第19話

「やったー! 取れた!」


沈んだ顔でいる僕と美空とは対照的にはしゃいでいるあかりは、ユーフォーキャッチャーに12000円ほど費やした頃、黄色い、ぴえんの被り物を取った。

そんなものいつ使うんだ、と突っ込みたかったが、そんな気力もなかった。


そして、あかりはぴえんになって、「どう?」などと聞いてくる。

本当にどうしちゃったのか。


普段のあかりはこんなんじゃない。もっと冷静でクラス一の美少女にふさわしかった。

それに、あかりは僕と美空が仲良くしていたら気に入らないらしいが、僕に好意があるわけではないらしく、僕と美空の恋愛を邪魔する気もないらしい。じゃあ、なんで僕と美空のデートを邪魔するのか。

本当に謎だ。


「じゃあ、ぴえんはそろそろ退場させていただくのである!」


は?

え、帰る……ってこと?


「ではさらば!」


突然のことに理解が追いついていない美空と僕を置いてあかりは去っていった。

どうしたんだろう……。


「えっと、じゃあ、2人で遊ぶ……?」


もう、すっかり気まずくなって、ドライアイスくらいに冷たく冷めきってしまった空気の中、僕がやっとのことで発した言葉はそれだった。


美空は黙ってうつむき、僕の質問に答えることはなかった。


「あたしのこと、騙してたんだね」


え。


美空が何を言いたいのかが分からなくて、僕は固まってしまった。

口をパクパクして何か言おうとするが、言葉にならなかった。


「なんでそうやって黙るの? ちゃんと自分の口で答えてよ」


違う、そうじゃない。そうじゃないんだ。

喉まででかかった言葉はなぜか飲み込まれてしまう。


「もういい。帰る」


美空が踵を返す。

言い放たれたその言葉は、僕にはナイフのようにとがって聞こえ、僕に一瞥もくれずに帰る美空の背中がなぜかスローモーションに見えた。

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