視える!(怪傑オカルト研究部)
よく霊が見える人がいると言うが、俺は生憎見えない。
両親が視える体質ではあるのに引き継がなかったのはいいことなのか悪いことなのかは分からないが、少なくとも現状的には悪いことだ。
「いやぁ…もしいたとしても俺は視えないタイプの人なんですよ」
背後に気配を感じてから約一時間。消えることのないそれに必死に話しかけながらなんとか除霊を試みている。
「いやぁ…母さんとかだったらぱっぱと処理できるんだろうけどなぁ…」
ため息を吐いて机に突っ伏す。正直もう困り果てていた。何もできない自分に引っ付かれても無駄なものは無駄なのだから。
「あのぉ…いい加減還ってくれないですかねぇ…」
視えない聞こえないくせに感じることは出来るこの体が非常に面倒くさい。おそらくいるであろう彼らからしたらむしろ頼れる人間が数少ないんだからしょうがないとは思うが、どうせ憑くならもっとなんか…利便性が高い人に憑いたほうが互いに利益があるってもんだろう。
「…ってあれ?」
ふと気が付くと体が軽くなっていた。もしかして俺の話が通じたんだろうか。それだったら両親のことを伝えてあげればよかった。というのも家の両親は視えるタイプの中では珍しい霊にやさしいタイプの人間なのだ。むしろ人間の方が怖いらしい。
「まぁ…いい人の元にたどり着いてくれればいいけど…」
そう言いながら立ち上がる。いい加減風呂にだって入りたい。
何気なく視線をあげる。誰かと視線がかち合う感覚。
「あぇ…まじ?」
この日から、俺の大変で…でも賑やかな日常がはじまるだなんて。意識を飛ばした俺にはまだ分からない話だった。
(暗転)
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