第4話 魔法少女、負けちゃいました!?
勇気を振り絞り、甘崎さんに魔法少女のことを聞いてから数日経っていた。
魔法少女とお近づきになれるかもしれないという俺の淡い願望とは裏腹に、あれから特に
何も起きてはいない…。
甘崎さんの様子も、俺が話し掛ける前と
全く変わっていない。顔を合わせたら
向こうから話し掛けてくれるんじゃないかと期待したが、そんなことはなく、相変わらず特に会話もしていない。
俺に勇気が足りないばかりに、あれ以上の
関係にはなれないのかと…現実の無情さに
ただただ打ちひしがれていた…。
俺は完全に、甘崎さんのことが
好きになっていたのだ…。
頭の中はずっと彼女のことでいっばいだ。
そんな気持ちが芽生えた影響で、
余計に苦しい日々を送っている…。
「あ、ねぇねぇ。香緒里。あれ知ってる?」
ぼんやりしている俺の耳に、休み時間に教室で話している女子の会話が入ってきた。
「魔法少女マジカルスイートなんだけど。」
もし、コーヒーを飲んでいる最中だったら、
おもいっきり吹き出していたであろう…。
そんな衝撃的なフレーズが耳に入った。
俺の前には甘崎さんが座っている。
彼女はワナワナと体を震わせている。
彼女の耳にも、教室の会話が聞こえているのは明らかだった…。
「知ってる知ってる!ネットでめっちゃ
拡散されてる奴でしょ?
怪物と戦う魔法少女が実在したって、
凄い話題になってるじゃん!」
そ、そんなことになっていたのか…?
俺はネットはよく見る方だが、最近は
甘崎さんのことで頭がいっぱいで放心状態
だったため、ネット上の話題にかなり疎く
なっていた…。
「そうそう!私も最近、凄い好きでファンに
なってたんだけどさー。」
「昨日、怪物に負けちゃったんだってー!」
ま、負けた…!?俺はマジカルスイートの
戦いを間近で見ていたから分かる…。
とても負けるとは思えないほど、彼女は
圧倒的に強かったのだ…。
そんな彼女が負けるとはとても信じられ
なかった…。一体何があったんだ…?
「負けたおかげで怪物は逃げ出して、
あちこち破壊して回ったんだって!
幸いにも死傷者は出なかったみたい
なんだけどさー。」
俺はハラハラしながら女子たちの会話を
聞いている…。もしかしたら、彼女たちが
甘崎さんを傷つけるようなことを言うのでは
ないかと…。気が気ではなかった…。
甘崎さんは大丈夫だろうか…。相変わらず、
小柄な体を震わせながら俺と同じように
話を聞いているようだった…。
「ほんとガッカリだよねー!」
「正義の味方ならもっとしっかりして
欲しいっつーの!」
「それな!」
女子たちは好き勝手にマジカルスイートの
責任を追求し始めた。
俺は耳を塞ぎたくなる気持ちだった…。
俺ですらそうなるのだから、当然彼女は…。
『 ガ タ ン ッ ! 』
突然、俺の前にあった椅子が後ろに飛んだ。
甘崎さんが勢いよく立ち上がったからだ…。
「うぅっ…!!」
甘崎さんはそのまま駆け出して、
教室から出て行ってしまった…。
微かに見えた彼女の横顔には、光る物が
見えた。甘崎さんは泣いていたよう
だった…。
心がズキズキと痛む…。もうすぐ次の授業が
始まりそうだったが、そんな場合では
ない…。俺は急いで立ち上がると、彼女の姿を探しに、当てもなく校舎の中を駆け回った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます