第19話 先生の実力


 俺の体から凄まじい量の稲妻が発生する。


 まずは物理でやってみようか。

 

 俺は高速で動き、 蟹竜キャンサードラゴンの顔を殴った。


魔神技アークアーツ 牙狼。俺の拳は魔神の力によって強化される」


 しかし、相手は、体高100メートルを超える巨大モンスターである。

 しかも、 魔源力マナは10万を超えている。

 顔を少し逸らす程度で、大きなダメージはないようだった。


 やれやれ。

 やはりな。

 この程度の攻撃ではダメージは与えられないか。


『ギャワォオオオオ!!』


  蟹竜キャンサードラゴンのハサミが俺を襲う。


「よっと」


  魔神技アークアーツ  兎走とそう

 通常走法の5倍の速さで攻撃を避ける。


 竜のハサミは校舎に当たった。そのまま校舎の半分を破壊する。


 ふむ。

 全員を避難させておいて良かったな。


 じゃあ、今度は、


魔神技アークアーツ 牙狼」


 を、 魔神技アークアーツ 象火によって5倍に強化する。


「はっ!」


 俺の拳が当たると、轟音が辺り一面に響き渡る。


  蟹竜キャンサードラゴンは頭部を地面に打ち付けた。


 ふむ。

 今度はダメージがあるようだな。


「だが、硬いな」


 竜は蟹の甲羅のような硬い鱗に覆われていて、傷一つ付けれないでいた。


 やはり、 魔源力マナ10万超えは伊達じゃない。

 しかも、防御力だけなら30万以上の強さがありそうだ。

 簡易な打撃じゃ動きを止めるくらいしかできないか。


 学生たちは混乱する。

 俺は耳が良いので遠くの声もよく聞き取れるのだ。


「ちょ! 副園長強くないか!?」

「勇者より強い攻撃よ!?」

「確か、元勇者パーティーの賢者をしていた人だよな? どうして賢者が打撃を使えるんだ??」


 生徒たちの疑問に弟子のカマキリ人、マンティスが答える。


「師匠は 魔神魔技族アーククラフターという一族の末裔でな。 魔神技アークアーツという魔神の技が使えるのさ」


「そんな凄い人なんだ? さっき 魔源力マナを測ったら30しかなかったのに……。今はいくらなんだろう?」


「計測眼は使うな。お前たちの使うレベル1の計測眼だと目にダメージが出るぞ!」


「ど、どういうことですか!?」


「師匠の 魔源力マナは強大なのさ。私が持つレベル2の計測眼でさえ測ることができないんだ」


「ひぃええええ〜〜、そ、そんなにすごいんだ……」

「一体、副園長の 魔源力マナはいくらなんだろう?」

「すごすぎるわねよね……」


 いや、そんなにすごくはない。

 現に、俺の攻撃は竜を倒せていないからな。


 俺は牙狼を脚に付与して、その攻撃を象火によって強化。

 そのままキックを当てた。


  蟹竜キャンサードラゴンは100メートル以上吹っ飛ぶ。


「すげぇええ!!」

「あんなデカい竜を吹っ飛ばしたぁああ!!」

「副園長、すごい!!」


 だから、すごくないんだって。

 吹っ飛ばしただけで、ダメージはそんなに入ってないんだから。


 即死級のダメージを与えら得ないと意味がない。

 やはり、打撃では無理があるようだな。


 俺は校舎の屋上に立って、両手を天に掲げた。


「竜が離れてる隙にやってしまうか……」


 俺の詠唱と共に、上空には大きな火球が現れる。

 その数は20個。


「ああ! あれは勇者パーティーの魔法使いが使っていた魔法だ!」

「すげぇ! ダイフレアだ! 火球全部が、あの女が出してたのより、更に大きいぞ!」

「あれなら倒せるわ!」


 そんなに甘くはないんだよな。

 いくら俺のダイフレアでも、このままだと即死級にはなり得ない。


 だから、


魔神技アークアーツ 象火」


 20個のダイフレアを5倍にする。


「ええええええ!? 火球が増えたーー!!」

「い、一体、いくつあるのかしら!?」


 答えは100個だ。


 さて、撃つ前に確認しておかないとな。


「マンティス。そっちは大丈夫か?」


「はい師匠! 全員がマジックディフェンスを張っています」


 よし。

 準備はバッチリだ。


 強化されたダイフレア。その爆発に巻き込まれないようにマジックディフェンスで防御してもらうんだ。







〜〜マイカ視点〜〜


 私たち、ひまわり組の生徒たちは、マンティス先生の誘導にしたがって、学園から離れた高台へと避難していた。


 流石は先生ね! 

