第25話 発表会開催とダークの企み

〜〜勇者ダーク視点〜〜

 

 俺は魔剣士クーダに変装して、この学校の教師になった。

 副園長のデインに復讐するためだ。

 ふふふ。暗殺してやるよデイン。貴様を地獄に送ってやる。


 奴の様子を見ながら1ヶ月が経った。

 デインは隙のない男だ。暗殺は難しい。

 何度か事故に見せた暗殺を試してみた。

 ある時は毒液を高所から落とす。


 しかし、奴は瞬時に察してそれを避けた。


「あれ? なんで毒液が上から落ちて来るんだ?」


 優れた察知能力。

 加えて規格外の身体能力。


 またある時は、中等部の男子生徒が訓練用に使っていた100本のナイフを、デインに向けて投げつけたことがある。


 奴は顔色一つ変えず。

 そのナイフをすべて破壊した。


「あれ? なんでナイフが俺に向かって来たんだ?」


 す、すさまじい技だ。

  魔神技アークアーツ。あれがある限り、奴の暗殺は不可能と言っていい。

 

 デイン自身を狙っていては埒が明かん。

 隙を作るには、奴の周りを狙うしかないだろう。

 溺愛している生徒。ひまわり組の女児たちを狙ってやる。


 くくく。

 女児生徒がピンチになれば助けざるを得まい。

 その時が貴様の死ぬ時だ。


 そして、そのチャンスが巡って来た。

 今日は学園の発表会。

 学園の横に建造されたデカい会場には大勢の人間が集まった。

 王族、貴族をはじめ、王都リザークの庶民らが詰めかける。

 会場の周囲には屋台まで並んで、もうお祭り騒ぎである。


「皆様。お忙しいところを足を運んでいただきありがとうございます。今回の司会を務めさせていただきます学園長のモーゼリアでございます」


 拡声魔法で話しかけているのは巨乳女だ。

 中々、綺麗な女なので観客は沸いていた。


「学園長! 今日も綺麗だよーー!!」

「モーゼリアさーーん。こっち向いてーー!!」

「俺の顔をその胸で挟んでくれーー!!」


「今回の発表会がこんなに大きなイベントに発展したのはデイン副園長の功績が大きくあります!」


 ふん。

 せいぜい、デインを褒め称えるこったな。

 今日で奴の最後なんだから。


「準備はできてるざんすか?」


 とエゲツナールが眉を上げる。

 その姿は、フードを深々と被り、正体を隠していた。


 こいつの力と俺の知能があれば、デインを地獄に送ることが可能だ。


 俺は担任するマッスル組の生徒たちを人気のない校舎裏へと集めていた。


「先生。こんな場所で何をするんです?」

「もう会場には全生徒が集まっていますよ?」

「ここで筋トレですか?」


 ククク。

 まぁ、待て待て。


「君たちには、とっておきのサプライズがあるのさ」


 生徒たちは待ちきれない様子で、各自で筋トレを始めていた。


「とても私の話しを聞いてくれそうにないざんすね。 小さな思い出リトルメモリーで人を操る時は、体に触れるか、私の目を見させないとできないざんす。筋トレ中ではとてもできそうにないざんすよ」


 フフフ。

 伊達にこいつらと付き合っていたわけではない。


 俺はエゲツナールに耳打ちした。


「そんなことでいいざんすか?」


「まぁやってみろよ」


「では……。さぁ、みなさん。私のする特別な筋トレで筋肉を増やしましょう!」


 そう言うと、生徒たちは筋トレを止めた。


「何!? 特別な筋トレだと!?」

「筋肉が増えるならなんでもやるぞ!」

「教えてくれ! 筋肉、筋肉ぅううう!!」


 ふっ。単細胞の筋肉バカだ。


「ふふふ。これはいいざんす。みなさん。私の目をよぉく見るざんす」


 生徒たちは目に注目した。


「よーーく見てくださいよ。いきますよぉお〜〜」


 エゲツナールの目は真っ赤に光る。




小さな思い出リトルメモリー!!」


 

 

