第34話 上空の脅威

1942年9月18日


TF2(第2任務部隊)

司令官 ウィリス・A・リー少将

参謀長 ジェラルド・スミス大佐

第1戦艦部隊 「ノースカロライナ」「ワシントン」「サウスダコタ」

第4巡洋艦部隊 「ニューオーリンズ」「アストリア」「サンフランシスコ」

        「タスカルーサ」

第5巡洋艦部隊 「ポートランド」「インディアナポリス」「シカゴ」

第8巡洋艦部隊 「ブルックリン」「フィラデルフィア」「サバンナ」

        「ナッシュビル」

第9巡洋艦部隊 「フェニックス」「ボイシ」「ホノルル」

第44駆逐部隊 「ケアニー」「グウィン」「メレディス」「グレイソン」

        「モンセン」「ウールゼン」「ラドロー」「エディソン」

第45駆逐部隊 「エリクソン」「ウィルクス」「ニコルソン」「スワンソン」

        「イングラハム」「ブリストル」「エリソン」「ハンブルトン」

第46駆逐部隊 「ロッドマン」「エモンズ」「マコーム」「フォレスト」

        「フィッチ」「コリー」「ホブソン」「アーロン・ワード」

第47駆逐部隊 「ブキャナン」「ダンカン」「ランズダウン」「ラードナー」

        「マッカラ」「マーヴィン」「クイック」「カーミック」


 日本軍の空母7隻から発進した99艦爆、97艦攻に真っ先に狙われたのは、第1戦艦部隊の2番艦「ワシントン」だった。


「射撃開始!」


 「ワシントン」砲術長トーマス・R・クーリー中佐は迫り来るヴァル、ケイトに向かって射撃開始を命じ、38口径12.7センチ連装砲10基20門、28ミリ対空機銃60門が一斉に火を噴いた。


 発射炎が閃き、砲声がトーマスの耳にも入ってくる。


 対空射撃を始めたのは、「ワシントン」だけではない。


 第1戦艦部隊の「ノースカロライナ」「サウスダコタ」、第1戦艦部隊の近くを航行していた第8巡洋艦部隊「ブルックリン」「フィラデルフィア」「サバンナ」「ナッシュビル」、第47駆逐部隊「ブキャナン」「ダンカン」「ランズダウン」「ラードナー」「マッカラ」「マーヴィン」「クイック」「カーミック」から放たれた12.7センチ砲弾が次々に上空で炸裂を開始する。


 急降下してくるヴァル1番機の片翼がちぎれ、すぐ後ろの2番機もコックピットを粉砕されて投弾コースから消えてゆく。


「ヴァル1機・・・2機・・・3機撃墜!」


「ケイト来ます!」


 このタイミングで新たな報告が入る。ヴァルがまだ投弾を終えていないこの状況下で雷撃機のケイトも突っ込んできたのだ。ケイトの狙いが本艦か、「ノースカロライナ」か「サウスダコタ」かは分からなかったが、こっち側の対空砲火が分散を余儀なくされるということだけは確かであった。


「高角砲は照準をケイトに切り替えろ! 機銃群はそのまま!」


 トーマスは全ての高角砲の照準を変更するように各分隊長に命じた。爆撃よりも雷撃の方が脅威度が高い以上、必要な措置であった。


 「ワシントン」の対空砲火は更に1機のヴァルを撃墜し、1機を撃退することに成功したが、残りのヴァルは引き起こしをかけ、投弾し、離脱していった。


 数秒後、「ワシントン」の周囲の海面が突沸したかのように沸き立ち、直撃弾炸裂の衝撃が全長222.11メートル、全幅33.03メートル、基準排水量35000トンの艦体を大きく揺るがした。


「前甲板、射出機付近に命中弾!」


「よし・・・!!!」


 被弾2を許した状況下にも関わらず、トーマスはほくそ笑んだ。これから日本艦隊との水上砲戦が控えている以上、主砲が使用不能、舵が故障するといった事態以外は全て軽傷であった。


「ケイト、針路変更しました! 第8巡洋艦部隊の『ブルックリン』『フィラデルフィア』が狙われている模様です!」


 ここでケイトの編隊が針路を変えた。戦艦3隻は守りが堅いと見た日本軍機の搭乗員達は狙いを別の艦種に変えたのだろう。


 「ワシントン」の高角砲は目標をケイトに切り替え、猛射を浴びせている。


 海面付近に次々に水柱が奔騰し、それに2機のケイトが立て続けに巻き込まれる。


 10機前後と思われるケイトが2隻の軽巡に迫る。


 28ミリ弾、40ミリ弾が間断なく発射され、ケイトがなおも脱落してゆくが、新たなケイトが前方から現れる。


 「ブルックリン」「フィラデルフィア」の2隻も自分の身を守るのは最終的に自分だと言わんばかりにケイトに牙を立て、その牙に3機のケイトが噛みちぎられたが、2隻にできる抵抗はそこまでだった。


 まず、「ブルックリン」の艦首付近に水柱が奔騰し、直後、2本目の水柱が中央部に奔騰する。


 2本の被雷によって「ブルックリン」がその場に停止し、傾斜し始めた時、「フィラデルフィア」の艦尾付近を集中的に叩きのめすように3本の魚雷が命中した。


「・・・!!!」


 先程の「ワシントン」の被弾時とは対照的にトーマスは唇を噛みしめた。


 日本艦隊との水上砲戦を前にしてTF2は砲力・防御力に優れるブルックリン級軽巡2隻を戦列から失ってしまったのだ。


 そして、直後「敵艦発砲!」という報告が上げられたのだった。


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2022年10月13日 霊凰より












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