第二十八話 『緋色の剣』
人ならざる者であり、人の魂を喰らう者。
全ての魍魎をその手で封印すべく奮闘する少年『
十太郎は
背後にいる
十太郎の両足が地面にめり込む。
額から溢れる汗が地面に落ちる。
「くっ…この…!」
歯を食いしばり必死に耐える。
しかしそれも限界に近づいていた。
「ぐあぁぁあああ…!」
とうとう声を出さずにはいられなくなった。
月乃はその背後から見守ることしか出来ない。
「十太郎…!」
「小僧…耐えろ!」
長子の呼びかけに応える様に、十太郎は再び気を引き締めた。
「上がれぇええ…!」
その様子を見ていた
「ふん!いい加減潰れて死ね!」
巨大な拳の重みから一時的に解放されるが、その場を離れる力は残っていなかった。
十太郎はその場に両手をつく。
その間にも
その時、長子は咄嗟に刀へと姿を変えた。
刀は空中で回転する。
それを掴んだのは月乃だった。
すると
「お前の刀で俺は切れねぇ!」
しかし月乃は
そしてその刀は
「……何!?」
驚く
地面から十太郎の足が抜ける。
すると今度は、十太郎の足元から岩壁が出現した。
そのまま十太郎を乗せて
上を見上げる
「…お前、さっき月乃に『お前の刀で俺は切れねぇ』…って言ってたな。」
「くっ…!」
「俺の刀ならお前を切れるぜ!」
十太郎は
するとその時、十太郎と
そしてそれは十太郎の斬撃を受け止めた。
「なっ…!?」
その正体は
「どうした?僕が君の斬撃を受け止めた事がそんなに不思議かい?」
十太郎が驚いたのは、全力の
「…
次の瞬間、
受け身を取ることも出来ずに地面に叩きつけられる。
「十太郎…!!!」
慌てて月乃が駆け寄る。
「さて…
「けっ…!勝手にしやがれ!」
十太郎はよろめきながらも、月乃に支えられながらなんとか立ち上がった。
「ありがとな…月乃。…でも、今は逃げた方がいい。」
「…え?」
「今の俺達じゃ…こいつらには敵わなねぇ。」
十太郎は険しい表情で
「相手の力量を測れないほど馬鹿では無いみたいだねぇ。それにしても妙な人間だ。魍魎を
「…どうせ殺すんだからね!」
そこには毒々しい紫色の液体が
「逃げろ!月乃!」
十太郎は月乃を庇う様に刀を構える。
「俺に毒は効かねぇぞ!」
すると
そして自らの右手に視線を向ける。
「…そうか。…ならば」
言葉が終わると同時に、その右手は急激に巨大化した。
「え…?」
「毒が効かないなら叩き潰すまでだ。」
それは十太郎の体を余裕で越えるほどの大きさだ。
十太郎は目の前の現実に呆然と立ち尽くすしか出来なかった。
刹那…十太郎の視界は真っ暗になった。
理解が追いつくのにかなりの時間を要した。
痛みは無い…。
訳も分からず、ただ目の前に映ったものを認識した。
それは『
「『
その言葉を唱えたのは女の声だった。
次の瞬間、十太郎の視界を遮っていた
そしてそれは激しい
「くっ…なんだ!?」
「毒爪か…。」
そう呟くと、女は刀に力を込めた。
すると刀は爆発的に妖力を増し、目に見えるほどの
「まさか…貴様も刀に魍魎を…!?」
「出てこい…『
女の呼び声に呼応し、妖気は形を変え、大きく渦を巻き始める。
そしてそれは大きな黒髪の女へと変貌する。
手指の関節を奇妙に動かし、鋭く伸びた八重歯を剥き出し、黒目の無い
「『
不気味な声を発し、奇妙な笑みを浮かべながら出現した。
「この魍魎の爪が邪魔だ。
「もちろん…!!!喜んでぇえ…!!!」
すると
その瞬間、先程まで自身を包む様に渦巻いていた妖気が、大きな十本の刃へと変形した。
しかし、刃が右手に到達する速度の方が
刃は
切れ味が良過ぎるあまり、ただ刃が通過した様にしか見えなかった。
だがその時、
それと同時に大量の血が飛び散る。
「ぐわぁああああああ…!!!」
「あはははははは…!
「良くやった…もう戻っていいぞ。」
十太郎と月乃はこの状況を飲み込めずにいた。
「…誰?」
「わからない…けど…助かった。」
そんな二人を
「後ろのでかぶつもまとめて相手をしてやる。覚悟しろ。」
「くっ…何者だ…この女…」
後退りする
「情けねぇ奴だ!さっきの威勢はどうした
「
「あ?」
次の瞬間、
逆さに映る景色。
「……っ!?」
「
「の…づ…ち…お…おれ…」
一瞬の出来事に理解が追いつかず呆然とする。
「
「どうした?そんなに
「くっ…貴様ぁ…。」
「安心しろ。すぐにお前もあの世へ
その言葉に反応するように刀が小刻みに揺れた。
それはまるで刀の中で、魍魎がけらけらと笑っている様だった…。
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