第38話 色んな質問
その後、Twitterで寄せられたマシュマロに返事をしていくコーナーに入った。
〈好きなゲームは何ですか?〉
『赤いロングコートと大剣がトレードマークのデビルハンターが主人公のゲームが好きです。色んな武器を振り回して銃を連発するあのスタイリッシュなアクションが良いですよね。私下手だからいつも死んでばかりでしたけど。それにほら、私地母神なので、悪い子ばっかりの悪魔はお仕置きしないとですから!』
テレサが言ってるゲームは海外でも人気が高いスタイリッシュアクションゲームだ。テレサ曰く日本人の父親がゲーマーだったそうで、そのお下がりで回ってきたゲームを昔よくプレイしていたらしい。世代外れの古いゲームばかりプレイしていたことから同年代と話が合わなくて悲しかった、とも言っていた。
『思ったより過激なゲームやってて草』
『俺は同じ会社が出してるゾンビゲーのほうが好きかなー』
『俺もテレサママにお仕置きされたい』
『僕はお仕置きされるよりもするほうが好きだしんよー』
『悪魔も人間も痛めつけるのは堪らんえ』
コメント欄にリスナーたちの反応が表示された。いずれはゲーム配信をやってみるのも良いかもしれない。この配信が終わったらどんな機材が必要になるのか調べてみるか。
〈好きな漫画はありますか?〉
『ゴム人間が主人公のあの有名な海賊漫画が好きです。アメリ……神々の世界でもすごい人気なんですよ? 私の推しキャラは主人公の船に乗ってるコックさんです。女性には絶対に暴力を振るわない騎士道精神と紳士的な振る舞いが素敵ですよね。色んな女の子に目移りしちゃうところはちょっとあれですけど、それもお茶目かなーって思ってます。何よりコックさんが作る料理が食べてみたいです! もう本当に食べてみたいです!』
テレサはギネスにも認定された海賊漫画に登場するコックの料理について熱弁を振るった。この漫画も俺たちが生まれる前から続いている長期連載作品だ。親父が全巻集めていることもあって、俺も子供の頃から読んできた。テレサも父親の影響で読み始めたそうだ。俺の親父とテレサの父親は同年代っぽいから会ったら話が合いそうだ。
『アメリカって言いかけたってことはもしかして……』
『パチャママはアメリカの神様だからセーフ』
『神々の世界でも人気とかさすがだわ』
『あの漫画嫌いだえ! 有害図書指定して発売禁止にするべきだえ!』
『上の奴発狂してて草』
「一人変なの湧いてるな」
俺は特徴的な語尾を付けてるリスナーをブロックするべきか悩んだが、テレサに直接害を加えているわけではないので、一先ず様子見することにした。
〈最近悩んでることはありますか?〉
『肩凝りと体重が増えたことに悩んでます。これでも運動は定期的にしてるんですけど、日本に降臨してからはご飯が美味しくて美味しくて、ついいっぱい食べちゃうんです。おかげで神々の世界に居た頃から五キロも太っちゃいました。良い子のみんなも食べ過ぎには気を付けてね』
俺はテレサの異次元の食べっぷりを目の当たりにしたことがある。普段は節制しているそうだが、肥満大国からやってきたテレサが言っていることだ。こちらの基準とは大きなズレがありそうだ。
それはそうと、肩凝りと体重の増加が悩みとのことだが、テレサの体型は本人が気にするほど崩れてはいない。不慮の事故で裸体を二度も見てしまった俺が保証してもいい。体重の増加はとある一部分に脂肪が集まっているのが原因だが、セクハラになるのでテレサには伝えなかった。
『肩凝りはおっぱいが原因なのでは?』
『テレサママの下乳最高です』
『きっと胸に栄養が集まってるんだよ』
『ママぁ……しゅきぃ……』
『テレサママの声聞いてると牛乳が飲みたくなるわ』
リスナーのコメントが上から流れてきた。上品とは言えないコメントばかりだが、テレサは『他の女の子にそういうことは言ったらダメだかね』と優しくリスナーを諭した。テレサが不快に思っていないなら俺からすることは何もない。このまま配信をおとなしく見続けることにした。
『好きな映画教えて』
マシュマロに寄せられた質問の返事を大方終えたところで一人のリスナーが訊ねてきた。
よくある質問の一つだ。特に気にすることはない、と俺は思っていたが、これまで一度も噛まずにすらすら喋っていたテレサの声が突然途絶え、画面も動かなくなってしまった。
「何かあったのか?」
機材トラブルを懸念した俺はスマホを手に取り、テレサに確認のメッセージを送ろうと指を動かしたが、ほどなくして何事もなかったかのように画面が動き出した。
『ごめんなさい。ちょっと設定がおかしくなってたみたいです。ずっと天界にいたから機械の扱いが苦手でして……好きな映画の話でしたよね? 私は、えっと、映画はあまり観ないんですよね……』
テレサは困ったように笑った。アメリカには名だたる名作を残してきたの映画の本場ハリウッドがある。名実共に映画大国であるという自負を持っていることから、アメリカ人の大半は映画を愛好していると聞くが、どうやらテレサのような少数派もなかにはいるようだ。映画好きに該当する俺にはショックな発言だった。
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