猫歴26年その3にゃ~
我が輩は猫である。名前はシラタマだ。いまのところこの世界では、トップレベルの賢さのはずだ。
火星近辺にUFOが到着後、写真撮影をしていたらコリスに噛まれたので、すぐにでも調査に取り掛かりたかったけどここでランチ。コリス用に多く出したら、わしとベティとノルンは別テーブルでモグモグ会議。
何故かエティエンヌ王子はわしにくっついているから同席しているが、静かなものだ。
「火星の北極には氷があるらしいから、そこに着陸しようにゃ」
「マジで? 火星って氷があるの??」
「あ、ベティは知らなかったんにゃ。どれかの本に書いてあると思うけど、地下水があるとか雪が降ったとか言われているんにゃ」
「へ~。私が知らない間に、そんなに調べられていたんだ」
ベティが死んでからの発見は多々あるが、ベティは本を読まずにわしに聞く。
「でも、なんで氷にこだわるの?」
「氷があると言うことは、水があると言うことにゃ。生命の誕生には水が不可欠と聞いたことあるにゃろ?」
「ああ~。アレね。生命のスープってヤツ」
「ベティでもそんな難しいこと知ってたんだよ。ビックリなんだよ」
「私が苦手なのは理科だけなの!」
「生命のスープは科学の話なんだから、理科と同じなんだよ」
ベティはノルンから馬鹿にされることが多い。いつも一緒にいるから、すぐにメッキが剥がれたのだろう。
「おっと。その前に、ここまで来たんにゃからフォボスにも寄ってみようにゃ。火星のお月様ってロマンチックじゃにゃ~い?」
「うん! 地球の月と何が違うんだろ~」
「んじゃ、フォボスに着陸にゃ~! でも、どっちがフォボスなんにゃろ?」
「シラタマもベティと同じぐらい頭悪いんだよ」
「ベティと一緒にするにゃ~!」
「この猫よりはマシよ!」
「「にゃんだと~~~!!」」
ノルンはわしを馬鹿にすることも忘れていないので、一緒にされたわしとベティはケンカしてしまうのであった。
「やっぱり似た者どうしなんだよ。キャハハハハ」
どうやらノルンは、わしたちを焚き付けるためにやっているみたいだ……
わしとベティがケンカしていたら、玉藻がこれからどうするのかと割って入って来たのでケンカしている場合ではない。火星の本を見て、皆でフォボスの当て合い。
UFOで移動しながらフォボスの絵と照らし合わせれば、そこに向かって着陸体勢。しばらく空中から観察したら、大多数の人に「何もないからいいんじゃね?」とか言われたけど、強引に着陸してもらった。
ここで下りる人は、わしとベティとエティエンヌぐらい。なので急いでポーリング調査や土の採取をして、すぐにUFOに戻るのであった。
本丸は火星。北極圏にあると言われている氷の集合体に向かっていると、地表に複数の渦があったので玉藻がわしに寄って来て質問する。気象大好きセンエンも盗み聞きしてる。
「アレは台風か? かなりデカいぞ」
「たぶん竜巻じゃないかにゃ~?」
「あんなのが近くにいくつもあったら、たまったもんじゃないな。しかし、風が起こるということは、ここには空気があるということか?」
「いや、ほとんど二酸化炭素……吸ったら死んじゃうような大気成分にゃから、人間は生きてられないにゃ……そういえば、火星には凄い遺跡があって、空気を作り出すシステムが生きてるんにゃって」
「ほう……それはまた凄いのう。そいつを起動すれば、移住も可能ってことなんじゃな」
わしと玉藻の話を聞いていた皆は「すご~い」とか「探検しようぜ~!」とか言っていたけど、ペトロニーヌが呆れた顔で遮る。
「それ、こないだ映画で見たわよ。マッチョな男が宇宙人と戦うヤツ」
「にゃはは。すぐバレちゃったにゃ。みんにゃ宇宙モノは見てなかったから、バレないと思ったのににゃ~」
「「「「「嘘つきにゃ~!」」」」」
「ちょっとした冗談にゃ~」
ペトロニーヌのせいで、わしは子供たちから嘘つき扱い。なので誠心誠意謝って、なんとか許してもらった。コリスには串焼きあげた。
そうして氷の近くにUFOを着陸させたら、まずは重力の確認だ。
「「「「「軽いにゃ~」」」」」
「調子に乗ってたら頭打つにゃよ~?」
火星の重力は、地球の3分の1。初体験の子供はこぞってジャンプし、月で6分の1の重力を体験したことのある者は、歩きやすいとか言っている。
これなら外の調査もできると思うけど、この重力に慣れると戻った時に動けなくなる人が続出するので、ちょっと遊んだら地球の重力に戻した。
それからUFOを下りて調査を開始するのだが……
「「「「「にゃ~~~!!」」」」」
「走るにゃ! 子供を捕まえろにゃ~~~!!」
湖っぽい氷を見てテンションの上がった小さい子はいきなり走り出したので、猫パーティが瞬く間に捕まえてママの元へ。いくら結界のおかげで空気があっても、そこから出ては死んでしまうから手を離せない。
子供たちの処置が終わったらテーブルやソファー、暇潰しアイテムを多数出して子供のことはママたちに任せると、わしは各種調査に取り掛かる。
「それはなんですか?」
