第11話 夢から醒めたら
夢の世界は天地が元通りになった。海岸沿いの道に四人は降り立った。
そして、夢の世界が、いびつに歪んで崩壊の地響きを立てる。
見えている景色が、ぽろぽろと粘着力の弱まったシールみたいに剥がれていく。太陽が割れ、海が穴ぼこで、多坂町が次第に色を失っていく。自分の体だって時折ノイズに体表が侵されて、肌の一部がプリズムの結晶となって宙に浮いては消えている。
終わりの時が来た。
おばあちゃんの声をしたネコは「終わったね。それじゃあ私はもう起きるよ」といってどっかへ消えた。
夢の世界が消えたって彼女たちは、ただ現実世界で目を覚ますだけだ。夢の世界と一緒に消えてしまうなんてことはない。
凜花と色奈が、どうして自分たちは消えないのに、目の前の彼女は周囲の景色と同じように消えていこうとしているのかわからないという顔をしていた。そして、空乃は二人と違って、こうなることがわかっていたかのような複雑な顔をしている。彼女は、自分を仲間にした時から自分が夢の一部であることを知っていたのかもしれない。
なにかを言おうと思ったけど、言葉が出てこなかった。たぶん、どうして夢である自分を仲間にしたのか、どうしてそのことを知っていながら言わなかったのか、単純な疑問と、不満を言おうとしていたのだと思う。
だけどそれ以上に、彼女の意図を察しきれていないからすべての言葉は虚しく響くだけだとわかっていたのだとも思う。
空乃がいったん目をつむって、それから開けた目でまっすぐにこちら見つめて、言った。
「また会えるよ」
会えるわけがないと思う自分と、それでも会いたいと思う自分がいた。二律背反の心を、どちらに傾けたいかはすでに決まっていた。
「またね」
自分は儚い夢だった。
それはいったい、誰の夢だった?
答えが出る前に、私は現実に変わる世界に消えていく。
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