猫歴26年その4にゃ~


 火星に来て東の国の王子様、エティエンヌにプロポーズのようなことをされて、本当の目的は大学と聞いたサクラはわしの腕の中で気絶した演技中。さすがにかわいそうすぎるので、女王を呼んでニヶ国間協議だ。


「なになに~? なにか面白い話??」

「面白くないにゃ! 後生にゃから、そっとしておいてくれにゃ~」


 でも、ベティたちがやって来てニヤニヤ見るので、写真等をお願いしていたメイバイに頼んで野次馬は排除してもらった。しかし、家族間の問題でもあるので、サクラの母親のリータは残った。

 東の国側も、次期女王のアンジェリーヌ第一王女様が同席していたので揉めたけど、やっとこさニヶ国間協議の開始だ。


「え~……議題は、王子君がサクラのことをもてあそんだこと……違うにゃ? もうその件はいいにゃ? でも……あ、そういうことにゃ」


 サクラが念話で協議内容の変更を求めて来たので、若干変更。


「大学に行きたいにゃら、さっちゃんやペトさんの許可を取ったらいいにゃ。家も、うちから通ったら護衛費用も安くなるにゃよ?」

「あの、その……」


 どうやらこの話は、エティエンヌに取っては初めての反抗期みたいなものだから、ペトロニーヌの前ではしたくなかったみたいだ。


「それと弄んだはどう関係あるの?」

「そこ触れちゃうにゃ?」

「気になるじゃない」

「簡潔に言うとにゃ~……」


 とりあえずサクラの許可をもらって説明したら、ペトロニーヌも呆れていた。


「要するに留学でしょ? それならそう言えば、サティも私も反対しないわよ」

「本当ですか!?」

「でも、女の子を傷付けたことはいただけないわね。責任取って結婚しなさい」

「は、はい……」


 ペトロニーヌに睨まれたからには、エティエンヌは逆らえないのか結婚する流れになってしまった。なのでわしがサクラを見たら、嬉しそうな悲しそうな、なんともいえない顔をしていた。


「ペトさんって、ひょっとして王子君を政略結婚に使おうとしてにゃい?」

「いえ。昔の案を採用しただけよ」

「それが政略結婚って言うんにゃ!!」


 わしとさっちゃんが2人をくっつけようとしたことがあるので、ペトロニーヌはその案をいまさら許可しようとしているからわしも納得できない。


「わしはサクラには恋愛結婚してほしいんにゃ。だからいまの王子君には、サクラを任せられないにゃ~」

「それはわからないこともないけど、エティエンヌにも期限があるのよ。これを逃したら、エティエンヌには他の貴族の女性をあてがうことになるわ。王族は、どうしても政略結婚から逃れられないことを理解しなさい」


 ペトロニーヌの発言はわしに言っているように見えて、エティエンヌとアンジェリーヌに言っているようにしか聞こえない。サクラも何か思うことがあるのか、わしの手を握って来た。


「その期限、1年だけ延ばしてくれにゃい? その間に、2人が本当に愛し合う関係になれたら、わしだって喜んで祝福するにゃ。要は、お試しで付き合うってのはどうにゃろ??」


 わしも女王を見ながらサクラに言い聞かせたらめっちゃ頷いているから、これはありよりのありみたい。


「王子君はどうにゃ? 大学に通いながら、うちのサクラとたまにデートしてくれたらいいだけにゃ」

「は、はい。それでいいのでしたら」

「でも、キスはダメだからにゃ? へぶしっ」


 エティエンヌからも許可が出たが、サクラがキャットアッパーしてるということは、キス以上のことをしたいらしい。でも、パパは許しません!


