第26話 ひまわり組の発表


〜〜デイン視点〜〜


「さぁ、残りのウッドゴーレムは3体! 続いてマイカちゃん、11歳の登場です! がんばっていきましょう!」


 モーゼリアが拡声魔法を使って解説する。

 会場を埋め尽くす6万人の観客は騒ついた。


「さっき戦ったロロアって子は8歳だったよな? そんな子があっという間にゴーレムを倒したから、この子も強いのかな?」

「可愛い女の子だけど、ウッドゴーレムを倒せるのかしら?」

「学園のイベントだから派手にしてんのかな? 面白ぇな!」


 マイカは剣を構える。


「ロロア。見てなさい。力の加減を見せてあげるわ。こうやるのよ。えいっと」


 彼女は木製剣を軽く振る。

 凄まじい斬撃波が発生。それは瞬時に2体のウッドゴーレムを切り裂いた。


「あ……」


「おおっとぉ! マイカちゃん、いきなり2体のゴーレムをやっつけたーー!!」


 ロロアは尻尾を振って笑い転げる。


「ははは。マイカだってできてないじゃん!」


「ちょ、ちょっと力が入っちゃっただけよ……。け、結構難しいのね」


 やれやれ。

 まだまだ修行は必要だな。


「すげぇええええ! あの女の子も強ぇえええええ!!」

「キャーー! 素敵よーー!!」

「可愛い上に強いのかよ! 最高ーー!!」


 ウッドゴーレムは残り1体。


「続いてはレナンシェアちゃん、10歳! 彼女は魔法を得意とする勇者をめざしています!」


 レナンシェアは詠唱を瞬時に済ますとニヤリと笑った。


「終わりましたわ」


 そう言って踵を返す。


 ほぉ……。中々やるな。


「なんだなんだ? 何が終わったってんだ??」

「ゴーレムが動かなくなったぞ?」

「何が起こったんだ?」


 すると、ウードゴーレムの腕がもげる。

 モーゼリアは気がついたようだ。


「おおっと! よく見てください! ウッドゴーレムが薄らと凍っています! 最小限のブリザードを使った模様です!!」


 うむ。

 レナンシェアは完璧だな。


「すげぇええ! いつの間に氷の魔法を使ったんだよぉお!?」

「見えなかったわ!」

「早ぇええ!! すげぇえええ!!」


 彼女はボリュームのある紫色の髪を掻き上げた。


「ふふ。それほどでもありませんわ」


 よしよし。

 俺の生徒たちはそれなりに成長しているようだ。

 最後はミィだが、マイカがゴーレムを2体倒してしまったから、敵がいなくなってしまった。もう1体用意してもらうか。


 などと思っていると、ミィの前に巨大なウッドゴーレムが立った。

 大きさは10メートルはあるだろうか。普通のゴーレムより明らかに強化されている。

  魔源力マナも3千を超えていた。


 ふむ。

 あれがミィの相手か。

 モーゼリアが用意したのだろうか?

 中々、面白い嗜好だな。


「最後を飾るのはミィちゃん、6歳! 対するは巨大なウッドゴーレムです! 名付けるならばスーパーゴーレムとでもいいましょうか。予定では 魔源力マナ100の人型のウッドマンだったような気がしますが、気のせいですね! ミィちゃん、がんばってください!」


 場内に響めきが起こる。


「おいおい。流石に無理があるだろ?」

「殺されるわよ! やめてあげて!」

「やりすぎだ!」


 さて、それはどうかな?


