第13話VTuberとリスナー
「オタク以外が嫌いってそのままの意味」
「もちろんです」
「みんなクズじゃないですか!」
配信と変わらぬ笑顔で毒を吐くマグロちゃんは個人的に刺さる。新たな扉を開く音がした。
「それはオタクもそれ以外も変わらないよ」
「そんなことないです。文字列に裏表なんてないです。」
「文字列!?それ好き嫌い以前なんじゃ」
「マグめろは好きですよ。私の事好きでいてくれますから。」
嘘に思えない。目が本気だと語っている。だとしたら何を解決すればいいんだ。
「そういえば名前聞いてませんでしたね」
「音無晴高校生2年生」
「私はマグロちゃん永遠の16歳だよ!」
「外でそんなんで大丈夫なの」
多分絶対年上なのは確定なのだ。マグロちゃんが配信始めたの4年前だし、そん時から16歳と名乗ってたから。しかし、そんな野暮なことは言わない。
「なんで笑ってるの」
「やっぱマグめろは優しいなーと思って」
「そっか、んで悩みとは」
「4年もVTuberやってるとね、コラボ依頼とかマグめろからもコラボしてほしいーとか言われるの」
「それが悩み?ソロ配信がいいってこと」
「そうだよ。だって他のVTuberなんて、薄気味悪い商業の利益営業でしょ、そんなのとコラボしてマグめろがその子好きになったら嫌だから。」
「だいたいの人は純粋な気持ちたと思うんだけど」
これは設定を守るためのファンサなのか。メンヘラくださいに応えてる的な。わからない。他のVTuberを知らないから。
「マグめろだって他の配信者見てるでしょ」
「みんなが別の配信者見てるのはわかってるけど目に入ることがないじゃん」
「そんなもんか」
「そだよ、私コラボしないし個人だしコメ欄で名前出す人いないから」
「配信で語ってみれば私がソロ配信を続ける理由」
「そんなこと言ったらみんな離れちゃう」
「それが、マグロちゃんの裏表でしょ。誰だって持ってる。だから嘘を語ればいいんだよ。綺麗なこと言ってマグめろに夢をみせて上げればいい。」
「そっか、そうすれば良かったのか」
これで解決するかな。以外とあっさりしてたものだ。これもファン目線でしかわからないものなのかもしれない。これで依頼完了だ。
「ね、デリバリーパピネスのチャットって配達された時しか使えないの?」
「いや、配達から1週間いないならその人に連絡取れる。後はお気に入り登録とかすれば、その人がやってる時に優先的に振り分けてもらえるのもある」
「へぇー知らなかった。晴くんがしてる時は注文任せるね!」
「そか、ありがとう」
お気に入り登録の通知が届く。僕の場合優先されるのは悩みある人へのところだと思うけど。そんなことは言わず、この場を去ろう。さっそくYouTubeに立てられた枠を確認しながら。
「じゃあね」
「うん、配信見てねー」
その日の20時。マグロちゃんの配信を見た。話したいことがあるんだと明るい声で話している。
『私ね、みんなが他配信者さん達とコラボして欲しいのはわかってるんだけど、私はソロ配信が好きなんだ。大好きなマグめろ達と話してたいからコラボしちゃうとどうしてもその人とがメインになっちゃうから 』
そんな語り口でソロ配信がしたいこたを告げたマグロちゃんに対しての反応は優しいものが多く、肯定的な内容だった。さすが訓練されたオタク達だ。頷く力が違うね。安心して、その配信を見届けた。
***
『マグロちゃんさ、あんなこと言ってるけどさファンを独占したいだけだろ』
『それな、てかコラボなしのソロでこの先生き残れないだろ』
『あのオタクに媚びてる感じ嫌いだわ』
『絶対性格悪いよねwww』
『イケメンしか好きじゃなさそう』
『あの声地声なの、だとしたらキモくね』
『あの配達員カレシでしょ』
『信じてたのに』
『なんか配信みんのやめようかな』
『俺も』
『私も』
暗い言葉に包まれた文字列達を1人少女は見ていた。心臓に針を突き刺されながら。心拍を圧迫されながら。
「どうにかしなきゃ」
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