第13話 デインは必要?

 俺たち、勇者パーティーは、Aランク、ダンジョンに潜っていた。

 ここは全部で20階層。その最下層にはボスのガドルリザードが居座る。


 このモンスターは、象よりも大きなトカゲだ。

 防御力が高く、凶暴である。


 でもな、へへへ。

 以前に何回も倒したことがあるんだよな。


「みんな! 今度は余裕だからな! 肩慣らしと行こうぜ」


「そ、そうっスね。前回に行ったSランクダンジョン『蟹竜の底』は、敵が強かったっスもんね! ここなら余裕っス」


 仲間の女たちは、少しだけ不安そうな表情を浮かべながら笑っていた。


 クソ!

 俺様にそんな顔を見せるなっての!


 まぁいい。

 ここのダンジョンを颯爽と攻略して、憂さでも晴らしゃあ元に戻るか。

 女たちにキャアキャア言われるのが、このダーク様なんだよ!


「行くぜ!」


 しかし、ダンジョンの5階層まで潜った時点で、とんでもないこととなる。


「ハァ……ハァ……。ど、どうなってんだ……ここ?」


 俺たちは傷だらけだった。

 

 迫り来るは、骨だけの騎士。スカルナイト。

 その5体に囲まれた。


 こいつはBランクのモンスターのはず。

 それなのに攻撃が重い。


「どうなっているんだ!? スカルナイトが強すぎるぞ?」


 と、いうか、ここに来るまでも敵が強い。

 Aランクダンジョンなのに、たった5階層で瀕死じゃないか。


「何やってんスかダーク様ぁ! 早く敵を蹴散らしてくださいよぉお!! あっしは 魔源力マナが切れて回復魔法が使えないんスからぁああ!」


 そ、そう言われても……。

 俺だって、もう 魔源力マナが底を尽きたんだ。

 スキル攻撃ができない。


「お、おい! ソモ! 魔法で援護しねぇか!!」


「私だって 魔源力マナが切れていますわ!!」


 と、杖でスカルナイトの攻撃を防ぎながら叫ぶ。

 矢継ぎ早に戦士ゼリーヌが応えた。


「あたしも 魔源力マナが切れています! もう限界です!」


 そ、そんな……。

 まだ5階層だぞ!?


 俺の腕に激痛が走る。


「うぐッ!!」


 右腕がへし曲がっていた。

 スカルナイトが繰り出す、ショートハンマーの攻撃をモロに喰らったのだ。


「ひぃいッ!!」


 こ、殺される!


「て、撤退だーー! 撤退しろぉおおおおおお!!」


 俺たちは、命からがらそのダンジョンを抜け出した。






 テントを張り、野営する。


「どういうことですの? 以前のダーク様ではありませんわよ?」

「あたしもおかしいと思う」

「あーしも変だと思うっス」


 いや、俺だって違和感は感じているんだ。


「俺……。というより、お前らだっておかしいだろ? 以前のお前らならもっと強かったはずだぜ?」


「それはそうですが……。ダーク様が敵を蹴散らしてくれればいいことですわ」

「そうっスよ! あーしの回復魔法を使いまくるダーク様なんて考えられないっス!」

「あたしたちに頼るダーク様はなぁ……」


 くっ!


「だ、黙れ!! お前たちが無能だから、こんなことになるんだ!!」


「は? ありえませんわ! 私がどれほど魔法で援護したのか見てなかったとは言わせませんわよ?」

「聞き捨てなりませんね。怪我を負ったあなたを運んだのはあたしなんですよ?」

「そーーっスよ。その後、怪我の回復をさせたのは、あーしなんですから!!」

 

 うぐぅ!!


「黙れ黙れ! こうなったことを今、考えてんだ!! お前たちは飯の用意でもしてろ!!」


 女たちはブツブツと文句を言いながら食事の用意をし始めた。


 クソ!

 なんでこんなことになったんだ?


「……だいたい、こんな食事だって、デインがやっていたことですわ。どうして私たちがやらなければいけませんの?」

「テントはあたしが張ったんだ。これはデインがやっていたことだ!」

「掃除、洗濯はあーしがやってるっス! 超面倒臭いッスよ!」


 そういえば、敵が強く感じるようになったのはデインがいなくなってからだ。

 奴は、 魔神魔技族アーククラフターという一族の末裔。魔神の技、 魔神技アークアーツが使えるんだったな。

 でも、俺が目立たないからと、後衛に回るように釘を刺したんだ。


 戦闘は俺の力だけで勝っていたと思ったが……。

 もしかして、奴が後衛から……。

 しかし、奴の 魔源力マナは2千が限界だったはず。


 ソモも同じ考えになっているようだった。


「ダーク様。もしかして、デインが補助してくれていたんではないでしょうか?」


「……いや、そんなはずはねぇ。なにせ、奴の 魔源力マナは俺より低いんだからな」


「でも、奴がいなくなってからですよ。こんなにピンチになっているのは」


 確かに……。


「しかし、奴は補助らしい動きをしていたか?」


「「「 ………… 」」」


 ゼリーヌが腕を組む。


「デインの 魔源力マナはあたしよりも低かった。せいぜい上がって2千が限界。ですがもしかして、素早い動きで補助魔法をしてくれていたのかもしれませんよ?」


「うーーむ。素早いと言っても限度があるだろう。デインがいる時、コネネは後衛で何もしていなかったんだ。お前は何か見たか?」


「そ、そうっスねぇ……。そ、その……。そん時はバトルが余裕だったんで、化粧に夢中で見てないっス」


「バカ! ちょっとは緊張感を持て!!」


「す、すいませんっス!」


「でも、ダーク様。雑用係がいなくなったのは痛いですわ。無能なデインでもいた方がいいですわよ」


「確かにな」


 今は勇者学園で働いているんだったか。

 エゲツナールには碌な仕事を与えないようにいいつけているがな。

 残飯整理でもやっているなら、まだ、このパーティーに戻った方がいいだろう。


「よし。あと、何回かクエストに挑戦してみて、調子が悪いならデインを連れ戻すことにするか」


 偶然が2度続くことだってあるしな。

 調子が悪いだけかもしれん。


 しかし、その後も、クエスト挑戦は失敗ばかり。


 Bランクのクエストでさえ、瀕死になり失敗に終わった。


「そ、そんな馬鹿なーーーー!!」


 ギルドの評価は下がるばかり、周囲の俺の見る目も極端に変わってきた。


 いかん。

 絶対にこの状況は変えなければ!!


 デインを連れ戻そう!

 きっと、魔神の技で補助をしていたんだ。

 奴の力が必要だ!!

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