幼馴染と初デートする
ひなちゃんと恋人になって数日経った。とはいってもこの数日は今までと大して変わらなかった。今までやってきた事がやってきた事だったからね。でもやたらと勘のいいクラスメートには「おっ遂に付き合い始めたのか?」なんて言われた。目で見える変化は無いと思うんだけどな。雰囲気とかでわかったりしたのかな? なんて考えながらいつも通りひなちゃんの部屋でのんびりしていたら、スマホを弄っていたひなちゃんが突然立ち上がって、
「このちゃんこのちゃん! 今度の日曜にこの映画一緒に見に行こう!」
と言われた。ひなちゃんのスマホの画面を見ると、今全国で大きな話題になっているアニメ映画のホームページが映されていた。
「わかった。どの時間帯に行こうか。あ、席の予約取っておこうか?」
「おう! 助かる! 時間は帰りが夜遅くにならないならいつでもいいぞ!」
人気映画だったので残っている席数はギリギリ、なんとか予約を取れた私にある考えが思い浮かぶ
(あれ? これって初デートじゃないの!?)
デートの定義は人それぞれだし、もしちゃんとした定義があっても私にはわからない。ただ、恋人になってから初めてのお出かけ=デートという事は変わらない事実である。
(いい感じの服とかあったかな……)
恋人になってからの初デートだし、楽しいデートにしたいなぁなんて思ったり、当日着ていくコーデを悩んだりしながら次の日曜日を今か今かと待つのだった。
(こんな感じでどうかな……)
日曜日、鏡に映った自分の姿を見ながらコーデをチェックする。いつも通りのストリートヘアー、前髪に少し昔にお揃いで買った髪留め。白のロングスカートとそれに似合う上着。これならきっと大丈夫だろう。
「いってきまーす」
私は家を出て、隣の家の玄関に向かう。チャイムを鳴らそうとしたとき、玄関からひなちゃんが出てきた。
「おっ、もう準備できてたのか。このちゃんおはよう!」
「ひなちゃんおはよう。今日、晴れて良かったね。」
「ん、そだな。このちゃんの私服久々に見た気がするけど、なんかいつもより可愛く見えるな! これって恋人になったからそう見えるのかな? それともいつもより気合入れてコーデしてくれたのか?」
「ど、どうなのかなぁ……」
「ま、とりあえず映画館に行こうか! お母さんいってきまーす!」
そう行ってひなちゃんは玄関の扉を閉め、歩き始める。彼女の後ろ姿を見た時、ある事に気付いた。ポニーテールは相変わらずだが、髪留めが私も今着けているお揃いで買った物だった。
「ひなちゃん、あのお揃いの髪留めじゃん。ひなちゃんだって、今日は気合い入れてるんじゃないの?」
「うん……そうだよ。だからこのちゃんもお揃いの髪留め着けてきてくれて、嬉しいな……」
「わ、私も正直言って、嬉しい……」
ちょっと恥ずかしくなりながらも、いつも通りひなちゃんの隣に並んで、手を繋いで二人で歩く。この前知ったあれ、試してみようかな……
「っ……!」
私が握り方を変えると、彼女もそれに反応して合わせて変えてくれた。今までとは違う、所謂恋人繋ぎってやつ。
「このちゃん、顔が赤いぞ~?」
「ひなちゃんだって、顔ほんのり赤いじゃん……」
これは多分、いい感じなのかな……と思う、手を繋いだまま二人でおしゃべりしながら、映画館に向かった。
「いやあ、終盤のハラハラする展開凄かったねーこのちゃん」
「そうだね、私も思わず見入っちゃった」
映画の感想を話しながら、二人で歩く。
「お昼時だけど、どうしよっかこのちゃん。私映画見ながら色々食べたから、あまりお腹空いてないんだよねー」
「ほらやっぱり、食べ過ぎなんじゃないって言ったじゃん」
「あはは、ごめんごめん……」
ひなちゃんは映画館のお店でホットドッグとかワッフルとか色々頼んでいた。あとおまけに私のポップコーンもつまんで食べてたなぁ、なんて思いながら案内板を見て軽く腹を満たせることができるお店が無いか探す
「あ、こんなところにカフェができてる。ここでいい? ひなちゃん」
「うん! なんかお店の写真見た感じなかなか良さそうだし、ここでいいよ!」
二人でまた手を繋ぎ、カフェを目指す。
「二名様ですね、かしこまりました。こちらにどうぞ。ご注文が決まりましたら、また呼んでください」
「「ありがとうございます」」
「えっと、どれにしようかな……」
カフェに着いてメニュー票を見ながら、どれを注文しようか迷う。すると、向かいに座っていたひなちゃんが話しかけてくる。
「このちゃんこのちゃん! これ一緒に食べよう!」
と言われたのでメニュー票の彼女が指している部分を見ると、そこには「カップル限定パフェ! ドリンク付き!」と書いてあった。
「えぇ、これ!?」
「いいじゃん恋人なんだしー、それとも、このちゃんはこれ頼むの、嫌なの?」
「いやじゃけど……わかった、これ頼もうか。あ、私は流石に食べ足りないと思うからこのミニサイズのパンケーキも頼むね、ドリンクどれにする……って『二人で一緒のドリンクにするとお得です!』って書いてあるけど、これなんだろう」
「私はメロンソーダにする! このちゃんは?」
「よくわからないけどお得らしいし私もメロンソーダにしようかな」
「ご注文は以上でよろしかったでしょうか?」
「はい」
「かしこまりました。それでは、ごゆっくり」
店員のお姉さん、偏見とかは無さそうで良かった……けど、目の前のドリンクを見て、一緒のドリンクにするとお得ってそういうことか……と思ったりする。目の前には、美味しそうなパフェ、ミニサイズのパンケーキ、そしてハート型の枝分かれしたストローが刺さったメロンソーダがあった。それを見たひなちゃんは目を輝かせている。
「ねぇこのちゃん、これ一緒に飲もうよ!」
「は、恥ずかしいよ……」
「そんなこと言わずに、ねっ?」
期待の眼差しをこちらに向けてくる大好きなひなちゃんにそう言われると、流石に断れない。「もう……わかったよ」と了承して二人でメロンソーダを飲む。半分ほど減ったところで、互いにストローから口を離した。
「なんかこれ、思ったより恥ずかしいね。」
「もう! だから言ったじゃん! もう……」
彼女の顔が赤くなっている。でも多分私はもっと顔面真っ赤っかなんだろうな、なんて思う。でも、ひなちゃんとこうして一緒にいるのは、とても楽しい。
「ねぇこのちゃん、パンケーキ少し貰っていい?」
「どれだけ食べるのひなちゃん……はい、あーん」
「ありがと……おいし」
「食べ過ぎちゃダメだよ」
「映画面白かったし、スイーツ美味しかったし、今日は楽しかったー!」
「私も楽しかったよ。ひなちゃん」
「それなら良かった!」
帰り道、今日の話をしながら、二人で歩く。色々あったけど、初デートは楽しかったし、成功したと言えるだろう。
少しの違和感と寂しさを覚えた。原因に気付いた私は、ひなちゃんの手を取り握った。
「手……繋ぐの忘れてるよ、ひなちゃん」
「あ、うん、ありがと……」
またちょっと甘い雰囲気になりながら、二人で帰路を歩むのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます