兄(盗撮犯は兄でした。)
弟が大好きだ。
友人よりも親友よりも無論両親よりも。誰よりも弟を大好きな自信が俺にはある。好きなものも嫌いなものも今のブームも過去のブームも付き合っていた人も年数も目指している目標もこっそり抱えている悩みも夢も。弟の全てを僕は知っている。
愛しい弟を誰にも取られたくない。過去と現在は無理だったが未来は弟の全てを独占したい。そう思っていた時期もあった。だから人間を飼える檻とか、二人で暮らせる部屋探しとか、そのための資金集めを頑張った結果、両親に家出を心配されるまで至ったことは懐かしい思い出。
けれどある時僕は気が付いた。弟をただ監禁してしまうだけでは弟本来の可愛さ、格好良さを引き出せないということに。監禁は相手に恐怖を与えてしまう。怯えている弟も可愛いは可愛いんだがそれだけでは弟にも申し訳ない。別に僕は弟を怖がらせたり不幸にしたいわけじゃないのだから。
どうすればいいのか悩んでいた時に僕を助けてくれたのはカメラだった。
元々写真を撮ることが好きだったこともあって、ある日何の気なしに弟を写真に収めた時のこと。カメラの中には愛しい弟が映っている。それを見た瞬間僕は気が付いてしまったのだ。
写真に弟を収めれば簡易的な監禁を出来てしまうと。
現実の弟は自由の身のまま、なのでいろんな表情を引き出すことは可能。しかもその一瞬だけしか存在しない弟の姿を永遠に見ることが出来る。なんて素晴らしい機能なんだ。この時ばかりは日本の技術進歩に感謝しまくった。
潤沢にあった資金は僕の新たな趣味を加速させるには十分な燃料だった。カメラをどんどん増やして、僕が弟と過ごせないときの写真やさらに映像も撮ることが出来るようになっていた。
カメラがどんどんと増えていく。弟が気が付いてしまうくらいには。
それでも僕はやめなかった。いや、やめることが出来なかった。
今日も僕の手の中に、弟が増えていく。
(暗転)
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