『ばすたぶるけのわん』 その4

 結局、そとのやましんと、なかの何者かは、暫く、にらみ合いになった。


 もっとも、なかの何者かは、壁側しか見えてはいないが、やましんには、それさえも分からない。


 いや、何者かが入っていることも分からない。

 

 『これは、困ったぞ。洗剤掛けるか。一酸化炭素とか出したらやだなあ。』


 と、やましん


 『外部センサーが、きちっと回復しないと、まったく分からないな。緊急離脱するか。しかし、もし、危険生物が、2メートル以内に張り付いているなら、巻き込むな。それは、違反になる可能性がある。視界を確保したい。ちと、回転させるかな。それしかないか。』


 内部の存在は、回転する決断をした。


 が、が、が、が、


 物体が動き始めた。


 『や、や、や、や、や。周りだしたよ。しかし、こいつ、かどが、壁に、引っ掛かるぞ。』


 やましんは、思った。


 案の定、いくらか、でこぼこなのが原因で、物体は、やがて、お風呂の壁に引っ掛かって、 止まってしまった。


 『ありゃ、まずいな。やはり、なんにも、見えないぞ。もうちょい、回らないと。あら。動かない。引っ掛かったかな。』


 内部の存在も、焦ったのである。 


 実際は、窓が下向いてしまったのだ。


 バチバチバチ❗


 計器が火を吹いた。


 『あちゃあー。ショートしたか。くそ。おんぼろマシンだな。やっぱ、今のうちに、帰ろうか。緊急帰還装置は、ブルーだよ。バイト代なんか、いらないや。規則なんか、命には変えられないし。』

 

 バチバチバチ、は、やましんにも聞こえた。


 『なんだか、やな、雰囲気だなあ。こすったのが、悪かったかな。』


 風呂場は、まさしく、緊張の渦に包まれたのである。


         🎇

 



         


 

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