第2話

自分の部屋から出て、リビングでのんびりとしている両親にその旨を伝えると、


 「あら」

 「本当か?」

 と、意外と軽い反応をされた。


 そのまま、すぐに救急車を呼ばれ、精密検査をすることになった。

 精密検査と言っても、普通の健康診断のようなものと、診察台に寝て心拍数と脳波を取るぐらいで、あとは結果が出るまで病室で待つ感じになった。

 ただ、病室に運んでくれる看護師は、可愛いお姉さんでもなくおばちゃまでもなく、屈強な筋肉質の男だった。そして、連れてかれた先も普通の病室ではなく特別病室となっているもので、何というか無機質というか、コンクリートの打ちっぱなしの部屋になっていて、ベットもなく窓も格子がついていて、天井の四隅に監視カメラがついていて、監獄のような感じだった。

 そして、椅子に座らされて看護師に「結果が出ましたら目の前でモニターが映りますので、モニターが出るまでお待ち下さい」とにこやかに言われ、看護師はその部屋を出ていった。

 「あっ、そうだ。大変申し訳ありませんが原則として椅子から立たないようにお願いします。何か御用がありましたら四隅のカメラどれかにお声がけください」



 モニターが出るまでは特にやることもなく、またやれることもなくただモニターを眺める時間となった。

 時計もなく、今が何分なのかも分からないが、ひたすらに長い時間であることは察知することが出来た。


 そして、ようやくモニターが映り、初老のおじさんが多分カメラのチェックをしているのかうーん?うーん? と何度もぶつぶつと言い、カメラの位置が定まってコホンと咳払いをしてようやく喋り始めた。


 「えーっと、まずは、確認のためにお名前を教えてくれますか」

 「真島裕介です」

 「えーっと、真島……裕介さんね、うん。あってるね。で、確認なんだけれども、症状が出たのは今日の朝起きたときで間違えなかったですか?」

 「はい」

 「なるほどなるほどね……特にこれまでキック値の異常判定を受けたことは? 学校の検診とかでなんか言われたこととかなかったですか?」

 「ないですね」

 「うーん……なるほどね。わっかりました。えーとまず結果から申し上げるんですが、とりあえずその前に証明書と書類をモニターしたの印刷機から出力しますから、それを取ってください。用紙は4枚出ます。1枚目は診断結果。2枚目以降はこれから先の生活についてです」


 先生が話してる途中からモニターしたの印刷機が雑な機械の音を出しながらどんどんと紙を吐き出してくる。4枚を出力し、「受け取りました」というと、先生は「わかりました」と言って説明を始めた。


 「まず1枚目ですが、診断結果に関してです。当院は国から指定を受けた狂人病診断を行える病院となっています。また、これはまぁ法律で仕方なく小難しく言いますのであんまり気にしなくていいんですけど、指定病院で診断を受け発行された診断結果及び診断書に関しては国より発行された特定公文書にえー、指定されますので意図して紙を破損したり処分をすることは法律によって罰せられますのでご留意ください。まぁ、要はその紙に関してはしっかりと保管しといてねってことなんで、普通にしてれば特に問題はありません」

 「はぁ」

 「で、診断結果なんですれども、真島さん狂人病の陽性反応出ましたので、当院として狂人病の認定を出させていただきます」

 「え?」

 「でね、えーっとまだ今の時点では真島さんは戸籍が存在しますし、当たり前ですが日本国民になりますけど、後で説明しますが戸籍及び国民というところに関しての権利の制限が発生しますのでその点は、まぁ私からは説明あんまり出来ませんので、そこらへんは後々ってことで……で、今のところ何か質問はありますか?」

 「いや、あの、僕、狂人病なんですか?」

 「そうですよ」

 「でも、別に生まれてこの方キック値だって正常だったし、ワクチンだって毎年打ってましたし……」

 「まぁ、お気持ちとしては理解できますし、やるせない気持ちはあるでしょう」

 「はい……」

 「ただ、狂人病というのはそういう病です。たまに、突然変異をしてしまう事もありますから」

 「……」

 「私も医師ですので、心情等には特には寄り添いませんが、ただ気持ちは正直わかりますが、少しずつですが受け入れてください。そうとしか私は言えません」

 「……」

 「真島さんには悪いですけれども、次の説明をさせてもらえればなと思うんですが、次の説明は私の担当ではなく別の人がやりますんでちょっとお待ちを」


 そうするとモニターが暗くなり、自分の顔が画面に暗い画面に薄っすらと浮かび上がる。特に悲しいとか、辛いとかそういう気持ちはなかったしただただ衝撃、という感じだった。しかし、その画面に浮かび上がっていた僕の顔というのは、目から涙が溢れ出ていて真っ赤になっていた。それに気づいた時、僕は泣き始めた。

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