正義フィーバー

まさひろ

正義フィーバー

教室に銃を所持したテロリストが!




こんなシチュエーションを想像したことがない物書きはいないと思います。




明確な悪を正義の刃のもと叩きのめしたい!




こんな気持ちは誰しもが所有しているものと思います。


ところが、現実世界にそんな分かりやすい悪の組織など存在せず、正義のヒーローではない我々は日々の生活を、ただ漫然と過ごしていくより他はありません。




ところが、ところが!


なんとびっくり、いました、存在したのです。これ以上なく分かりやすい悪の組織と言うのもが!




それが日の目を浴びたのは2022年7月8日、安倍首相が殺害されるという痛ましい事件の後でした。犯人である山上徹也の口から出てきたのは統一教会という宗教団体への恨み。




この団体、一昔前は合同結婚式や霊感商法などでちらほらと話題になることはあったのですが、元首相暗殺という超弩級のニュースもあり、今回の報道ほど熱を入れて語られることはありませんでした。




さて、ワイドショーをはじめとするテレビでは連日連夜の大騒ぎ。


それに伴いインターネット上でもかつてない盛り上がりを見せます。




その理由としては、かの団体がこれ以上ないほどわかりやすい悪の組織だったからだと思います。




霊感商法によっていくつもの家族を破滅させた――ええ、分かりやすく最悪です。


日本は「アダム国家」である韓国に奉仕する務めを負った「エバ国家」――日本人からすればふざけるなといった所です。


そのほかも様々な悪行がテレビ画面に映ります。




目の前に現れた悪の組織。


ごく普通の倫理観を持つ人ならば、これに嫌悪感を抱かずにはいられません。




正義の御旗はここにあり!


乗るしかないこのビッグウェーブに!




相手はこれ以上なく分かりやすい悪の組織です。


皆そこら中から石をかき集めての大投擲大会が始まりました。




そして、ヒートアップした論調は次のフェーズへと進みます。




統一教会は悪だ、ならそれにかかわった者は全て悪だ。


こうして魔女狩りめいた空気が世間に作り出されました。




殺害された安倍首相は統一教会に関わっていたから仕方がない。


自民党の誰それは統一教会に関わっていたから議員失格。


はたまた、自民党は統一教会に支配されていた悪の組織。




そこにあるのは加熱しすぎた正義フィーバー。




統一教会の信者数は6万人


自民党の支持団体で見てみると


農協の組合数は1000万人


経団連の企業会員数は1600社


医師会の会員数は17万


日本遺族会の会員数は45万


(他にも山ほどありますが、とりあえずこれだけ)




これで統一教会が自民党を支配しているというのは少し無理があります。




また、お金の面で見ても自民党の収入の大半が政党交付金なので札束で頬を叩くというのも無理があります。(そもそもお金なら経団連のほうが圧倒的に持っていると思います)




もちろん、当選すれすれの弱小議員のヘルプとして統一教会が関わっていたというのはあると思いますが。それもあくまでも数ある支持団体の一つとして協力をお願いしていた、それ以上の意味はないと思います。




けどそんなの関係ない! 宗教が政治にかかわっているのは政教分離の原則に反する!


と言う意見に関しては。


政教分離と言うパワーワードのイメージが強すぎるからだと思います。




政教分離の本来の意味とは




『国家権力が、ある特定の宗教を擁護したり、国民に強制するようなことを禁じているのが「政教分離」原則』です




つまりは国を規制するもので、宗教団体を規制するものではありません。




また、いくら統一教会が悪逆非道なる悪の組織であろうとも、わが国には信仰の自由が認められており。その教義自体を否定することはできません。


その事は




「平成6年7月12日に村山富市内閣が決定した政府答弁書。統一教会について『政府としては、一般的に、特定の宗教団体が反社会的団体であるかどうかについて判断する立場にない』」




と、時の内閣も認めています。




教義は取り締まれなくても、違法行為は取り締まれる! 霊感商法なんざ野放しにしてるのは怠慢だ!




とのご指摘に関しては。安倍内閣で2回の法改正が行われ、ピーク時の2%まで減少しているので、やっている事はやっています。




もっとやばい違法行為となると、かのオウム真理教が起こしたサリン事件がありますが。


その時に破壊活動防止法(破防法)を適用しようとしたのですが、マスコミの反発によって不発に終わりました。




特定の宗教法人を狙い撃ちにすることは憲法違反ですので、破防法やテロ等準備罪が用いられることになると思います。(フランスにおける反セクト法ですね)


そうなれば真っ先に規制されるのは公安委員会の監視団体である極左組織ですが、今現在、特定宗教団体をバッシングしているマスコミ各社はどういった対応を取るのでしょうか?


正義フィーバーの焚きつけ役として、この世から悪を一掃するため破防法適用に賛成するのでしょうか? それとも?











正義の名のもとに悪を断罪する。


それはとてもとても気持ちがいいことです。


今まで夢想しか出来なかった、憧れの正義の味方になれるのです。




しかし、その熱に浮かれすぎると、ごく当たり前のことがどこかへ行ってしまいます。


いったんはその熱源(ワイドショー等)から離れ、冷静な視点で物事を見ることも肝要だと思います。


我が国は信仰の自由が認められた法治国家です。


たとえそれが悪逆非道なる邪教だとしても、その信仰の自由は奪うことはできないのです。


出来ることは、法にのっとり粛々と個別対応していくのみです。






★霊感商法の被害にあわれた方は「消費者ホットライン188」にお電話を!

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