第三話 『焔蛇ノ清姫』
人ならざる者であり、人の魂を喰らう者。
この物語の主人公『
世界に
清姫は封じられた刀の中から十太郎に語りかける。
「奴は幻覚を見せる能力を持っておるようじゃな。」
「さっきの
清姫の言う通り、最初に十太郎の背後に現れた女は幻覚…本体は
「
すると、さっきまで晴れていた霧が再び濃くかかり始めた。
天狐の姿が消えていく。
「おい清姫!お前の能力は何だ?あの狐が幻覚を見せる能力があるなら、お前も何か能力を持っているんだろ?」
「当たり前じゃ。貴様…
その時突然、十太郎の死角から天狐が飛び出してきた。
そのまま腹に重い蹴りを喰らう。
「ぐあっ…!」
遥か遠くに吹き飛び、大木にぶち当たる。
「いってぇ…。」
「
「お前が
そんなやり取りをしている間にも、天狐の姿を見失う。
「一度しか言わぬからよく聞け。
清姫は自身の能力を自慢げに話す。
「そんなにあるのか…。」
「聞いたところで、人間の貴様には何の役にも立たんじゃろう。」
すると十太郎は口角を上げ、笑みを浮かべた。
「いや…
十太郎は刀に力を込めた。
刀を伝って清姫の妖力を吸い上げ、自らの体内へと流し込んだのだ。
(
すると突然霧の中に赤色の人影が映った。
清姫の体温感知能力だ。
十太郎は天狐の居場所を、体温の色で探り当てたのだ。
「これが…清姫の能力。」
「勝手に使いおって…」
十太郎は勢いよく駆け出した。
天狐はこの先の木に身を隠している。
十太郎は刀を大きく振りかぶった。
「そこだぁ!!!」
木を真っ二つに切り落とす。
本体は
すると天狐は、刀から流れる異様な気配に気がつく。
「この『
「妖気…?へぇ…やっぱ分かんのか?仲間同士だと。」
すると十太郎の言葉に反応し、具現化した清姫が言い放つ。
「馬鹿を言うな!魍魎に仲間など
天狐は目を細めた。
そして笑みを浮かべる。
「やはり
やはり清姫のことを知っているようだ。
今は
「
「色々あってな…。この小僧と利害が一致し、今は百鬼ノ魍魎を狩る旅をしておる。」
天狐はまさかの言葉に
「何があったかは知らんが、主の口からその様な言葉が出るとは…。『
空坊…天狐がその言葉を口にした途端、刀から流れる妖力は爆発的に
「化狐…気安く『
どんどん膨れ上がる妖力。
そして清姫は十太郎に語りかける。
「小僧…良かろう。
清姫は刀に戻り、そして刀は
焔は渦を巻き、刀に
「これが…
十太郎は驚きつつも、その表情は次第に自信で満ち溢れていく。
静寂を破ったのは十太郎でも天狐でもなく、空へ飛び立つ鳥の群れだった。
無数の鳥が羽音を立て、戦場に開始の合図を鳴らす。
両者が勢いよくぶつかる。
天狐は十太郎の刀を素手で受け止める。
焔を
「これが焔蛇の焔か…。なかなか熱いな。」
天狐は刀を離し、右手の鋭い爪を大きく振り上げる。すると地面は、五本の爪の形に
「くっ……!」
十太郎は刀で防ぎ、後方へと吹き飛ぶ。
地面へ着地するが、続けて天狐の猛攻が襲う。
右から来たかと思えば背後から攻撃が来る。
清姫の体温感知が無ければ、
「小僧!一旦姿を隠せ!」
「…っ。簡単に言いやがって!」
振りかかる猛攻の中、十太郎は
刀は地面に触れるなり、
黒い煙は辺りの景色を包んでいく。
その
十太郎は大木の裏に腰を下ろし、身を潜める。
徐々に煙は晴れ、天狐の姿が
すると清姫が刀の中から十太郎に語りかける。
「小僧…奴の姿をよく見ろ。」
言われるがまま、十太郎は天狐の姿を目で捉えた。
するとその光景に驚いた。
十太郎の目に映ったのは、同じ姿をした五体もの天狐の姿だった。
各々が別の動きをし、十太郎の姿を探している。
「…分身!?」
「奴の『
「…どおりで目で追えなかった訳だ。」
「
「あぁ…はいはい…分かったよ。気を付けりゃいいんだろ。」
十太郎は清姫との会話を
「そんじゃあ…第二回戦と行きますか!」
天狐の姿をした五体の分身は、円を描くように配置し、それぞれ異なる方向を
それ
十太郎は木の上を渡り、真ん中に空いた空間へと飛び降りる。
「っぇああああああ!!!」
天狐は声に反応し、一斉に振り返る。
しかしその瞬間、辺りは再び爆煙に包まれた。
天狐は視界を
ここから十太郎の反撃が始まる。
十太郎には、煙の中でも動ける能力が
とうとう最後の一体まで追い詰めた。
目の前の一体が天狐本体だ。
煙はまだ残っている。
これで
十太郎は刀を全力で振り
「惜しい。」
次の瞬間、煙は突風に吹き飛ばされ、十太郎の姿が露わになる。
十太郎は刀を振り
その隙を天狐は見逃さなかった。
素早く十太郎の首を右手で掴み、地面に叩きつける。
「ぐはっ…あっ…!!」
そのまま締め上げる。
「ぐっ……うっ……」
足が地面につかない。
苦しい。息が出来ない。体に力が入らない。
十太郎は握力を失い、刀を地面に落とす。
「中々良い作戦だったが所詮は人間。私の能力には
「……な…んで……」
「私は百鬼ノ魍魎
すると清姫は、刀の中から天狐に語りかける。
「『
「
「
「魍魎が今更何を言う。全ての魍魎は悪の根源…悪から始まり悪に終わる。」
天狐は左手に力を込めた。
五本の爪を真っ直ぐ
十太郎は必死に
しかし無駄な抵抗であった。
「人間にしては楽しかったぞ…
鋭い五本の爪は十太郎の左胸を貫いた。
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