大食いトロール

ボウガ

第1話

ある村に大食いのトロールがいた。群れから外れた一匹で、畑を荒らし、人々が食べるものを横取りし、祭りでいたずらをする。困り果てていた村人だったが、他の悪いトロールの群れや集団のように村を壊したり人を襲って連れ去ったりはしないもので、困りながらも優しく見守っていた。というのもこのトロール、一匹だけで身なりはほとんど子供だったからだ。




 何の変哲もない日々が過ぎていったが、しかし、ある時村人の一人が彼に襲われてケガをしたというので、村人たちは少しこらしめてやろうとおもって、大食いのトロールを誘い出すわなと大量の食料品を誘い出す罠の装置の一部に設置した。トロールは元来あまり頭がよくないので、これで大丈夫だろうという事になった。




罠にはめようとする当日、トロールがくるまですべての村人は家の中に隠れた。いつも彼は夕方ごろに現れるのだ、確かにその日もいつも通り夕刻にあらわれ、だが、いつもよりは慎重にいつもと違う様子に、きょろきょろと当たりを見渡している。気づかれたかとおもった村人たちだったが、さすがは大食い、罠の食料品に手を出した。だがしかし、そこでぽつりと言った言葉が奇妙だった。


『人から盗んだものじゃないと、味がしないや』


(まったく、どこまでも意地の悪いトロールだ)


(はやくつかまれ)


食料を平らげた後、あっけなくトロールはつかまり、村人たちになぜ人を襲ったのかと問われる。しかしトロールはというと


『みんな大丈夫だったのか』


と慌てるばかり、村人がくわしくきくと、ここ最近村の周辺を怪しいトロールの集団がうろついていたのでそいつらの相手をしていて村を襲ってなどいないという。襲われたと話した村人を問い詰めると、トロールが気に食わないので嘘をついたと白状をした。丁度いい機会だからと、村人たちは大食いトロールに怪しいトロールをおいはらってくれた理由と村で悪さをする理由を尋ねた。



トロールは答える。

『昔から、生まれたときからオイラは別の種族なのにこの村のはずれに一人ボッチだった、子供の頃に親が亡くなってからは、空腹を満たすことが楽しみで、空腹を満たすためには、楽しそうな村人の輪の中に入るのが一番だとおもった、だがいつも村人はオイラをみては《襲われる》と言って逃げるので、おいらは結局そういう方法で空腹を満たすことしかできなくなっていった、仲良くなれないので仕方なく、コッソリと村を守る事だけはしてきた』




トロールの話をきき、村人の中には半信半疑のものもいたが、しばらくこの村で仕事をやり生活させてみようという話になり、そうしたところトロールは人にいたずらをすることも、人の食べ物を盗むこともなくなったから、結局この村は《大食いトロールの村》として大食いトロールと一緒に有名な村になったそうだ。

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大食いトロール ボウガ @yumieimaru

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