猫歴26年その2にゃ~
我が輩は猫である。名前はシラタマだ。火星に行けるなんて、神様様々だ。
火星まで転移して移動できるようになったので、さっそく乗組員を募集。
王族全員に声を掛けてみたら、宇宙に行ったことのあるお母様方はあまり乗り気じゃない。一回宇宙に行って何もなかったから、行く必要性が感じられないらしい。コリスはいつも通り。
子供たちは、賛否が分かれてる。行ったことのあるサクラはお母さん派。インホワは男の子だから何度でも行きたいらしい。バカじゃもん。いや、ロマンがわかってらっしゃる。
宇宙に行ったことのないお母さんたちは、全員参加。無重力状態を楽しみたいとのこと。もちろん子供たちもだ。
オニヒメ家族はまだ子供も小さいし、体調面を気にしていたので、日帰り旅行なんだからと無理矢理にでも連れ出す。例え火星に魔力がなくとも、わしの魔力を吸えば何日だって持たしてやれるからな。
イサベレも妊娠しているから心配していたが、無重力状態さえ気を付ければ大丈夫なはず。UFOの中は地球の重力のままなのだから、胎児に与える影響もないだろう。
いちおう一番うるさくなるであろうさっちゃんがいる東の国にも打診してあげたら、さっちゃんは忙しいらしく泣く泣く諦めていた。だって女王じゃもん。
なので、暇なペトロニーヌが絶対行くとのこと。さっちゃんの子供3人と、護衛でシリエージョが参加する。
ちなみにわしの兄弟も誘ってみたけど、一回行ったから興味なし。さっちゃんの護衛してるほうがいいとか言ってたけど、近くで寝てるだけじゃろ?
兄弟たちが少し
リータから詳しく聞いたら宇宙だったので、前回置き去りにしたことをまだ根に持って怒っていたんだって。てか、今回は忘れずに誘いに行こうとしていたのに早とちりしやがって。仕事もない一番暇そうなヤツだから、最後にしただけなのに。
あと、ワンヂェンを誘わなかったら「にゃ~にゃ~」うるさかったから連れて行くことになった。
というわけで乗組員は大量になってしまったが出発の日となったので、キャプテンベティとノルンに操縦させて、わしたちは宇宙へと飛び立った。
「「「「「にゃんだこりゃ~~~!!」」」」」
宇宙初体験の者も多いのだから、まずは普通に垂直離陸してUFOが地球外に出ると、興奮してめっちゃうるさい。玉藻が「地球は青かった」とか名言を言ってるけど、それ、けっこう有名なセリフだよ?
ここでちょっとだけ無重力体験。イサベレは念のため、別室で普通の重力だ。
皆がワイワイと空中を泳ぐなか、わしとノルンは別作業。ノルンには無線をイジらせて地上と連絡を取ってもらい、わしはUFOのドアを開けて四角い塊をノルンの合図でポイッと投げ捨てる。
「こちらシラタマにゃ。ただいま射出したにゃ。反応はどうにゃ? どうぞにゃ」
ノルンからマイクを受け取ったら、わしも喋ってみたけどぜんぜん返って来ない。しかし、おかしいなと思った頃に無線機から声が聞こえて来た。
『こちら管制塔! 電波、受信しました! 映像も来ました!!』
「「「「「わあああああ!!」」」」」
その声は、大興奮。そりゃ、自分たちで作った世界初の人工衛星が機能したのだから、喜ばないわけがない。わしだってそっち側にいたら、絶対喜んでいる。
でも、今回の人工衛星は、わしは指示だけしてノータッチだったのだから、その中には入って行けない。だって、最も苦労するはずのロケット打ち上げもしないでズルしてるもん。
ちなみに管制塔で使っているパソコンは、第三世界産。これもズルだと思うけど、うちでは作れないんじゃもん。
「にゃはは。こちらシラタマにゃ。まずはおめでとうにゃ~。では、残りの5個も射出するからにゃ~? どうぞにゃ」
下では騒ぎが凄いが、わしだって忙しい身。管制塔を急かして、残りを合図に合わせて宇宙空間に放り出したわしは無線を切るのであった。
「いったいなんの騒ぎだったのですか?」
地上との交信が終わって振り返ったら、さっちゃんの第二子、18歳になってキラキラに拍車が掛かったエティエンヌ王子が立っていた。
「ああ。せっかくここまで来たからにゃ。実験に付き合ってあげたんにゃ」
「実験ですか??」
「長距離無線にゃろ? あと人工衛星と言って、電波の送受信ができる機械を外に出してあげたんにゃ」
「言ってる意味がわかりませんけど、宇宙と関係のあることをしているのですよね?」
「ひょっとして王子君は、宇宙に興味があるにゃ?」
「はい。少しだけ……」
「そうだったんにゃ。それじゃあ、皆も気になってるみたいだし向こうで話そうにゃ」
男のロマンがわかる人が増えるのは喜ばしい限りなので、皆が集まる部屋でエティエンヌをわしの隣に座らせ、お茶をしながら説明する。
「まず、長距離無線ってのは、宇宙で作業する上で必要だから積んで来たにゃ。通信魔道具の機械版だから、これはそんにゃに説明は必要ないかにゃ? 距離がとんでもなく伸びて、音が届くには数秒から数十秒の誤差が出るってだけにゃ」
