〇月×日(土)晴れ(とあるカウンセラーの日記)

研究所の古い資料整理とデータの移行作業を頼まれた。軽い気持ちで引き受けたが、しばらく手を付けられていなかった資料室内はドアを開けただけで大量の埃が舞い散った。おまけにだいぶ古い資料のため、ほぼ全部が神にまとめられていた。その中には日焼けしているものも少なくなかった。

だからこそ新人である私に声がかかったのだろう。私は綺麗な廊下の息を吸い込んで作業に取り掛かった。


資料を整理するために必要であるとはいえ、少し気が緩むとデータを熟読してしまう。授業で習った「片付け中につい出てきた昔の雑誌を読んでしまう」という現象がなんとなく分かった気がした。これが紙の持つ力なのだろうか。気になる所である。

そのせいで今日の就業時間には終わらなかった。

まぁ所長はいくら時間がかかってもいいと言っていたから大丈夫だろうが。

むしろ自分がこのように過去のカウンセリングに触れる機会が出来るようにこの仕事を頼んだのだろうか。だとしたら有難くこの時間を有効活用させて頂こう。


また、資料で240年ほど昔のカウンセリング方法について知ることも出来た。

昔は、現代のように相談内容を記録しそれにかかわる記憶を日常生活に支障が出ないように消去するのではなく、話をして相手の心を解し悩みを聞いて一緒に解決方法を考えるものだったそうだ。

講義で知った気になっていたがこう自分の目で確かめるとなんとも不思議な気持ちになる。

何故そのような手間のかかる作業をしていたのだろうか。何故その方法が変わったのだろうか。

新人の私には疑問しか浮かばない。

しかし何故だろう。

今の技術よりも人間らしく患者に寄り添っている気がしてならないのだ。

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