猫歴36年にゃ~
我が輩は猫である。名前はシラタマだ。虫は嫌い!!
タランチュラ事件からわしは心を閉ざし、ニナから距離を取っている。
「パパ~。ゴメンにゃ~。ゴロゴロ~。また手料理食べてにゃ~。ゴロゴロ~」
「にゃに入ってるにゃ? ゴロゴロ~」
「未知の魚介類にゃけど……」
「絶対虫にゃ~~~! ぎにゃ~~~!!」
ニナがいくらスリ寄って来ようとも、今回ばかりは無理! わしはニナから逃げ回るのであった。
「ベティお姉ちゃ~ん。食べてにゃ~。ゴロゴロ~」
「うっ……ちなみに何が入ってるの?」
「ヘラクレスオオカブトムシの幼虫にゃ。パパなら喜んで食べてくれると思ったのににゃ~」
「あの猫、成虫の見た目が好きなだけで、食べたくはないと思うよ?」
「そうにゃの? まぁいいにゃ。早く食べてにゃ~」
「こ、これを私が……パクッ……意外と美味しいのが困る!!」
「やったにゃ~~~!!」
標的はわしから孫バカのベティに移って、ゲテモノ料理を堪能させられるのであったとさ。
猫歴34年は何かと大変な年であったが月日が流れ、猫歴35年にはリリスも猫パーティで元気に暴れ回り、ニナもイロモノに拍車がかかっていたら1年があっという間に過ぎて、猫歴36年となった。
「にゃ~! 大学入学おめでとうにゃ~~~!!」
そう。猫歴36年は、つゆとの息子、狸尻尾の黒猫ギョクロと、お春との娘、狐尻尾の黒猫ナツが大学生になったので、わしはまた涙。
もう18歳の2人は「いつまで泣くんだ」と呆れまくっている。いちおう関係ない白猫ニナも、スーツ着て出席してたよ。
ちなみに私立猫の国大学は、国からお金は入ることになったけど、わしのポケットマネーと猫大技術部門の知的財産権で運営されるようになっている。金額は3分割で、国からは補助金ということにしているので、私立のままだ。
何故わしがまた大学に口出しをしているかというと、学長をしていたホウジツが逃げやがったから! いや、猫の国銀行とかいう変な名前の国営銀行が作られて、適任者がこいつしかいなかったから逃がしてやったのだ。
いまではバリバリ融資しまくって、儲けまくっていると聞いている。そんなことより国債とか紙幣を考えてくれ~い。
そのこともあって、学長は亡きトウキン教育委員長の忘れ形見にお願いした。ただ、就任してまだ間もないので、理事長のわしが手伝っているというわけだ。
この猫耳族の女性は、猫王様シリーズの小説のゴーストライターをしていたので、それなりの教養を持ち合わせているからお願いしたのだ。同じくゴーストライターをしていた姉は、教育委員長に就任している。
そもそもこの姉妹は奴隷だったのだが、人族であるトウキン夫妻の亡くなった娘に似ているからと買われ、愛情たっぷりに育てられていた。
そこにわしが帝国を乗っ取って養子を認めたから、誰からも文句を言われない仲睦まじい親子となったのだ。
そのトウキンが得意としていた学問系の職業に就いたのだから、トウキン夫妻は草葉の陰から喜んで見ていることだろう。
私立猫の国大学は、今期から募集要項を少し変更。今までは各市にある学校から勉強大好きっていう変人を引き抜いていたのだが、その変人は猫高校に集まっているので、試験を
せめて半分にまで振るいに掛けないと、授業料はタダなので大学の支出がバカ高くなるからの苦肉の策。しかし、まさかの定員割れ。
高校まで履修した生徒は、現在の国民の中では天才に位置されるので、公的機関やら商人やら実家やらが喉から手が出るほど欲しい人材だから、引き抜きが凄いことになってしまったのだ。
猫高卒で残った変人は、3分の1程度。学習意欲が高い変人しか集まらなかったので、どうなることやら。平賀家の二の舞いになりませんように!
その中にはわしの子供も含まれていたので、入学式が終わったらギョクロとナツを学長室兼、理事長室に呼び出した。
「2人とも理数系が強いよにゃ~……どんにゃ学問を極めようと思ってるにゃ?」
「僕はインターネットが早くできるように、パソコン開発をしたいと思いにゃす」
「私はスマホが作りたいので、まずはパソコンの小型化を目指そうと思いにゃす」
「にゃに~?