わしがゴソゴソしていたら、くっついて離れないエティエンヌの質問が来たので答えてあげる。
「第三世界で買って来た、空気中の成分を調べる機械にゃ」
「へ~。そんな便利な機械も売ってたのですね。でも、誰がその機械を運ぶのですか??」
「前回はいらんことしたから、こいつで行こうと思うにゃ」
「あ、この本に載ってる探査機みたいでかっこいいですね!」
「にゃろ? いっくにゃ~」
土魔法で戦車のような物を作ったら、そこに機械を固定して結界の外へ。そして大気を採取して点滅したのを確認したら、中に戻す。
「どうですか??」
「う~ん……本の通り、二酸化炭素ばっかりにゃ。生身では結界から出れないにゃ~」
「それじゃあ生き物も生きていけないですね。木も草もないですし」
「氷の中に、植物系統のプランクトンがいればあるいは……」
「どうやって採取するのですか?」
「魔法を遠隔でやってみるにゃ~」
湖みたいな氷の塊は、氷魔法で操って細長く引っこ抜くと、これは分割して土魔法の箱に。その時、下の方は水だと気付いたので、水魔法で湖の水をシェイクしてから、それも土魔法の箱にいくつも詰めて次元倉庫に保管する。
「結果は、帰ってからにゃ~」
「すぐわからないんですね。残念です……」
「こればっかりは時間が掛かるからにゃ~……目視の確認ぐらいはやっとこうかにゃ?」
「はいっ!」
エティエンヌが残念そうな顔をしていたので、追加の調査。さっきと同じように氷と水を、ガラス製の箱に入れた物をテーブルに乗せる。
「水……ですね」
「触るにゃよ~? 未知の病原体だってあるかもしれないんだからにゃ」
「は、はい!」
エティエンヌが今にも水に手を突っ込もうとしていたから注意したら、慌てて手を引いた。
「濁っているのは泥ですかね?」
「だろうにゃ。ひょっとしたらバクテリア……微生物がいるかもにゃ~」
「あの……顕微鏡は持ってないですか?」
「あ、王子君は使ったことあるんにゃ。知らないと思ってたにゃ~。ちょっと待ってにゃ~?」
エティエンヌは顕微鏡なんて知らないと思っていたから、わしも出していなかっただけなので、持ってたことを忘れていたわけじゃない。
ややエティエンヌの目が冷たいが、わしは顕微鏡セットと、手術用のゴム手袋を渡して好きにさせるのであった。
「パパ~? にゃにしてるにゃ~??」
エティエンヌと一緒に顕微鏡の中を覗いて話し合っていたら、サクラが嬉しそうにやって来た。この顔は、わしにいますぐスリ寄りたい顔だ。
「ちょっと学術的調査をにゃ。にゃんとこの水には……」
「私も見せてにゃ~。パパ、邪魔にゃ」
「にゃ……」
いや、サクラはエティエンヌにスリ寄りたかった模様。わしを押し退けて顕微鏡を見ているようだけど、サクラはエティエンヌにくっつきたかっただけだ。
昔なら微笑ましく見られたけど、どちらも十代後半なので見てられない。特にイケメン好きのサクラの目がハートになっているから、親として許せん!
「わしにも見せてくれにゃ~」
「にゃ!? いま私はエティ君と一緒に見てたにゃろ!」
「そう言わずに~。ゴロゴロ~」
「スリ寄るにゃ~!!」
なので、エティエンヌを押し退けて、親子のスキンシップ。普段わしはこれで婦女子を落としていたのだが、同じモフモフどうしではあまり効果はないらしい。
そうしてサクラのポコポコを喰らってわしが地面に減り込むのを土魔法で耐えていたら、エティエンヌが声を掛ける。
「そういえば、あの話ってまだ生きてますか?」
「「あの話にゃ??」」
「サクラさんとの結婚の話です」
「けっ……結婚にゃ!? 私とエティ君が、ケケケケケ結……」
「サ、サクラ!? 大丈夫にゃ~~~!?」
エティエンヌの結婚発言に、サクラは立ち
しかし、娘に暴力を振るった(昔わしがした話の確認をする)ヤツなんかにやれない。わしはサクラを抱き締めながらキッと睨んだ。
「誰がお前にゃんかにサクラを、へぶしっ!?」
「フシャーーーッ!!」
けど、サクラがめっちゃ暴れて、わしの結婚阻止をキャットアッパーで阻止するので、もうちょっと優しいニュアンスで聞いてみる。
「い、いつからサクラのことが好きだったにゃ? ……これでいいにゃ??」
サクラは自分から聞けないのか、わしから質問させやがる。でも、グッジョブってしてるから、エティエンヌにバレるのでは?
「あの……好きではあるのですけど、サクラさんと結婚したら大学に行けるかと思って……」
「にゃんだとぉぉ~? サクラは大学のついでにゃとぉぉ~……」
「ガ、ガクッ……」
「サクラ!?」
だが、エティエンヌの目的は大学と聞いて、サクラはわしの腕の中で力が抜けて目を閉じたのであった……
「『ガクッ』て口で言ったってことは大丈夫にゃろ??」
「フラれたんにゃからそっとしておといてにゃ~~~!!」
「心配だからにゃ~~~」
でも、わしがよけいなことを言ったせいで、サクラは火星の北極圏で失恋を叫んだのであったとさ。
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