第20話

「なんでこんなことになったんだ……」


帰り道をあるきながら僕は誰にも届くことのない独り言をつぶやく。


本当はこんなはずじゃなかった。

今頃は美空との初デートを楽しんでいるはずだった。

それなのにあかりに邪魔されたばっかりに初デートができなくなった上に、大喧嘩になってしまった。


いや、喧嘩ではないか。僕が一方的に嫌われただけか。


それにしてもあかりの狙いは何なのだろう。

人の初デートを邪魔した挙げ句、自分は楽しんで、そそくさと帰っていくなんて。

でも僕に行為があるわけではないらしい。

本当にどうかしている。


家につくと、誰もいないはずなのに明かりがついていた。

父親が帰ってきたのだろうか。


それとも……泥棒……?


そう思うとドアを開けることができなくなる。

どうしよう……。


ガチャ


うわ、開いた!


「うぃーっす!」


「うわっ。泥棒! ……じゃなくて、あかり?」


え、なんでこんなところにいるの?

普通に不法侵入している。


「謎に満ち溢れた顔をしていらっしゃいますね。そう、まず一番大きな疑問に答えさせていただくとですね、君が家を出るときに鍵をスった、というわけでありまして」


「なんで僕につきまとうんだよ。君には関係ないだろ」


「関係ないわけないんですよねぇ」


「何だよ。言いたいことがあるなら……」


「はっきり言えって? いいよ、言ってあげる」


もったいぶっているつもりなのか、あかりは後ろを向く。

そして、振り返ると、彼女の顔は真面目だった。


「実は……」

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