猫歴16年にゃ~
我が輩は猫である。名前はシラタマだ。猫の国で王様をしていたはずだ……
第三世界から帰って来てからというもの、わしはとてつもなく忙しくなってしまった。
ゲームやテレビ、ウォシュレットの設置は2日程度で終わったからよかったが、玉藻も実家に付けろと言って来たので日ノ本に出張。隠し地下室に設置させらされた。
他国の者からは商品代と手間賃やらを貰ったから割のいい仕事だったけど、わしは電気屋さんでも水道屋さんでもないっちゅうの。
第三世界では写真や動画をたくさん撮って来たから、それを編集するのは大変。まぁ女王への説明は記録があるのでさっちゃんに任せられたから、時間的には節約になったかもしれない。
これも東の国と玉藻からお金は貰ったけど、わしはカメラマンでも編集スタッフでもないっちゅうの。
問題はここから。手に入れた技術と書物等をどう公開したものかと悩み、まずは保管施設から新設することとなった。
もちろんこんなオーバーテクノロジーを見られるわけにはいかないので、わしは猫市の地下に、土魔法を使って巨大な地下施設を作ってやった。
地下施設はキャットタワーと居住区にある大きな建物のエレベーターから直通しているが、鍵が必要だし特殊な操作をしないと地下2階で停止するようになっているので、防犯対策はバッチリだ。
あとはこの広大な地下施設に本や機械類を展示すれば完成なのだが、女王とさっちゃんから呼び出しがあったので、先にそちらを片付ける。
呼び出しの用件は、ビルの建設作業。いまあるお城の裏手が片付いたから、早く建てろとのこと。本当は次回の誕生祭のプレゼントにしようと思っていたのに、待ってられないというのでフライングさせられた。
建築費用も出す予定だったが、女王からは大金を押し付けられたから有り難く頂戴した。どうせ土魔法とガラス魔法で作るから、ボロ儲けだ。
しかし、地下2階、地上12階建てのビルを作り終わってからあることに気付いた。
これって、太陽光発電も付けなきゃいけないの??
というわけで、女王に間取りを確認してもらうついでに質問したら、「エレベーターもあるんだから当然でしょ」とのこと。
なので、作業は1日で終わらず。東の国と猫の国の各地にある太陽光発電工場から少しずつ融通してもらった物を買い取り、設置工事もわしの仕事。3日も拘束されてしまった。
その結果、手元に残ったお金は、3日間の給金程度。建設作業員の給料かっちゅうの。だからわしは建設作業員じゃないっちゅうの。
女王から先に渡されていた大金で充分と言ってしまった手前、追加請求することもできず、ビル完成と電化製品に喜ぶ女王たちの笑顔を見てから、わしはトボトボと猫の国に帰ったのであったとさ。
ビルの建設は、当初の目的は誕生祭のプレゼントと割り切り……リータたちがグチグチ言うわしにケチケチするなと言うので割り切り、元の仕事に戻る。
かといって、わし1人でやると途方もない時間が掛かるので、王族に救援要請。技術品や設計図の展示なんかは、わしとつゆ担当。書物等の展示は洒落にならないぐらい膨大なので、残りの全員にお願いした。
さっそく取り掛かったら、つゆが邪魔。勝手に機械をイジるし、設計図を見たら動かなくなるし、機械を分解しようとするし……
何度も怒りながら機械類は大きな棚に収め、設計図は本棚に。情報モリモリのハードディスクなんかは、あとから専用の部屋を作る予定だ。
わしが「倉庫スタッフじゃないっちゅうの」とブツブツ言いながら作業を続けていたらあっと言う間にお昼になったので、昼食にしようと皆を集めに行ったら、作業が全然進んでいない。
「にゃんで全員、本を読んでるにゃ~~~」
「「「「「ハッ!?」」」」」
どうやらマンガを発見してから手が止まったっぽい。アメコミもあったから子供たちも手が止まったっぽい。誰も読むのを止める人がいなかったから、作業も止まっていたっぽい。
こんなこともあったので、手分けして作業をするのはやめて、全員で本の展示を先に進めるのであった。
「ほら~? また手が止まってるにゃよ~」
「「「「「ハッ!?」」」」」
気になったモノはなんでも読んでしまうので、本の展示はめちゃくちゃ時間が掛かるのであったとさ。
本さえ終われば、あとはこっちのモノ。つゆも追い出して、リータとメイバイにだけ手伝ってもらえば技術品やその他の展示は早く終わる。
ただし、皆にはテレビやゲーム以外の娯楽があると知られてしまったので、地下施設に子供たちが度々現れて迷子になっていた……てか、シクシク泣き声が聞こえて来たので、ちょっとビビった。
「ベティ! 連れて来たにゃら責任持てにゃ~~~!!」
「ごめ~ん。死ぬ前に読んでたマンガの続きが面白くて~」
「ベティの鍵は没収にゃ~~~!!」
「「「そんにゃ~~~」」」
ベティから鍵を取り上げても、ベティと子供は毎日のように現れやがる。誰かに連れて来てもらっているようだ。
ただし、子供がはぐれないように縄で繋いでマンガを読んでいたので、わしはまたキレた。だって、猫がリードを付けられているように見えてかわいそうなんじゃもん。
「マンガは1時間までにゃ~~~!!」
「「「「「ええぇぇ~~~!!」」」」」
我が猫家に、新たなルールが生まれたのであったけど、また全員に恨まれるわしであったとさ。
邪魔する者が多くて地下施設内の展示には時間が掛かったが、なんとか終わったらまた次のお仕事。各市にある中学校に出向き、校長先生と相談。
死ぬまで勉強をしていたいとか、疑問を持ったら死ぬほど質問して来るとか、普通に「勉強大好き」とか言っている奇特な生徒を集めてもらう。
この生徒に何をやらせるかと言うと、卒業後、大学に通ってもらうのだ。
って、高校もないのに何言ってんだと思う人もいるだろう。でも、高校だって誰が教えるの?って話だ。猫の国の大人は全員、中1レベルじゃぞ??