 あんなに大きな竜を圧倒している。


 でも、やっぱり気になるのが先生の最大 魔源力マナなのよね。


「ねぇミィ。いつだったか、レナンシェアに 魔源力マナ移しをしたことがあったでしょ? あれっていつでもできるの?」


「あれね。あの技はあの時しかできなかったの」


「そう……。じゃあ、無理か……」


 ミィの 魔源力マナ14000を私の力にできれば可能だったんだけどな。


「でもね。ミィたん、こっそり練習したの。だから、あの時ほどじゃないんだけどね。少しだけなら使えるようになったよ」


「すごいじゃない!」


「へへへ。だって先生てんてーが側にいるんだもん。ミィたん、なんでもがんばれるの。でも、どうして 魔源力マナ移しが必要なの?」


「ふふふ。私の計測眼を強化するのよ」


「そんなことしてどうするの?」


「先生の 魔源力マナを測るのよ!」


「でもさ。先生てんてー 魔源力マナなんか知らなくたって先生てんてーはすごいよ?」


「い、いいのよ!」


「だって、考えてもみなさいよ!」


「なにを??」


「……あ、いや。な、なんでもないわよ」


 しょ……将来のお婿さんになる人の最大 魔源力マナくらい知っておきたいじゃないの!


「とにかく、あたしに 魔源力マナを移しなさい! あなたの強力な 魔源力マナがあれば、あたしの計測眼はレベル3の効果が出せるわ!」


「うん。わかった。やってみるね」


 ミィの 魔源力マナがあたしの中に流れ込む。

 1万は超えているだろう。

 凄まじい力だ!

 

「あは! 良い感じよ!!」


 デイン先生は無数の火球を竜に向かって放つところだった。

 あたしは強化された計測眼で彼を見た。

 

 一体、いくらなんだろう?


 それは驚愕の数値。








「さ、35万!?」








 これが先生の実力……。

 す、すごい。すごすぎる!

 王都一。いや、大陸一の強さ。








「あたしたちの先生は最強よ!!」






 と、同時。

 先生は魔法を放つ。







「ダイフレア!」







 無数の火球が竜に向かった。

 校舎前の森は大爆発。

 凄まじい爆発と爆風が巻き起こる。


 あたしたちはマジックディフェンスでそれを防いだ。


 爆風が治ると、森には大きなクレーターができていた。


 さっきまで感じられた凶悪な 魔源力マナが感じられない……。

 あの大きな煤の塊は 蟹竜キャンサードラゴンだ。


 倒した……。


「先生が竜を倒したわ!!」


 あたしが両手を上げると、先生はあたしたちの前に立っていた。


「怪我はないか? お前たち」


 あは! 心配して来てくれたんだ。

 強くて優しい。最高の先生!


先生てんてー! ありがとーー!!」


 ミィは即座に抱きついた。

 続いて、レナンシェア、ロロアも抱きつく。

 あたしだって負けてられない。


「先生。すごい!」


「いや、反省してるんだ」


「は、反省?」


「打撃で倒せなかったからな。お前たちに怖い思いをさせてしまった。本当はマジックディフェンスなんか張らせないで倒したかったんだよ」


「ははは……」


「だから、俺もまだまだってことさ」


 んもう。すごすぎるわよ。


 学生たちが先生を囲む。


「すげぇぜ先生!」

「ありがとう先生!!」

「勇者より強いじゃない!」


 先生は困る。


「いや。本当にみんなには心配をかけてしまった」


 この言葉に、学生たちは驚いていた。


 ふふふ。

 ぶっとんだ感覚なのも先生の魅力なのよね。


「先生は怪我はないの?」


「ああ、大丈夫だ」


 そう言って、あたしの頭を撫でてくれた。


 ああ、幸せ。


 先生、大好き♡

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