第12話

結局、名前を聞くのを忘れてしまい、高校の名簿で確認する羽目になった。

確認したところ、端爪はしづめ美空みくというらしい。


ああ、やってしまった……。

もし、自分で口で聞けたなら、「◯◯って呼んでいい?」などと聞くことができたのに……。


陰キャでモブ男を卒業したとはいえ、それは見た目だけの話であって、性格は全くといっていいほど変わっていない。だから、美空に愛想をつかされてしまう可能性だって十分にある。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


……晴希、中のいい女子ができたんだな……。


私は家に帰って、ベッドの上で嘆く。


今日は、高校の入学式だった。

高校入学前、そして入学式の前までは、私が晴希と一番仲が良かった。……というか、晴希には私以外に仲の良い女子はいなかった。それなのに、今日は、晴希の前の席の子がまるで、生まれたときからの知り合いかのように、仲良く話していた。


どうして……?

私のほうが先に彼と知り合いになったのに。

彼と、仲良くなるために頑張ったのに。


……私が彼のことを気にしだしたきっかけは母親の死だった。


私の両親は小さい頃に離婚していて、私は母親に引き取られた。

だから、私はあまり父親のことを覚えていないし、母親とも父親の話などしたことがなかった。

そして、その母親がいなくなった。遺産だかなんだかでお金には全く困っていないが、やっぱり、自分に家族がいないのは心細かったし、寂しかった。それで、色々調べて見て、自分には、父親に引き取られた双子の兄がいることが分かった。それが、晴希だ。


調べてもらった早坂晴希という名前を見て、びっくりした。なぜって、全く同じ名前の男子が同じクラスにいたのだから。


初めはどうやって話せばよいか分からなかった。

それまで全く関わりもなく、向こうはあまり女子とは関わらないような子だったから。


それで思いついたのが幼馴染作戦だ。


幼馴染になってください、といって、それからグイグイ距離を縮め、本物の幼馴染のような仲になったところで、私達の関係をネタバラシする。そうすることで、家族だと気づいても、本物の家族のようになれると思ったからだった。


……晴希、もう少しだけ、私のわがままに付き合って……。

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