 生徒たちは呆然と立ち尽くす。

 まるで寝ぼけているようである。


「ククク。成功したざんす。さぁ、あーたたちに命令するざんす。デイン副園長を殺すざんす!」


「「「 デイン副園長を殺す 」」」


「そうざんす!」


「「「 デイン副園長を殺す 」」」


「ついでにひまわり組の女児たちも殺してしまうざんす!」


「「「 ひまわり組も殺す 」」」


 生徒たちはうつろな目でそう呟くのだった。


 ククク。

 デインよ覚悟しろ。


 発表会が始まった。

 大歓声と拍手が巻き起こる。

 特等席にはブリザ国王までいる。


 盛大に貴様を殺してやるデイン。


「まずは小等部の発表です!」


 とモーゼリアが解説する。


 小等部の幼児らが列を成して会場の真ん中へと集められた。

 観客からは「可愛いい」「がんばれー」などと声援が上がる。


「では、どんぐり組の成果から発表です!」


 会場に木でできた人形が現れる。

 それは大人ほどの大きさで、魔法によって動いていた。


「この操り人形ウッドマンを敵として仮定します。攻撃を当てなければ、逆に攻撃されてしまいますよ! さぁ、どんぐり組の生徒のみなさん、頑張ってください!」


 6歳の男児がファイヤーボールは発生させる。

 それはウッドマンの腹に当たり、黒く焦がした。


 会場からは大歓声が湧き上がる。


「おお。あんな子供がファイヤーボールを撃ったぞ!」

「すごいわね!」

「流石は勇者学園だ!」


 つまらんお遊戯だ。

 剣技、拳技ともにウッドマンを対象に、生徒らの技が発表される。


 そして、ついに、


「小等部、最後はひまわり組です」


 ククク。

 いよいよだ。


 会場は騒つく。

 

 それもそのはず。

 用意されたウッドマンが5メートルを超えていたからである。


「あ、あれ? おかしいですね!? あれは高等部が扱うウッドゴーレムでは!?」


 その通り。

 俺がマッスル組の生徒に命令して用意させたんだよ。

 ウッドゴーレムは 魔源力マナ千を超える力を持っている。そんな奴が4体もいるんだ。とても小等部の女児では敵うまい。


 モーゼリアが止めようとした時。その後ろにエゲツナールが立った。

 彼女の背中をポンと触る。


  小さな思い出リトルメモリー発動。

 記憶の消去を実行する。

 モーゼリアはルールの詳細を忘れる。



「さぁ、ひまわり組のみなさん。! はりきっていきましょう!」 


 ククク。

 ウッドゴーレムの攻撃を喰らえば生徒は即死。

 そんなことをデインが見過ごすはずはない。

 奴が動いた時が、チャンスだ。


 俺はナイフを構えた。


 この毒付きのナイフを奴の体にブッ刺してやる。


 場内はブーイングの嵐。


「おい無茶だ! 生徒を殺す気か!?」

「あんな大きな敵、子供に勝てるはずがないだろう!」

「中止させろ!!」


 ククク。

 無駄だ。

 モーゼリアには 小さな思い出リトルメモリーが掛けられている。

 余計な話は入ってこないようになってんだよ!


「さぁ、まずは半犬人のロロアちゃん。8歳の攻撃です!」


 魔拳使いか。

 しかし、ゴーレムには敵うまい。

 このままでは殺されるぞ?

 ククク。さぁ、動けデイン!! 女児を助けるんだ!!






「よっと」






 バキッ! という凄まじい破壊音が会場内に響き渡る。


 え?


 それはロロアがウッドゴーレムの半身を粉砕した音。


 何ィイイ!?


「先生! 倒したよ!」


「おいおい。ちょっと力を入れすぎだ。ウッドゴーレムを修復する身にもなれ」


「はーーい。力の加減が難しいんだよね」


「やれやれ。力加減も強さの一つだぞ」


「てへへ」


 なんだとぉおおおおおおおお!?

 

「うぉおおおお! すげぇええええ! あの子、ウッドゴーレムを倒したぞぉおおお!!」

「あんな小さな女の子がすごすぎぃいいい!!」

「信じられないわ!!」


 ウッドゴーレムは 魔源力マナ千は超えているんだぞぉおお!?

 それを一撃で粉砕だとぉおお!?

 一体どうなってるんだぁああ!?


 こ、こうなったら、ウッドゴーレムを合体させて更に強いゴーレムを作ってやるぅう!

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