いちおう高校も作ろうとしたよ。トウキン教育長には「賢者の書を発掘した」とか嘘を言って第三世界で買って来た教科書を見せたけど、「教師がわからないモノを誰が教えられるねん!」ってさ。
ホウジツ首相には「高校作るからお金だ~して」ってかわいく言ったら、「小中学校だけでいくら使っているのかわからんのか、オオ!」と凄まれた。
この2人は忠臣と言っても過言ではないのだが、忠誠心が下がるほど、ちょっと無理させすぎていたみたいだ。
教える人もいないお金もないでは、高校、大学って当たり前のように進学させることもできないから、もう先に大学を作っちゃえってなったのだ。
資金は、わしのポケットマネー。教師は、教科書や様々な本。学校に隣接した美味しいごはんが出る寮も完備。しかも、好きな勉強をしているだけで給金まで貰える。
ただし、ここからが重要。小中高の教科書を勉強して、来るべき先生の先生になることが募集要項となっている。
言わば、猫の国の大学は、先生の先生を作る施設なのだ。なかなか賢いと思わないかね?
ちなみに、入学者には漏れなく契約魔法を掛けるので、秘密は守られるのだ。
中学校だけでなく卒業生にも声を掛け、各地でも勉強意欲のある者を集めたら、100人を超える人が集まったので、ついに私立猫の国大学、通称「猫大」が動き始めたのであった……
「また退学届けにゃ!?」
楽して稼げると思った輩も紛れ込んでいたらしく、開始ひと月で半分以下まで生徒が去ったので、熱い想いを書かせる小論文のテストを設けるようになったとさ。
しばし大学に力を注いでいたら、生徒から「学長」ってわしは呼ばれ、「学長じゃないっちゅうの」と反論して過ごしていたが、まだまだやることはある。
大学は軌道に乗ったから、次は技術だ。
いちおうつゆには、いまの技術で作れる物を見繕ってもらっているが、それ以外もなんとかしたい。
猫市で働く技術者と、アメリヤ王国から貰った博士たちを集めてジャブ程度にデジタルテレビの設計図を見せてみたら、全員ぶっ倒れた。それほど技術力の差があるのだ。
かといって、やってもらわねば困る。高校や大学の卒業生を待っている時間もない。いまあるテレビやゲーム機が壊れたら、猫の国王族が暴徒化してしまう。
それは、世界の破滅を意味する……
ちょっと言いすぎた。テレビだけなら2、30年は持つから、それまでになんとかしたいけど、急いだほうが賢明だろう。
というわけで、日ノ本にヘッドハンティングの出張。玉藻に「平賀家をください。おでぇかん様~」と土下座でお願いしたら、そこまでする必要はなかった。
玉藻もテレビが壊れる前になんとかしたいと考えていたそうだ。でも、電気炊飯器の権利は取られた。
とりあえず、ちびっこ天皇……もとい、立派な青年になった
ちなみにわしの用意した袖の下とは、エロ本。仕分けの時に出て来たので焦って隠した物だ。
もちろん悠方天皇はエロイ顔で読んでいたけど、肝心のところがモザイク処理されていたので、目を細めていた。そんなことで見えるわけがなかろう……皇后様に見付からないようにしなよ?
悠方天皇から許可をもらったら、平賀家に行ってスカウト開始。でも、真っ先に手を上げたのは平賀家当主、源斎。いつもわしが新しい技術を作らせていたから、当主の座を捨ててでも来たいらしい。
わしとしても是非とも欲しい人材なので、一緒に玉藻を説得。すると、わりとあっさり説得成功。そろそろ代替わりさせようと思っていたそうだ。
「この日のために、息子を教育したからな。やりやすくなるじゃろう」
いや、源斎が邪魔だったらしい。でも、その顔は、教育とか言って息子に恐怖を植え付けたのではなかろうか……
まぁそれならば、気兼ねなく源斎を貰える。さらに若手から5人ほど見繕ってもらったけど、話が通じない問題児ばかりわしに押し付けてない? いや、源斎ばかりに見えるんじゃけど~??
少し話をしてみたら、自分の研究ばかり説明する平賀家の面々を連れて、わしは猫の国に帰るのであった。
「「「「「うおおぉぉ! うあおおえああおぉぉ!!」」」」」
平賀家を連れて猫大地下施設に連れて行ってあげたら、数々のオーバーテクノロジーを見て走り回るので、猫ファミリー総出で拘束。源斎みたいにいきなり分解されたら困るから助っ人を頼んでおいたのだ。
平賀家を全員車イスに張り付けたら、猫の国組と顔合わせ。わし主導で、テレビ、ビデオカメラ、レコーダー、テレビ放送の開発に着手するのであった……
てか、技術開発者でもないっちゅうの。
この猫歴16年は、わしが王様と呼ばれる回数が極端に少ない1年であったとさ。
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