「「恥ずかしいんにゃから、茶化さないでにゃ~」」
どうやら立派な大学生になったから、2人とも口調に気を付けていた模様。さすがは高学歴と褒めたいところだが、敬語なんて距離を取られているみたいでわしは悲しいのだ。
「う~ん……パソコン開発にゃ~……」
「ダメにゃ~? みんにゃ苦戦してるから頑張りたいんにゃけど……」
「いや、凄く嬉しいんにゃよ。ただ、前に第三世界に行った時に、天皇陛下がもっと凄いパソコンを買ってくれていたから、そっちをやったほうがいいのかもと頭によぎっただけにゃ」
「「それってどんにゃパソコンにゃ!?」」
2人して食い付いて来たので、地下の空き部屋に移動して次元倉庫からパソコンを出してみた。
「これがパソコンにゃ……」
「タンクみたいな形だにゃ……」
大きな筒状の機械を見たナツとギョクロは、ペタペタと肉球で触っている。
「これは量子コンピュータと言ってにゃ。いま使ってるパソコンをにゃん億台も繋げた演算速度が出るらしいんにゃ」
「「そんにゃに!?」」
そう。量子コンピュータとは、スーパーコンピュータより遙かに優れた物。猫の国ではまだスーパーコンピュータすら作れないのに、オーバーテクノロジー過ぎる代物だ。
「これを小型化できれば、いま作っているパソコンもいらなくなるんだよにゃ~……2人はどうしたらいいと思うにゃ?」
わしでもわからないことを、無茶振り。ギョクロとナツは話し合い、説明書を見せてくれと言って来たので見せて、わしは議論を見守る。
「先の研究は必要だよにゃ?」
「でも、私たちでも全然わからないにゃ~」
「確かに……いまのパソコン開発を急いぐしかにゃいかも……」
「同時並行でやってみたらどうにゃ? 空き時間にちょっとずつ。そしたら、いまのパソコン開発にも役に立たにゃい?」
「うんにゃ。いまのでもよくわからにゃいんだから、知識は入れておいてもいいかもにゃ」
賢い会話だなと微笑ましく見ていたら結論が出たようなので、わしは会話に入る。
「あと、6Gって通信の規格もやってるみたいにゃんだけど、どうしよっかにゃ?」
「「手が足りないにゃ~」」
さらに足したらギブアップ。それにうちにそんな速度の通信規格はいまのところ必要ないので、2人はパソコン開発に力を注ぐことになった。
それからひと月……
「やってるにゃ~?」
わしは猫大に足を運ぶことが増えた。
「「また来たにゃ……」」
だって、息子と娘が一所懸命学んでるんだもん。その2人は、わしが毎日のように来るから嫌そうな顔をしてるけど……
ちなみに今期からの大学生は、地下図書館への立ち入りは禁止。講師から自分のやりたい学問を学び、4年で卒業となる。さすがに毎年増えるこの大所帯を養うにはお金がいくらあっても足りないから、致し方ない処置だ。
ただし、成績優秀者や新しい発見をした者、有意義な研究をしている者には、講師や研究生として残る権利は与えられる。こういう人材を発掘するために作ったのだからな。
もしもやりたい学問の講師がいなかったら、契約魔法で縛って地下図書館にご案内。そこで個人で学び研究成果を発表すれば講師として残れるが、複数の講師から推薦状を取り付けて、学長と理事長であるわしの判断に委ねられる。
論文を読めるかどうか、いまから不安でしかない。
ギョクロとナツの場合は、猫の国に一番欲しい学問を学んでいるので、おそらくそのまま大学に残るはず。もしもの場合は、わしがゴリ押ししてやる。
まぁ技術部門に移ることも可能だから、無駄に王様権限なんて使わなくてもいいだろう。授業を受けている姿を見たら、めちゃくちゃ賢かったから確実だ。
「また寝てるにゃ……」
「にゃにしに来てるんにゃろ?」
座学は2人の隣で爆睡気味のわしだけど、賢いから安心しきっているだけだから、もう少し寝かせて……
そんな感じで2ヶ月が過ぎた頃には座学が終わって、実技。プログラミングはわしにはわからないので寝て、パソコン組み立て工場では真面目に見ている。
「起きてるにゃ……」
「珍しいにゃ……」
いつも寝ているわしが、ギョクロとナツの目には不可思議に見えるらしい……
「にゃんで起きてるにゃ??」
「にゃ? こういう作業は嫌いじゃないからにゃ~」
「パパは一番嫌がりそうだと思ってたにゃ~」
「にゃはは。そりゃそうか。2人はわしが技術者だって知らなかったにゃ~」
「「技術者にゃ??」」
「いま当たり前に走ってるキャットトレインも、様々な物が作られている工場も、キャットタワーもエレベーターもわしが作ったんにゃ。前世の知識を使ってるから、褒められたもんじゃないけどにゃ」
「「いや、凄いにゃ!!」」
わしが技術者の上に様々な物を作っていると知って、2人はベタ褒め。いまの猫の国が技術大国なのは、第三世界に行って知識を持ち帰ってからだと思っていたそうだ。
「電気技術にも明るかったらよかったんだけどにゃ~。わしが得意なのは製鉄関連にゃ。その方面にゃらいくらでも手伝えるから、作って欲しい物があったら声かけてくれにゃ」
「「ちょっと見せてにゃ~」」
「にゃ~? ひょっとして信じてないにゃ~??」
「「そんにゃことないにゃ~」」
2人がスリ寄っているところを見るに、今までの話は信用したから尊敬の念が尽きないらしい。それならば、もっと尊敬してもらおうと、北地区にある製鉄工房で実技。
鉄魔法でクギとかネジを作ってあげたら、大満足だ。
「「にゃんか思ってたのと違うにゃ……」」
作り方が簡単すぎたみたいだ。なので、その辺の機器で鉄を叩いたり削ったりして、猫のキーホルダーを2個作ってやった。
「凄いにゃ~!」
「精密にゃ~!」
「にゃはは。昔はもっと上手かったんにゃけどにゃ~。だいぶ腕が
「「これでにゃ!?」」
「ほら? 見比べると表情がちょっと違うし微妙に大きさも違うにゃろ??」
「「こんにゃのわからないにゃ~」」
2人では違いがわからないらしいので、工房で働く職人にも見せてあげたけど、作り方からわからないんだって。そのせいで、教えてくれとわしは師匠扱い。
この日は、職人に教鞭を振るうわしを、尊敬の眼差しで見続けるギョクロとナツであった……
「……にゃあ?」
「うんにゃ。言いたいことわかってるにゃ……」
「「これって王様のすることかにゃ~??」」
でも、我に返ったら疑問に思い、わしを置いて首を傾げながら帰って行った2人であったとさ。
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