「ペトさんもこれでどうにゃ?」

「そうね……ギリギリでしょうけど、サティに相談してみるわ」

「さっちゃんはよくにゃい? どうせサクラを近くに置いておきたいとか言うだけにゃし」

「そうだけど、女王はサティなんだから、決めるのもあの子なのよ。はぁ~……」


 ペトロニーヌは折れてくれたが、さっちゃんに説明するのが面倒みたい。いまだにたまにワガママさんが出るから、心労があるらしい。

 そのことについて愚痴を聞かされていたら、アンジェリーヌが申し訳なさそうに手を上げた。


「私の婚約者はいい人だから結婚するのはいいのですけど、インホワ君を専属騎士にできないでしょうか?」


 どうやらエティエンヌの反抗期に紛れて、自分の願望も叶えて欲しいらしい……


「インホワにゃ~……インホワを騎士にしてどうしたいにゃ?」

「モフモフ……いえ。護衛に……」

「「却下にゃ!」」

「そんな~~~」


 その願いはどうでもいいことなので、わしとペトロニーヌの同時ツッコミにあい、アンジェリーヌは落胆。


「それににゃ。インホワはけっこうバカにゃからやめとけにゃ。ウサギ族の手練れを派遣してあげるにゃ~」

「やった~~~!!」


 その顔がかわいそうだったので、ウサギ族を売ったら飛び跳ねて喜ぶアンジェリーヌ。モフモフだったらなんでもいいらしい……


 とりあえず真面目な話が終わったら調査に戻ろうとしたけど、ベティが近付いて来てわしだけにツッコム。


「あんたたち、火星に来て、なに政略結婚の話をしてるのよ。ここじゃなくていいでしょ」


 どうやらノルンがスパイをしていて、ベティに伝えたっぽい。


「確かに……わしはいったい火星に何しに来たんにゃろ……」

「知らないわよ。それに周りも見てみなさい。あんたが出したテレビとかゲームしかしてないわよ」

「にゃ……」


 周りを見ると、リビングかってぐらいくつろぐ皆の姿があったので、ベティのツッコミが的確すぎてわしは何ひとつ反論できないわしであったとさ。



 ベティのツッコミはさておき、調査に戻ったらサクラとエティエンヌが手を繋いで喋っていたので間に入り、火星の石を持って「丸い石だから川があったかも?」と知識を披露。

 それでエティエンヌは興味を持ってくれたけど、サクラはイライラ。甘い一時を邪魔するなとのこと。また叩かれたけど、さっきから父親に暴力振るってるよ? わかってる??


 声にしたらサクラもわかってくれたけど「エティ君との仲を邪魔するとわかってるな?」と歯を剥いて言われたので、わしは遠くから見守ることにした。

 こうして火星探索は素晴らしい成果を出したけど、サクラとエティエンヌのせいでいまいち探索が上手くいった気がしないわしであったとさ。



 火星探索を終えて地球に転移したら、火星調査隊は解散。他国の者は各々の国に帰り、UFOは再び時のピラミッドの地下に補完。

 あれだけ長距離移動して遊び倒したのにエネルギーは3年分ぐらいしか減ってなかったので、思ったより第三世界に早く行けそうだから、UFO様々だ。


 そうしていつもの生活に戻り、狩りをしたりお昼寝したり、王様以外の仕事をしたりお昼寝したり、たまに王様の仕事をしたりお昼寝していたら、エティエンヌが越して来た。さっちゃんだけ揉めたんだって。

 そのせいで、サクラの機嫌が恐ろしくいい。部屋は別々だけど、毎日食事の時に会えるし、なんだったら護衛に立候補して大学に一緒に登校している。けど、大学の地下はキャットタワーと繋がってるから護衛の必要はないんじゃけど……


 そんな2人を邪魔しようと……もとい! エティエンヌは何の研究してるのかとストーカーしてたら、最初は宇宙のコーナーにいたけど、人類学のコーナーに移っていた。

 どうやら人類の進化に興味があるみたいだ。サクラは……邪魔にならないように、エティエンヌの近くで恋愛小説を読んでる。確かにマンガじゃないから制限時間には引っ掛からないけど……ムムム。


