最終話 飛べない魔法使い
学校の校門に着いたら、汗水流した遅刻者たちが息を切らしながらゾンビみたいに自分の教室に足を運んでいた。千草も自分の教室に向かって、多くの人の汗で湿度が異様に上がっている教室に入った。
この集団遅刻事件の、その真相をクラスメイトが語り合っているのが耳に入る。
「つまりお前たちも魔法使いを見たのか?」「魔法使いっていうか、魔法少女?」「フリフリの短いスカートを履いたやつだったな」「そうそう」「それで頭にはとんがり帽子を被ってんの」「うーんそうだったかな」「そうだって」「私もそれ見たよ。青色の服の女の子でしょ」「いやピンクじゃなかったっけ?」「いーや違う。絶対に青だったって」「黄色だろ」「ややこしい」「とにかくそいつが魔法をかけて、町の人間を全部眠らせたんだろ」「なんのために?」「いや、知らんけど」「逆じゃない? なんか黒くて悪そうなやつがいたような気がする」「そいつが町を眠らせた元凶で、それを倒してくれたのがカラフルな魔法使いだったんだろ」「だけどその子は空を飛べなかったはず。だったら魔法使いじゃないのでは」「飛んでなかったっけ? まあ飛べなくたって魔法は使えるんじゃね?」
海に面した町では、奇妙な事件と相まって一つの噂が瞬く間に広がった。
魔法使いは空を飛ぶ。空を飛ぶことが魔法使いの証明であり、空を飛べなければ魔法使いではないという証明にもなってしまう。だからこの世の数少ない魔法使いは、自分の存在を証明するためにも人の原初の夢を映したように空を飛ぶ。
しかし彼女は飛べない。だけど、なんだか不思議なことが起きたり、ちょっとした悩み事を抱えた時に、そこに彼女は現れて魔法のように問題を解決してしまう。
本当にいるのかはわからない。それでもいたらいいなとちょっぴり思う。
この町には、飛べない魔法使いがいる。
飛べない魔法使いと飛ぶペンギン 仲島 鏡也 @yositane
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