幼馴染とキスをする

 七月に入り、暑さも本格的になってきた。七月十六日、ひなちゃんの誕生日。いつも通りプレゼントは用意するけど、期末試験、ひなちゃん頑張ってたし、何か別で何かしてあげようかな、なんて思う。中学校の時は、勉強頑張ったご褒美におでことかほっぺにちゅーとかしてあげてたっけ。高校に入ってからはそういうのはなくなったが、ひなちゃんからちゅーされることはあったっけか。今思うと恥ずかしくてたまらないが、まだ、あれだけはやってない。


(唇同士のキス……)


 マウストゥマウス、はちょっと意味が違うんだっけか。とにかく唇同士のキスは実はまだやっていない。まだ結果は帰ってきてないけど、ひなちゃんの成績、きっといいだろうし誕生日にサプライズで仕掛けてみようかな……


(上手なキスの方法、調べてみよっと)




「……全教科平均以上、総合得点も高い。流石だね、ひなちゃん」

「このちゃんが勉強を教えてくれたおかげだよ! それにこのちゃんの方が総合得点高いし、私なんて全然」

「ひなちゃんもちゃんと勉強頑張ってたし、一部の教科はひなちゃんの方が点高いでしょ?」

「あ、ありがとこのちゃん……」


 予想通りひなちゃんの結果はとても良く、努力に対する結果がしっかりと出た感じとなって私も嬉しい。


「あ、ひなちゃん。悪いけど今日私用事があるから、先に一人で帰っててくれる?」

「えー寂しいぞー何があるの……ってあぁ、うん、わかった」


 


 長い事一緒にいるだけあって、プレゼントを買いに行くんだろうなとひなちゃんに察された。私たちはまぁもうサプライズ!って感じはできないからね。いつものようにプレゼントを渡して、その当たり前に感謝し合っている感じだ。でも今年は、ひなちゃんを驚かせてやるぞ。なんて思い、それはそれとしてプレゼント何にしようかなと考えながらショッピングモールの中の一角にあるお店をぶらぶら歩く。


「おっ」


 私の目に入ったカチューシャ。明るくて元気な彼女にぴったりなデザインのものを見つけた。お値段はちょっと高いけど、今年はこれにしようと思い手に取る。これを付けた彼女の姿を妄想し、思わず少しニヤついてしまった。

 ひなちゃん暇してるだろうし、買ってさっさと帰ろうと思ったその時、外にある別の店の看板が目に入る。あれ、誕生日当日にこっそり買いに行こうかな。




「「「誕生日おめでとう! ひなちゃん(陽凪)!」」」

「お父さんお母さんこのちゃんありがとー!」


 誕生日当日。ひなちゃんの両親と私でお祝いする。テーブルの上には美味しそうなケーキ。ひなちゃんのお母さんが分けながら話しかけてくる。


「毎年毎年ありがとうね、木乃華ちゃん」

「いえいえ。お隣だし昔からの仲ですから」

「ねぇねぇ! もう食べていい?」

「陽凪は相変わらずチョコケーキ大好きだな、もちろん食べていいぞ」

「いっただっきまーす!」


 そう言ったひなちゃんは大きな一口で豪快にチョコケーキを頬張る。


「うーーーん美味しい!」

「ひなちゃん、口にチョコついてるよ」

「え? どこどこ?」

「ティッシュで拭いてあげるからじっとしてて……」

「木乃華ちゃん、いつも陽凪の面倒見てくれてありがとうね」

「私も陽凪にはよく助けて貰ってるから、お互いさまですよ」

「木乃華ちゃんも、ケーキ食べな?」

「あ、わかりましたお父さん。いただきます。それとひなちゃん、プレゼントあるからケーキ食べたらお部屋に行こう?」

「お、ホントにいつもありがとうな! 今年は何くれるのかな~」




「ケーキ美味しかった!」

「美味しかったね。それで、渡したいものなんだけど……はいこれ」


 プレゼントの入った箱をひなちゃんに渡す。


「なぁなぁ、開けていいか?」

「もちろん、開けていいよ」


 彼女は箱を開けて、プレゼントのカチューシャを手に取る。


「早速つけてみてよ」

「わかった!」


 カチューシャを付けた彼女は、月並みの言葉だがとても可愛い。


「うん、とても似合ってる。はい鏡」

「おっ、サンキュー! うん、良いな、これ。ありがとう!」

「えへへ、どういたしまして」


 二人でにっこり笑い合う。もう一個のプレゼントも、早くあげたいなと思い、ひなちゃんに話しかける。


「ねぇひなちゃん。実はもう一個プレゼントがあるんだ。ひなちゃんのことびっくりさせたいから目、瞑ってくれる?」

「ん? わかった」


 私は今日の朝に買った物を取り出し、ひなちゃんの口に当てる。


「お口開けて、はい、あーん」

「あーん」


 彼女は目を瞑りながら差し出されたそれを口で噛み千切り、もぐもぐと少しずつ食べていく。最後の一口分まで短くなった時、私が反対側からそれを咥え、そのままひなちゃんの唇に私の唇を当てる。


「ん? んんっ?……えっ……このちゃ……あっ」


 ひなちゃんの唇は、とても甘くて、やわらかかった。この感覚に病みつきになりそうだ。必死に彼女を求め、もっともっと彼女が欲しくなり、彼女の唇を舌でつつく。


「んむぅ!? あっ……んちゅ……ぅんん……んふっ」


 最初はびっくりした感じだったけど、ひなちゃんは舌を受け入れてくれた。唇だけでなく、舌もとてもやわらかい。互いの舌が絡み合って、すごく気持ちいい。頭が真っ白になりそうだ。


「はぁ……はぁ……」


 唇を離し、力を抜いて、互いに見つめ合う。


「……美味しかった? ひなちゃんの大好きな、イチゴとチョコの、エクレア」

「……キスのせいであんまり覚えてないや、このちゃんのキス、凄かったもん」

「唇同士でするのは、初めてだよね。 どうだった?」

「……めちゃくちゃ甘い、イチゴの味がした。あと、舌入れられた時に、頭の中でビリっと電気が流れたような、そんな感触がした」

「あ、口にクリームがついてる。取るね」


 そう言って、ひなちゃんの口についたクリームを舌でペロっと舐め取る。ひなちゃんは「ひゃっ」と反応した。その反応が可愛らしくて、また彼女が欲しくなる。


「ねぇひなちゃん、もっかいしよ?」

「ま、待ってこのちゃん。これ以上はヤバいから、また今度にしよ……」

「むぅ……わかったよ」


 断られちゃったなら仕方ない。また今度、美味しくいただくことにしよう。

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