第21話かつての相手

「助けてもらうんだ。現状わかっていることを話そう……」


秋内叶の能力

地図を通して心歪病患者を発見又おおまかな能力がわかる。


心歪病の能力について

第1世代 本音しか言えなくなる。心の声が聞こえるなど能力として危険性が少ないもの

第2世代 相手の寿命を縮めたりするなど、間接的に影響を与えることが出来る能力として危険性が比較的高いもの

第3世代 サイコキネシスなど直接影響を与えることが出来る能力として危険性が非常に高いもの。


解決方法について

心歪病となった原因の解消

能力自体の認識をすり替える(原因のすげ替え)

原因の気持ちが能力による優越感が越える


「こんなところかな」

「第3世代への解決で出来ることがないのが厳しいですね」

「京介が初めての第3世代っていうのもあって情報が少ない」

「協力者ってどれくらいいるんですか」

「君と私ともう1人、本当は4人だったけど1人辞めてしまってね」

「少ないですね」

「心歪病の発症自体元々多くなかったから」

「それでもう1人はどこに」


連れてこられたのは見覚えのあるカフェ。窓席に座る少し小さな女性キャップから出る髪は綺麗に染められた白髪。


「久しぶり!マグロちゃんです」


あっと、驚いた。忘れてたわけじゃないよ、ただ驚く出来事が多かったし、必死だったし、元々デリバリーパピネスに戻ったのもマグロちゃんのためだからうん。


「久しぶり元気してた?」

「あの後手厚くサポートしてくれたおかげで今はまた楽しい生活が送れてる」

「なら良かった。結構心配してたから」

「叶さんから聞いたよ」


お互いあまりいい空気ではなかった。色々話せないことがあったからだろう。


「叶の心歪病のことは知ってる?」

「うん。最近聞いた。私は叶が死ぬって選択否定しなかったから」

「どうして」

「辛いときに辛いまま生きるのは嫌なものでしょ」


僕にはそれだけで十分意味が伝わった。マグロちゃんだって自殺を考えたことなんていくつもあっただろうし、僕も心歪病で自殺しようとした。

心歪病は死へ追い込む病なのかもしれない。


「配信とどっちが楽しい?」

「んー難しいね、あの生活は楽しかったよ。自分のために時間を割いてくれてるマグめろが喜ぶ姿は嬉しかったから。でも最近の普通の心歪病のない生活は楽でいいよ」

「なんか雰囲気変わったな」

「そうかな」


大人っぽくなっているんだと思う。実際マグロちゃんは20歳超えてるだろうし、大人なんだけど理不尽を受け入れて、大変と共にある楽しさに果てて楽を選ぶ。自然なことなのに少しだけ受け入れたくない。僕がまだ子供だからなのか。


「心歪病って活用の仕方に寄っては便利なんだけどね」


また表情読まれちゃったかな。


「だってさサイコキネシスだよ。色んなこと出来るし、人によっては神のギフトなんて呼んでる」


どうやら表情を読んだわけじゃなさそうだ。


「神のギフトね。まぁ叶から感染したなら神からも同然だよな」

「あんまふざけてる余裕ないと思うけど」


その通りだ。死者が増えれば叶は自殺を選ぶ。

あまり時間はない。


「サイコキネシスが特殊な例で能力が使えなくて死ぬなんてことないでしょ」

「本人がそうでも周りの人が死ぬかもしれない」

「叶今はどんな心歪病の症状が出てんの」

「能力者系のアニメで出てくるようなのは結構出てでる。火とか雷操るとか体の一部が変化したり」

「かなり危険だな」

「火とか雷は火傷とか感電するみたい」

「不完全だな」


何か突っかかる。その何かが心歪病の根本をどうにかできる気がする。


「もう一歩って表情だね」

「その一歩を探せば探すほど霞んで見えなくなっていくんですけどね」


解決にはやはり叶が重要なはずなんだ。何を知らない?僕は何を見落としているんだ。突然のことだった。カフェの自動ドアが開いて、力強い足音がこちらへ向かってくる。


「秋内叶だな。心歪病の件の重要参考人としてご同行願いたい」


警察手帳を持った男が叶を取り囲む。唖然としながらも声を出した。


「待ってください。どういうことですか」

「秋内叶には今回の島野京介の件以降現れる不可思議な症状に関するウイルステロの疑いがかけられている。」

「ウイルステロ?」

「匿名の人物から症状についての情報が寄せられた。その情報を精査した結果ウイルステロの疑いが浮上した。」

「これは任意ですよね」

「緊急事態として、任意ではない」


淡々とした言葉によって秋内叶はパトカーへと運ばれた。店内に残ったのは僕とマグロちゃん。

これじゃあ解決しようがないじゃないか。


「言ったじゃない。時間がないって」

「え、それは叶がまた自殺する方を選ぶからで」

「待って、聞いていなかったの?秋内さんは情報提供してから自殺するつもりだったって」

「つまり、僕と会う前に情報提供してたってこと」

「そう」


足に力が入らなくなった。そのまま椅子に座って頭にかかっていた霧が濃くなるのを感じる。


「諦めてないよね。」

「そりゃ諦めてないけど……」

「時間は確保できたでしょ、秋内さんが警察と一緒にいるあいだ自殺することはないと思うから」

「それでも叶がいなきゃ解決なんて」

「最終的にそれが必要でもまだやってないことあるんじゃない」

「なんですかそれ」

「秋内さんの過去…何も知らないんじゃない?」


霧が少しだけ晴れたそんな気がした。


「そうか、知らなかったことそれだ」

「じゃあバディーだねよろしく」


それはかつてのカップルチャンネルのペアの復活であり、初の心歪病への2人での挑戦だった。

そうだ、心歪病の源がランダムに選ばれるなんてないはずなんだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る