これはすぐに受け入れられたから、次は人工衛星。
「人工衛星ってのはちょっと難しいんにゃけど、中継局と思ってくれにゃ。通信魔道具でも、遠くに使う時には中間地点にそれ用の魔道具を置くにゃろ? 知らない人もいるにゃ~……要は、ボールを遠くに投げるにゃら、1人で投げるより、にゃん人も経由したほうが遠くに投げられるってズルにゃ」
この説明で、子供たちも納得。でも、「パパが投げたら100人いても勝てない」とか言う子もいた。
「にゃはは。わしのほうがズルかったにゃ。まぁそれは置いておいて、人工衛星の機能を説明するにゃ。まずは、地上の写真が撮れにゃす!」
声高らかに説明したら、全員ポカン。
「ほら? いま下に見える物が撮れるんにゃ。雲がいっぱいにゃろ? その下は雨にゃ。そしてゆっくりと雲は移動するということは~? はい! ペトさん!」
「明日の天気がわかる……」
「正解にゃ~。みんにゃ拍手にゃ~」
ペトロニーヌがわかったような顔をしていたので答えさせたら、子供たちは賢いと拍手を送り、大人は息を飲んでいる。その時、玉藻が噛み付きそうな勢いで近付いて来た。
「た、台風は!? 台風はわかるのか!?」
「当たり前にゃろ~。まぁ、進路予測はスーパーコンピュータが必要にゃから、もう少し時間が掛かるだろうにゃ」
「早く作ってくれ! それで被害を減らせるんじゃ!!」
「現在、絶賛開発中にゃ~。落ち着いて座ってにゃ~」
玉藻を宥めたら、次の説明。
「人工衛星の役割は、それだけじゃないにゃ。通信に役立つ物もあるんにゃ。って、わからないよにゃ? 通信魔道具に似た機械が、世界中で使えるようになると言えばわかってもらえるかにゃ?」
チンプンカンプンって顔の皆にわかりやすく説明したら、サクラが手を上げた。
「それってインターネットもできるにゃ??」
「おお~。サクラは賢いにゃ~。答えは『できる』にゃ」
「やったにゃ~!!」
「でも、スマホもコンテンツも一から作らないといけないから、まだまだ先だけどにゃ」
「にゃ……日本みたいにはならないんにゃ~」
サクラはぬか喜びして肩を落としていたが、その理由がわからない人が多々いるので、もう少し詳しく説明しないとならない。
「要するに、日ノ本やアメリヤ王国と商売するには、週一回から二回の手紙の交換でやってたんにゃけど、人工衛星を使えば毎日喋れたり手紙を送れたりできるから、今までより楽な物のやり取りができるというわけにゃ」
「そんなに遠くまで……凄いわね……」
「なるほどな。第三世界に、一歩近付けるわけじゃな」
「上手く行けばにゃ。実験を始めたばかりにゃから、結果待ちにゃ。さてと、そろそろ移動しようにゃ。キャプテンベティ、ノルンちゃん。頼んだにゃ~」
「「あいあいにゃ~」」
玉藻とペトロニーヌが理解したところで、難しい話はここまで。ベティたちに次を催促して、わしは子供と喋る。
でも、「そんなに賢かったの?」とか言われるとは思っていなかった。みんなの勉強は、いつもわしが見てあげていたのに……
「到着!」
「月なんだよ~」
子供にわしの賢さを教えているのに、早くも月に到着したとベティとノエミのアナウンス。360度UFOも透明してくれたので、宇宙空間に放り出された気分だ。
「アレが月……かぐや姫はどこに住んでおるんじゃ??」
「だから竹取物語はフィクションって言ってるにゃろ~」
そう。前回行ったのに月に来たのは、玉藻にかぐや姫もウサギもいないと見せるため。なのにまだ信じていないので、ここは半周だけしてあげる。
その間、初めて月を見た人は大興奮。後ろを見たら丸い地球まであるのだから、いっぱい写真をせがまれた。
とりあえず月の裏に来たら、玉藻を説得。
「にゃ~? 石しかないにゃろ?」
「地下に住んでいるとか??」
「かもしれにゃいけど、第三世界の技術でも、そこまで調べられないってのが現状にゃ。もちろんうちもにゃ」
「くっ……なんとか妾が生きている間にかぐや姫を捜し出してくれ!」
「だからフィクションにゃ~」
まだ竹取物語を信じている玉藻は軽くあしらい、本日の目的地へと転移。
「「「「「おお~」」」」」
「「「「「にゃ~~~」」」」」
真っ赤な星、火星の全体を見れる位置にUFOが到着すると、全員から感嘆の声が出た。月とも地球とも異なる姿をしているから感動しているのだろう。
「こんにゃ近くで見れるにゃんて、感動にゃ~」
当然わしも目がランラン。ベティも興奮している。
「どうする? 下りちゃう? それとも衛星を先に攻めちゃう??」
「にゃ~……迷うにゃ~。いや、ここは記念撮影からじゃにゃい??」
「それだ! かわいく撮ってね」
「わしもかっこよく撮ってにゃ~」
「それは無理よ」
わしのとぼけた顔ではかっこよくならないと言う
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