第20話 国王からの報酬

〜〜デイン視点〜〜


 俺は王都リザークの城へと招かれていた。

  蟹竜キャンサードラゴンを倒した功績を認められて、国王から直々の褒美が出ることになったのだ。


「あは! わたち、お城の中に入るなんて初めて!」


 と、ミィが俺に抱きつく。

 城には、関係者を連れて来てもいいことになっていた。希望者を募ったところ、モーゼリアをはじめ、ひまわり組の生徒たちも来ることになったのだ。

 モーゼリアもマンティスも来ている。


「デインさんの功績は我が勇者学園の功績でもありますからね。私は嬉しいです」


「流石は師匠だ」


先生てんてーが、いよいよ国王になるんだね♡」


 いや。それはない


先生てんてーが国王になったらミィたんお姫様だ♡」


 マイカは呆れる。


「ミィは先生のお嫁さんになるんでしょ? だったら妃じゃない」


「ミィたんお姫様がいい」


「王の子供が姫なのよ?」


先生てんてーのお嫁さんになって、お姫さんになるの♡」


「あのねぇ」


「プリンセス、ミィたん♡」


 やれやれ。めちゃくちゃだな。

 でも、嬉しそうだし、そっとしておいてやるか。


 俺たちは王の間へと案内された。


 王都リザークの国王は美しい女である。

 年は20代後半だろうか。若くして国王を継いだやり手の女。

 目が鋭く冷血な感じがする。しかしながら、スレンダーなボディに豊満なバストは特筆すべきところだろう。


 俺は勇者ダークのパーティーにいる時に何度か謁見したが、彼女は俺のことを覚えていないだろうな。

 

「ほぉ。そなたが 蟹竜キャンサードラゴンを倒した者か?」


 と眉を上げる。


 やっぱり覚えていないな。

 彼女は勇者としか話していなかったからな。


「資料によれば、以前は勇者パーティーにいたとか? そんな力を持っていながらなぜ辞めたのだ?」


「辞めたというか。クビになりました」


「なぜだ??」


「無能ということらしいです」


「……無能? 資料では教師になって、たった3ヶ月で副園長になっているが?」


「それは成り行き上しかたなくなのですが……」


 モーゼリアが声を上げる。


「私が彼を推しました。彼にはその実力が十分にあります。現に彼が副園長になってから学園は充実しております」


「ほぉ。学園長が言うならそうなのだろう。しかし、そんなに才能のある人間を無能呼ばわりしてクビにするとはな。そういえば、最近は奴の活躍をとんと聞かんな。フフフ。ダークめ、しくじりおったな」


 本当に馬鹿な奴だ。

 俺を仲間にしていれば、今頃は真っ当なパーティーとして評価されていただろうに。


「どうだデイン。わらわの側近にならんか?」


「え?」


 これにはみんなが汗を流す。

 口火を切ったのはミィだった。


「そんなのやだ! 先生てんてーはミィたんの先生てんてーだもん!」


「お、おいミィ。国王にそんな口の利き方はまずいって!」


「だってぇ!」


 と、俺に抱きつく。

 

「こ、国王! 学園は彼によって支えられております。私も彼が側にいることで随分と助かっておりますので……」


「ははは。随分と慕われているな! 冗談だよ」


 やれやれ。

 タチの悪いジョークだな。


 俺は国王から褒美を受けることになった。


「こ度はそなたの活躍によって王都に平和が持たらされた。よって、そなたに金5千万コズンを授ける」


 ご、5千万コズン……。

 大きめの一軒家に改築できそうだな。

 部屋を5つくらい増設するか。


「それと、上級身分証を授ける」


「「「 え!? 」」」


 みんなが驚く。

 

 上級身分証は城内に自由に入れるパスポートのことだ。

 元来、一般者が城に入るには許可がいる。しかし、この身分証があれば自由に入ることができるのだ。


「さ、流石は師匠です……。貴族すら一部の者しか渡されていない身分証を授与されるなんて!」


 うーーむ。

 なんだか、すごい物を貰ってしまったなぁ。

 

 国王は俺に顔を近づけた。

 香水の匂いだろうか。随分と高貴な良い香りがする。


 彼女は耳打ちした。


「デイン……。これで城には自由に入れるぞ」


「……ですね」


「今度は1人で遊びに来い」


「はい?」


 遊びって?


「2人きりで食事でもどうだ?」


 返答に困るな。

 

 彼女は前屈みになっていたので、胸の谷間がしっかりと見えた。

 日焼けを知らない真っ白な肌に大きな胸。


 うう。

 凄まじい破壊力だ。


「ぶぅ〜〜」


 とマイカが頬を膨らましていた。


 なんか、怒ってるな……。


「お前のことをもっと知りたいんだ」


「しょ、食事くらいなら……」


「ふふふ。約束だぞ」


 うーーむ。

 なんか変な感じになってしまったな。


 俺たちは城を出た。


「ねぇ、先生! さっきは国王と何を話してたの?」


「……べ、別に大した話じゃないさ」


「隠すつもり? い、言いなさいよね!」


「なんで言わないといけないんだよ?」


「んもぉ〜〜!」


 ポカポカと叩く。


 痛ててて。

 やれやれ、知りたがりだなぁ。

 食事に誘われたことを言ったらややこしくなりそうだからな。


「たまには顔を見せろってそれだけさ」


「うう……。なによそれぇ。会いたいってことじゃない」


「ははは。やきもちか?」


「は? そ、そ、そんなんじゃないっての!! ただ、先生は……。その……」


「なんだよ、言いにくそうにして?」


「だってぇ……。先生は胸の大きな女の人が好きなんでしょ?」


「ギクゥッ!」


 す、鋭いな。


「そ、そ、そんなことはないぞ」


「……うう。私ももう少し大きければなぁ」


 そう言って自分の胸を触る。


 11歳の娘が何言ってんだか。


「あのなぁ。お前はまだ成長途中なんだから、そんなこと気にするなよな」


「そ、そうよね!」


「ああ」


「ブラもね。去年より大きいのになったの!」


 そんなこと報告するな!


「あ! 僕も大きくなったよ!」


 半犬人のロロアが手を上げる。


 おいおい。

 なんの発表なんだよ。


 しかし、そういえばロロアは8歳なのに妙にボインだな。

 半犬人は早熟と聞いたことがある。

 きっと、普通の人族より発育がいいんだな。


「うう……。ロロアに負けたぁ……」


「は、ははは。そう落ち込むなって」


「ふみぃ……」


 レナンシェアが側に来ると自分の胸を寄せて見せた。


わたくしも去年より大きくなりましたの」


 彼女は10歳の女の子である。


 やれやれ。

 もう、どう対応していいかわからん。


「ミィたん。ぺったんこ……ふみぃ」


 ミィは6歳だからな。


「お前はそれでいいんだ」


 女児クラスはこういう部分のフォローに困るな。





〜〜勇者ダーク視点〜〜


 俺は全身複雑骨折だった。

 それをなんとか僧侶コネネの治癒魔法で回復する。


 女たちは俺を冷たい目で見つめていた。

 なにせ、 蟹竜キャンサードラゴンにボロ負けしたからな。


 なんとか挽回しなくちゃならん。


「つ、次は上手くやるからよ。へへへ。Cランクのダンジョンにでも潜ってさ。その報酬でパァーーっとやろうぜ」


「もう疲れましたわ」

あーしも疲れたっス」

「私も疲れたな」


 へ?

 な、なんかいつも以上に冷たい感じだぞ?

 どういうことだ?


「こ、今度はCランクだぞ! これなら余裕だって!!」


 女たちは呆れるように目を細めた。

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