気だるげ顧問(怪傑オカルト研究部)
オカルト話を怖がらない人間が一定数いるらしい。所詮は人間が作ったものだから怖くもなんともないという。
その考えが全く分からないわけではないが、正直そこまで割り切れるのは人間の所業とは思えない。そしてそんな人間とは思えないような思考をしているのがうちの顧問である。
「ほんとにオカルト部の顧問なんですか?」
「部室の管理者俺になってるからそうなんじゃないの?」
「そういう意味じゃなくて」
部屋の片隅でエロ雑誌を堂々と読んでいる大人を睨みつけるが、全く相手にされる様子はない。
「ってか、さっきの理論があるならそのエロ本もエロく感じないんじゃないですか?」
「それは違うね、女の体は作り物でもエロい」
「ふーん」
「お前にはあの豊満と華奢が入り乱れる凹凸にエロさを感じないのか?」
「思春期真っ盛りの学生がいる部室で18禁堂々と掲げてる大人の言うことに肯定したくないです」
「はぁーお前もまだまだ若いな」
「少なくとも先生よりは若いですね」
皮肉交じりたっぷりに言ったつもりが全く響く様子がなくてげんなりした。今日もこの調子でずっと部室に居座るんだろうか。
そう考えため息を吐いたとき、建付けの悪いドアが音を立てる。
「あ、先生いらっしゃったんですね」
独特な鬼面に合わない柔らかな声。ドアの向こうから現れたのはオカルト部における良心である林田先輩だった。
「お疲れ様です…先輩も怒ってくれませんか?」
「うーん…先生せめてそういう本は人がいないときに読んでもらってもいいですか?」
「性欲真っ盛りの学生とは思えない言動だなお前たちは」
苦笑いを浮かべる先輩の姿に渋々とエロ雑誌を閉じて欠伸をする先生はどう考えても自分より長く生きている人間とは思えない。俺がげっそりしたようにため息を吐いたとき、見かねた先輩が俺の方に声をかけてきてくれた。
「ちょっと面白そうな噂を聞いてね。調べに行こうかなと思ったんだけど一緒に行く?」
「もちろんです!」
元々俺を呼びに来るために部室に立ち寄ったんだろう。先輩の優しさに惚れ直して即答する。慌てて立ち上がった時、意外な声が耳に届いた。
「俺も行こうかな」
「え!?」
だるそうな声はそのままだったが意欲的な態度に思わず驚く。
「そんなに驚くかい?」
「だってオカルト興味ないんじゃ…」
「作り話はね」
「どういうことですか?」
「林田くんが持ってくるオカルトは本物なんだよ」
「???」
よく分からない理屈を並べる先生に俺の頭の中では疑問符が並ぶ。しかしそんな俺を尻目に口角を僅かに上げていた。
(暗転)
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