第16話 お仕置き
「俺たちを怒らせたことを後悔させてやるぞ!! ひゃは!!」
「あたしの大剣を味わえ!!」
ダークとゼリーヌは、俺に向かって剣を振り下ろす。
俺は2人の剣を掴み取った。
「「 えっ!? 」」
「
「くっ! は、離せこの野郎っ!」
俺はそのまま刃を握り、2人の剣を破壊した。
「「 何ぃい!? 」」
そして、ダークの頬に張り手を喰らわせた。
「ぶべらぁッ!!」
奴は客室の壁に衝突する。
「わ、私の大剣がぁあ……!」
ゼリーヌは涙目。武器を失ったことで十分ダメージを負っているようだ。
彼女のお仕置きはこれだけで十分だろう。
「なぜだデイン。お前の
ゼリーヌの
しかし、俺の
「俺は、攻撃する一瞬だけ
「で、では、もっと高いというのか……!?」
魔法使いソモは汗を垂らした。
「あは……。あははは。やっぱりデインはすごかったのですね。その力で私たちを助けてくれていたんだ」
「そういうことだな」
僧侶コネネは俺の腕を抱きしめた。
「デイン〜〜。あーしは始めからわかってたっスよぉお。あんたが強いってことはねぇ〜〜」
「はぁ? 俺が追放された時、お前もダークと一緒に笑ってたじゃないか」
「ぎくぅ! あは、あははは。そ、それはダークに脅されてただけっスよぉ」
やれやれ。
手のひら返しも甚だしいな。
「とにかく、俺の体から離れろ」
「つれないッスねぇ。あーしは将来性のある男が好きなんス」
「そうか。俺はお前に興味はないがな」
「そんなこと言わずに〜〜。あーしが彼女になってやってもいいッスよぉお」
俺を嘲笑った女を彼女にするなんて冗談じゃない。
「俺のことより、ダークを回復してやれよ。1発のビンタでも相当なダメージだぞ」
「あんな男、もういいっス」
「仲間だろ?」
「あーしをこき使いすぎっス! 偉そうに命令ばかりでもう限界っス。冒険に行ったら瀕死になるし、全然強くない。デインがいなくなってから、あーしたちは死にそうになってばかりっス! その度にあーしが回復魔法を使うんスからぁ」
なるほどな。
それで俺を誘いに来たわけか。
身体中が傷だらけなのもそのせいだな。
「あーしはぁ。強い男が好きなんスぅ」
「いや。俺はお前に興味がない。離れろ」
「そんなぁ〜〜。あーしが彼女になるってことはぁ。あーしの体を自由にしても良いってことっスよぉ?」
「興味がない」
「どうせ、女っ気のない人生でしょう? あーしが彼女になったら華やかになるっスよぉ〜〜?」
突然、客室のドアが開き、モーゼリアが入って来た。
「大きな物音がしましたが何事ですか!?」
俺は彼女に事の経緯を説明した。
「では、勇者様が無理やりデインさんを連れ戻そうと力ずくで?」
「うん。返り討ちにしてやったけどね」
「……そ、それで、その人は?」
モーゼリアは俺に抱きつくコネネを見つめる。
ソワソワとして落ち着かない感じだ。
「心配しないで。今、言い寄られて迷惑してるところだから」
コネネはモーゼリアをマジマジと見つめた。
胸の大きさは倍以上だろうか。見た目もモーゼリアの足元にもおよばない。
例えるなら、モーゼリアは光り輝くアゲハ蝶。コネネは闇に潜む蛾だな。
コネネは青ざめる。
俺から手を離すと、そのまましょんぼりとして黙り込んだ。
あれ?
なんか、よくわからんが離してくれたぞ。
「ほほほ! 流石はデインね。私が見込んだ男なだけはありますわ!」
そう言うと、今度はソモが俺の耳元で囁いた。
「私を雇うのはどうかしら? 教師としてこの学園で働いても良くってよ?」
「ダークのパーティーはどうするんだよ?」
「あんな男、もう終わってますわ。私はパーティーを辞めます。これからはデインの時代ですわ」
こいつもコネネと同じか。
それにしても、俺の時代ってなんだよ……。
「あなたはこれから伸びる男よ。私を雇いなさいな」
人手は欲しいが、人材は吟味したいんだよな。
人間性に欠けるコイツが教師になるなんて考えられないだろう。
「残念だが無理だな。俺は副園長なんだ。人選の権利はあるからな」
「ほほほ。それはどうかしら? 私は男爵の娘ですのよ。貴族の力を使えば、こんな学園に入ることは造作もありませんわ」
そんなことができるのだろうか?
俺は庶民なので、貴族の権力はよくわからない。
客室にレナンシェアの執事が入ってくる。
「デイン様。先ほどは大きな物音がしましたが大丈夫でしょうか?」
俺は爺やさんに事の経緯を説明した。
「おお! では、勇者様の勧誘を断って、この学園に残ってくれるということですね。安心いたしました」
「デ、デイン……。この人は?」
「俺の生徒の執事さんだよ」
「紹介が遅れました。
「ア、アルム・ウォムナーって公爵家じゃない! どうして、そんな執事にデインが様付けで呼ばれているのよ!?」
「デイン様はお嬢様の命を救ってくれた恩人なのでございます」
「デインが恩人!?」
「しかも、優秀な教師でもあります。アルム・ウォムナー家は全面的に支援させていただいておる次第でございます」
「こ、公爵家がデインを全面的に支援してるですって!?」
ソモはプルプルと震えた。
そして、俺から離れて黙り込んだ。
あれ?
こいつも、よくわからんが解決したっぽいな。
ダークは腫れた頬を抑えて立ち上がる。
「こ、この野郎……。覚えてろよ。この借りはきっと返す」
勝手に来て、俺に暴力を振るおうとしたから撃退したまでなんだがな。
一体、なんの借りなんだか……。
と、その時である。
大きな地震が起こった。
なんだろう?
すると、マンティスが部屋に入って来た。
「大変です師匠! 大きな竜が学園に向かってやって来ます!!」
俺たちは客室の窓から外を見た。
体高100メートルはあるだろうか。
大きなハサミを持った竜が、蟹のような足を動かしてこちらに向かっている。
「
「おお! 流石は師匠だ。ご存じなんですね!」
俺の一族、
「このままでは学園が破壊されてしまいます。王都の兵団に連絡を向かわせましたが、間に合いそうにありません!」
ふむ。
まずは生徒たちの避難だが……。
モーゼリアはパチンと手を叩く。
「丁度良かった! ここに勇者様がいらっしゃいますわ!」
執事さんも満面の笑み。
「おお。勇者様がおられるから安心ですな!」
妙な流れになってきたな。
ダークが
「か、蟹の竜だとぉおお!?」
「そ、それって、あーしたちが入ったダンジョンのボスじゃないっスか!?」
「はわわわ……。ど、どうしてそんなモンスターがここにいるんですの!?」
どうやら知っているようだな。
勇者パーティーは全員が青ざめてプルプルと震えているのだった。
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