白昼夢と海月
第1話 再々会
ゴトンっ!!!
自室で眠っていた僕は突然の異音に目を覚ました。
お腹に力を込め、起き上がろうとすると背骨に軽い痛みを感じる。
いつの間にかベッドから落ちてしまっていたようだ。
近くに置いてあった目覚まし時計を薄目で見てみると、針は3時の方向を向いている。
部屋は薄暗く、当然異音の原因も分からず、部屋の中もはっきりと見えない。
耳を澄ましてみても、外からの虫の音が微かに聞こえるだけ。
僕以外、誰も部屋にはいないようだ。
こんな時間に家族が来るわけがない。
はっとして、昨日
机の上には薄っすらと光を反射する勾玉が昨日と変わらず置いてあった。
結局、真夜中に変な音で起こされただけだった。
両親も弟も起きておらず、一人で家を見回していった。
だがどこにも特に異変は無かった。
そうしているうちに数十分が経ち、窓の外から見える空はだんだん朝焼けに染まりだしてきた。
家を歩き回っていたら再び眠気が襲ってきたので、あの物音は気の所為だったと思うことにしてもう一度睡眠をとった。
そんな僕の朝の平穏は簡単に崩れ去る。
「祐ちゃん!早く起きなさい!もう8時過ぎたわよ!!」
急な大声に強烈な不快感を感じながら目を覚ます。
目の焦点が合わない。まだ眠い。まだ眠い。
リリリジイイイリイイジジジジリリリリリリンジジジ!!!!!!!!
ワンテンポ遅れて目覚まし時計がけたたましく朝の訪れを告げた。
彼の全力の報告を労うかのように頭を優しくぽんと押すと、彼も満足して落ち着いたようだ。チクタク鳴るだけになった。
寝起きの僕は目をこすりながらリビングに入る。
リビングには食事の用意が揃っていた。弟の
目玉焼き、ご飯、ベーコン。
朝ごはんを食べながら、母さんにさっきの音のことを聞いてみた。
「母さん、夜中大きな音がして目が覚めたんだけど、そっちでなにかあった?」
「うーん?気づかなかったよ。浩次はなにか知ってる?」
「知らないよ。今日はぐっすり寝てたよ」
「そう。もしかしたら父さんなら知ってるかもね?」
「うーん。まあ、なにも起こってないし、父さんに聞かなくてもいいや。ちょっと気になっただけだし」
食事を終えた僕は自分の部屋に
夏休みもあと6日で終わる。これまで遊び呆けていたつけが回ってきていた。
「あー。宿題なんてやっても変わらないのになー」
何度吐いたか分からない愚痴は部屋の隅に消えていった。
心に溜まった
数時間後、キリがいいところで課題を切り上げて休憩に入った。
さあ休憩だと漫画に手を伸ばして寝っ転がろうとしたとき、不意に声が聞こえた。
「その漫画、私にも読ませて?」
本当に不意だった。
もう会えないはずの彼女がその場所に当たり前のように立っていた。
僕の全ての動きが止まった。
「あははっ!ドッキリ成功だー」
なぜか水着を着て現れた
水着のことが頭に入って来ないほどに嬉しさなのかなんなのかよく分からない感情が僕を石にした。
彼女は僕の周りをくるくる回っていた。時々僕の顔を伺いながら。
「本当にびっくりするとなんの反応もなくなっちゃうんだね。面白いー」
彼女はすとんと僕の目の前に座った。
そうしたら僕の顔にむけて顔を近づけてきた。彼女の唇が僕の唇にそっと近づいてくる。
なんの前触れもなく行われた彼女の行動に思わず、
「ふりゃりゃあああ!??」
自分でもよく分からない声が出てしまった。
反射的に後退りして、無茶苦茶な動きで立ち上がった。
それでも彼女はまっすぐに僕の顔を見つめていた。
「ゆーくん、ちゃんと前を見ててね」
穂香に言われるがままだった。驚きで何も考えられなかった。
もう一度目を開くと既に唇は重なっていた。だが感触は全くない。
驚きすぎてぴりぴり
「言葉で伝えるよりもこっちの方が分かりやすいでしょ?えへへ」
穂香は僕に笑いかけた。
僕の鼓動は蝉の声より激しく振動した。
空の太陽が雲にふっと隠れて暗くなる。
一瞬だけ涼しくなった空気に僕は落ち着きを取り戻していた。
そうしていたら、穂香は少しふわふわ浮かんで僕と同じ目線になってこう言った。
「ねえねえ。漫画、一緒に読も?」
僕はまた、彼女に言われるがままになって一緒に漫画を読んだ。
一緒に読んでいる時間は時間感覚がずれるようで、外ではあっという間に日が高くなっていた。
そろそろ12時。昼ごはんの用意ができていると言う母の声で僕らは我に返った。
8/26
夏休み終了まであと6日。だが、夏休みの課題はまだ始まったばかり。
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