 注意しようかと思ったけど、少し様子を見ていたら、キャットタワーに激震が走った。


「モフモフ~。挟まった~」

「コリス! 暴れるにゃ! 人型に変身するんにゃ~!!」


 激震の正体は、コリスが階段で身動きを取れなくなり、バタバタしてキャットタワーを揺らしたから。コリスのパワーなら、キャットタワーを簡単に破壊できるのだから暴れないでほしい。

 そんなこともあったので、人型に変身して抜け出したコリスと、リータとメイバイにも付き合ってもらって離れで話し合う。


「今まで気付きませんでしたけど、おっきくなりましたね~」

「そういえば、一緒に寝れる人数が増えてたニャー」


 コリスが元の姿に戻ると、3メートルオーバーの白リスの登場。基本的にうちにいる人間……住人は見た目が変わらないメンバーだらけなので、ちょっとずつ大きくなるコリスに気付けていないかったのだ。


「それでコリスをどうするかだにゃ~……専用の家を作って独り暮らしさせるのもかわいそうにゃし……小さく変身するのはどうにゃろう? できるにゃ??」

「やってみる~」


 コリスも独り暮らしは嫌なのか、二つ返事で変身魔法を使う。


「わっ! 手乗りになりました!」

「かわいいニャー!」


 でも、小さくなりすぎ。普通のリスのサイズになったので、リータとメイバイは手に乗せてコリスを甘やかしまくってる。


「それじゃあ生活しにくいにゃろ? もうちょっと大きくなろうにゃ~」

「う~ん……難しい~」


 コリスはサイズ調整が苦手なのか、いまいち大きさが定まらない。なんだったら大きくなりすぎて、わしたちはモフモフの海に埋もれた。でも、リータとメイバイは嬉しそうだな。

 なかなか上手くいかないので、そういえばお春とつゆは呪具を使って変身魔法の補助をしていたと思い出したから呼ぼうとしたら、お春がシュタッと現れた。


「こちらになります」

「いつからどこから見てたにゃ??」


 そして葉っぱ型の呪具を渡してくれたので質問したけど答えてくれない。コリスにいろいろアドバイスして、2メートルのリスに定着するのであった。



 お春と呪具のおかけでコリスを追い出す必要がなくなったので、ひとまずモフモフパーティー。4人でコリスをチヤホヤ……モフモフし、コリスは高級串焼きをモグモグ。

 そうしていたら、リータとメイバイがわしの触れてはならないプライバシーに触れて来た。


「そういえばシラタマさんって、ぜんぜん大きくなりませんよね?」

「ちゃんとごはん食べてるニャー?」


 そう。わしは人型でも猫型でも1メートルちょっとしかないから不思議がっているのだ。


「わしは……みんにゃがこれぐらいがいいって言ったから維持してるんにゃろ?」

「いまの姿のことじゃないですよ。元の姿のことですよ」

「いま、話を逸らそうとしたニャー!」

「別に逸らしてないにゃ~」

「身体検査しますよ~?」

「元の姿になるニャー!」

「いにゃ~~~ん!! ゴロゴロゴロゴロ~」


 というわけで、わしは2人に服をひんむかれてモフモフの刑を受けたので、渋々本当の姿を初お披露目する。


「「「わっ! モフモフ~!!」」」

「モフモフおなじくらいだね~。ホロッホロッ」


 だって、わしも2メートルオーバーになってるから、モフられるのは目に見えていたんじゃもん。同じモフモフ仲間のお春まで突っ込んで来なくていいのに……


「身体検査はしないにゃ? ゴロゴロ~」

「「「モフモフモフモフ~!!」」」

「にゃっ!? パパが大きくなってるにゃ~~~!!」

「「「「「モフモフ~~~!!」」」」」


 それをサクラが大声で宣伝したもんだから、キャットタワーに住む者全員がわしに突っ込んで来たのであったとさ。

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