第5話

「おはよっ!」


背後から声が聞こえた。

あかりだ。


「…おはようございます」


僕は重い頭を持ち上げて答える。



「もう、つれないなぁ、早坂くんは。せっかくの『今日』なのに。

今日くらい、明るく頑張ろうよ」


そうなのだ。「今日」はついにその日なのだ。


そう、高校入試だ。

僕とあかりは同じ志望校で、確かに、受験会場で会う可能性はあると思っていたが、まさか、本当に会ってしまうとは…。


「一緒に、絶対、※※高校、合格しようーね!」


「一緒に」は余計かもしれないが、それは本当にそうだ。

こんなところであかりと話していて、集中力が切れてしまえば、なんのために今まで勉強してきたのか、その努力が水の泡になってしまう。


こんな陰キャでも今日は踏ん張り時だ、今日だけは熱血陽キャ気取りでも許されるだろう。


「お、気合いはいったかな? もしかして私のおかげ? なんちゃって! じゃあまたねー! お互い、頑張ろうね!」


そんなことをまくし立ててあかりはぱたぱたと友達の方に飛んでいった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る