第30話 ダンジョンとアーティファクト
「は?」
拍子抜けした顔をしてしまったのも無理はないだろう。
皆をいち早く生き返すために強力な魔物の素材を取ってこいとか、(この部屋で過去に恐らく行われていたことと同様に)生贄を連れてこいとかそういう流れだっただろ。今。
『
「ダンジョン?ゲームかよ」
ゲーム好きな少年時代、いや、青年時代もか。
そんな趣味だったのでダンジョンと聞くと少し心が躍る部分はある。
ただ、ゲームではなく現実に存在すると言われると違和感を覚えるところも多い。
冷静に考えれば何のために存在するのかよく分からないし、おあつらえ向きに置いてある宝箱とか、回復ポイントとかどういった経緯で成立しているのかさっぱりだ。
『カカッ。またデュダと同じことを言っておるのう。見た目こそ違うかもしれんが、どんなものかについては恐らくお主の想像するダンジョンと同じようなものであっているとも。それこそお主の世界の概念を参考に作られたからのう』
「何を言っているのか……さっぱりわからない」
『小難しい話になるがの、この世界は"概念"と呼ばれるものが非常に強い力を持っている』
「概念?」
概念の意味は知っているかと言われると正直曖昧なのだけれど。
人の認識とかそういった類いのもので、少なくとも、力を持つとか持たないってものじゃないだろう。
『言い換えるとすれば、蓄積された情報の重みとでも言おうか。例えば、長年竜を斬り殺し続けた剣には"竜を切った"という情報が蓄積される。これまで何度も竜を切ってきたのだから、次に竜を切ったときも切れるのが道理じゃろう?その剣はある時から、その本来の性能とは無関係に竜を斬る度に竜への切れ味を増すようになり……最終的には"竜殺しの剣"が出来上がるといったことがこの世界では起こりうる』
「はぁ……」
『お主の世界では力こそ持たぬものの、この"概念"というのが著しく多く発生しているようでのう。恐らくは大小様々な文化が花開いては収束しを繰り返しているからじゃろうな。量で言えばそれこそ溢れかえって、廃れた概念や膨張しすぎた概念が世界の壁を越えてこの世界に流れ込んでいるくらいじゃ。……そこの流入が偶然かどうかはともかく。次々と流れ込む"概念"の情報の重みはお主の世界の位階の高さもあって、この世界のものの比ではない。無作為にまき散れば悪さもすれば福ももたらす歪な混沌じゃ。かつてそれを管理するために儂も含めた多数の神の協力の元作られたのがダンジョンじゃった』
「??」
『流れ込んできた有用な概念を有用な効果をもたらす魔道具という形に収束させる。一方で、"神"という存在はヒトに福音だけを与えてはならないという世界を越えた根底的なルールがあっての。魔道具を作成した分の代償として、魔道具にしきれなかった概念で魔物を生成してヒトに狩ってもらうということとなったんじゃ。この流入した概念を消化する
「あ、あぁ」
正直、言っていることは半分も理解できなかった。
言葉が……という意味ではない。
パニュラの言葉はそれこそ元神の力なのか、知らない言葉でも意味そのものが伝わってくるため理解できる。
ただ、話が複雑怪奇すぎて理解が追い付かなかった。
『まぁ、理屈は分からんでもよいわい。とにかく
「それを集めることが、何で女神への復讐とか皆を生き返らせることに繋がるんだよ」
『
『そして、この世界において概念は強い力を持つと言ったじゃろう?この世界にはない理を含む
「とりあえず。詳細はよくわからないけど、補完の女神を倒すのに使えそうなものや回復に関わる効果を持つ
背景は正直理解がさっぱり追い付いていない。
元々難しいことを延々と考えるのは苦手なクチだ、仕方ないだろう。
ただ、これまで方法の糸口すら掴めていなかった復讐、そして皆の復活までも果たせるというのなら。
後はひたすらにやるだけだ。
『そうじゃな。任せてよいか?』
「任された!」
『カカッ。良い返事じゃ。それで今後の話じゃが……』
パニュラから、ダンジョンの場所や集めた
すると、篝火の周りにあった小さな鏡をひとつ手渡される。
手渡された鏡は、沼に沈むように俺の手のひらの中で溶けていき――消えた。
「それは儂の権能の一部を転写した鏡じゃ。不要な
見つけた
回復系の
女神殺しに役立つ概念を含む
それ以外は使うなり売るなりして、旅に役立てろとのことだ。
そして、空っぽになった砦を回って旅支度を整えるに至る。
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