猫歴46年その2にゃ~


 我が輩は猫である。名前はシラタマだ。変態パーティのリーダーではない。


 東の国のハンターギルドでは、キアラのビキニアーマーは噂になり、それをわしが着せたのではないかと冤罪が生まれてしまった。

 このことはさっちゃんの耳にも入り、「娘に何してんだ!」と怒られた。もちろん東の国で働いているシリエージョには汚物でも見る目で「変態猫!!」と怒られたので、泣いた。


 わしが着せたわけではないのにキアラが恥ずかしいからって、シリエージョには「パパに無理矢理……」って嘘の告げ口したから、こんなことになったのだ。

 でも、あとからイサベレが「お灸を据えるためだった」と弁解してくれたので、シリエージョが謝りに来て優しく撫でてくれたから許す。しかし姉妹喧嘩は見てられなかったので、キアラを助けてあげた。シリエージョが殺しそうだったもん。


 ちなみに魔法少女ベティは、多くの人に笑われたので、しばらく真っ白になっていた。わしをおちょくるから悪いんじゃ。ざまぁみろ。



 そんな平和な事件が猫パーティ内で起こっていたけど、世間では関係ないこと。猫歴46年の春頃になると、ついに全世界の通貨が貨幣から紙幣へと移り変わった。

 というわけで、王様仲間のさっちゃんとお茶会。ちゃんとこの日に合わせてアポイント取ったよ。サンドリーヌタワーの最上階の部屋で、下々の者を見ながらわしたちはお茶をしている。


「プププ……シラタマちゃんばっかり」

「笑うにゃよ~。さっちゃんだって、お札になってるにゃ~」


 お互いの完成した紙幣や貨幣を見せ合ったら、またわしは笑われる。これが予見できて嫌だったから、統一通貨にしたかったのに……


「私はこの五千リーヌだけだもん」

「にゃ? じゃあ、一万リーヌはペトさんにゃ?」

「そそ。千リーヌはお姉様方よ。って、2人だからわかるか」

「う~ん……みんにゃ似たような美人にゃから、絵にするとよくわからないにゃ~」

「ネコ札よりマシよ。なに横向いたり全身だったりって? アハハハハ」

「わしがデザインしたんじゃないから笑わないでくれにゃ~」


 猫の国のお札は、一万ネコはわしの正面どアップ。五千ネコはわしの左側の顔。千ネコは右側の顔にしていたけど、間違えそうだからって全身になったんだとか。

 こんなカンフー映画に出て来る鶴のポーズみたいな、ふざけた格好でよかったんじゃろうか……

 ちなみにお札に書かれている数字は、全世界共通。しばらく同価値でやるから、単位が違うと同額の支払いでお札の数が変わってしまうので、話し合いの結果このようになったのだ。


 通貨の名前は東の国が「リーヌ」。王族女子の名前の最後に「リーヌ」が付く人が多いからそこから来ているらしい。個人的には、さっちゃんのサンドリーヌから取ったと思うんじゃけどな~……発音しづらっ。

 猫の国は……何故か日本語の「ネコ」。響きがかわいいんだとか。もちろん大反対したよ?


 この名前の決め方は、世界金融会議で第三志望まで出して、被った場合はクジ引き。幸い皆捻った名前を出したので、被ったのは2件だとか。「ネコ」はかすりもしなかったんだって。だろうね。

 皆さん気になる日ノ本は「円」。第三世界に行った玉藻が助言したのかと思ったら、まったくのノータッチで決まったらしい。やはり、日本人の思考は第四世界でも似ているみたいだ。


 この一万ネコってのが、金貨1枚よりやや高い価格設定になっている。ただし、交換は同価値。新しいお金全てにちょっとお得感を出して、早く回収しようという作戦だ。

 これはギョクロとナツの発案で、金融会議の出席者から大絶賛されたんだって。わしの子供、賢すぎるじゃろ~~~!!



「それにしても、こうもバラバラの紙幣になるのって、私の功績と言えるのかな~?」


 散々笑われてわしがギブアップしたところで、さっちゃんは愚痴に変わった。


「言いだしっぺにゃから、なるんじゃにゃい?」

「シラタマちゃんと共同提出したじゃない? 将来はシラタマちゃんだけでやったとか言われないか不安だな~。てか、歴史を書き替えたりしないわよね??」

「にゃんのこと?」

「だってシラタマちゃん、長生きじゃな~い。やろうと思えば、いくらでも捏造ねつぞうできるじゃな~い」


 長い付き合いのさっちゃんがわしのことを信じていないのは、ちょっとショックだ。


「わしがそんにゃことしないのは、さっちゃんが一番知ってるにゃろ? キャットトレインの件も、さっちゃんにしか文句言ってないにゃ~」

「そうね……ゴメン。歳取って、なんだか臆病になってるわ……」

「いいにゃいいにゃ。わしたちは親友にゃろ? 不安にゃことがあったら、いくらでも聞いてやるにゃ」

「ありがとう……それじゃあマッサージ機、見てくれない? 変な音が鳴り出したの」

「うんにゃ……にゃんかわしの使い方、違うくにゃい??」

「いいからいいから。ね?」


 さっちゃんの頼み事だから二つ返事で了承して立ち上がったけど、そこで異変に気付いてわしが止まったら、さっちゃんに背中を押されて別室へ。マジで全自動マッサージ機を修理させられました。

 その間に不安なことを言われたけど、頭に入って来なかったよ! どうやら不安を口にすることは女王として恥ずべきことだから、さっちゃんはわざとこんな喋り方をしたらしい……



 さっちゃんの弱気の姿を見てしまったので、東の国に出向くことが増えたが、わしも忙しい身。問題児のキアラの装備を細かく直したり新しく作ったりしていたら、キアラコレクションが10個になった……


