第10話

「やった! クラス、一緒になったね!」


そんなに嬉しかったのか、あかりは僕に抱きつかんばかりに飛び跳ねる。


ちょっと……、そんなに喜ばれると浮くんですが。

見ると、かなり周りの視線を集めているようだった。


「席は……そっか。名簿順だから離れているのか」


さっきまでの喜びとは対照的に、しょんぼりしている。


本当に、忙しい子だなぁ。

見てるこっちもハラハラしてしまいそうだった。


「はーい、皆さん、席についてくださーぃ」


先生が入ってきた。


あれ、僕の前の席の人は休みか?

入学式に休むなんて珍しいな。


「…なので、今日から…」


ああ、先生の話、長いな…。

暇すぎてこの話の間に一眠りできそうだ。


ガタガタッ


なんだ!?地震かっ!?


って、ああ、みんなが移動しているのか。

もう入学式に行くのかな。


ちらっとあかりの方を見てみると、もうすでに多くの女子に囲まれている。

中学生の時も友達が多い方だったようだが、まさか、高校入学してまもなくあんなに多くの友達を作ってしまうとは……。

まるで、磁石のようだと思う。彼女がS極なら、他の、彼女によってくる女子たちはN極だ。


そろそろ僕も行かないと。もうすでにクラスの半分くらいの人が廊下に並んでいる。

入学早々、取り残されるのはごめんだ。


「……あ、あのっ…!」


ん?誰だろう。って、あれ、声の主が見当たらないんですが……。

キョロキョロしていると「あのっ!」と、一段と大きな声が聞こえてきた。


「下、下です! 下を見てください」


言われるがままに下を見ると、人の頭があった。

あ、あれ……、胴体がない……。

とおもいきや、それは、小さな少女の頭だった。


「ど、どうしたの?」


本当なら、初対面には敬語を使うべきなのだろうが、こんなにも小さな子にはちょっと使うことはできなかった。


「あの、あたし、さっき遅刻しちゃって、今、どこに行けばいいか分かんなくて、教えてほしいなって思って……」


そういって、少女はゆっくりとうつむきがちだった顔を上げた。


その瞬間、僕の心臓が飛び跳ねた。


か、かわいい……!


多分、世間で言えば、決して超美人と言われるような顔(例えて悪いが、あかりのような顔)ではないだろう。

でも、僕の顔のタイプにドンピシャでマッチしていたのだ。


ふと廊下を見ると、もうみんな体育館に行ってしまったのか、廊下は空っぽだった。

一緒に行ける、大チャンスだった。


「もももも、もちろん! 一緒に行きましょう!」

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