第12話マグロちゃん降臨!
警察のお世話になりかけながらも江ノ島から帰還してまたいつものように学校に行く。2日ほど学校をサボっていたわけだが、所詮義務教育を終えた場所連絡さえしとけばさして問題はない。
「鎌田おはよ」
「おー音無久しぶりだな。学校サボって何してたんだ」
「まぁ色々ね」
「ふーんでも気をつけろよ」
「何を?」
「音無くん」
肩を両手で抑えられて声をかけられた。声は怒りを抑えているのか微かに震えていて、手には力が入っている。ん、なんか痛いぞ、あれれ。振り返ると委員長が怖い顔してた。なんだろ色んな感情が入り交じってすごいことなっとる。
「委員長…痛いです」
「ね、ね音無くんが休んでる間スミスミもいなかったんだけど」
「いや、、、たまたまじゃないですかね」
「おかしい……スミスミは今まで1回も休んだことがないの健康体なのねぇこれって進路とかに響いたりしないよねぇもしそんなことになって、それが音無くんのせいなら私、私、私」
「落ち着こう委員長。小鳥遊先輩は頭いいでしょ大丈夫だから」
「そうだよね、スミスミは私たちとは出来が違うもんね」
どうしよう。委員長の拗らせ具合がどんどん深刻化している気がする。このままじゃ命が危ういぞ。
「晴くんはいるかしら」
「小鳥遊先輩!?晴くんって何ですか」
「4日を共にした仲じゃない。お昼は一緒に食べましょうね。それだけ言いたかったのじゃあね待ってる」
You are deadの文字が頭に浮かんで僕は死んだ。
委員長にもう後ろ首を掴まれてるあぁこのまま頸動脈を刺されて死ぬんだ。ありがとう今までの人生。
「殺さないよ。安心して」
「え?」
殺す可能性があったってこと?その選択肢があるってことなの!おかしいって。
「良かった。スミスミ元気になって。音無くんのおかげなんだよね」
わかってもらえたか。これでようやく仲良く握手ができる。頭の中でにこやかなBGMが流れる。
「委員長……わかってくれましたか」
「うん。でももし、そこに邪な気持ちが入ったらその時はね、わかるよね」
あれれ、圧がすごいなーおかしいなー。やっぱり誓おう。
「安心しなって委員長。音無はバ先の社長にご執心だから」
「え、そうなの。なんだー早く言ってよ」
「なんで知ってるの鎌田」
「いや、1年もお前と仲良くしてたらわかるって」
なんか恥ずい。ともかく難は逃れた。
そんな感じで学校が始まって弁当を食べつつ学校が終わった。自転車に股がったタイミングでスマホに通知が入る。配達の依頼だ。
「あれ、配達許可してたっけな」
デリバリーパピネスは自分のやりたい時にやりたい時間だけなので、許可を出してなければこないはずなんだけどな。ミスって許可したまんまだったのか。特にすることもないし、いいか。注文は野菜ボックスとミルクティーね。バランス悪くね。
ともかく配達依頼された場所に向かう。
都内のデカいマンションに着いた。デリバリーパピネスを頼む困ったやつは金持ちしかおらんのか。インターフォンを押す。
「すみません。デリバリーパピネスなんですけどご注文の品お届けにきました。」
バタバタと音をたててこちらに向かってくるのが聞こえる。出てきたのは身長が150cmくらいの小柄な女性。髪型は白く染められていて、ダボッとした大きなTシャツにショートパンツ。どこかで見た容姿だった。思い出せないなんだこの既視感。
「ありがとうございます!」
声を聞いて繋がった。この既視感、この声。
「マグロちゃん!」
「え!もしかしてマグめろの人」
マグめろとはVTuberであるマグロちゃんとファンの総称である。僕は朝活をこの前のように見たりするくらいのほっとな視聴者なので、決してマグめろではない。
「朝活とか見てます。」
「うわぁあああどうしよう身バレしちゃった」
「いえ、見た目がほとんど変わらなくて驚いてます。」
「それはありがとうだけど、絶対誰にも言っちゃだめだよ」
「それはもちろんです。迷惑とかかけたくないですし、いつも朝元気もらってるので」
「それじゃあ配達ありがとね。私配信中だから戻らないと」
「あぁわかりました。これだけ見といて貰えますか」
困ってる人が今度はVTuberか。悩みが結構怖い。闇が深そう。それでも仕事なので商品と一緒にメッセージを同封した。近くの喫茶店で待ってるので来てくれませんか。悩みを解決します。っていう怪しさ全開の文面だったけど、大丈夫だろうか。待ってる間配信でも見てよ。マグロちゃんの配信画面をつけるとコメント欄の勢いがいつもの倍あった。
(身バレ大丈夫!)(俺もデリバリーパピネスやろうかな)(ちゃんとファンだったね)
と、さっきの内容が聞こえてた。マグロちゃんも焦ってた。
『うわぁあああミュートし忘れてた』
おいおい、逆ミュート芸すなて。幸い炎上とかではなく心配の声と優しそうなマグめろだったねみたいな感じに収まった。
配信が終わってしばらくするとマグロちゃんが喫茶店に来た。
「ごめんなさい。さっきの会話配信で漏れてたみたいで」
「大丈夫ですよ面白かったですし」
「ところでさっき書いてあった悩みを解決するのって」
「デリバリーパピネスのもうひとつの仕事で依頼者の悩みを解決するんです。でもよく来ましたね信じてもらえないかと」
「信じてはないかったですけど、配信のネタになりそうだったので」
嘘でしょ、それで来たのVTuber精神凄すぎ。
「でも嘘じゃないって確信しました」
「じゃあ悩みを教えてください」
「私、ファン以外の人間が心の底から嫌いなんです!」
「え?」
鳩が豆鉄砲を食らったような間抜けな顔をした僕がそこにはいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます