第4話(最終話)
目が覚めるとそこは学校の教室だった
見覚えのある教室
でも相変わらず何かを忘れている
教室の扉が開かれる
そこには昨日見た女学生
待たせたかな?と言いながらこちらへと向かって来る
彼女は…幼馴染の…名前が…名前はやはり分からない、思い出せない
あまり時間はないから早くやろ
そう言われるも言葉の意味を理解出来ず俺が棒立ちしてると彼女は床に座りおいでとこちらへ手招きをする
俺はどうやら膝枕されることになってるらしい
俺は流れに身を任せることにした
彼女は語り出す
もう私たち出会って16年かぁ、だいぶ経ったよね
幼稚園の頃の君は他の子と仲良くできなくてさ、いつも独りだったよね
で、私が気になって話しかけたんだよね
俺の中の記憶が少しずつ蘇るのを感じる
膝枕されてる俺の髪を優しく撫でながら彼女は続けた
でさ、小学校も6年間一緒だったよね君は何故か他の子とすぐ仲良くなって私とあんまり話すこと無くなってたけど
あぁ、そうだったなと相槌をうつ
中学上がってからもさ3年間一緒のクラスだったよね、ほんと不思議だよね
君と同じ運動部で一緒に頑張ったよね、顧問のおじいちゃんまだ元気かなぁ
また相槌を打つ
ねぇ、君ほんとにちゃんと聞いてるの?さっきからずっと黙ってるけど
黙ってるも何も今の俺はそこらの記憶がないから話せることなんてなかった
高校はさ、一緒のとこ入ったけど1度も同じクラスにはならなかったよね
私は普通科クラスで君は特進科クラスなんだから当たり前なんだけどさ
それでもずっと途中まで一緒に帰ってたりしてたけどね
彼女がそこまで話した時パズルのピースが一つ一つハマっていくように欠けていた記憶が蘇ってくる
でもさもうそれも出来ないんだ
彼はさすっごく嫉妬深くて他の男と仲良くするのは許してくれないからさ
あぁ…あぁ…俺は…
だからこうして君と一緒にいて膝枕なんかしてるのも本当はまずいんだけどさ
私も彼のこと好きだけど、ずっと一緒にいた君にはちゃんと最後に話しておきたかったしさ
聞きたくない…この先の言葉を聞いてしまったら俺は…
君て本当におかしいよね最後なんだからなんでもお願い聞くよなんて私が言ったら久々に膝枕してくれなんていうんだから、てっきりえっちぃことさせろとか言うと思ったのに
やめろ…やめろ…
もう時間かな、そろそろ行かなきゃ、起きて起きて
俺は無言で体を起こす
ねぇ、ほんとに最後に何も言うことないの?ずっと黙ってるけどさ
俺はそれにも無言で返す
そっか…じゃあね、もう会えないのちょっと寂しいけど
彼女は教室の扉へ向かい一度立ち止まった
長い初恋だったよ、でも私は私のこと好きって言ってくれる人のことを本当に好きになっちゃったんだ、ごめんね
きっとこの言葉は人間だった頃の俺には届かなかった言葉
どうしてだろう自然と涙が溢れる
あぁ、俺は…
ありがとう、さようなら
彼女はそう言い残して教室を去る
全てを思い出した
俺はきっと彼女のことが好きだった
でも好きという言葉を彼女に伝えることはなかった
そんな彼女は俺以外の誰かからの告白を受けてそっちへ堕ちたんだ
彼女は好きという言葉をずっと待っていたんだ
あぁ、俺はなんてバカなんだろう
そこまでが俺の記憶の全てだった
きっと最期は自殺だった
自分の体が少しずつ崩れ始めるが俺は1人なにをするでもなく窓から外を眺めていた
真実は残酷だった
最期の瞬間後悔と魂は優しい風に攫われこの世から永遠に消え去った
死天魔異聞録 海月えりん @erinumituki
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