第3話

「ああ、勉強わかんない!」


そう言って僕のところに泣きついて来るのはクラス一の美少女こと、水野あかりだった。


そりゃそうでしょ。

だって君、宿題全くやってなかったじゃん。

って突っ込みたかったけど、僕みたいな陰キャなモブ男が、クラス一の美少女にそんな口を聞けるわけもなく、その言葉は僕の口から外へ出ることはなかった。


でも実際、そうなのだ。


あの日――僕が彼女の幼馴染になると言ってしまった日――以降、彼女は毎日僕のところに宿題を写しに来るのだった。


だから、そんなことをしていれば、分からなくなるのも当たり前で…。


「というわけで早坂くん、勉強教えて! だってなんか、幼馴染に勉強教えてもらうとか、青春って感じじゃん!」


いや、正確には幼馴染じゃないが。


ん?待てよ。水野あかりとの幼馴染契約は、たしか、「こき使える幼馴染」だった気が…。


そういう僕の心を読み取ったのか、あかりはそう、と頷く。


「よく思い出したね! だから貴方に拒否権はないのです!」


結構怖いこと言ってません?その声で…。


「なーんちゃって! でも、早坂くんも別に嫌じゃないでしょ?」


まあ確かに、特に嫌でもない。


そう思い、頷く。


「ほら! やっぱり! というわけで今日の放課後、うちに来てね!」


まじかぁーーー!


クラス一の美少女の家に陰キャでモブ男が行くなんて……!

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