女の子の定義(怪傑オカルト研究部)

昔から生傷が絶えなかった。

当時の私を知る人に私のイメージを聞いたら大体の人は男勝りだとか、野蛮と言ってくるだろう。

何となく、それが嫌だった。女である私を否定されているみたいで。

昔から可愛くなきゃ、おしとやかじゃなきゃダメだって。強制されるのが何となく嫌だった。でも男の子になりたいという感情はなくて。

ただ純粋に、私の個性として認めてほしかった。

女の子だけど元気で、強い私を認めてほしかった。


「大丈夫?」

「別に…これくらい大丈夫ですよ」


擦り傷まみれの先輩が心配そうに私の顔を覗き込んできた。けれどそれはただ恐ろしい鬼の仮面を近づけているに過ぎないからできればやめてほしい。

深夜、学校の部室。悪い妖怪退治を終えた私たちはとりあえず各自手当てをしていた。ちなみにうみと部長は後始末をしている。


「無茶しないでよ?主にうみくんの心臓が止まるから」

「あいつはもうちょっと度胸付けなきゃダメなんですよ、オカルト研究会なんですから」

「唯一の同い年を失いたくないっていう彼の優しい気持ちも分かってあげなよ?」

「心配なんかしないでしょうよ」


オカルト研究部のみんなは私の怪力を知っているんですから。とまでは言わなかった。というか言えなかった。鬼の仮面の奥に静かな圧を感じたから。


ー傷が残ったら駄目でしょ、女の子なんだから


「ゴミが入ってかさぶたが出来ちゃったら痛いんだよ?」

「女の子なんだから傷が残っちゃダメだからじゃないんですか?」

「女の子じゃなくたって、ダメじゃない?」

「まぁ傷が残ってるのがダメとは思わないけれど」


うみのようにオカルトの知識はないし、林田先輩のような霊感は全くない。部長のように除霊が出来るわけじゃない。

小さい体躯には不釣り合いな怪力で助けることしか私にはできない。女の子らしい私はあまりにも非力。だから女の子を捨てなきゃいけないって思っていた。


でも彼らは…研究部のみんなは私を受け入れてくれる。私を私として受け入れてくれる。女の子だけど元気で強い私を受け入れてくれる。


「みんなを守るためなら多少は無茶しますよ」


口からついて出た言葉。

「そんなこと言わないの」と林田先輩にぽかんと頭を小突かれたけど、それすら私には心地よかった。



(暗転)

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