「にゃあ? いつににゃったら実践訓練するにゃ??」

「実践訓練?? ……あっ! 忘れてた!?」

「わし、にゃん度も言ってるにゃよ??」

「だって、パパがイロイロ作ってくれるから楽しかったの~~~」


 キアラはもう実践に出していいレベルだったから連れ出そうとする度に、装備が決まらないと断られていたから、わしのせいではないはず。

 しかし、猫パーティのメンバーからは、わしが甘やかしているとめっちゃ責められた。特に子供たちが「自分の時はそんなにいっぱい作ってくれなかった」と……


「いや、これはその……装備がにゃかにゃか決まらないからにゃ……」

「パパ、だ~い好き~」

「今度はにゃにが欲しいんにゃ~?」

「「「「「甘すぎにゃ~~~」」」」」


 だって、こんなにわしに甘えて来る娘が、今までこの家にいただろうか~~~!!


 やはり、末っ子というモノは小悪魔。キアラコレクションの写真撮影にも積極的にわしが手伝っていたから、2人して引きずられて黒い森に拉致られたのであったとさ。



 ようやくキアラのデビューとなったので、いつも通りわしが黒い獣を捕まえて来て、レディーゴー!

 さすがはイサベレの娘ということもあり、危なげなく倒していたから、おかわりを二度ほどしてイサベレたちと批評している。


「にゃんていうか、見た目はアレにゃけど、わしたちの子供の中で一番安定感がある戦い方だにゃ~」

「ん。盾がなかなかいい。私とリータを足して2で割った感じ。ソロ向きかも」


 キアラは盾のおかげで防御が硬く、中距離でも魔法を使え、接近戦では剣を振るえるので文句なしの出来栄できばええ。派手なパッションピンクの騎士コスプレでなければ……


「ただにゃ~……」

「何か不満??」

「ウチって、前衛多すぎにゃい??」

「確かに……サクラが帰って来ても足りない」


 アダルトチームの前衛は、リータ、メイバイ。中距離マルチがイサベレ、コリス、わし。後衛はベティと言いたいところだが、接近戦もこなせるように訓練したので後衛寄りなだけ。ちなみにノルンは前衛だけど参加させないよ。

 ヤングチームの前衛は、インホワ、オニタ。中距離マルチがシリエージョ、ニナ、リリス、キアラ。純粋な後衛はサクラしかいない。オニヒメの抜けた穴が大きすぎる事態だ。


「オニタ以外、ある程度魔法が使えるから、いらないっちゃいらないんだけどにゃ~……」

「ん。バランスが悪すぎる。回復役も少ない」

「わしとコリスでしばらく持たすとして……孫に期待するかにゃ?」

「もっと子供産んだらいい。リータとメイバイ辺り、そろそろ2人目どう?」

「それはそれで、戦力増やしたいから子供を産むみたいで嫌だにゃ~」


 末っ子のデビューで猫パーティの弱点発覚。いや、弱点なんてないようなモノだし、いまでも世界を脅かせるには充分すぎる戦力があるので、急いで子供を作るのはわしとしてはあまりやりたくないのだ。


「ちなみにイサベレはまだ欲しいにゃ?」

「欲しいけど、200歳辺りに作りたい。いくつまで産めるかも知りたいし、皆の実験台になる」

「にゃるほどにゃ~……でも、エルフとハイエルフから聞けばいいだけにゃんだから、そんにゃに無理しなくていいにゃよ?」

「そうだった。もう、私は1人じゃなかった……」

「にゃはは。先達せんだつがいるのは、本当に素晴らしいことだにゃ~」


 この日は何故か子作りの話になり、子供たちに「目の前でやめてください」とお願いされるわしたちであった……



 キアラのレベル上げは仕上がったが、装備品についてはまだまだ決定には至らないけど狩りに行く頻度は増える。

 大学に行った子供たちも心配なのでわしは度々足を運んでいるけど、勉強の邪魔なんだとか。隣で寝てるだけだから、邪魔じゃないと思うんじゃけどな~?


 そんな中、ついに例のアレが完成した。


「おお~……ウインニャーズってにゃに?」


 パソコンだ。苦節30年。パソコン開発部に就職したギョクロとナツの頑張りで、ついに第三世界のスペックにやや劣るぐらいのパソコンを作れるようになったのだ。けど、変なスタート画面が出たので、喜び半減だ。


「「ママたちに押し切られてにゃ……」」

「やりたくにゃかったら、ちゃんと言えにゃ~」

「「職場のみんにゃもこれがいいって言うから……もう、工場は稼働してるから止められないにゃ~」」

「にゃんてこった!?」


 わしが目を離しているうちに、ここまで決まっていたなんてビックリ。リータとメイバイだけではなく、母親全員に説得されてこんな変な名前のOSになったらしい……


「スマホもできたんにゃけど……」

「にゃ!? にゃんて天才にゃの!? キャ、キャットフォーン……」

「「それもママたちに……」」

「にゃんで先に相談しないんにゃ~~~!!」

「「ゴメンにゃさい……」」


 スマホもすでに工場で生産中なので、止められない。なので、やっぱり素直に喜べない。ちなみに試作機はもっと前にできていて、部品工場の手配に数年かかったんだとか……だったらもっと早く教えてよ~~~。


「まぁ、ようやく自作のパソコンとスマホでインターネットができるんだにゃ。2人とも、よくやったにゃ~」

「「名前が……」」

「それはもう諦めようにゃ……」


 こうして猫歴46年夏に、第三世界初のパソコンとスマホが発売したのだが、欲しがっていたサクラたちも微妙な顔で、喜ぶに喜べないのであったとさ。

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