって事ですか」

「で、都時くんにわたしの推薦者をやってほしいの」

「はあーーー!?」

立ち上がって前のめりに芹沢さんの顔を凝視する

「ちかいちかいちかいちかい!!!!」

俺の頭を手で抑える芹沢さん

若干また顔が赤らんでいる

「芹沢さん、俺今火傷(こんな)顔ですけどドキドキする要素あります?あと、俺を推薦者にするってことは推薦演説俺が出ることになりますよ?心証悪くなりません?」

「前者はノーコメントだけど後者は問題ないわ。わたしは都時くんにやってもらいたいって思ってるから。だから演説でボロを出さないように今のうちから『先輩』をつけなさい。この際生徒会長に決まった後はどうでも

いいから」

芹沢先輩の迷いのない黒くて大きい目が俺を射貫く

その凛とした姿は先輩として見合うものと感じられる

椅子に座り肘をついて手を組む様は某エバのあのお方のように感じられるがここで言ってはいけない雰囲気が芹沢先輩から漂っている

芹沢先輩はあんたバカと言えばいいのに

「1つ聞いていいですか?」

「何かしら?」

「芹沢先輩が生徒会長を目指す目的はなんです?」

一瞬芹沢先輩の眉がピクッと動いたがそれもすぐに冷静な顔になり

「目的はいくつかあるわ。まず、親に言われたというのが1つね」

「またお兄さんを見習いなさいって」

「そうね。正確には兄のように大人らしい。上の目標を目指しなさいって言い方だけど」

兄か。もうお兄ちゃんは卒業か。悲しいな

「でもそれだけで」

「いくつかあるって言ったでしょ。2つめはわたしの学力面に見合うからと、わたしの将来の成長も兼ねてやってほしいって先生に言われたから」

「芹沢先輩、自分の意思ないんですか」

「最後まで話を聞きなさい。先生の話としてはほら 、わたしって人と話すのが苦手じゃない?」

「突っ込むのは得意ですけどね」

「茶化さないで。で、そのコミュ障を克服する目的とさっき言った学力的にどうかって話を受けたのよ」

「ここまで聞くと受動的な理由ですね」

「そこで3つめよ。ここで生徒会長になって

そこで一旦区切って、組んでた手を下ろし、こちらをまっすぐ見つめ


「都時くんといる時間を増やしたい」


時間が止まったかと思った

芹沢先輩は平然といや。若干顔が赤らんで口をむぐむぐ締まりのない状態になっている

恥ずかしければ言わなきゃいいのに

「前なら文芸部としてここに来てたけど今はもう籍だけ置いてる幽霊部員だから都時くんに会う時間もないじゃない?」

「あー······芹沢先輩?言ってて恥ずかしくないですか?俺は恥ずかしいですけど」

「都時くんは何も喋らないで!!あー!!えーと········そう。で、わたしとしては別に良いんだけど都時くんが寂しがってるといけないからわたしと一緒に生徒会活動すれば一緒の時間ができるかなって」

「芹沢先輩、ツンデレするにしても限度がありますよ。本当は自分が」

「喋んなつったでしょ!!!本当は都時くんを会計か書記にぶちこみたかったけど」

「言い方」

「でも先生にそう伝えたら学力が釣り合わないからって断られたの」

芹沢先輩が拗ねた顔をしている。かわいい

この雰囲気なら撮って···いけませんよね

すぐさま顔を手でガードされた

「馬鹿ですみません」

「実際夏休み前の通知表見る限り都時くん、そこまで悪くはないんだけどね。中の上だけど。あれは絶対見た目も入ってるわね」

「何見てるんですか!?」

「都時くん。ここ隣図書室だから静かに」

やられた!やり返された!

芹沢先輩、イタズラ成功みたいににんまり笑顔だし

今日は芹沢先輩の色んな表情が見れる日だな

「まあ、後は進路に有利だからって事かな。以上、今日は帰っていいわよ。明日から忙しくなるから。当選決まったら雑用として呼び出す予定にしてるし」

やれやれ、この先輩がこんな事するなんて予想外だ

俺は鞄を引っ提げて帰ろうとすると「あ、そうそう」と言われ振り向くと


「これ、何?」

芹沢先輩のスマホには椎堂から送られてきたライ〇が表示されていて

前に俺が椎堂のアパートで胸に顔を埋めている時の写真が椎堂の挑発的な笑顔つきで余すことなく写っていた

そして下にはメッセージで


『この後服もブラも脱がされおっぱいを舐めたり吸われたりしました』


『毎日こんな調子です。そちらはどうですか?一回だけの発情期先輩?』


「············」

これから起こりえるであろう展開に恐怖しか沸かない俺は逃げの姿勢をとるが芹沢先輩に襟首を掴まれ、椎堂から送られてきた写真と同じように俺の顔を胸に埋める

「痛い痛い痛い痛い痛い痛い先輩やめてください!!」

「なんで?わたし椎堂さんがしたようにしかしてないんですけど?男の子はこれ好きなのよね?そうよね?」

「せ!先輩は力強すぎなんです!」

「あら?か弱い乙女になんて言い種?失礼ね。夏休みの間だけ空手を習ってただけなのに」

この人はなんて事を!

「はっきり言えばいいじゃない。椎堂さんは巨乳でわたしは貧乳だって。男の子なんてみんなそう、都時くんのベッドの下のエッチな本もみんな巨乳ものだったし」

「いつ見たの!?」

「夏休みの宿題で都時くんがトイレに行ってる時に」

あれは見られたらアカンやつや!!

奥深くにしまっといたのに

「腰回りが細い事で」

「ありがと~。でも都時くんはスレンダーで巨乳な方が好きなようで」

「芹沢先輩。どうかお許しを」

芹沢先輩の肋骨が顔全体に当たって痛いんですと言ってはいけないことはプールの時に学んだ教訓である

「そうね。わたしは先輩だから許してあげる」

あれっ?芹沢先輩ってこうも簡単に許す人だったっけ

まあ良いや。許してもらえるなら


「ありがとうござい」

「部室(ここ)にある本と部屋の掃除が済んだら許してあげる」


それは一般的な1クラス分の教室の半分の広さに、5段の仕切りがあるプラスチック製の本棚1段20冊は入ろうか。

それがびっしり入ったものが出入り口のドアの横の壁に2つと向かい側の壁に3つ

つまり単純計算500冊の本の埃を落とせと

鬼ですかあなた

今18時00分ですよ

「大丈夫大丈夫。あれだけ都時くんに夏休み中ライ〇で『1週間に1度は学校に来て部室と本の掃除をしといてね』と送ったにもかかわらず既読スルーして埃がたまってるのをわたしが空手で疲れてるのを頑張って掃除したから」

あ········あ~·····うん

確かにライ〇を確認するとそんなメッセージが何回も来てる

その時は芹沢先輩が夏休みに外出できない話を額面通りにうけとった結果。まあやらなくてもばれないだろうと思って放置したんだ

だから、これはアレか

俺が預かり知らぬところでと芹沢先輩と椎堂の修羅場が始まっていて、椎堂と違って幼なじみのアドバンテージのない芹沢先輩は俺を生徒会にひきいれて一緒にいる時間を増やしたい

且つ文芸部の後輩が部長の言うことを聞かず埃が溜まり放題の部室に怒りのボルテージは溜まっていて今日断罪しに来たと


その日20時00分を過ぎるまでシンデレラのようにせっせと掃除する俺と意地悪なお姉さんのように「しっかり掃除して。ここにも埃が」といびる芹沢先輩の構図が出来上がっていた



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