 ミィは 魔源力マナを向上させた。

 両手を天に掲げると、大きな火球が発生する。


「な、なんだなんだ!? あのデカい火球はぁあ?」

「まさか、ギガファイヤー??」

「6歳の女の子がギガファイヤーだとぉお!?」


 うむ。

 彼女は毎日がんばった。

 始めはグラウンドを一周するのが精一杯だった彼女も、いつしか体力を付け出して、自分の潜在 魔源力マナを使うことができるようになった。

 今のミィならファイヤーボールの上位魔法を使うことが可能だ。


 しかし、ちと大きすぎるような気がする……。


 彼女を見やると 魔源力マナが2万を超えていた。


「おいおい。ミィ。ちょっと張り切りすぎだって」


「ミィたん、毎日がんばったんだもん! 先生てんてーみたいな立派な勇者になるんだもん!」


 いや、俺は賢者だったんだが……。





「ギガファイヤーーーー!!」





 会場に熱い豪風が吹き荒れる。

 スーパーゴーレムは瞬く間に焼き尽くされた。


「ミィさん! テラファイヤーになっていますわ!」


 やれやれ。

 ギガファイヤーの上位魔法じゃないか。

 これじゃあオーバーキルだよ。


 案の定、大きな火玉は、ゴーレムを燃やすだけでは飽き足らず観客席の方へと向かった。

 その上、会場に設立された大きな看板が、豪風によって倒れる。


 火玉と看板が観客を襲う。

 会場から恐怖の叫び声が上がったかと思うと、その火玉はマイカの剣撃によって破壊された。


「ブリザードスラッシュ!」


 うむ。

 氷魔法を付与した剣だ。


 倒れた看板はロロアによって持ち上げられる。


「よいしょっと」

 

 加えて、観客席には光の魔法壁が一面に貼られて炎が届かないようになっていた。

 この魔法は……。


「ミィさん。やりすぎですわよ」


 レナンシェアか。

 ふふふ。こいつら中々やるじゃないか。


 弟子のマンティスも感心していた。


「流石は師匠の生徒ですね。フォローも完璧だ。マイカの攻撃が遅れてもレナンシェアのマジックディフェンスで観客には当たらない。倒れた看板はロロアがいたから観客は無傷だ。いやぁ、いい生徒に育ちましたね」

 

 まったくだ。

 本当に良い生徒に育ってくれた。


「すげぇえええ! マジで6歳かよぉお!?」

「あの子たち全員すごいわ!」

「ひまわり組最強かよ! 痺れるぅうう!!」


 うむ。

 

「お前たちよくやった! 日頃の成果がバッチリ出たな」


「あは! 先生てんてー! ミィたんがんばったよ」


「よしよし」


「えへへ。でも、ちょっと力を入れすぎちゃった……。みんな助けてくれてありがとうね」


「うむ。クラスメイトで助け合えるって素敵じゃないか」


「先生。僕の動きはどうだった?」

わたくしの魔法も誉めて欲しいですわ」

「あ、あたしの剣はどうかな?」


 ふふふ。

 みんながんばったからな。

  

「お前たちは全員、花丸だ」


「やったーー! ミィたん花丸ぅう!」

「うは! 僕の拳が花丸取ったぁ!」

「嬉しいですわ」

「ちょ、ちょっとだけ嬉しいわよ。ほ、本当にちょっとだけなんだから!」


 俺がミィとロロアの頭を撫でていると、レナンシェアとマイカも撫でて欲しそうにこちらに体を寄せてきた。

 俺は4人の頭を優しく撫でた。みんな幸せそうである。


 ひまわり組は最高のクラスだな。








〜〜勇者ダーク視点〜〜


 ふざけんなぁあああ!!

 どうなってんだよぉおお!?


 スーパーウッドゴーレムは 魔源力マナ3千を超えるんだぞ?

 あんなガキがそれを一瞬で倒してしまうだとぉお?


 それにあの6歳児だけじゃねぇ。

 他のガキどももめちゃくちゃ強いじゃねぇかぁ!


 スーパーウッドゴーレムを使って、ガキもデインもぶっ殺すつもりだったのによぉお。

 計算が狂っちまったぜ。


 こうなったら最終手段だ。


「おいエゲツナール! 次の作戦だ!!」


 俺は指示を出した。


「ほぉ。それは面白い嗜好ざんすね。よござんす。強力するざんすよ」


 ククク。

 これでおしまいだぁ。


 エゲツナールは黒いフードを深々と被り、正体を隠しながら学園長のモーゼリアに近づいた。

 彼女は発表会の進行で頭が一杯で、気がついていないようだ。

 ポンと背中を叩くと、スキルが発動する。


 

  小さな思い出リトルメモリー

 


 これでモーゼリアを操る。

 彼女は拡声魔法を使って、会場の観客に呼びかけた。


「次は中等部の発表会だったのですが、予定を変更したいと思います!」


 これには観客も含め、デインまでもが目を見張る。




「今から、高等部のマッスル組と小等部のひまわり組の、バトルロイヤルを開始したいと思います!」




 ククク。

 これで最後だ。

 ひまわり組もデインもぶっ殺してやる。

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