第3話

少し、時間が経ち画面はまだ黒いままだが音声だけが聞こえてきた。


 「えー、真島裕介さんで間違いないですか?」

 「うっづ、えぇづおう……うっおっえ…………」

 「泣いているところ悪いですが、お話させてもらいます」

 「はい……」

 「私は、厚生監督省関東南部中央局防疫課、村澤と申します。隣にいますのは国家公安省外局対狂人化者処分監督庁北陸支局監督課の大久保です」

 「大久保ですよろしくお願いします」

 「はい……」

 

 モニターの画面にはスーツ姿の男性が画面分割をしているが二人が顔を揃えていた。


 「まず、先程印刷されたものの2枚めを見てほしいんですが、先程説明があったと思いますが、診断結果が狂人病陽性でしたので、現時点で真島裕介さん、あなたの戸籍の権限を停止します。そのためにいくつかの確認を行いますのでご協力お願いします。また、協力を得れなかった場合、法令に則り、裁判所へ請求をし認可された場合同じ効力を持ちますので、できる限り今の時点で協力をお願いします」

 「はい…………」

 

 名前、生年月日、性別、住所、中学校の名前、進学先の高校の名前、両親と両親の祖父母の名前などの事細かく質問をされ、すべての個人情報を吐き出した。


 「ありがとうございます。また、真島さんは現在未成年のため親権者の方、真島さんの場合はご両親ですが、正式な停止は現在確認を行っていますが、御本人としてのこちら側からの確認は終了となります」

 「はい」

 この頃になると、泣くのも収まり、ようやく状況が把握できるようになってきた。


 「では、まず私村澤から説明させていただきますが、次の三枚目を見てください」

 「はい」

 三枚目には文字と図がびっしりと書かれていて、両面印刷だった。

 「私からは本日からの、真島さんの日程というものが書かれています」

 「日程ですか?」

 「そうです。まず、真島さんには当分の間今いる病室に泊まっていただきます。また、泊まっている期間の間は原則として病室外から出ることは法令によって禁じられています」

 「……」

 「その後、時期が来ましたら、真島さんは狂人病矯正センターへ収容となります」

 「矯正センター?」

 「そうです。矯正センターです。狂人病というのは特別な治療法や完治する特効薬というものが存在しませんが、ある程度自身で力を制限することが出来ます。その力を制限することを学び社会に戻った際に他者へ危害を加えないようにするというのが、この矯正センターです」

 「なるほど……」

 「矯正センターには原則として1年以上は収容となります。早ければ一年で実社会へ帰還していただき、制限がまだ効かないと判断された場合に関しては、制限が可能と判断されるまでは、収容されますのでご留意ください」

 「はい」

 「ただ、矯正センター収容期間の間、国より見舞金という形で毎月20万円特例口座に支給されます。あっ、言い忘れていましたが現在銀行口座をお持ちの場合、国の特例口座に入れ替えとなりますので、そちらだけご承知ください」

 「あっ、持ってないです」

 「それなら大丈夫ですね。それで、矯正センター内には矯正施設以外にも、無人映画館、無人飲食店、無人遊技場などもあり、基本的にはセンター内での娯楽はしっかりとありますのでそれはご安心ください」

 「ほう」

 「戸籍を停止されるだけですし、狂人病が犯罪というわけではないですので、それぐらいの娯楽や見舞金は国として狂人病感染者に施す最低限の保証と法令で定めておりますので、これらがもし実施されなかった場合は、ぜひ矯正センター内で報告をお願いします」

 「分かりました」

 「そして、矯正センターから制限の可能が判断された場合、その翌日より戸籍を準戸籍に移し、準国民として登録をされます。真島さんは本来であれば来月より高校へ進学とのことでしたので、矯正センターより帰還した時点で、高校二年生への転入は許可をされます。ただし、一般高校。これは、公立校私立校ともにですが、一般高校には転入入学することが出来ませんので、特例高校へ転入となります。もちろん学習内容や学力判断に関しては一般高校と差異はありませんのでご安心ください。また、大学へ進学する場合も特例大学へ進学となりますので、そちらもご承知ください」

 「はい」

 「最後にですが、高校や大学を卒業した後の就職活動に関して、政府としては戸籍、準戸籍者の差別等は基本的に禁止していますし、職業選択の自由は準戸籍者にも与えられています。ただし、士業及び人命、金銭にかかわる仕事に関しては狂人病感染者に関してその就労、開業は法令により禁止しております。その点ご留意ください。私からは以上ですが、なにか質問はありますか?」

 「あの、同じ感染者の方だとどのような職に就いているか教えてもらえませんか?」

 「あぁ、えーっとですね、公務員になっているものもいれば、飲食店などで働いているものも居ますが、大変申し訳ありませんが私自身労働省の人間ではないので、詳しい説明は出来かねます。矯正センターであれば詳しい情報をお伝えすることが出来ます」

 「分かりました。あと、自分の私物とかは矯正センターへ持ち込めますか?」

 「もちろん持ち込めます。後ほどお配りする、私物希望票に持ち込みを希望するものを書いていただき、真島さんの場合基本的には保護者の方がそれをまとめて送ってくださるという形です」

 「自分では出来ないんですか」

 「そうですね、それは出来かねます」

 「なるほど……分かりました」

 

 両親に自分の部屋に入られるのかと思うとちょっと嫌な気もしたが、まぁ仕方がないだろう。


 「では、次に大久保から説明させていただきます」

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