第七話 『封印の祠』
人ならざる者であり、人の魂を喰らう者。
「『
斬撃はやがて燃え盛る焔へと変わり、牛鬼の体を焼き尽くす。
「ぐぉおおおおおお…!!!」
悲痛な叫びの様な不気味な雄叫びを上げながら、天高く燃え上がる焔に焼かれた。
その姿は次第に灰と化す。
十太郎は燃え盛る焔を見つめる。
「なんか…あんまり良い気はしないな…。」
するとその中に
「これは…?」
十太郎の問いかけに、刀の中から清姫が答える。
「『
「魂…!?」
「これを喰うと妖力が増すのじゃ。今回は
清姫は刀から具現化し、焔に浮かぶ
すると十太郎はあからさまに気を落とす。
「…ってことは…また刀が重くなるのか…。」
そんな十太郎を
「
そう告げると清姫は大きな口を開け、
「よかったぁ…じゃあ刀が重くなる事は無いんだな!」
十太郎は自然と笑顔になる。
「それにしても…随分と
「何だよ…褒めてんのか?珍しい…」
「
嫌味のこもったそれには、何も返さなかった。
するともう一本の刀『
「
天狐の言う通りであった。
百鬼ノ魍魎一の妖術使いである天狐の能力は、ものにすれば大きな即戦力となる。
「お前への条件も考えないとな…。」
「言っただろう。私の望みは私を
「自由ねぇ…。」
「何だ…?」
「お前ら『
今回の牛鬼もそうであった。
村を襲い、人間の魂を求めて暴れる。
十太郎は疑問を抱いていたのだ。
すると天狐が答えた。
「我々には『
「
前にも会話に出てきたことがあった。
その時は清姫が発したものであった。
すると清姫は天狐を
「貴様には関係の無いことじゃ。いずれ死にゆく貴様にはな…。」
「…何だよ…それ。」
「要するに、我々魍魎には本当の自由は無いと言う事だ。」
天狐は会話を終わらせた。
牛鬼の襲来から一夜明けた。
村は復興の為、朝から賑やかだった。
「本当にもう大丈夫なの?」
宿を出る十太郎に、
「あぁ!
そう言いながら、童子切を安の目の前に出して見せた。
すると奥から
「行くのか?」
「うん。世話になった!」
「そうか…。行く
「とりあえず村を転々としながら、魍魎と
『
すると国綱は呆れた顔を見せた。
「ったく…そんな事だろうと思ったよ。魍魎についてはよくわからんが、天下五剣についてなら情報をやる。」
「本当か!?」
「この村から西に向かうと、『
「封印の…刀…」
「父『
十太郎は拳を握りしめた。
「ありがとう!国綱さん!」
「気をつけてね!十太郎!」
「あぁ!安も元気でな!」
こうして十太郎は魍魎・牛鬼から村を守り、西の『
松寺と呼ばれる寺で、仏教を
名を『
彼はあらゆる悪の根源から人々を救う為、
今は修行僧と共に暮らし、平穏な日々を送っているという。
国綱の言う通り西へ進むと、ある寺が見えてきた。
「あれか…。」
十太郎は今にも消えそうなほど小さな声で呟いた。
「国綱さんめ…西に進めって言ったけど、五日もかかるなんて聞いてねぇぞ…。」
十太郎はその場に腰を下ろした。
すると背中に担いだ二本の刀から、清姫と天狐が姿を見せる。
「なんじゃ…この程度で疲れおって。」
「先が思いやられるなぁ…
「ちょっと休憩しただけだ!行くぞ!」
十太郎は大きな足音を立てながら寺へ進んだ。
門の前で大きく息を吸い、寺に向かって叫んだ。
「たのもぉおおおう!!!」
声が
それほど辺りが静かなのだ。
すると天狐が十太郎の背から身を乗り出した。
「妖気を感じるな…寺の方からだ。」
「ほんとか!?」
急いで寺の方へと駆け寄る。
すると、寺の至る箇所に切り傷の様な跡が付いていた。
「…ここで戦闘があったのか…?」
辺りを警戒しながら、寺の奥へと進む。
すると、広間に一人の修行僧が倒れていた。
「大丈夫か!?」
慌てて駆け寄る。
どうやら息はあるようだ。
やがて修行僧は意識を取り戻す。
「恒次様!!!」
勢いよく目覚める修行僧。
次第に状況を飲み込み、冷静さを取り戻す。
「あ…あなたは…?」
「
すると修行僧の表情は曇り始めた。
「それが先程…恒次様が急に修行僧達を襲い始めたのです。」
「え…!?」
寺の周辺の切り傷は、どうやら恒次が付けたものらしい。
よく見ると、修行僧の服には血が付着している。
「他の修行僧は?」
「なんとか逃げ出せました。切られたのが私だけで良かった…。」
「一体何があったんだ?」
十太郎の問いかけに応じ、修行僧は自分の記憶を語る。
「恒次様が『封印の
「封印の祠…?」
「寺の外にある
十太郎は広間から外を眺める。
確かに石の階段が見える。
「封印の祠には、恒次様が自ら打たれた
『封印の刀』が
それだ。
その刀こそ十太郎が探し求めて来たものだった。
「そこに恒次さんが居るんだな?」
「はい。ですがお気をつけ下さい。あれはきっと、邪悪な魍魎の
何はともあれ、向かってみない事には分からない。
十太郎は寺をあとにした。
百段もの石の階段を駆け上がると、目の前に大きな洞窟が待ち受けていた。
「ここが封印の祠か。」
すると刀から清姫が具現化する。
「『
「茶々を入れるな…。」
顔を
冷たい風が吹き抜ける。
上がりきった体温を冷ますには丁度いい。
「小僧…感じるか?」
「あぁ…なんか…こう…びりびりくるぜ。」
十太郎の顔が引き
それ程の妖気を感じるのだ。
辺りは
「気味悪い…。こんなとこに一人で入って行ったのか?恒次さんは…。」
先の見えない洞窟に、ただただ自分の影だけが後ろをついて来る。
妖気は徐々に高まり近づいている。
「恒次さーん!どこだー!」
声がうるさく反響する。
しかし返事は無い。
その時、背後に何かの気配を感じた。
十太郎は素早く振り返る。
「…気のせいか。」
再び前を向く。
すると今度は近くで女の笑い声がした。
「…ふふふ」
辺りを見渡すが誰も居ない。
「こっちだ。」
声のする方へ視線を向けるが、岩の壁があるだけだ。
「野郎…舐めやがって。」
十太郎は声に
見えない相手に苦戦する。
それを見兼ねた天狐が刀の中から語りかけた。
「
「影…?」
天狐の言う通り岩壁に映る影に視線を向けた。
すると先程まで十太郎の形をしていた影が、複雑に形を変え始めた。
「なんだ…?…これ!」
そして影は壁から浮き出し、鋭く尖った
それは十太郎を目掛けて勢いよく飛んでくる。
「影の刃か…!」
すかさず二本の刀で弾き返す。
すると清姫と天狐が反応する。
「ほう…奴か。」
「通りで気付かん訳だ。」
影は徐々に人の形を成していく。
そして長い黒髪の
「
十太郎は刀を構える。
「私は『
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